ナイアガラの滝たき

ナイアガラの滝たき
所在地しょざいち	カナダ・オンタリオ州しゅうナイアガラフォールズ アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく・ニューヨーク州しゅうナイアガラフォールズ
位置いち	北緯ほくい43度ど4分ふん48秒びょう 西経せいけい79度ど4分ふん16秒びょう
落差らくさ	51 m
水系すいけい	ナイアガラ川がわ
プロジェクト 地形ちけい

ナイアガラの滝たき（ナイアガラのたき、英語えいご: Niagara Falls [naɪˈæɡrə]、フランス語ふらんすご: Les Chutes du Niagara [njaɡaʁa]）は、エリー湖こからオンタリオ湖こに流ながれるナイアガラ川がわにある滝たき。カナダ（オンタリオ州しゅう）とアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく（ニューヨーク州しゅう）とを分わける国境こっきょうになっている。カナダのトロントから南南西なんなんせいに120km（75mi）、アメリカのバッファローから北きた北東ほくとうに27km（17mi）にある両国りょうこくの同名どうめい都市としナイアガラフォールズ市し（オンタリオ州しゅう側がわ、ニューヨーク州しゅう側がわ）に位置いちする。滝たきは豊富ほうふな水力すいりょく資源しげんと景観けいかんの美うつくしさで知しられる。

ナイアガラの滝たきはゴート島とうによって、カナダ側がわの国境こっきょうを挟はさんだカナダ滝たきとアメリカ側がわのアメリカ滝たきからなる。アメリカ側がわはさらにルナ島とうを挟はさんでブライダルベール滝たきがある。最終さいしゅう氷ごおり期き（最後さいごの氷こおり期き）の後退こうたい期きに形成けいせいされ、五大ごだい湖みずうみの水流すいりゅうがナイアガラ崖がけ線せんを経へて大西おおにし洋ひろしに流ながれ込こむ過程かていにある。

滝たきの高たかさはあまりないが幅はばが広ひろく、単独たんどくで流ながれる滝たきの水量すいりょうでは北米ほくべいで最もっとも規模きぼが大おおきい。最大さいだい毎ごと分ぶん168,000m³、平均へいきん毎ごと分ぶん110,000m³の水量すいりょうが流ながれている。

特徴とくちょう

カナダ滝たき、スカイロン・タワーから臨のぞむ

アメリカ滝たき (左ひだりの巨大きょだい瀑布ばくふ) 及およびブライダルベール滝たき (右みぎの小しょう瀑布ばくふ)

ナイアガラの滝たきは以下いか、3つの滝たきから構成こうせいされている。

• カナダ滝たき （落差らくさ56m、幅はば675m、滝たき壺つぼの深ふかさ55m）
• アメリカ滝たき （落差らくさ58m、幅はば330m）
• ブライダルベール滝たき （落差らくさ55m、幅はば15m）

水量すいりょうは春はるから初夏しょかのピークシーズンでおよそ毎秒まいびょう5,720 m³になる。夏なつは毎秒まいびょう2,832 m³で、90%はカナダ滝たきに流ながれ込こむが、水力すいりょく発電はつでん施設しせつに一部いちぶ、人工じんこう的てきに流ながされている。カナダ滝たきの上流じょうりゅうには可動かどう堰せきが設もうけられており、夜間やかんの水量すいりょうは日にち中ちゅうの半分はんぶんに調節ちょうせつされている。観光かんこうのオフシーズンになる冬ふゆの期間きかんも水量すいりょうが毎秒まいびょう1,416m³に抑おさえられている。

アメリカ側がわからの眺望ちょうぼうはほとんどが滝たきの背後はいごに位置いちし、滝たきの正面しょうめんや全体ぜんたいを眺望ちょうぼうできるのはカナダ側がわになる。

形成けいせいと浸食しんしょく

滝たき周辺しゅうへんの衛星えいせい写真しゃしん

1万まん年ねん前まえのウィスコンシン氷ごおり期きに形かたちが出来できた。五大ごだい湖みずうみとナイアガラ川がわも同どう時期じきの地形ちけいである。滝たきの発祥はっしょう地点ちてんは、現在げんざいよりも11km下流かりゅうにあたるオンタリオ州しゅう側がわのクイーンストンやニューヨーク州しゅう側がわのルイストンの付近ふきんに位置いちする。北きたアメリカ北部ほくぶ全体ぜんたいが氷河ひょうがに覆おおわれ、氷河ひょうがが台地だいちを削けずり、一方いっぽうでその岩石がんせきを堆積たいせきした。氷河ひょうがが溶とけ始はじめると、川かわが地形ちけいを作つくっていった。

