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ダウンフォース

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

ダウンフォース (down force) は、走行そうこうする自動車じどうしゃたいしてそらりょくによって発生はっせいする、まけ揚力ようりょく、つまり自動車じどうしゃ地面じめんさえつけられるきに発生はっせいするちからである。

ダウンフォースの必要ひつようせい

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現代げんだいレーシングカーでは、加減かげんそく機敏きびんにするために車体しゃたい重量じゅうりょうおさえつつ、タイヤのグリップりょく確保かくほするために、そらりょくによるタイヤ負荷ふか上昇じょうしょうすなわちダウンフォースをるように設計せっけいされている。

タイヤの摩擦まさつりょく単純たんじゅんあらわすと

摩擦まさつりょく=摩擦まさつ係数けいすう×垂直すいちょく抗力こうりょく(=タイヤを地面じめんけるちから

であるが、規則きそくによりタイヤの摩擦まさつ係数けいすうぜん車両しゃりょうでほぼ同一どういつであるため、グリップりょくたかめ、コーナリングパワー(CP)をかせぐには、タイヤを地面じめんけるちから増加ぞうかさせなければならない。しかし車体しゃたい全体ぜんたい質量しつりょう増加ぞうかさせてこれを実現じつげんした場合ばあいは、カーブ走行そうこうちゅう慣性かんせいりょく慣性かんせいモーメントおおきくなり不利ふりうえ加減かげんそくにぶくなるため、車体しゃたい重量じゅうりょう増加ぞうかさせずにタイヤを地面じめんつよける必要ひつようがあった。そこでウイングを装着そうちゃく空気くうきちから車体しゃたい下向したむきにける方法ほうほう考案こうあんされた。そらりょくでタイヤを地面じめんつよけても車体しゃたい質量しつりょうえたわけではないので、慣性かんせいおおきくならずくるま機敏きびんうごきをさまたげることはない。

ちょく線路せんろにおいても高速こうそく走行そうこうにはタイヤの路面ろめん追従ついしょうせい低下ていかこるが、適度てきどなダウンフォースでタイヤを地面じめんしつけることによりこれをふせぎ、操縦そうじゅう安定あんていせい悪化あっかやタイヤの空転くうてん最悪さいあく状況じょうきょうである「リフト」の発生はっせい抑制よくせいすることができる。

おおきなウイングなどでつよいダウンフォースをられれば旋回せんかい速度そくど限界げんかい上昇じょうしょうさせることができるが、同時どうじ誘導ゆうどう抗力こうりょく空気くうき抵抗ていこう)もすことになり直線ちょくせん走行そうこうさい高速度こうそくど高速こうそく走行そうこう加速かそく性能せいのう犠牲ぎせいになるため、そのバランスは重要じゅうようである。

ダウンフォース発生はっせい機構きこう

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くわしくは「エアロパーツ参照さんしょう

ウイング

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シャパラル2E

ダウンフォースの発生はっせい機構きこうとしてはまず、ウイング開発かいはつされた。いた水平すいへいから進行しんこう方向ほうこう下向したむきにかたむけて前進ぜんしんさせると、前方ぜんぽうからながれてくる空気くうき圧力あつりょくにより、下向したむきのモーメントが発生はっせいする。これを利用りようするために車体しゃたい前部ぜんぶ後部こうぶに2まいいた搭載とうさいしたくるま登場とうじょうする。

1960年代ねんだい軽量けいりょうなレーシングカーは急速きゅうそくたかまったエンジンパワーをいかに効率こうりつよく駆動くどうりょく変換へんかんするかが課題かだいとなっていた。1966ねんシャパラルこう駆動くどうアップライト(ばね)に支柱しちゅうった巨大きょだいなウイングを装着そうちゃくし、空気くうきりょくにより強力きょうりょくなダウンフォースをることで、トラクション不足ふそく解決かいけつこころみた。まもなくばねへのそらりょく付加ふかぶつ設置せっち競技きょうぎ規則きそく禁止きんしされたが、このこころみは現在げんざいではかたちえているものの、規則きそくゆるされるほぼすべてのカテゴリでもちいられている。

