チコタン

「こどものための合唱がっしょう組曲くみきょく『チコタン』」は、蓬よもぎ萊泰三さん作詞さくし、南みなみ安雄やすお作曲さっきょくによる、合唱がっしょう組曲くみきょく。「ぼくのおよめさん」という副題ふくだいをともなう。「チコタン」とは、同どう曲きょく内ないで歌うたわれる少女しょうじょ「チエコ」の愛称あいしょうである。

後のちに短編たんぺんアニメーション映画えいが化かされたほか、絵本えほんもカワイ出版しゅっぱんから制作せいさくされている。

音楽おんがく

和歌山放送わかやまほうそう児童じどう合唱がっしょう団だん（現在げんざいの和歌山わかやま児童じどう合唱がっしょう団だん）の1967年ねん（昭和しょうわ42年ねん）度どの歌うたとして制作せいさくされ、同どう合唱がっしょう団だんによって初演しょえんされた。1969年ねん（昭和しょうわ44年ねん）にレコード化かされた。同どう年度ねんどの芸術げいじゅつ祭さい優秀ゆうしゅう賞しょうを受賞じゅしょう。

児童じどう合唱がっしょうとピアノのために書かかれ、2000年代ねんだいには女声じょせい合唱がっしょう版はんも作つくられた。2台だいピアノ伴奏ばんそう版ばんもある。

1990年代ねんだいには楽譜がくふの販売はんばい部数ぶすうが10万まん部ぶを突破とっぱした。

作詞さくし者しゃの蓬莱ほうらいは、高度こうど経済けいざい成長せいちょうにより子供こどもの遊あそび場ばが失うしなわれ子供こども間あいだの競争きょうそうが激はげしくなる中なか、「大人おとな社会しゃかい」の被害ひがい者しゃである子供こどもを悼いたむ曲きょくとして詞しを書かいた。1960年代ねんだいの交通こうつう戦争せんそうを示唆しさした内容ないようと思おもわれがちだが、蓬莱ほうらいは、「世間せけんに交通こうつう事故じこに警鐘けいしょうを鳴ならす曲きょく」とだけ捉とらえられたことを心外しんがいだったと語かたっている。主人公しゅじんこうの少年しょうねんの初恋はつこいを交まじえた日常にちじょうから一転いってんし、初恋はつこい相手あいての少女しょうじょが交通こうつう事故じこで突然とつぜん死しんでしまうという衝撃しょうげき的てきな内容ないようの歌うたである。歌詞かしは関西かんさい弁べんで書かかれており、関西かんさい弁べんのアクセントや、緊張きんちょうで言葉ことばに詰つまる部分ぶぶんまでそのまま再現さいげんしたメロディーは、鮮烈せんれつでコミカルである。豊ゆたかな感情かんじょうや関西かんさい弁べんの表現ひょうげん力りょくが必要ひつようであるため、歌唱かしょう難易なんい度どはやや高たかい。

主おもに関西かんさい地方ちほうの小学校しょうがっこう、中学校ちゅうがっこうの合唱がっしょうコンクール等とうで歌うたわれることが多おおい。現在げんざいでもCDや楽譜がくふを購入こうにゅうすることができる。

2010年代ねんだいのインターネットコミュニティでは、「究極きゅうきょくのバッドエンディング曲きょく」「トラウマソング」と評ひょうされている。

物語ものがたり

5つの歌うたから成なり、女声じょせい合唱がっしょう版ばんにはピアノのみで演奏えんそうされる前奏ぜんそう曲きょく（Petit Prelude）が付ふされている。

1. なんでかな？

幼おさない少年しょうねん「ぼく」が、クラスメイトの女おんなの子こ「チコタン」に恋こいをし、どうしてこんなに彼女かのじょが好すきなのか、と戸惑とまどう。

2. プロポーズ

「ぼく」は思おもいきって言葉ことばに詰つまりながらもチコタンにプロポーズをする。

3. ほっといてんか

「ぼく」の家いえは魚屋さかなやを営いとなんでおり、一人ひとりっ子この「ぼく」が店みせを継つがなければならない。しかしチコタンは魚さかなが嫌きらいであったため、「ぼく」は失恋しつれんし、塞ふさぎこんでしまう。

4. こんやく

魚さかな嫌ぎらいのチコタンだが、エビ・カニ・タコは好すきであるということが分わかる。「ぼく」は俄然がぜん張はり切きり、「エビ・カニ・タコだけ売うる日本一にっぽんいちの魚屋さかなやになる」と宣言せんげんし、チコタンと将来しょうらい結婚けっこんすることを約束やくそくする。

5. だれや!?