この一帯いったいはシルル紀おさむの岩石がんせきが分布ぶんぷし、滝たきの最さい上部じょうぶは石灰岩せっかいがんで、その下したの頁岩けつがんより固かたく削けずられずに残のこりやすい。さらにその下したにはより古ふるいオルドビス紀きの頁岩けつがんと砂岩さがんがある。このため、落水おちみずの洗あらい掘ほ・浸食しんしょくにより滝たき壺つぼが少すこしずつ拡大かくだいし、上部じょうぶの石灰岩せっかいがんが自重じちょうに耐たえ切きれなくなり崩落ほうらくしていくメカニズムで継続けいぞく的てきな浸食しんしょくにより滝たきは少すこしずつ上流じょうりゅう側がわに移動いどうしている。1950年代ねんだいまでは水みずの浸食しんしょくにより年間ねんかん1メートルずつ移動いどうし、浸食しんしょくが続つづけばエリー湖こに埋没まいぼつしてしまうため、カナダ滝たきの落下らっか水量すいりょうを馬蹄ばてい形がた全体ぜんたいに均等きんとう化かする工事こうじが1960年代ねんだいにかけて行おこなわれ、浸食しんしょくスピードは年間ねんかん3センチメートル程度ていどに抑おさえられているが、それでも2万まん5千せん年ねん後ごには消滅しょうめつする計算けいさんになる。

語源ごげんと歴史れきし

Niagara の語源ごげんについてははっきりしておらず、諸説しょせつある。なお、英語えいごでは i を二に重母音じゅうぼいんで読よむために「ナイアガラ」と発音はつおんされるが、フランス語ふらんすご等とうでは「ニヤガラ」と発音はつおんされる。

イロコイ語ごの研究けんきゅう者しゃ B. トリガーによれば、この土地とちに住すんでいた先住民せんじゅうみんの家名かめいに由来ゆらいするという。17世紀せいき後半こうはんフランスの、この地域ちいきを記しるした地図ちずには、彼かれらが"Niagagarega"と呼よばれていたと記述きじゅつされている。また地名ちめい学がく者ものの G. スチュワートによれば、"Ongniaahra"（「二ふたつに分わかれた土地とちの端はし」の意い）というイロコイ族ぞくの町まちの名なに由来ゆらいするという。

一方いっぽう、地理ちり学がく者もののヘンリー・スクールクラフトは次つぎのように記しるしている。

「ナイアガラの滝たき。これはモホーク語ごである。カー夫人ふじんによれば、「首くび」を意味いみする。この語かたりは最初さいしょは、エリー湖ことオンタリオ湖この間あいだの連れん水陸すいりく路ろ、または地峡ちきょう(neck of land)を指さしていた。エリオット氏しの語彙ごい集しゅう（11章しょう）を参照さんしょうすれば、人間にんげんの首くびが――この実際じっさいの語彙ごい集しゅうに従したがえば「彼かれの首くび」だが―― "onyara" だということが分わかるだろう。1820年ねんの春はるに、レッド・ジャケットがこのナイアガラという語かたりを、O-ne-au-ga-rah とでも書かくかのように発音はつおんした」

他たに、しばしば観光かんこう案内あんないなどでは「雷鳴らいめいの轟とどろく水みず」（thunder of the water, thundering Waters 等とう）を意味いみすると説明せつめいされることがあるが、これには学術がくじゅつ的てきな根拠こんきょはないようである。

ヨーロッパ人じんで滝たきを最初さいしょに目撃もくげきしたと言いわれる人々ひとびとは幾いく人にんかおり、1604年ねん、フランス人じん探検たんけん家かサミュエル・ド・シャンプランの探検たんけん団だん一向いっこうが探検たんけんし、彼かれのもとに滝たきについての報告ほうこくがあったことが彼かれの日記にっきに残のこされている。1700年代ねんだい初期しょき、スウェーデンの学者がくしゃペール・カルムがこの地域ちいきを探検たんけんし、このときの体験たいけんを記録きろくに残のこしている。1677年ねん、カルムより早はやくにフランスの宣教師せんきょうしルイ・エヌパンが、フランス人じん探検たんけん家かロベール＝カブリエ・ド・ラ・サールとともに訪おとずれたことは非常ひじょうによく知しられている。しかし、フランスのイエズス会かい宣教師せんきょうしポール・ラグノーがワイアンドット族ぞく（ヒューロン族ぞく）インディアンに布教ふきょう活動かつどうをしている際さい、エヌパンよりおよそ35年ねん前まえに訪おとずれたことを示しめす確証かくしょうがあり、そのほかにもイエズス会かい宣教師せんきょうしジャン・ドゥ・ブレハブが訪おとずれたのではないかとされている。