現代げんだいにおけるウイングは、よりすくない抵抗ていこうおおきいダウンフォースがられるようにするため、飛行機ひこうきつばさ上下じょうげぎゃくにしたような断面だんめんつばさがた)になっている。

過度かどにダウンフォースを発生はっせいさせると誘導ゆうどう抵抗ていこう増加ぞうかし、それにともな直線ちょくせんでのさい高速度こうそくど低下ていかする。したがって直線ちょくせんとコーナーでは必要ひつようとされるダウンフォースのおおきさがことなる。しかし、ほとんどのカテゴリのレースにおいて走行そうこうちゅうのウィング角度かくど変化へんかさせることはきんじられているため、レースサーキットの形状けいじょう直線ちょくせんとコーナーの割合わりあい)によるウィング角度かくどのセッティング決定けっていはチーム勝利しょうりのための重要じゅうよう要素ようそとなっている。(F1では、2009ねんよりドライバーが走行そうこうちゅうにフロントウィングの設定せってい変更へんこうできるようになり、2011ねんからは一定いってい区間くかんにおいてリアウィングの角度かくどらし空気くうき抵抗ていこう低減ていげんするDRS(ドラッグリダクションシステム)が登場とうじょうしている。)

ウイングカー

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ウイングカーのロータス78 サイドパネルをはずすとサイドポンツーンはつばさ断面だんめん形状けいじょうになっている
ポルシェ・962CグループCでは部分ぶぶんてきにはフラットボトムであるが、事実じじつじょうグラウンド・エフェクト・カーが認可にんかされていた

グラウンド・エフェクト・カー (ground effect car) とぶこともある。

飛行機ひこうきそらぶためにっているつばさは、前方ぜんぽうから空気くうきながれてくると上面うわつらながれる空気くうき速度そくどが、下面かめんながれる空気くうき速度そくどよりもはやくなるようになっている。ベルヌーイの定理ていりにより、上面うわつらながれる空気くうき下面かめんながれる空気くうきよりも圧力あつりょくちいさくなり、これが飛行機ひこうきちゅうげるエネルギー揚力ようりょく)となっている。

これに着目ちゃくもくしたF1チーム・ロータスコーリン・チャップマンは、ダウンフォースの発生はっせいげんをウイングだけにたよるのではなく、F1車両しゃりょうまえからうしろへった断面だんめんを、このつばさ上下じょうげぎゃくにしたものとおなじようにすれば効率こうりつてきにダウンフォースをられることにいた。F1車両しゃりょうはばは2メートルにもたなかったが、サイドスカートばれる、外気がいき車体しゃたい下面かめんながむのをふせかべつくることで、ダウンフォースをるに十分じゅうぶん車体しゃたい下面かめん空気くうき流速りゅうそく確保かくほすることができた。これをグラウンド・エフェクトぶ。そのアイディアは1977ねんロータス78実現じつげんされた。

初期しょきのサイドスカートはブラシじょうのものであったが、すぐにサイドスカートはベニヤ板べにやいたになりローラーないしスプリング地面じめんけられ、効果こうかてき車体しゃたい下部かぶ空気くうきめた。1981ねんにローラー可動かどうスカートは禁止きんしされたが、なんべつ方法ほうほうでサイドスカートはけられた。

このウイングカーは車体しゃたい下部かぶ曲面きょくめん構成こうせいされており、車体しゃたい中央ちゅうおうがもっとも地面じめんちかく、車体しゃたい後部こうぶ下面かめんはせりあがっており、サイドスカートでじられた空間くうかんベンチュリーじょうになっていた。ベルヌーイの定理ていりにより、流速りゅうそくおおきくなる車体しゃたい下部かぶでは空気圧くうきあつおおきくがり、下向したむきの揚力ようりょく発生はっせいし、これがダウンフォースとなった。上面うわつら平面へいめん部分ぶぶんおおきく空気くうき抵抗ていこう低減ていげんし、ラジエター空気くうきはいりやすくなっている。

