ブラウン・BGP001

ブラウン BGP001

バルセロナテストでのBGP001
カテゴリー	F1
コンストラクター	ブラウンGP
デザイナー	ロイック・ビゴワ
主要しゅよう諸しょ元もと
主要しゅよう成績せいせき
チーム	ブラウンGP
ドライバー	ジェンソン・バトン ルーベンス・バリチェロ
出走しゅっそう時期じき	2009年ねん
通算つうさん獲得かくとくポイント	172
初戦しょせん	2009年ねんオーストラリアGP
初はつ勝利しょうり	2009年ねんオーストラリアGP
最終さいしゅう戦せん	2009年ねんアブダビGP
出走しゅっそう 優勝ゆうしょう 表彰台ひょうしょうだい ポール Fラップ 17 8 14 5 4

ブラウン・BGP001は、ブラウンGPが2009年ねんのF1世界せかい選手権せんしゅけん参戦さんせん用ように開発かいはつしたフォーミュラ1カーで、ロス・ブラウンとヨルグ・ザンダー（テクニカルディレクター）、ロイック・ビゴワ（チーフエアロダイナミシスト）が設計せっけいした。2009年ねんの開幕かいまく戦せんから実戦じっせん投入とうにゅうされた。

BGP001

エンジン

当初とうしょ、ホンダF1の2009年版ねんばんのマシン「RA109」として実戦じっせんに投入とうにゅうする予定よていだった。しかし、2008年ねんシーズン終了しゅうりょう後ごのホンダの撤退てったいを受うけ、違ちがうメーカーのエンジンを搭載とうさいできるように改造かいぞうが施ほどこされた。フェラーリとメルセデス・ベンツに接触せっしょくし、エンジン供給きょうきゅうの打診だしんを行おこなったが、シャーシ改造かいぞうが小規模しょうきぼで済すむことや、メルセデス側がわがエンジン供給きょうきゅうに積極せっきょく的てきだったため、メルセデスエンジンの供給きょうきゅうを受うけることとなった。

想定そうてい外がいのエンジン変更へんこうにもかかわらず、メルセデスエンジンのパワーやドライバビリティに対たいする評価ひょうかは高たかく、チームのエンジニアが「ホンダエンジンに比くらべて70馬力ばりきは上うえ」と語かたったとされている。

2009年ねんから搭載とうさいすることが可能かのうであり、ホンダも開発かいはつしていたKERSは、限かぎられた予算よさんや時間じかんのこともあり、搭載とうさいの予定よていはなかった。エンジンサプライヤーであるメルセデス・ベンツからKERSの提供ていきょうを受うけることが可能かのうになったが、KERSの重量じゅうりょうによるマシンバランスなどの諸しょ問題もんだいがあり、結局けっきょくは搭載とうさいを見送みおくった。

エアロダイナミクス

ピットで準備じゅんび作業さぎょう中ちゅうのBGP001

ダブルディフューザー

エアロダイナミクスは2009年ねんのレギュレーション変更へんこうに対応たいおうしており、外観がいかんはシンプルにまとめられている。ノーズ先端せんたん部ぶは比較的ひかくてき低ひくい位置いちまで垂たれ下さがっている。

フロントウイングは通常つうじょうフラップ部分ぶぶんが稼動かどうするものが多おおいのだが、BGP001はフラップの内側うちがわにある三角形さんかっけい部分ぶぶんが可動かどうするようになっている。しかし、第だい7戦せんトルコGPで、可動かどう部分ぶぶんがフラップ1枚まい分ぶんにまで拡大かくだいされた仕様しようが投入とうにゅうされた。これにより、ドライバー操作そうさに対たいして明確めいかくなダウンフォースの増減ぞうげんが現あらわれるようになっている。

サイドミラーのステーは整流せいりゅうフィンの形状けいじょうになっており、規則きそくで厳きびしく制限せいげんされている整流せいりゅうフィンの役割やくわりを担になわせている。また、サイドポンツーンの前方ぜんぽうにバージボード風ふうの整流せいりゅうフィンが装備そうびされている。

