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じゅうおと技法ぎほう

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じゅうおと技法ぎほう(じゅうにおんぎほう、えい: Twelve-tone musicどく: Zwölftonmusik)は、一般いっぱんにはアルノルト・シェーンベルクが「いつつのピアノきょく作品さくひん23で1921ねん完全かんぜん体系たいけいした(とされる)作曲さっきょく技法ぎほうであり、ドデカフォニー(dodecaphony)やおとれつ主義しゅぎセリエリズムなどともばれる[1]実際じっさいは「調音ちょうおんたのし」や「雑音ざつおん音楽おんがく」「電子でんし音楽おんがく」と同様どうように、どう時代じだい複数ふくすう作曲さっきょくによって別々べつべつ独立どくりつして模索もさくされてきた作曲さっきょく技法ぎほうである。

背景はいけい

シェーンベルクは、かねてよりワーグナードビュッシーシュトラウスなどによってもたらされた和声わせいがくじょう変化へんかから、調しらべせい概念がいねんたいして、「不協和音ふきょうわおん解放かいほう」と「べつ調しらべせい確立かくりつ」を模索もさくしていた[2]。それらは1908ねん12月12にちウィーンのベーゼンドルファー・ホールでの演奏えんそうかい披露ひろうされた弦楽げんがくよん重奏じゅうそうきょくだい2ばん筆頭ひっとうに、そうした思想しそうもとづく作品さくひん弟子でしであるウェーベルンベルクらとともに発表はっぴょうした[2][3]。 こうした試行錯誤しこうさくごやく12ねんにもおよび、シェーンベルクは「相互そうご関係かんけいのみに依存いぞんするじゅうおとによる作曲さっきょくほう」(どく: Methode des Komponierens mit zwölf nur aufeinander bezogenen Tönen)と自身じしん呼称こしょうするじゅうおと技法ぎほう理論りろん完成かんせいさせた[4]

概要がいよう

じゅうおと技法ぎほうは、西洋せいよう音楽おんがくの12音律おんりつにおけるオクターヴうちの12のおとだかピッチクラス)(平均へいきんりつには限定げんていされない)を均等きんとう使用しようすることにより、調しらべ束縛そくばくはなれようとする技法ぎほうである[5]じゅうおと技法ぎほうによる音楽おんがく一般いっぱんじゅうおと音楽おんがくぶ。一般いっぱん調しらべ音楽おんがくひとつとされるが、じゅうおと技法ぎほうもちいることにより一種いっしゅ調しらべにも統一とういつかんられるので、パウル・ヒンデミットのようにじゅうおと技法ぎほう一種いっしゅ調しらべであると主張しゅちょうする専門せんもんもいる。

この技法ぎほう原型げんけいは、ヨーゼフ・マティアス・ハウアー1919ねん著作ちょさく発表はっぴょうした「トローペ」とばれるおとれつ技法ぎほうである。そのではロシアニコライ・オブーホフ英語えいごばんドイツばんがシェーンベルクより5ねんまえ1916ねん)に発表はっぴょうしたピアノきょく「インヴォカシオン」IとIIでじゅうおと技法ぎほうきょくつくっている。さらにさかのぼると、ウェーベルン作曲さっきょくした作品さくひん11の「チェロとピアノのための3つの小品しょうひん」(1914ねん)が原型げんけいであるというせつもあり、これが現在げんざいさい有力ゆうりょくとなっている。

作曲さっきょく方法ほうほう

以下いかげるのはもっと有名ゆうめいなシェーンベルクが提唱ていしょうしたじゅうおと技法ぎほう作曲さっきょく方法ほうほうである。

オクターブないの12のおと均等きんとうもちいるために、最初さいしょにそれらのおとを1かいずつ使つかったおとれつつくる。そのようなおとれつは、12!(=479,001,600)とおつくることができるが、そのすべてが同等どうとう使用しようできるというわけではもちろんなく、おとれつそのものに工夫くふうらすことが作曲さっきょく仕事しごとだいいちである。場合ばあいによってはベルクのように、おとれつ調しらべせいてき要素ようそむことも可能かのうである。

