ジェームズ・ポール・ムーディ

ジェームズ・ポール・ムーディ
生誕せいたん	1887年ねん8月がつ21日にち イギリス スカーブラ
死没しぼつ	1912年ねん4月がつ15日にち(1912-04-15)（24歳さい没ぼつ） 北大西洋きたたいせいよう
職業しょくぎょう	タイタニック号ごうの六ろく等とう航海こうかい士し

ジェームズ・ポール・ムーディ（英語えいご: James Paul Moody、1887年ねん8月がつ21日にち - 1912年ねん4月がつ15日にち）は、タイタニック号ごうの六ろく等とう航海こうかい士し。同船どうせんの沈没ちんぼつ事故じこで犠牲ぎせいとなった唯一ゆいいつの下級かきゅう航海こうかい士しである。

イギリスに生うまれた彼かれは航海こうかい士しとして一流いちりゅうの教育きょういくを受うけた後のち、最初さいしょの頃ころはホワイト・スター・ライン社しゃのオセアニック号ごうに乗船じょうせんしていた。

タイタニック号ごうが氷山ひょうざんと衝突しょうとつした時とき、当直とうちょくだったムーディは一等いっとう航海こうかい士しのウィリアム・マクマスター・マードックとともにブリッジにいた。見張みはりから前方ぜんぽうに氷山ひょうざんがあるとの連絡れんらくを受うけたのも彼かれである。衝突しょうとつ後ごは救命きゅうめいボートへ乗客じょうきゃくを誘導ゆうどうした。同僚どうりょうは何なん度どもボートへの乗船じょうせんを誘さそったが、彼かれは最後さいごまで断ことわり続つづけて船ふねと運命うんめいを共ともにした。

生涯しょうがい

前ぜん半生はんせい

ジェームズ・ポール・ムーディは1887年ねん8月がつ21日にちにイギリス・スカーブラで、事務じむ弁護士べんごしだったジョン・ヘンリー・ムーディと妻つまのエヴリン・ルイス・ラミンとの間あいだに4人にん目めの子供こどもとして生うまれた。ジェームズの名なは、地元じもとで有名ゆうめいだった祖父そふのジョン・ジェームズ・ポール・ムーディに因ちなんでいる。ローズベリー・ハウス・スクールを経へて、1902年ねんから王立おうりつ海軍かいぐんの士官しかん候補こうほ生せいとして航海こうかい練習れんしゅう船せんコンウェイに乗船じょうせんした。彼かれは1903年ねんまで2年間ねんかんコンウェイに従事じゅうじしたが、この経験けいけんは彼かれの二に等とう航海こうかい士し認定にんていに必要ひつような航海こうかい経験けいけんとして加算かさんされている。

経歴けいれき

1904年ねん、ムーディはウィリアム・トーマス・ライン社しゃ所有しょゆうの船舶せんぱくであるブーディカに航海こうかい士し見習みならいとして加くわわった。ニューヨークへの航海こうかいでは、見習みならい仲間なかまが自殺じさつするほどの酷ひどい嵐あらしを最後さいごまで耐たえ抜ぬいた。

この航海こうかいの後のちに二に等とう航海こうかい士しとなったムーディは蒸気じょうき船せんや貨物かもつ船せん、油槽ゆそう船せんなどの乗船じょうせん経験けいけんを積つみ、一等いっとう航海こうかい士しの資格しかくを得える。1910年ねんにはキング・エドワード7世せい航海こうかい学校がっこうへ短期たんき入学にゅうがくし、通商つうしょう委員いいん会かいの試験しけんに合格ごうかく、航海こうかい士長しちょうとなった。1911年ねん8月がつ、ホワイト・スター・ライン社しゃの客船きゃくせんオセアニック号ごうに六ろく等とう航海こうかい士しとして乗船じょうせん。1912年ねん3月がつには客船きゃくせんタイタニック号ごうの六ろく等とう航海こうかい士しに任命にんめいされた。夏場なつばは大西洋たいせいようを航行こうこうするオセアニック号ごうに乗のる心こころづもりだった彼かれは、この人事じんじに戸惑とまどい、休暇きゅうかを申請しんせいしたが却下きゃっかされ、運命うんめいの船ふねに乗船じょうせんすることとなった。

タイタニック号ごう

ムーディたちが最期さいごまで展開てんかいしようとしていたA号ごうボート。沈没ちんぼつ事故じこから約やく1ヵ月かげつ後ご、かつてムーディが乗船じょうせん勤務きんむしていたオセアニック号ごうによって発見はっけんされた。

1912年ねん3月、ムーディは他たの下級かきゅう航海こうかい士しとともに、3月26日にちにリヴァプールのホワイト・スター・ライン社しゃへ来くるよう要請ようせいされた。彼かれはそこからベルファストにあるハーランド・アンド・ウルフ社しゃの造船ぞうせん所しょへ移動いどうし、タイタニック号ごうに乗船じょうせんした。ベルファストを出港しゅっこうしたタイタニック号ごうはサウサンプトンに向むかい、そこで多おおくの乗客じょうきゃくを乗のせた。彼かれの六ろく等とう航海こうかい士しとしての月収げっしゅうは約やく37ドルほどだったが、その薄給はっきゅうの埋うめ合あわせとして私用しようできる船室せんしつが割わり当あてられた。

