ジャチント・シェルシ

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ジャチント・シェルシ
1935年ねん
基本きほん情報じょうほう
生誕せいたん (1905-01-08) 1905年ねん1月がつ8日にち
出身しゅっしん地ち イタリアの旗 イタリアラ・スペツィア
死没しぼつ (1988-08-09) 1988年ねん8月がつ9日にち（83歳さい没ぼつ）
ジャンル 現代げんだい音楽おんがく
職業しょくぎょう 作曲さっきょく家か
ウィキポータル クラシック音楽
ポータル クラシック音楽おんがく

ジャチント・シェルシ（Giacinto Scelsi, 1905年ねん1月がつ8日にち - 1988年ねん8月がつ9日にち）は、イタリア・ラ・スペツィア生うまれの現代げんだい音楽おんがくの作曲さっきょく家か、詩人しじん。

経歴けいれき[編集へんしゅう]

貴族きぞくの末裔まつえいとして生うまれ、Giacinto Sallustioに作曲さっきょくの手てほどきを受うけ、1935年ねんから36年ねんにWalter Klein[注釈ちゅうしゃく 1][1]に十じゅう二に音おと技法ぎほうを師事しじした[2]。1945年ねん以降いこう、他たの作曲さっきょく家かとの「共同きょうどう作曲さっきょく」という作業さぎょう形態けいたいをとり、少すくなくとも1970年代ねんだいまでこのメソッドで作品さくひんを量産りょうさんした。1980年代ねんだいに入はいると自作じさくの販促はんそく活動かつどうおよび作曲さっきょく技法ぎほう伝授でんじゅが主おもになり、アンサンブル・シッダルタ[3]、アンサンブル・2e2mなどとのコラボレーションで知しられた。ダルムシュタット夏季かき現代げんだい音楽おんがく講習こうしゅう会かいにも招まねかれた。

死しの直前ちょくぜんになってサラベール社しゃがデ・サンティス[4]とシャーマー[5]に預あづけた作品さくひん以外いがいをすべて出版しゅっぱんし、イタリアではなくドイツでオーケストラ作品さくひんが初演しょえんされ、共同きょうどう作曲さっきょく時代じだいが詳くわしく暴あばかれたのは没後ぼつごの話はなしである。詩作しさくも行おこなっており、CDのライナーノート[6]に最さい晩年ばんねんの創作そうさくが残のこされている。ローマ系けいイタリア現代げんだい音楽おんがく[注釈ちゅうしゃく 2]は1980年代ねんだい末まつまでほとんどイタリア国外こくがいに流出りゅうしゅつすることがなかったが、本人ほんにんが積極せっきょく的てきに国外こくがいへのプロモーションを行おこなったために、西にしヨーロッパ、アメリカ、日本にっぽんを中心ちゅうしんにCD録音ろくおんが1990年代ねんだいから流行りゅうこうした。

平山ひらやま美智子みちこ[7]は山羊やぎ座ざの歌うたを二に度ど録音ろくおんした。本人ほんにんの性格せいかくを反映はんえいした棒ぼうに丸まるが乗のっただけの署名しょめい[8]を愛好あいこうし、写真しゃしん撮影さつえいを非常ひじょうに嫌きらっていたが、第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん以前いぜんの若干じゃっかんの公式こうしき写真しゃしんと後妻ごさいの撮影さつえいした後年こうねんのプライベート写真しゃしんは残のこされている。

共同きょうどう作曲さっきょく[編集へんしゅう]

シェルシの死後しご、イタリアの作曲さっきょく家かヴィエーリ・トサッティ（Vieri Tosatti）は、音楽おんがく雑誌ざっしに掲載けいさいされた「ジャチント・シェルシ、それは私わたしだ[9]」というインタビュー記事きじにおいて、少すくなくとも1940年代ねんだい以降いこうの、シェルシ名義めいぎで発表はっぴょうされた作品さくひんには、トサッティをはじめとする複数ふくすうの作曲さっきょく家かが関与かんよしている、ということを明あきらかにした[10]。トサッティがシェルシの「共同きょうどう作曲さっきょく者しゃ」となったのは1947年ねんからで[10]、それ以前いぜんに一人ひとり、同様どうようの役割やくわりを担になっていた人物じんぶつがいた。

なお、長木ながき誠司せいじは、シェルシの作風さくふうの変化へんかについて、トサッティの証言しょうげんと合致がっちする部分ぶぶんが多おおいとし、特とくに、1950年代ねんだいにピアノ曲きょくを立たて続つづけに書かいた後のち、『四よっつの小品しょうひん』を境目さかいめに、ピアノ曲きょくがほとんど書かかれなくなったことは、その典型てんけいであるとしている[11]。