ウイングカーは、おかじょう地形ちけい走行そうこうするときなどにボディ下面かめん一気いっき空気くうきはいむと、がってしまう。これによる事故じこきたことから、1983ねんにはF1でフラットボトム規定きてい適用てきようされ、車体しゃたい下部かぶだい部分ぶぶん地面じめん平行へいこう平面へいめん構成こうせいされなければならなくなった。F1におけるウイングカー自体じたいはこれで消滅しょうめつしたが、平面へいめん構成こうせいされなければならないのは前後ぜんごあいだだけであったため、これ以後いご各車かくしゃともじくよりうしろはせりあがり形状けいじょう形成けいせいしている。これをディフューザー (diffuser/拡散かくさん) とぶ。ディフューザーは、車体しゃたい底面ていめん路面ろめんとのあいだ加速かそく圧力あつりょくがった空気くうきを、スムーズに拡散かくさん大気たいきあつへともどすための装置そうちである。ディフューザーの容積ようせきおおきいほど大量たいりょう高速こうそく気流きりゅう車体しゃたい底面ていめんながすことができるため、ダウンフォースの獲得かくとくにはもっと重要じゅうようなエリアである。ディフューザーの効果こうか顕著けんちょあらわれたれいとして、2009ねんのF1がげられる。だい容量ようりょうのディフューザーをそなえたブラウンGPBGP001開幕かいまくから勝利しょうりかさね、ドライバー・コンストラクターのダブルタイトルを獲得かくとくする一因いちいんとなった。

2022ねんからのF1ではグラウンド・エフェクトが解禁かいきんされたが、長年ながねん使つかわれずノウハウ不足ふそくであったこともあり、「ポーポイズ現象げんしょう」とばれるはげしい上下じょうげ運動うんどうでドライバーの健康けんこう問題もんだい発展はってんするチームもいた。

ファンカー

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ブラバムBT46Bファンカー

ファンカーとして最初さいしょのものは、二人ふたりりレーシングカーカテゴリのCan-AMで、シャパラル2シリーズの車体しゃたいファンとファン駆動くどうようエンジンをけたシャパラル2Jが1970ねん登場とうじょうした。車体しゃたい下部かぶ空気くうき強制きょうせいてきげて、車体しゃたい下部かぶ空気圧くうきあつげることで車体しゃたい強力きょうりょくなダウンフォースをあたえた。

F1では1977ねんにはおおくのチームが前述ぜんじゅつのウイングカー構造こうぞう追随ついずいしていたが、使用しようしていたエンジンの形状けいじょうのチームとちがい、ウイングカー形状けいじょう車体しゃたい下部かぶ形成けいせいすることのむずかしかったF1ブラバムチームのゴードン・マレーは、ベルヌーイの定理ていりによるウイングカー放棄ほうきし、シャパラル2Jのように車体しゃたい後部こうぶ巨大きょだい排気はいきファンをけ、車体しゃたい下部かぶ空気くうき直接ちょくせつBT46B開発かいはつした。しゃおなじようなサイドスカートを装備そうびしており、ウイングカーとはちが車体しゃたい下部かぶ空気くうきをファンですことでダウンフォースを発生はっせいさせた。

BT46Bはデビューした1978ねんスウェーデンGP圧勝あっしょうしたが、ルールの厳密げんみつ明文化めいぶんかにより1せんのみの出走しゅっそう出走しゅっそう禁止きんしとなった。くわしくはファン・カー参照さんしょう

これらの機構きこうは、空気くうきながれによって発生はっせいするダウンフォースのおおきさが車体しゃたい速度そくど左右さゆうされるウイングカー構造こうぞうちがい、自由じゆう車体しゃたい下部かぶ圧力あつりょく調節ちょうせつできたためにちゅう低速ていそく圧倒的あっとうてき有利ゆうりだった。

