ジュリアン・オフレ・ド・ラ・メトリー

ジュリアン・オフレ・ド・ラ・メトリー

ジュリアン・オフレ・ド・ラ・メトリー（Julien Offray de La Mettrie, 1709年ねん12月19日にち-1751年ねん11月11日にち）は、フランスの哲学てつがく者しゃ、医師いし。啓蒙けいもう期きフランスの代表だいひょう的てきな唯物ゆいぶつ論ろん者しゃである。

略歴りゃくれき

ブルターニュ沿岸えんがんのサン・マロに生うまれた。生家せいかは富裕ふゆうな絹きぬ商人しょうにんであり、家業かぎょうを継つぎがされるはずが利発りはつなところからコレージュ・ド・クーサンスに入学にゅうがくさせた。まもなくカーンのヤンセン派はの学校がっこうで修辞しゅうじ学がくの課程かていを学まなび、1725年ねんコレージュ・ダルクールで哲学てつがく年とし級きゅうの課程かていを修おさめている。同郷どうきょう人じんの医師いしユノー（Hunauld）の成功せいこうに刺激しげきされて神学しんがくの道みちを捨すてて医学いがくを学まなぶために1733年ねんにライデン大学だいがくに赴おもむき、ブールハーフェの弟子でしとなる。1734年ねんからサン・マロで医師いし開業かいぎょうの登録とうろくを受うけながら、ライデン大学だいがくでなおもブールハーヴェの講義こうぎを聴ききに行いっている。1735年ねんにブールハーフェの『花柳病かりゅうびょう論ろん』の翻訳ほんやくに注釈ちゅうしゃくをしてパリで出版しゅっぱんをしているが、これがラ・メトリの最初さいしょの著作ちょさくである。翌年よくねんパリ医科いか大学だいがくの医学いがく者しゃアストリュック（Jean Astruc）に批判ひはんされ、1747年ねんまで続つづいたパリの医師いしすべてをやり玉だまに挙あげた論戦ろんせんを展開てんかいする。

1739年ねん、マリー・ルイズ・ドロノーという寡婦かふと結婚けっこんしている。1742年ねんにパリに出でて同郷どうきょうの医師いしによる推薦すいせんで、グラモン公こうの指揮しきするフランス近衛このえ連隊れんたいの軍医ぐんいとなり、オーストリア継承けいしょう戦争せんそうに参加さんかしてフランドルの戦役せんえきに従軍じゅうぐんする。1744年ねんのフリブール攻囲こうい戦せんで熱病ねつびょうにかかり、多おおくの傷病しょうびょう兵へいを看取みとった体験たいけんとともにラ・メトリの思想しそうの転機てんきとなった。1745年ねんに発表はっぴょうした『霊魂れいこんの自然しぜん史し』にあらわれた思想しそうが連隊れんたい付つきの説教せっきょう師しにより無む信仰しんこうと攻撃こうげきされ、連隊れんたいを去さり、リール、ヘント、ブリュッセルなどの野戦やせん病院びょういんの監督かんとく医い官かんに任命にんめいされた。しかもパリ医科いか大学だいがくの無知むちと腐敗ふはいを攻撃こうげきした文書ぶんしょを出だし続つづけていたために、1746年ねん7月がつ9日にちに彼かれの著書ちょしょが広場ひろばで焼やかれ、職しょくを辞じしてガンから国境こっきょうを越こえてライデンに逃のがれ『人間にんげん機械きかい論ろん』を著あらわして、自身じしんの唯物ゆいぶつ論ろんを完成かんせいさせた。1748年ねんおそらくモーペルテュイの斡旋あっせんによりプロイセンに亡命ぼうめいして2月がつ8日にち、ポツダムに到着とうちゃくする。フリードリヒ2世せいの侍読じどくとして仕つかえる。駐ちゅう独どくフランス大使たいしの重病じゅうびょうを治なおし、その全快ぜんかい祝いわいの祝宴しゅくえんに招まねかれたあと病びょうにかかり、自みずから瀉血しゃけつ・温浴おんよくを試こころみたが数日すうじつ後ごに死亡しぼうした。