ところがその直後ちょくご、チコタンは突然とつぜんの交通こうつう事故じこに遭あい、亡なくなってしまう。チコタンの死しに激はげしく動揺どうようし、加害かがい者しゃを糾弾きゅうだんする「ぼく」の悲痛ひつうな叫さけびで楽曲がっきょくは幕まくを閉とじる。

レコード・CD

発売はつばい日び	作品さくひん名めい	レーベル	規格きかく品番ひんばん	歌唱かしょう	脚注きゃくちゅう
1969年ねん	コロムビア・コーラス・シリーズ こどものための合唱がっしょう組曲くみきょく チコタン〜ぼくのおよめさん〜	日本にほんコロムビア	BSS-41	西六郷にしろくごう少年しょうねん少女しょうじょ合唱がっしょう団だん
1973年ねん	現代げんだい日本にっぽん児童じどう合唱がっしょう名曲めいきょく選せん チコタン・日記にっきのうた・お菓子かしのうた	CBS・ソニー	SOBJ-2	西六郷にしろくごう少年しょうねん少女しょうじょ合唱がっしょう団だん
1975年ねん	こどもの歌うたコンパクト・デラックス こどものための合唱がっしょう組曲くみきょく チコタン〜ぼくのおよめさん〜	日本にほんコロムビア	CK-65	西六郷にしろくごう少年しょうねん少女しょうじょ合唱がっしょう団だん
1981年ねん7月がつ5日にち	こどものための合唱がっしょう組曲くみきょく チコタン/日記にっきのうた	東芝とうしばレコード	TA-72066	大阪おおさかすみよし少年しょうねん少女しょうじょ合唱がっしょう団だん
1996年ねん2月がつ21日にち	チコタン〜合唱がっしょう名曲めいきょくコレクション38〜ジュニア篇へん	東芝とうしばEMI	TOCZ-9264	大阪おおさかすみよし少年しょうねん少女しょうじょ合唱がっしょう団だん
1999年ねん3月がつ20日はつか	児童じどう合唱がっしょう組曲くみきょく名曲めいきょく選せん チコタン 南みなみ安雄やすお作品さくひん集しゅう	ビクター	VICS-61014	東京放送とうきょうほうそう児童じどう合唱がっしょう団だん
2000年ねん11月18日にち	児童じどう合唱がっしょうの世界せかいI チコタン	日本にほんコロムビア	COCX-31215〜7	東京放送とうきょうほうそう児童じどう合唱がっしょう団だん
2001年ねん12月31日にち	ソングブック	フォンテック	EFCD-3010	西六郷にしろくごう少年しょうねん少女しょうじょ合唱がっしょう団だん

映画えいが

1971年ねんに学研がっけん映画えいがが製作せいさく。全ぜん11分ふん。

• 企画きかく・製作せいさく：原はら正次まさつぐ
• 製作せいさく担当たんとう：神保じんぼまつえ
• 作曲さっきょく：南みなみ安雄やすお
• 作詞さくし：蓬莱ほうらい泰三たいぞう
• 歌うた：西六郷にしろくごう少年しょうねん少女しょうじょ合唱がっしょう団だん（日本にほんコロムビアレコード「チコタン」より）
• アニメーション：真賀まが理り文子ふみこ・秦はた泉いずみ寺てら博はく・及川おいかわ功一こういち
• 撮影さつえい：吉岡よしおか謙けん・田村たむら実みのる
• 美術びじゅつ：小前こまえ隆たかし・徳山とくやま正美まさみ・数藤すとう雅三まさぞう
• 編集へんしゅう：園えん尚子しょうこ
• 脚本きゃくほん：岡本おかもと忠ただし成しげる・坂間さかま雅子まさこ・来らい道子みちこ・田村たむら実みのる
• 協力きょうりょく：田畑たばた精一せいいち
• 現像げんぞう：東洋とうよう現像げんぞう所しょ
• 演出えんしゅつ：岡本おかもと忠ただし成なり

展開てんかい

蓬莱ほうらいと南みなみのコンビは、他ほかにも児童じどう向むけの合唱がっしょう曲きょくをいくつか発表はっぴょうし、いじめ等とうの重おもいテーマも扱あつかっている。

中なかでも『日曜日にちようび〜ひとりぼっちの祈いのり〜』は本ほん作さく同様どうよう、子供こどもの視点してんからの交通こうつう事故じこを題材だいざいにしている。ただし『チコタン』が、被害ひがい者しゃの立場たちばから事故じこに遭あうまでを描えがいているのに対たいし、『日曜日にちようび』では飲酒いんしゅ運転うんてんによる交通こうつう死亡しぼう事故じこ加害かがい者しゃの家族かぞく（その事故じこにより、加害かがい者しゃである自分じぶんの父親ちちおやおよび同乗どうじょうしていた母親ははおやも死亡しぼうした上うえに、「人殺ひとごろしの子こ」と罵ののしられる日々ひびを送おくる子供こども）が、事故じこのもたらした影響えいきょうに後々あとあとまで苦くるしむ姿すがたを詳細しょうさいに描えがいている。

なお、蓬莱ほうらいはNHKの教育きょういくドラマ番組ばんぐみ『中学生ちゅうがくせい日記にっき』の脚本きゃくほんを執筆しっぴつしており、南みなみもNHKの児童じどう向むけ音楽おんがく等とうに関かかわっている。