通常つうじょう、フロントサスペンションアッパーアームと同おなじ高たかさもしくはロアアームとアッパーアームの間あいだに装着そうちゃくされることが多おおいステアリングタイロッドは、このBGP001ではロアアームと同おなじ高たかさに装着そうちゃくされている。この構造こうぞうは他たのチームの2009年ねんマシンには存在そんざいしない。

インダクションポッドは他たチームよりも大型おおがたなものが採用さいようされた。サイドには整流せいりゅうフィンが装着そうちゃくされている。

リヤディフューザーはダブルディフューザーと呼よばれる2段式だんしきのものを搭載とうさいしている。これがテクニカルレギュレーションに適合てきごうしていないのではないかと他たチームから抗議こうぎを受うけたが、FIAによって4月がつ15日にちに合法ごうほうであるとの判定はんていを受うけた。この開発かいはつは前年ぜんねん撤退てったいしたスーパーアグリの空そら力りょく設計せっけい者しゃらや、撤退てったい前まえのホンダの日本人にっぽんじんエンジニアが考案こうあんしたものといわれ、ロス・ブラウン自身じしんも当時とうじを振ふり返かえりながら認みとめている。

マシンカラーリング

カラーリングは、白しろを基調きちょうとしたもので、ノーズにチームのカラーである黒くろと蛍光けいこうイエローのラインがある。スポンサーロゴは非常ひじょうに少すくなかった。開幕かいまく戦せんではヴァージン・グループとヘンリ・ロイドのロゴしかなかったが、グランプリを経へるごとに若干じゃっかん増ふえた。第だい3戦せん中国ちゅうごくGPでは、サングラスメーカーのレイバンとのパートナー契約けいやくとスイスの外国がいこく為替かわせブローカーのMIGインベストメンツとの3年ねん契約けいやくを発表はっぴょう。第だい5戦せんスペインGP前まえに、ブレーキフルードを提供ていきょうするエンドレスと、シートベルト（シートハーネス）を提供ていきょうするウィランズとの提携ていけいを発表はっぴょうした。また、スポットスポンサーとして、リヤウイング翼つばさ端はし板ばんにターミネーター4(TERMINATOR SALVATION) のロゴが掲かかげられた。第だい14戦せんシンガポールGPでは、カメラメーカーとして有名ゆうめいなキヤノン（正確せいかくには、キヤノン・シンガポール）のスポットスポンサーを得えた。

なお、レイバンとエンドレスは、前身ぜんしんのホンダ時代じだいからの関係かんけいである。

タイトルスポンサーは終始しゅうし不在ふざいであった。CEOのニック・フライは、タイトルスポンサーの獲得かくとくは急いそがないとの考かんがえを示しめしており。いくつかの大だい企業きぎょうからスポンサーの申もうし出でがあることも明あきらかにしていたが、チームの財政ざいせいが厳きびしい状況じょうきょうに置おかれている事こともマシンカラーリングから判断はんだんできた。

(左ひだり：1) 開幕かいまく戦前せんぜんのBGP001。まだスポンサーロゴが1つもなく、リアウイング翼つばさ端はし板ばんにタイヤサプライヤであるブリヂストンのロゴが見みえるのみ。
(左ひだり：2) 開幕かいまく戦前せんぜんのBGP001のノーズ部分ぶぶん。同おなじくブリヂストンのロゴだけ見みえる。
(真まん中なか) ブラウンGP・BGP001の基本きほんカラーリング。白しろを基調きちょうに蛍光けいこうイエローと黒くろのラインが入はいっている。
(右みぎ：1) 第だい5戦せんスペインGPでのBGP001。ヴァージン（ノーズ側面そくめん）、ヘンリ・ロイド（カウルに小ちいさいロゴ）、MIG（フロントウイング翼つばさ端はし板ばん）、そしてリヤウイング翼つばさ端はし板ばんにターミネーター4(TERMINATOR SALVATION) のロゴが見みえる。
(右みぎ：2) シンガポールGPでのBGP001。ヴァージンのロゴが特別とくべつ仕様しようとなり、サイドポンツーンにキヤノンのロゴが見みられる。