ここにひとつのおとれつれい提示ていじする。

B, Bb, G, C#, Eb, C, D, A, F#, E, Ab, F

このおとれつもとづいて作曲さっきょくするとするならば、このおとれつじゅんで12のかくおとあらわれなければならない。そして12のおとがこのじゅんすべあらわれるまではいずれのおと反復はんぷくしてもちいてはならない(ただし、シェーンベルクのピアノ作品さくひんなどでは、いちおともしくはおと反復はんぷくするケースがられ、かならずしも厳格げんかくではない)。ただし、和音わおんとして(連続れんぞくする)いくつかのおと同時どうじらすこともできる。おとめいおなじであったら、どのオクターヴおとえらんでもいいし、異名いみょう同音どうおんえも自由じゆうである。ただ、ヴェーベルンの後期こうき作品さくひんにおいては、オクターヴによる調しらべせいかんけるため、あるおとめいおとがどのオクターヴにあらわれるかまでもが厳密げんみつ管理かんりされた。

おとリズム和音わおんとして同時どうじらすおとわせを様々さまざまえることで、ひとつのおとれつ基本形きほんけい後述こうじゅつするような変形へんけい方法ほうほうによって変形へんけいされていないもとかたち)からでも様々さまざま楽想がくそうすことが可能かのうである。最初さいしょじゅうおと音楽おんがくはほぼこの基本形きほんけいとそのうつりだかがた後述こうじゅつ)のかえしのみで作曲さっきょくされたが、音楽おんがくてき多様たようせいをもたらすために、さらにつぎのような、カノンフーガなどでもられたのと同様どうよう手法しゅほうによる、おとれつ派生はせいがたもちいられる。これらの基本形きほんけい派生はせいがた、そしてそれぞれのうつりだかがた重層じゅうそうてき同時どうじ進行しんこうさせることもでき、これによりひとつの基本きほんおんれつから多種たしゅ多様たよう楽想がくそう発展はってんさせることが可能かのうとなる。

おとれつ変形へんけい方法ほうほう

以下いかのような方法ほうほう使用しようされる。

うつりだか

おとれつ全体ぜんたい音程おんてい関係かんけい保持ほじしたまま、全体ぜんたいたかさをえる方法ほうほうを「うつりだか」という。これは、移調いちょうおな手法しゅほうであるが、「調しらべ」ではないので「移調いちょう」とはばない。

この方法ほうほうにより、おとれつは11とおりに変形へんけいさせることができ、原型げんけいふくめて12とおりになる。

逆行ぎゃっこうがた

おとれつはじまりとわりをぎゃくにし、反対はんたいがわから使用しようすることを、「逆行ぎゃっこうがた」という。逆行ぎゃっこうがたうつりだかにより、12とおりがしょうじる。

F, Ab, E, F#, A, D, C, Eb, C#, G, Bb, B

はんくだりがた

おとれつ上下じょうげかがみうつしたようにして使用しようすることもできる。これを「はんくだりがた」という。はんくだりがたは、どのおと反転はんてんじくにするかによって、つくられるおとれつおとたかさがわるが、一般いっぱんにはつぎれいのように、最初さいしょおとれつだい1おとじくにしてはんくだりする。これもうつりだかにより、12とおりがしょうじる。

B, C, Eb, A, G, Bb, Ab, C#, E, F#, D, F

ぎゃくはんくだりがた

はんくだりがたをさらに逆行ぎゃっこうさせたものである。うつりだかにより12とおしょうじる。

F, D, F#, E, C#, Ab, Bb, G, A, Eb, C, B

このように、うつりだか逆行ぎゃっこうはんくだりぎゃくはんくだりわせると、1つのおとれつから48とおりのおとれつ派生はせいすることになる。ただし、ヴェーベルンの『交響曲こうきょうきょく』(A-F♯-G-A♭-E-F-H-B-D-D♭-C-E♭)のように、前後ぜんご6おと音程おんていをシンメトリーに配置はいちすることで逆行ぎゃっこうくしたおとれつ存在そんざいする(逆行ぎゃっこうさせてもうつりだかはんくだりした24おとれつ一致いっちするため)。