サイドポンツーン

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フェラーリ641/2

1960年代ねんだい後半こうはんになると、F1などモータースポーツではタイヤの扁平へんぺいすすみ、前方ぜんぽう投影とうえい面積めんせき増加ぞうかにより高速こうそく走行そうこう発生はっせいするタイヤの空気くうき抵抗ていこうおおきくなってきた。そのために、フロントウィングで前輪ぜんりんけるように気流きりゅう調節ちょうせつしたり、フロントウィング自体じたいをラジエータとすることとう克服こくふくしていたが、1970ねん前半ぜんはんにはこう前方ぜんぽうラジエータあるいは吸気きゅうきこう設置せっちすることがトレンドとなった。1972ねん安全あんぜん性能せいのう向上こうじょう観点かんてんから燃料ねんりょうタンクを保護ほごする衝撃しょうげき吸収きゅうしゅう構造こうぞうがレギュレーションにより義務付ぎむづけられたことからはじまる。運転うんてんせきサイドおよ後方こうほうにある燃料ねんりょうタンクを保護ほごするためには、その両側りょうがわ衝撃しょうげき吸収きゅうしゅう構造こうぞうもうける必要ひつようがあった。初期しょきには発泡はっぽうざいとうけることにより燃料ねんりょうタンクの保護ほごとしていたが、発泡はっぽうざいわってラジエータやそのダクトを衝撃しょうげき吸収きゅうしゅう構造こうぞうとしたものがサイドポンツーンのはしりである。

1970年代ねんだい後半こうはんになると、このサイドラジエータは前述ぜんじゅつのウィングカー構造こうぞう構成こうせい部品ぶひんとなり、主要しゅようなダウンフォース発生はっせい装置そうちひとつとなる。おおきさも巨大きょだいになり、前輪ぜんりんこうあいだ空間くうかんすべてカバーするまでにいたる。

しかし1983ねんにはウィングカー構造こうぞう禁止きんしされたため、サイドラジエータは極端きょくたんちいさいものが流行りゅうこうになった。1983ねん初頭しょとうには極端きょくたんにサイドラジエータをちいさくしエンジンに密着みっちゃくさせ、1970ねんごろのようなスリムな車体しゃたいティレル012-FordやブラバムBT52-BMWなどが登場とうじょうする。しかしこのころ流行りゅうこうしていたきゅうエンジンのおおきな発熱はつねつ処理しょりするため、このちいさいサイドラジエータは主流しゅりゅうにはならなかった。

1984ねんになると、サイドラジエータを再度さいどダウンフォース発生はっせい装置そうちとして利用りようしようとするエンジニアがあらわれ、また大型おおがたすすめられることになる。この構造こうぞうは、サイドラジエータを前後ぜんごなかあいだほどまでまえ移動いどうさせ、そのはしこうあいだ空間くうかんつくる。この空間くうかんには、前述ぜんじゅつのフラットボトム規定きていにより平面へいめんになった車体しゃたい底面ていめん延長えんちょうじょうたいらないた設置せっちした。前方ぜんぽうからながれてきてサイドラジエータによってしのけられた空気くうきが、サイドラジエータとこうあいだにある空間くうかんながむと、このいたげてダウンフォースを発生はっせいさせる。また、このいた底面ていめん気流きりゅうととの乱気流らんきりゅうてないようにするという効果こうかもあった。

この構造こうぞうはサイドポンツーンとして定着ていちゃくし、1990年代ねんだい後半こうはんまで継続けいぞくてきに、そして補助ほじょてきもちいられた。サイドポンツーンによるダウンフォースの発生はっせいはわずかなものであるが、ラジエータをまえしたことでくるまじゅう前後ぜんごバランスが向上こうじょうし、運動うんどう性能せいのう向上こうじょう恩恵おんけいあたえたこと、コクピット衝撃しょうげきからまもたすけになったというのがその理由りゆうである。

(名前なまえ由来ゆらいポンツーン参照さんしょう)

関連かんれん項目こうもく

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