2009年ねんシーズン

日本にっぽんGPにて走行そうこう中ちゅうのバリチェロ（前まえ）とバトン（後ご）

ホンダからのチーム譲渡じょうとが遅おくれたため、マシンの登場とうじょうは開幕かいまく戦せん3週間しゅうかん前まえにまでずれこみ、3月6日にちにシルバーストンでジェンソン・バトンがシェイクダウンを行おこなった。このシェイクダウンでマシンの名称めいしょうが「BGP001」である事ことが明あきらかにされた。3月にシェイクダウンを行おこなったのは全ぜん10チーム中ちゅう、フォースインディア VJM02（3月がつ1日にち）と、トロ・ロッソ STR4（3月がつ9日にち）で、全ぜんチーム中ちゅう2番目ばんめに遅おそいシェイクダウンとなった。しかし、3月9日にちから12日にちに行おこなわれたバルセロナ合同ごうどうテストや、3月15日にちから17日にちに行おこなわれたヘレス合同ごうどうテストではいきなりトップタイムを記録きろくした。「スポンサー獲得かくとくのために燃料ねんりょうを軽かるくしてタイムを出だしている」という疑うたがいを持もった見方みかたもあったが、燃料ねんりょうを積つんだレースシミュレーションでも圧倒的あっとうてきなペースを披露ひろうし、他たチーム関係かんけい者しゃを震撼しんかんさせた。

3月27日にち、開幕かいまく戦せんとなるオーストラリアGPでも他たチームよりも一いち歩ほ先さきんじたスピードを披露ひろうし、デビュー戦せんワンツーフィニッシュを果はたした。その後ごも第だい7戦せんトルコGPまでにバトンが7戦中せんちゅう6勝しょうを記録きろくした（うちワンツーフィニッシュ3回かい）。

後半こうはん戦せんは快かい進撃しんげきのペースが鈍にぶり、バトンは1勝しょうもできなかったが、ルーベンス・バリチェロが第だい11戦せんヨーロッパGP、第だい13戦せんイタリアGPを制せいした。第だい16戦せんブラジルGPでコンストラクターズチャンピオン・ドライバーズチャンピオン共ともにダブルタイトルを獲得かくとくした。ドライバーズランキングはバトンが1位い、バリチェロが3位いであった。

前年度ぜんねんどのホンダ・RA108が失敗しっぱい作さくであることが明あきらかだったため、チームは2008年ねんの早はやい時期じきから開発かいはつリソースをRA109に注入ちゅうにゅうしていた。開幕かいまく戦せんからダブルディフューザーを投入とうにゅうした3チーム（ブラウンGP、ウィリアムズ、トヨタ）の中なかでも、ホンダ（ブラウンGP）はダブルディフューザーの設計せっけいを突つき詰つめており、レギュレーション改正かいせいによって失うしなわれたダウンフォースを取とり戻もどすことができた。また、KERS非ひ搭載とうさいを選えらんだという点てんでも、KERSを搭載とうさいした強豪きょうごうチームのマシン熟成じゅくせいが遅おくれたという面めんでアドバンテージがあった。故障こしょうによるリタイアが1度ど（トルコGPのバリチェロ）のみという、高たかい信頼しんらい性せいも武器ぶきになった。

その他たにも、タイヤサプライヤーのブリヂストン側がわからは、2009年ねんから復活ふっかつしたスリックタイヤにBGP001のマシン特性とくせいがマッチしたと指摘してきされている。ブリヂストンはチーム側がわの要請ようせいにより、前年ぜんねんまでのグルーブドタイヤと同どうサイズのスリックタイヤを製造せいぞうしたが、接地せっち面積めんせきが増ふえたフロント側がわのグリップが強つよくなり、オーバーステアによってリアタイヤが傷いたみやすくなった。しかし、ホンダのマシンには以前いぜんからアンダーステア（曲まがりにくい）傾向けいこうがあり、結果けっか的てきに前後ぜんごバランスが上手うまく取とれたという。レースではタイヤに優やさしいため、1スティントの走行そうこう距離きょりを引ひっ張ぱる作戦さくせんを採とることができた。しかし、路面ろめん温度おんどが低ひくいレースではその長所ちょうしょが災わざわいし、タイヤを作動さどう温度おんど域いきまで発熱はつねつさせることに苦労くろうした。

