トータル・セリエリズム

トータル・セリエリズム（Total serialism）は、音おと高だかだけでなく、音おと価か・強弱きょうじゃく・アタック・音色ねいろなども厳格げんかくに音おと列れつ技法ぎほうによって統治とうちする作曲さっきょく法ほうである。日本語にほんごで「総そう音おと列れつ技法ぎほう」、「総そう音おと列れつ音楽おんがく」とも言いう。

歴史れきし

トータル・セリエリズムは、ヘンリー・カウエルなど何人なんにんかの作曲さっきょく家かが予言よげんしていた手法しゅほうであったが、ルネ・レイボヴィッツが十じゅう二に音おと技法ぎほうの音おと高だか操作そうさの欠陥けっかんを指摘してきしてから、飛躍ひやく的てきにトータル・セリエリズムへの期待きたいが高たかまった。

そして、オリヴィエ・メシアンが「4つのリズムのエチュード」の第だい2曲きょく「音おと価かと強度きょうどのモード」(1949年ねん)でその可能かのう性せいを編あみ出だしたが、「ピアノソロのためにかかれたので音おと価か操作そうさに難なんがある」、「各かくパラメーターの操作そうさがセリー（音おと列れつ）ではなくモード（旋法せんぽう）」であったため、充分じゅうぶんな結果けっかとは言いいづらいものがあった。

メシアンのその作品さくひんを知しらなかったにもかかわらず、カレル・フイヴェールツは、この結果けっかをさらに理論りろん的てきにしたと考かんがえられる「二に台だいピアノの為ためのソナタ」(1951年ねん)で完璧かんぺきなものにし、発明はつめい後ご程ほどなくピエール・ブーレーズ、カールハインツ・シュトックハウゼン、アンリ・プッスールなどダルムシュタット夏季かき現代げんだい音楽おんがく講習こうしゅう会かいに集つどう面々めんめんがこの技法ぎほうを徹底てっていさせていった。松平まつだいら頼よりゆき暁あかつきやクリストバル・アルフテルはこの手法しゅほうを初期しょきの作品さくひんに用もちいている。

手法しゅほう

典型てんけい例れいはピエール・ブーレーズの「構造こうぞう I」(1952年ねん)にみられる。

トータル・セリエリズムの手法しゅほうは十じゅう二に音おと技法ぎほうの延長えんちょうとして考かんがえられた。音おと価かや強弱きょうじゃく、さらにアタックにも音おと列れつ的てき操作そうさが施ほどこされる。「構造こうぞう I」では音おと価かは、三さん十じゅう二に分ふん音符おんぷを1として十じゅう六ろく分ふん音符おんぷを2、付づけ点てん十じゅう六ろく分ふん音符おんぷを3、八はち分ふん音符おんぷを4…とする。付づけ点てん四よん分ふん音符おんぷが12である。強弱きょうじゃくも同おなじく、ppppを1、pppを2、ppは3、pは4、"quasi p"を5、mpを6、mfを7、"quasi f"を8とし、ffffが12となる。アタックは4と10を無印むじるしとし、>が1、アクセント・スタッカートが2、スタッカートが3、"normal"が5、が6、マルテッラートが7…そしては11、は12となっている。

欠陥けっかん

まず問題もんだいとされたのは、「人間にんげんが聴きくことのできる情報処理じょうほうしょり能力のうりょくには限かぎりがあるではないか」ということであった。実際じっさい初期しょきのトータルセリエリズム楽曲がっきょくの演奏えんそうは甚はなはだ誤あやまりが多おおく、しかもそれを聴きく聴衆ちょうしゅうの耳みみも誤あやまりだらけであったために、問題もんだいは深刻しんこく化かした。この問題もんだいはテクノロジーの発展はってんとよい演奏えんそう家かに恵めぐまれて沈静ちんせい化かしたが、1990年代ねんだいに入はいって批判ひはん的てきに1950年代ねんだいが分析ぶんせきできるのを待またなければならなかった。

もう一ひとつの欠陥けっかんは「音響おんきょうパターンの一様いちよう化か」であった。このことにはすぐに多おおくの作曲さっきょく家かが気きづき、後のちにはトータル・セリエリズムを超こえたポスト・セリエルについての議論ぎろんが加速かそく化かする。

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• 現代げんだい音楽おんがく