トサッティの証言しょうげんによると、共同きょうどう作曲さっきょくの形態けいたいは、次つぎのような4段階だんかいで変化へんかしていったという。

最初さいしょの段階だんかいは、十じゅう二に音おと技法ぎほうを用もちいた作品さくひんにおいて、シェルシが十じゅう二に音おとの音おと列れつを素材そざいとして与あたえ、トサッティがそれに基もとづいて作曲さっきょくをするという形態けいたいであった[12]。この方法ほうほうでまず完成かんせいされた作品さくひんは『弦楽げんがく四よん重奏じゅうそう曲きょく第だい1番ばん』であり、その後ご、前任ぜんにんの「共同きょうどう作曲さっきょく者しゃ」の仕事しごとを引ひき継ついでトサッティが『ことばの誕生たんじょう』を完成かんせいさせた[12]。第だい二にの段階だんかいは、シェルシによるピアノの即興そっきょう演奏えんそうを採譜さいふするというものであり[12]、ほとんどのピアノ曲きょくは、シェルシと、トサッティの紹介しょうかいにより採譜さいふを担当たんとうしたセルジョ・カファーロ[13] の共同きょうどう作業さぎょうにより書かかれたという[14]。第だい三さんの段階だんかいは、単音たんおんしか出だせない代かわりに、足あし車しゃを回転かいてん[注釈ちゅうしゃく 3]させることで微分びぶん音おんを出だすことが出来できる電気でんき鍵盤けんばん楽器がっき「オンディオリーナ[15][注釈ちゅうしゃく 4]」を、シェルシが2台だい購入こうにゅうした頃ころから始はじまり、シェルシが一ひとつの鍵盤けんばんを押おして、即興そっきょう的てきに音おとを変化へんかさせながら録音ろくおんした音おとを元もとにトサッティが作曲さっきょくをする、という作業さぎょう形態けいたいを取とるようになった[14]。この手法しゅほうによる最初さいしょの作品さくひん、オーケストラのための『四よっつの小品しょうひん』は、いわゆる「ひとつの音おと」（一ひとつの音おとをき込きこむ、という手法しゅほう）による最初さいしょの作品さくひんである[14]。

1966年ねんに、トサッティとシェルシの関係かんけいは解消かいしょうし、「共同きょうどう作曲さっきょく者しゃ」の後任こうにんに、トサッティは自みずからの弟子でしであるリッカルド・フィリッピニ[16]を選えらんだ[14]。その後ご、トサッティの元もとに再ふたたびシェルシから共同きょうどう作業さぎょうの打診だしんがあった際さいに、シェルシからは単純たんじゅんな図形ずけいの素描そびょうが送おくり届とどけられ、トサッティはそれを元もとに音符おんぷを書かいたという[14]。しかし、この「第だい四よん段階だんかい」の作業さぎょう形態けいたいをとった作品さくひんは多おおくない。

エピソード[編集へんしゅう]

トサッティの証言しょうげんはシェルシの死後しごなされたものであったにも関かかわらず、シェルシの生前せいぜんから、イタリアにおいては、一部いちぶの作曲さっきょく家かの間あいだでシェルシとトサッティの関係かんけいは「公然こうぜんの秘密ひみつ」であった[14]。しかし、国外こくがいではシェルシの「共同きょうどう作曲さっきょく」の事実じじつは知しられておらず、『ことばの誕生たんじょう』が国際こくさい現代げんだい音楽おんがく協会きょうかい（ISCM）の大会たいかいで初演しょえんされることになった際さいに、ゴッフレド・ペトラッシに対たいして、ISCMフランス代表だいひょうの指揮しき者しゃ、ロジェ・デゾルミエールが「イタリアにはジャチント・シェルシという偉大いだいな作曲さっきょく家かがいる」と語かたったが、「共同きょうどう作曲さっきょく」の事情じじょうを知しっているペトラッシは、笑わらいを堪こたえきれなかったという[12]。

スペクトル楽らく派は[編集へんしゅう]

シェルシの身辺しんぺんがあわただしくなったのは、トサッティが作業さぎょうを辞やめた1970年代ねんだいである。メディチ家か滞在たいざい奨学生しょうがくせい制度せいどを利用りようして、ジェラール・グリゼーとトリスタン・ミュライユがシェルシの家いえに押おし掛かけ[17]て、シェルシの作曲さっきょく法ほうをき出きだしたのである。シェルシ本人ほんにんは自みずからの技術ぎじゅつを秘教ひきょう化かせず、創作そうさくプロセスのみを伝つたえた。これにミカエル・レヴィナスとユグ・デュフールが続つづき、彼かれらは後のちにスペクトル楽らく派はと呼よばれるようになった。