18世紀せいきにかけて観光かんこうが盛さかんになり、18世紀せいき中頃なかごろにはこの地域ちいきの主要しゅよう産業さんぎょうとなる。19世紀せいき初期しょき、ナポレオン・ボナパルトの弟おとうとジェローム・ボナパルトが花嫁はなよめと一緒いっしょに訪おとずれている。 ナイアガラ川がわを行いき来きする需要じゅようが増ふえ始はじめたため、1848年ねんに歩道橋ほどうきょうができ、チャールズ・エレット・ナイアガラ・フォールズ吊つり橋ばし、1855年ねんにはジョン・アウグストゥス・ローブリン・ナイアガラ・フォールズ吊つり橋ばしとなる。

Rainbow Bridge

南北戦争なんぼくせんそう後ご、ニューヨーク・セントラル鉄道てつどうは、ナイアガラの滝たきを余暇よかと新婚しんこん旅行りょこう先さきとして力ちからを入いれるようになる。鉄道てつどうの交通こうつう量りょうが増ふえた1886年ねん、木材もくざいと石材せきざいでできた橋はしが鉄橋てっきょうへと置おき換かわり、現在げんざいも鉄道てつどうがナイアガラ川がわをまたぐ橋はしとなっている。滝たきの近ちかくにできた最初さいしょの鉄橋てっきょうは1897年ねんに完成かんせいし、今日きょうではワールプール・ラピッズ・ブリッジとして知しられ、車輌しゃりょう、列車れっしゃ、歩行ほこう者しゃが行いき来きできる。1941年ねん、滝たき近ちかくに3番目ばんめの橋はし「レインボー・ブリッジ」が建設けんせつされ、車輌しゃりょうと歩行ほこう者しゃがアメリカ、カナダ間あいだの国境こっきょうを行いき来きできる。

第だい一いち次じ世界せかい大戦たいせん後ご、観光かんこう業ぎょうは再ふたたびブームを迎むかえ、自動車じどうしゃが普及ふきゅうしたことにより滝たきへのアクセスがより容易よういになった。20世紀せいきにおいて、滝たきの歴史れきしは水力すいりょく発電はつでんの活用かつようと自然しぜん景観けいかんの保護ほごと開発かいはつに大別たいべつされる。

2020年ねん、2019新型しんがたコロナウイルスの感染かんせん拡大かくだいにより、3月17日にちからオンタリオ州しゅうに非常ひじょう事態じたい宣言せんげんが、3月がつ20日はつかからはニューヨーク州しゅうに外出がいしゅつ禁止きんし令れいが出だされ、ナイアガラ観光かんこうは停止ていし状態じょうたいとなった。3月22日にちには、休業きゅうぎょう状態じょうたいになった滝たき周辺しゅうへんのホテルやカジノが、建物たてものにハート型かたのライトアップを行おこない、SARSコロナウイルス2に立たち向むかうために連帯れんたいを呼よび掛かけた。

観光かんこう

ナイアガラの滝たきの夜景やけい

よく見みるナイアガラの滝たきの写真しゃしんは滝たきがアップで写うつされているため、あたかも滝たきが雄大ゆうだいな自然しぜんのなかにあると思おもわれがちだが、周辺しゅうへんは観光かんこう地ち化かが進すすんでおり、カナダ側がわには滝たきから近ちかいところにホテルやレジャー施設しせつが並ならんでいる。特とくに1990年代ねんだい以降いこうは急速きゅうそくに観光かんこう客きゃく向むけの開発かいはつが進すすめられた。観光かんこう客きゃくのうちおよそ9割わりはカナダ側がわ、残のこり1割わりほどがアメリカ側がわから滝たきを観光かんこうしている。

観光かんこうシーズンのピークは夏なつであり、カナダ側がわからカナダ滝たきとアメリカ滝たきに向むかってライトアップが毎夜まいよ行おこなわれ、日にち中ちゅうから夜よるまでアトラクションを楽たのしむことができる。最もっとも古ふるくからあるアトラクションでは遊覧ゆうらん船せん「霧きりの乙女おとめ号ごう」がよく知しられ、1846年ねん来き、観光かんこう客きゃくを乗のせてアメリカ、カナダの両りょう岸きしから滝たきつぼまでの間あいだを行いき来きしている。