なお、これらの派生はせいがた様々さまざま重層じゅうそうてきわせつつも、ひとつのきょくはあくまで1つの基本きほんおんれつによって統一とういつされるのがしんウィーンらくじゅうおと音楽おんがく原則げんそくである。

対位法たいいほうとの親和しんわせい

おとれつ変形へんけい方法ほうほうこうでもべたとおり、じゅうおと技法ぎほうでは、移調いちょう逆行ぎゃっこうはんくだり、などカノン使用しようされる典型てんけいてき技法ぎほう重視じゅうしされている。エルンスト・クルシェネクは『じゅうおと技法ぎほうもとづく対位法たいいほう研究けんきゅう』(1940ねん)でじゅうおと技法ぎほう対位法たいいほうてき書法しょほう体系たいけいし、各国かっこく作曲さっきょく愛読あいどくされた。

しかし、ハウアーはかならずしも対位法たいいほうとの連関れんかんがなくてもじゅうおと技法ぎほう達成たっせいできると力説りきせつし、このためしんウィーンらくはハウアーとたもとかった。

じゅうおと技法ぎほう以外いがいにおける半音はんおんかい均等きんとう使用しようれい

歴史れきしてきには、バッハの「音楽おんがくささげもの」のだい1きょく平均へいきんりつクラヴィーアきょくしゅうだいいちかんのロ短調たんちょうじゅうおとすべてを使つかったれいげられる。また、モーツァルト交響こうきょうきょくだい40ばんおわり楽章がくしょうじゅうおとちかいメロディーを提示ていじしているのが有名ゆうめいであるほか、『ドン・ジョヴァンニ』にも同様どうようじゅうおとふうのフレーズがあらわれ、これを20世紀せいき後半こうはんになってダリウス・ミヨー指摘してきしている。リストは『ファウスト交響曲こうきょうきょく』で、すべてをくそうとするファウストの欲求よっきゅうあらわすためにじゅうおとすべてを使つかった主題しゅだいもちいている。

ロマン後期こうきになると、マックス・レーガーリヒャルト・シュトラウス作品さくひんにもじゅうおとかぎりなくちか主題しゅだい散見さんけんされる。後者こうしゃ交響こうきょうツァラトゥストラはかくかたりき』の「科学かがくについて」のフガートでやはりじゅうおとすべてを使つかった主題しゅだいもちいている。マーラー未完みかん交響こうきょうきょくだい10ばんのうち唯一ゆいいつ完成かんせい楽章がくしょうであるアダージョでは、半音はんおんかいじゅうおとのうち11おとわされた複雑ふくざつ和音わおんが、その楽章がくしょうのクライマックスにおいてらされる。

20世紀せいきはいると、バルトーク中心ちゅうしんじくシステムによって半音はんおんかいじゅうおとすべてを均等きんとうてき使用しようすることを理論りろんてき確立かくりつさせた。調しらべせい音楽おんがく理論りろんじょうにおいて事実じじつじょう半音はんおんかい均等きんとういたったのはかれ功績こうせきといえる。

対位法たいいほうまったかかわりなくじゅうおと技法ぎほう達成たっせいしている作曲さっきょくは、戦前せんぜんではヨーゼフ・マティアス・ハウアーニコライ・オブーホフ英語えいごばんドイツばんげられる。

戦後せんご松平まつだいらよりゆきのりダッラピッコラ、ゲディーニ、ブラッドペトラッシストラヴィンスキースティーヴンスルトスワフスキなどが、自由じゆうじゅうおともちいる作曲さっきょくほう個別こべつ展開てんかいしている。