タイタニック号ごうの初はつ航海こうかい日びである4月がつ10日とおか、同船どうせんが安全あんぜん基準きじゅんを満みたしていることを通商つうしょう委員いいん会かいに示しめすため、五ご等とう航海こうかい士しのハロルド・ロウとともに右舷うげん側がわの救命きゅうめいボートを2艘そう下おろした。また、彼かれは乗船じょうせん用ようのタラップを閉鎖へいさする役目やくめを担になっていた可能かのう性せいがあり、遅刻ちこくした6名めいの乗員じょういんを締しめ出だしたことで結果けっか的てきに彼かれらの命いのちを救すくった。航海こうかいにおけるムーディの当直とうちょくは午後ごご4時じから5時じと、朝夕あさゆうの8時じから12時じまでであり、タイタニック号ごうが氷山ひょうざんと衝突しょうとつした4月がつ14日にちの午後ごご11時じ40分ふん、彼かれは一等いっとう航海こうかい士しのマードック、四よん等とう航海こうかい士しのジョセフ・ボックスホールと共ともにブリッジにいた。間あいだもなく前方ぜんぽうに氷山ひょうざんを発見はっけんした見張みはり係がかりのフレデリック・フリートは鐘かねを3回かい鳴ならし、ブリッジに電話でんわを掛かけた。その電話でんわを受うけたのがムーディである。「ああ、何なにが見みえる?」フリートは叫さけんだ。「前方ぜんぽうに氷山ひょうざんだ!」

乗客じょうきゃくの避難ひなんが始はじまると、ムーディは9号ごう、12号ごう、13号ごう、14号ごう、16号ごうボートへの移乗いじょうを指揮しきした。14号ごうボートへ乗客じょうきゃくを誘導ゆうどうしていた時とき、五ご等とう航海こうかい士しのロウは航海こうかい士しも救命きゅうめいボートに乗のり込こむべきだと提案ていあんした。乗客じょうきゃくを誘導ゆうどう中ちゅうの14号ごうボートか16号ごうボートのどちらかに同乗どうじょうし、指揮しきをとる必要ひつようがあると考かんがえたためである。ムーディはその役目やくめをロウに譲ゆずり、自身じしんは船ふねに留とまる覚悟かくごを決きめた。その決断けつだんが、彼かれの運命うんめいを決定けってい付つけた。ムーディは右舷うげんに移動いどうし、デッキに水みずがくるまで右舷うげん側がわで指揮しきを執とっていたマードックに手てを貸かし続つづけた。ムーディを最後さいごに目撃もくげきしたのはランプ係がかりのサミュエル・ヘミングである。彼かれによれば、沈没ちんぼつの数すう分ふん前まえまで折おり畳たたみ式しきの救命きゅうめいボートA号ごうを展開てんかいしようと悪戦苦闘あくせんくとうしていたという。右舷うげんのマードックやムーディと同おなじく、左舷さげんの折おり畳たたみ式しきボートB号ごうを展開てんかいしていた二に等とう航海こうかい士しのチャールズ・ライトラーは、「ムーディは同どう時期じきに私わたしの近ちかくで立たっていたに違ちがいない。彼かれは右舷うげんの船尾せんびの上うえの方ほうで折おり畳たたみ式しきボートの後方こうほうを担にない、マードックは吊つり縄なわで作業さぎょうしていた。そうだとしたら、我々われわれは共ともに海中かいちゅうへ引ひきずり込こまれたのだ。」と最期さいごの瞬間しゅんかんを振ふり返かえっている。

ムーディは24歳さいで命いのちを落おとした。彼かれの遺体いたいはついに発見はっけんされず、下級かきゅう航海こうかい士しで唯一ゆいいつの犠牲ぎせい者しゃとなった。

スカーブラのウッドランド墓地ぼちには彼かれの記念きねん碑ひがある。碑文ひぶんには、タイタニック号ごうにおけるムーディの行為こういを聖書せいしょの一節いっせつをとって「人ひとがその友とものために自分じぶんの命いのちを捨すてるという、これよりも大おおきな愛あいは誰だれにもない（ヨハネ15:13）」と記しるされている（参照さんしょう：John 15:13）。

その他た、彼かれの生うまれた地ちやスカーブラの聖せいマーティン教会きょうかいなどでも顕彰けんしょうがなされている。

ムーディを演えんじた人物じんぶつ

• マイケル・ブライアント（映画えいが『SOSタイタニック 忘わすれえぬ夜よる』、1958年ねん）
• エドワード・フレッチャー（映画えいが『タイタニック』、1997年ねん）
• ジョナサン・ハワード（テレビシリーズ・エピソード4『タイタニック 愛あいと偽いつわりの航海こうかい』、2012年ねん）

外部がいぶリンク

• Mr James Paul Moody
• Titanic-Titanic
• All the Horrors Seem to Happen at Night