思想しそう

→「心身しんしん問題もんだいの哲学てつがく」も参照さんしょう

37歳さいの時ときに著あらわした『人間にんげん機械きかい論ろん』は、霊魂れいこんの存在そんざいを否定ひていし、デカルトの動物どうぶつ機械きかい説せつを人間にんげんにも適用てきようし機械きかい論ろん的てきな生命せいめい観かんを提唱ていしょうした。ラ・メトリーはその著作ちょさくで、足あしは歩あるく筋肉きんにくであり、脳髄のうずいは考かんがえる筋肉きんにくであるとした。100年ねん近ちかく前まえにデカルトが唱となえていた人間にんげんを精神せいしんと肉体にくたいとでできた機械きかい（デカルト的てき二元論にげんろん）とみる発想はっそうよりも「機械きかい論ろん」に徹てっしていた。

著作ちょさく

• 　『花柳病かりゅうびょう論ろん注釈ちゅうしゃく　Aphrodisiacus』1735年ねん
• 　『眩暈げんうん論ろん　Traité du vertige』1737年ねん
• 　『痘瘡とうそう論ろん　Traité de la petite vérole』1740年ねん
• 　『機知きちについてならびに才人さいじん気取きどりの人々ひとびとについて　Essai sur l'esprit et les beaux esprits』1740年ねん
• 　『ブールハーフェ氏しの著作ちょさくより抜粋ばっすいせる科学かがく理論りろんの要約ようやく　Abérég de la théorie chimique,tiré des propres écrits de M.Boerhaave』1740年ねん
• 　『仇かたき討うちをした外科げか医い　Saint-Côme vengé』1744年ねん
• 　『マキャヴェルリの医師いしの政策せいさく、医者いしゃに開ひらかれた出世しゅっせの道みち　Politique du médicin de Machiavel ou le chemin de la Fortune ouvert aux médicins』1745年ねん
• 　『仕返しかえしをした医科いか大学だいがく　La Faculte vengée,comédie en trois actes』1747年ねん
• 　『ペネロップの仕事しごと　L'Ouvrage de Pénélope』1747年ねん
• 　『人間にんげん機械きかい論ろん L'homme-machine』1747年ねん（杉すぎ捷夫かつお訳わけ、岩波書店いわなみしょてん、1932年ねん）
• 　『喘息ぜんそく論ろん　Un traité de l'Asthme』1748年ねん
• 　『改宗かいしゅうした外科げか医い　Le Chirurgien Converti』1748年ねん
• 　『人間にんげん植物しょくぶつ論ろん　L'Homme-Plante』1748年ねん
• 　『機械きかい以上いじょうの人間にんげん　L'Homme plus que Machine』1748年ねん
• 　『反はんセネカ論ろん、幸福こうふく論ろん　Anti-Sénèque ou discours sur le bonheur』1748年ねん
• 　『エピクロスの学説がくせつ　Système d'Epicure』1750年ねん
• 　『享楽きょうらく術じゅつ　L'Art de Jouir』1751年ねん　

伝記でんき

日本語にほんごに翻訳ほんやくされた文献ぶんけん

• ド・ラ・メトリ著ちょ、杉すぎ捷夫かつお訳わけ『人間にんげん機械きかい論ろん』岩波いわなみ文庫ぶんこ、1932年ねん

日本語にほんごに翻訳ほんやくされていない文献ぶんけん

• ピエール・ルメー（Pierre Lemée）, "Offray de la Mettrie", Saint-Malo, 1925
• レイモン・ボアシエ（Dr Raymond Boissier）, "La Mettrie, Médecin", Pamphlétaire et Philosophe, 1931

関連かんれん項目こうもく

• 唯物ゆいぶつ論ろん
• 観念論かんねんろん
• 動物どうぶつ機械きかい論ろん
• 機械きかい論ろん的てき唯物ゆいぶつ論ろん

外部がいぶリンク

• La Mettrie within «LSR - a paraphilosophical project» （ドイツ語ご、英語えいご）
  • A bibliography for 1985ff　（ドイツ語ご）
• "Man a Machine" - 1748 text （英語えいご）
• Frederic the Great's Eulogy on Julien Offray de la Mettrie　（英語えいご）