ロマン・ブラッドなどの作曲さっきょくは、クラシックの作曲さっきょくじゅうおとちかいフレーズを偶然ぐうぜん発見はっけんしてしまうことをテーマに作品さくひんいている。

ショスタコーヴィチの『交響こうきょうきょくだい15ばん』『弦楽げんがくよん重奏じゅうそうきょくだい15ばん』、オネゲルの『交響こうきょうきょくだい5ばん』、デュティユーの『メタボール』だい3楽章がくしょうには、部分ぶぶんてきじゅうおといちずつもちいるメロディが主題しゅだいとしてもちいられている。これらはしんウィーンらくじゅうおと技法ぎほうとはことなる使つかかたであるが、戦後せんご調音ちょうおんらくじゅうおと技法ぎほう浸透しんとうし、いままで距離きょりいてきた作曲さっきょくたちが実験じっけんてきもちいるようになったいちれいえる。

そうおとれつ技法ぎほう

じゅうおと技法ぎほうではおとだか数列すうれつなし「おとれつ」を形成けいせいしたが、これをおとだかのみならずおとおとながさ)や音量おんりょう強度きょうど)あるいは音色ねいろにも応用おうようし、音楽おんがくにおけるすべての要素ようそ数列すうれつすることにより、最初さいしょ数列すうれつ数式すうしきめたのち計算けいさんによって自動的じどうてき音楽おんがく作品さくひん生成せいせいする作曲さっきょくほうそうおとれつ技法ぎほうフランス語ふらんすごセリー・アンテグラルう。オリヴィエ・メシアンの「おと強度きょうどのモード」によってその可能かのうせい示唆しさされ、メシアンの生徒せいとであるピエール・ブーレーズの「構造こうぞうだい1ばんおよびだい2ばんによって完全かんぜん実現じつげんされた。日本にっぽんでは松平まつだいらよりゆきあかつきよりゆきそく息子むすこ)の「ピアノ、ヴァイオリン、チェロのための変奏曲へんそうきょく」がこの技法ぎほうにより作曲さっきょくされている。

  • パラメーターの技法ぎほう
  1. おとだかソナタ形式けいしき主題しゅだいにあたるじゅうおとれつ作成さくせいする。調しらべせいかんじさせてはいけないのでとなり同士どうし音程おんていトリトヌスぞう4げん5)や半音はんおん音程おんていたんちょうなな)をおもならべられる。さんなど調しらべせいかんじさせるもの原則げんそく禁止きんしされる。それぞれのおとは1かいしか使つかえない。実際じっさいきょく使用しようする場合ばあい調しらべせいかんじさせないようにすべて跳躍ちょうやく進行しんこうにする。シェーンベルクのじゅうおと技法ぎほうしゅとしてここまででわっている。
  2. おとちょうセリエル音楽おんがく場合ばあいは1から12までそれぞれちがったおとながさのちが音符おんぷ用意よういする。ウェーベルン時代じだいトータル・セリエリズムにはなっていないが、できるだけかえしのすくない、図形ずけいてきリズムやコントラスト・リズムでおとながさの秩序ちつじょはかる(参照さんしょう:ウェーベルン作曲さっきょくの「協奏曲きょうそうきょく作品さくひん24)。
  3. 強弱きょうじゃく原則げんそくとしてかえしをける。セリエル音楽おんがく場合ばあいは1から12までそれぞれちがったおと強弱きょうじゃく準備じゅんびする。たとえば(pppp, ppp, pp, p, mp, mf, f, sf, ff, ffz, fff, ffff)とうである。ウェーベルン時代じだい強弱きょうじゃくかえしは極力きょくりょくけるがディミヌエンドクレッシェンドなどの大雑把おおざっぱ強弱きょうじゃくほうがまだおおい。
  4. 音色ねいろ:その都度つど楽器がっき頻繁ひんぱんえる。1かい使つかった楽器がっき原則げんそく1つのおとれつわりまで使つかえない。セリエル音楽おんがく場合ばあいは1から12までそれぞれちがった楽器がっき準備じゅんびするのが理想りそうてきである。
  5. 方向ほうこう:シュトックハウゼンによってくわてき提唱ていしょうされた。かれのたくさんのスピーカー使つかった電子でんし音楽おんがくなどにことができる。