作品さくひん[編集へんしゅう]

ジャチント・シェルシの作品さくひん一覧いちらん（英語えいご版ばん）

著作ちょさく[編集へんしゅう]

  • Le Poids net et l'Ordre de ma vie, Vevey, 1945
  • Sommet du feu, Rome, 1947
  • Le Poids net, éditions GLM (Guy Levis Mano), 1949
  • L'Archipel Nocturne, éditions GLM, 1954
  • La conscience aiguë, éditions GLM, 1962
  • Cercles, Éditions Le parole gelate, Rome, 1986
  • Il Sogno 101 (Dream 101), an autobiographical book. Macerata: Quodlibet, 2010.
  • L'homme du son, poetry edited and with commentary by Luciano Martinis, with collaboration from Sharon Kanach. Actes Sud 2006. 品切しなぎれ
  • Les anges sont ailleurs, writings on Scelsi's life, music and art. Actes Sud, 2006. 品切しなぎれ
  • Il Sogno 101, an autobiography. Actes Sud. 品切しなぎれ

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

[脚注きゃくちゅうの使つかい方かた]

注釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

  1. ^ Walther Wilhelm Kleinという綴つづりでも知しられている。
  2. ^ ローマ系けい現代げんだい音楽おんがくの老舗しにせ出版しゅっぱん社しゃにはEdipanがあり、デ・サンティス時代じだいのシェルシの作品さくひんを2020年代ねんだいに入はいった現在げんざいも販売はんばいしている。
  3. ^ イザベラ・シェルシ財団ざいだん所蔵しょぞうの楽器がっきには、足あし車しゃなるものは存在そんざいしていない。
  4. ^ 日本にっぽんではクラヴィオリンという名前なまえで売うられていた。フランク永井ながいの夜霧よぎりの第だい二に国道こくどう、有楽町ゆうらくちょうで逢あいましょうほかで使つかわれている。

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ “Correspondence documenting his personal friendships with Giacinto Scelsi, Ernst Toch and Fritz Reiner are included.”. oac.cdlib.org. oac. 2020年ねん6月がつ17日にち閲覧えつらん。
  2. ^ “Scelsi, Giacinto”. www.durand-salabert-eschig.com. www.durand-salabert-eschig.com. 2020年ねん6月がつ15日にち閲覧えつらん。
  3. ^ “Giacinto Scelsi”. www.durand-salabert-eschig.com. www.durand-salabert-eschig.com. 2020年ねん6月がつ15日にち閲覧えつらん。
  4. ^ “Giatinto Scelsi”. www.contemponet.com. Contemponet. 2020年ねん6月がつ16日にち閲覧えつらん。
  5. ^ “Suite No. 10 (1953)”. www.musicshopeurope.com. www.musicshopeurope.com. 2020年ねん6月がつ16日にち閲覧えつらん。
  6. ^ “Scelsi”. www.discogs.com. Discogs. 2020年ねん6月がつ15日にち閲覧えつらん。
  7. ^ “平山ひらやま美智子みちこ”. camerata.co.jp. camerata. 2020年ねん6月がつ17日にち閲覧えつらん。
  8. ^ “Giacinto Scelsi”. sitecoreaudioprod.umusicpub.com. Durand-Salabert-Eschig. 2020年ねん6月がつ17日にち閲覧えつらん。
  9. ^ “Giacinto Scelsi discovered a world in one note.”. www.newyorker.com. 2019年ねん1月がつ28日にち閲覧えつらん。
  10. ^ a b 長木ながき、250ページ。
  11. ^ 長木ながき、253ページ。
  12. ^ a b c d 長木ながき、251ページ。
  13. ^ “SCELSI, Giacinto Francesco Maria in "Dizionario Biografico" - Treccani”. www.treccani.it. 2019年ねん1月がつ28日にち閲覧えつらん。
  14. ^ a b c d e f 長木ながき、252ページ。
  15. ^ “Giacinto Scelsi”. musicircus.on.coocan.jp. 彩いろどり耳みみ記き. 2020年ねん6月がつ15日にち閲覧えつらん。
  16. ^ “Cage e Scelsi: verso una musica dodecafonica e contemporanea”. www.2duerighe.com. 2019年ねん1月がつ28日にち閲覧えつらん。
  17. ^ “Giacinto Scelsi”. www.angelfire.com. david bundler. 2020年ねん6月がつ15日にち閲覧えつらん。

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]

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