アメリカ側がわ

アメリカ側がわでは、ナイアガラ・フォールズ州立しゅうりつ公園こうえんの各かく地点ちてんから滝たきを眺望ちょうぼうでき、プロスペクト・ポイント公園こうえんの歩道ほどう沿ぞいやプロスペクト・ポイント展望てんぼうタワー、霧きりの乙女おとめ号ごうの波止場はとばからアメリカ滝たきが望のぞめる。ゴート島とうからもアメリカ滝たきを見みることができ、風ふうの洞窟どうくつを通とおしてブライダルベール滝たきの真下ましたまで降おりることができる。また、ニコラ・テスラの大おおきな銅像どうぞうが入いり口くち門もん近ちかくにある。

ゴート島内とうないを観光かんこうして回まわるトローリーバスがあり、気球ききゅうやヘリコプターを通とおして滝たきを見みることもできる。ナイアガラ・ゴージ・ディスカバリー・センターのショーケースではナイアガラの自然しぜんと歴史れきしに関かんする展示てんじがある。

カナダ側がわ

スカイロン・タワー

カナダ側がわのクイーンビクトリア公園こうえんには手入ていれされた花壇かだんがあり、カナダ滝たきとアメリカ滝たきの眺ながめもよい。

ジャーニー・ビハインド・ザ・フォールズから見みたカナダ滝たき

スカイロン・タワーからの滝たきの眺ながめ

滝たき付近ふきんには展望てんぼうタワーが2つあり、滝たき付近ふきんでは最もっとも高たかい地点ちてんからの全景ぜんけいが望のぞめるスカイロン・タワーと、カナダ滝たきを見下みおろす眺ながめになるコニカ・ミノルタ・タワーがある。カナダ滝たきのすぐ脇わきに展望てんぼうスペース「テーブルロック」があり、真下ましたで滝たきが落おちていく様子ようすを見みることができる。かつては名前なまえのようにテーブル状じょうに突つき出でた岩いわだったが、後のちに崩くずれて現在げんざいの展望てんぼうスペースとして整備せいびされた。ジャーニー・ビハインド・ザ・フォールズ（JBF）はカナダ滝たき裏側うらがわのトンネルに行いくことができ、展望てんぼうデッキからはカナダ滝たきのすぐ脇わき下かから滝たきを鑑賞かんしょうできる。また、滝たきから少すこし離はなれた地点ちてんには1916年ねんにスペイン人じん技師ぎしレオナルド・トーレス・ケベードによってデザインされたケーブルカー「ワールプール・エアロ・カー」がワールプールにある。フォートエリーからフォートジョージまでのナイアガラ川がわ沿そいには、米べい英えい戦争せんそうの史跡しせきを始はじめ、娯楽ごらく用ようのトレイルがある。

その他た、カナダ側がわオンタリオ州しゅうのナイアガラフォールズ市しにはナイアガラ・フォールズビュー・カジノ・リゾートとカジノ・ナイアガラという2つのカジノがある。滝たき沿ぞいの観光かんこう地区ちくにはホテルが多おおく立たち並ならび、ナイアガラ・スカイホイール（観覧かんらん車しゃ）や店舗てんぽが立たち並ならぶクリフトンヒルがある。

パノラマ

アメリカ滝たき、ブライダルベール滝たき及および霧きりの乙女おとめ号ごうが付近ふきんを遊覧ゆうらんするカナダ滝たきのパノラマ

関連かんれん項目こうもく

• ナイアガラフォールズ (オンタリオ州しゅう) - （カナダ側がわの都市とし）
• ナイアガラフォールズ (ニューヨーク州しゅう) - （アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく側がわの都市とし）
• ウェランド運河うんが

世界せかい三さん大だい瀑布ばくふ

ナイアガラの滝たきは世界せかい三さん大だい瀑布ばくふのひとつではあるが、唯一ゆいいつ世界せかい遺産いさんには登録とうろくされていない。

• ビクトリアの滝たき
• イグアスの滝たき（イグアス国立こくりつ公園こうえん）

日本にっぽん国内こくないでのナイアガラの滝たき

• 原尻はらじりの滝たき - 東洋とうようのナイアガラと呼よばれ、日本にっぽんの滝たき百ひゃく選せんにも選えらばれている。

外部がいぶリンク

• ナイアガラ・パークス （英語えいご）（日本語にほんご）ほか
• ナイアガラ観光かんこう局きょく公式こうしきウェブサイト （日本語にほんご）