スペック

シャーシ

• シャーシ名めい BGP001
• シャーシ構造こうぞう カーボンファイバー/ハニカムコンポジット複ふく合あい構造こうぞうモノコック
• 全長ぜんちょう 4,700mm
• 全幅ぜんはば 1,800mm
• 全高ぜんこう 950mm
• ブレーキディスク・パッド カーボンファイバーディスクブレーキ
• サスペンション 前後ぜんごプッシュロッドアクティブトーションバー・スプリング/ダブルウィッシュボーン
• ダンパー ザックス
• ホイール BBSマグネシウム製せい
• タイヤ ブリヂストンポテンザ
• ギアボックス 7速そく＋リバース1速そくセミオートマチック/カーボンファイバー製せいケーシング
• エレクトロニクス MES-マイクロソフト スタンダードECU
• ステアリング ラック・アンド・ピニオン
• ステアリング・ホイール カーボンファイバー製せい
• 重量じゅうりょう 冷却れいきゃく水すい、潤滑油じゅんかつゆ、ドライバーを含ふくめて605kg

エンジン

• エンジン名めい メルセデス・ベンツFO108W
• 気筒きとう数すう・角度かくど V型がた8気筒きとう・90度ど
• 排気はいき量りょう 2,400cc
• 最高さいこう回転かいてん数すう 18,000rpm（レギュレーションで規定きてい）
• バルブ数すう 32
• ピストンボア 98mm
• 重量じゅうりょう 95kg
• スパークプラグ NGK
• 燃料ねんりょう モービルハイパフォーマンス無鉛むえんガソリン（5.75%バイオ燃料ねんりょう）
• 潤滑油じゅんかつゆ モービル1

シャーシナンバー一覧いちらん

2009年ねん

No.	ドライバー	1	2	3	4	5	6	7	8	9	10	11	12	13	14	15	16	17
		AUS	MAL	CHN	BHR	ESP	MON	TUR	GBR	GER	HUN	EUR	BEL	ITA	SIN	JPN	BRA	ABU
22	バトン	2	2	2	2	2	2	2	2	2	2	2	2	2	2	2	2	2
23	バリチェロ	1	1	1	1	1	1	1	1	1	1	1	3	3	3	3	3	3

結果けっか

年とし	No.	ドライバー	1	2	3	4	5	6	7	8	9	10	11	12	13	14	15	16	17	ポイント	ランキング
			AUS	MAL	CHN	BHR	ESP	MON	TUR	GBR	GER	HUN	EUR	BEL	ITA	SIN	JPN	BRA	ABU
2009	22	バトン	1	1	3	1	1	1	1	6	5	7	7	Ret	2	5	8	5	3	172	1位い
	23	バリチェロ	2	5	4	5	2	2	Ret	3	6	10	1	7	1	6	7	8	4

• 太字ふとじはポールポジション、斜はす字じはファステストラップ。(key)
• 第だい2戦せんマレーシアGPは雨天うてんで赤旗あかはた中断ちゅうだんとなり規定きてい周回しゅうかい数すうの75％を満みたさなかったため獲得かくとくポイントは半分はんぶんとなる。

幻まぼろしのRA109

BGP001とは別べつに、本田ほんだ技術ぎじゅつ研究所けんきゅうじょではF1撤退てったい発表はっぴょう後ごも栃木とちぎ研究所けんきゅうじょにおいて独自どくじにシャシー開発かいはつを続行ぞっこうしていたことが、後のちに明あきらかになっている。

後のちに公開こうかいされた風洞ふうどうモデルでは、ノーズ形状けいじょうがBGP001の幅広はばひろノーズではなく非常ひじょうに細長ほそながい形状けいじょうになっている他ほか、エンジン排気はいき口こうがBGP001よりもかなり前まえに位置いちしている。またギアボックスについて「USD（Ultra Short Differential）」と呼よばれる超ちょう小型こがたディファレンシャルを開発かいはつしていた他ほか、当然とうぜんながらKERS搭載とうさいも計画けいかくされており、バッテリーはノーズ下かに収容しゅうようされる予定よていだった。