じゅうおとれつ旋律せんりつではないので、普通ふつうおと1つ1つが独立どくりつする音響おんきょう作曲さっきょくほうのさきがけをなす。伴奏ばんそう部分ぶぶんじゅうおとれつによって初期しょきには作曲さっきょくされたが、「メロディー伴奏ばんそうとのわせ」とかえしをけるため次第しだいすたれ、わって対位法たいいほうてき技法ぎほう構成こうせいほう逆行ぎゃっこうはんくだりはん逆行ぎゃっこう)がおおもちいられた。ウェーベルンではおとれつつぎおとれつのつなぎに「かがみ/Spiegel/Ambivalenz」とばれる共有きょうゆうおん接続せつぞくされる。さらコントラバスチェロオクターヴ音程おんてい奏法そうほうオスティナートなどは古今ここんながらく使つかわれてきたので、和声わせいがくにおける平行へいこうひとしおなじく「かえし」として意図いとてききびしくけられる。

自動じどう作曲さっきょく

じゅうおと技法ぎほうそうおとれつ技法ぎほうは、数式すうしきさえめればある程度ていど楽譜がくふ自動じどう生成せいせい可能かのうなため、ふるくは計算尺けいさんじゃくなど、現在げんざいではコンピュータもちいて自動じどう作曲さっきょく作曲さっきょく補助ほじょ)がおこなわれる。最終さいしゅうてき調整ちょうせいひとはいるとしても、途中とちゅう計算けいさん過程かてい自動じどうさせることによって、作曲さっきょく労力ろうりょく軽減けいげんさせる目的もくてきもちいられる。たとえば前述ぜんじゅつの「おとれつ変形へんけい方法ほうほう」にげられたはんくだり逆行ぎゃっこうなどは、簡単かんたん計算けいさん方法ほうほうによって数学すうがくてきもとめること可能かのうである。現在げんざい代表だいひょうてき自動じどう作曲さっきょくソフトウェアとして、フランス国立こくりつ音響おんきょう音楽おんがく研究所けんきゅうじょIRCAM開発かいはつしたOpenMusicげられる。このソフトウェアの説明せつめいしょ付属ふぞくするチュートリアルの初歩しょほ段階だんかいに、じゅうおと技法ぎほうおとれつ各種かくしゅ自動じどう生成せいせいする練習れんしゅう課題かだいがある[1]

日本にっぽんではOnpTank制作せいさくやぎぱくひとしのソフトウェアがあるが、自動じどう作曲さっきょく欠点けってんはあくまでも機械きかい作曲さっきょくするためにおおきな意味いみでの『かえし』がしょうずることで、じゅうおと技法ぎほう本来ほんらい意図いとからははずれてしまう。

ただし自動じどう作曲さっきょくそのものは、じゅうおと技法ぎほうそうおとれつ技法ぎほうだけにとどまらず、様々さまざま様式ようしき作曲さっきょく手段しゅだんとしてもちいられる。


影響えいきょう

現在げんざいこの作曲さっきょくほうそのものは、セリエル音楽おんがくふくめて和声わせい課題かだい実施じっし学習がくしゅうフーガおなじく、過去かこ技法ぎほうなされ実際じっさい音楽おんがく使つかひとはもはやほとんどられないが、とくに「前衛ぜんえい音楽おんがく」とばれていた時代じだいにはじゅうおと音楽おんがく賛同さんどうするひと反対はんたいするひとも、現代げんだい音楽おんがく議論ぎろんにおいてはかならず“この作曲さっきょくほうからて”と議論ぎろんされかれるほどの多大ただい影響えいきょうりょくをもっていた語法ごほうであった。これに匹敵ひってきする現代げんだい音楽おんがく技法ぎほうとしては「電子でんし音楽おんがく実習じっしゅう」であるとオリヴィエ・メシアンなどの偉大いだい教育きょういくしゃくちをそろえて指摘してきしていた。

問題もんだいてん

じゅうおと技法ぎほうたしかによこのラインには整合せいごうせいれているものの、たてのラインにかんしては、調しらべせいつ「終止しゅうしシステム」にたいしてあまりに貧弱ひんじゃくだった[注釈ちゅうしゃく 1]

ブーレーズはこの問題もんだいたいし、セリーから(特定とくていひびき、進行しんこう制御せいぎょするための)「ブロック・ソノール」を生成せいせいおとれつ技法ぎほう限界げんかいえようとした。

さら練習れんしゅう膨大ぼうだい時間じかんついやす演奏えんそうだけではなくて、一般いっぱんつねにメロディーとリズムをもとめる聴衆ちょうしゅうにとっては鑑賞かんしょう非常ひじょうむずかしく、またきょく全体ぜんたいおなおん音符おんぷによって均等きんとうめられているのできょくによるちがいをつけにくい、みんなおな音楽おんがくようこえる難点なんてんがダルムシュタットなどでむかしから指摘してきされている。

現在げんざい欧米おうべいでは和声わせい対位法たいいほう電子でんし音楽おんがく実習じっしゅうよう音楽おんがく学生がくせい現代げんだい音楽おんがくのための歴史れきしてき教育きょういくよう自習じしゅう教材きょうざいとしてのみれられていて、実際じっさい創作そうさく行為こういいてはじゅうおと技法ぎほうそのものはあまもちいられていないのが実態じったいである。

日本にっぽんじゅうおと音楽おんがく享受きょうじゅ

日本にっぽんにおける第一人者だいいちにんしゃ入野いりの義朗よしろうわれる。その柴田しばたみなみつよし戸田とだ邦雄くにおらもおこなったが、芸大げいだいけいよりも東大とうだい出身しゅっしんしゃおおく、日本にっぽんではいまむかしもごく少数しょうすうとされ、音楽おんがく以外いがい日本にっぽん音楽おんがく大学だいがくとう実習じっしゅうふくめてくわしくおしえられることはあまりなく、松平まつだいらよりゆきあかつき登場とうじょうするまで結果けっかてきセリエル音楽おんがく語法ごほうまでをきちんと発展はってん享受きょうじゅできないまますたれてしまった。しかしまゆずみ敏郎としおによると、橋本はしもと國彦くにひこ戦中せんちゅうじゅうおと技法ぎほう試作しさくひそかにっていた。またしんきよし弟子でし諸井もろいまこと膨大ぼうだいなシェーンベルクの楽譜がくふを「風呂敷ふろしきつつんであたえ、諸井もろいはそれをかえって勉強べんきょうした」という[6]

じゅうおと技法ぎほうもちいたおも作曲さっきょく作品さくひん

戦前せんぜん

戦後せんご

日本にっぽん

脚注きゃくちゅう

注釈ちゅうしゃく

  1. ^ シェーンベルク自身じしんもある程度ていど整合せいごうせいろうとこころみてはいたものの、12おとちゅう7おとでメロディーを生成せいせいし、のこりをたてかさねる…とうたてのラインはかなり感覚かんかくてきでアバウトなものとえる。

出典しゅってん

  1. ^ 木石ぼくせきら 2018, p. 16.
  2. ^ a b シェーンベルク 2019, p. 168-170.
  3. ^ 沼野ぬまの 2021, p. 5.
  4. ^ シェーンベルク 2019, p. 173-174.
  5. ^ ボッスール 2015, p. 44.
  6. ^ 日本にっぽん作曲さっきょく20世紀せいき音楽之友社おんがくのともしゃ、199p

参考さんこう文献ぶんけん