ハコネサンショウウオ属ぞく

ハコネサンショウウオ属ぞく
	ハコネサンショウウオモドキ Onychodactylus fischeri
分類ぶんるい
学名がくめい
	Onychodactylus Tschudi, 1838
タイプ種しゅ
	Onychodactylus japonica (Houttuyn, 1782)
和名わみょう
	ハコネサンショウウオ属ぞく
英名えいめい
	Clawed salamander

ハコネサンショウウオ属ぞく（Onychodactylus）は、有尾ありお目めサンショウウオ科かに分類ぶんるいされる属ぞく。

分布ぶんぷ

大韓民国だいかんみんこく、中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこく、朝鮮民主主義人民共和国ちょうせんみんしゅしゅぎじんみんきょうわこく、日本にっぽん、ロシア^[3]

形態けいたい

体型たいけいは細長ほそながく、これにより表面積ひょうめんせきが大おおきくなり後述こうじゅつする皮膚ひふ呼吸こきゅうに役立やくだつと考かんがえられている^[2]。尾長おながは頭あたま胴どう長ちょうと同おなじくらいか、より長ながい^[2]。

眼めは大型おおがたで、眼瞼がんけんが突出とっしゅつする^[2]。前ぜん顎骨がっこつと鼻骨びこつの間あいだに比較的ひかくてき大型おおがたの隙間すきま（前ぜん顎あご泉いずみ門もん）がある^[2]。基もと鰓えら骨こつ前方ぜんぽうに対たいになった突起とっきが伸長しんちょうする^[2]。変態へんたい後ごも肺はいがなく、皮膚ひふや口腔こうくう粘膜ねんまくでガス交換こうかんを行おこない呼吸こきゅうする^[2]。胴体どうたい側面そくめんにそれぞれ入はいる皺しわ（肋あばら条じょう）は13 - 15本ほん^[2]。染色せんしょく体たい数かずは2n=78で、サンショウウオ科か内ないでは最もっとも多おおい^[2]。

幼生ようせいは四肢しし後部こうぶに膜まく状じょうの皮膚ひふが伸長しんちょうし、急流きゅうりゅうで体からだが浮うくのを防ふせぐ効果こうかがあると考かんがえられている^[2]。繁殖はんしょく期きになると指ゆび趾の先端せんたんに黒くろい爪つめ状じょうの突起とっきが現あらわれ、繁殖はんしょく期きが終おわるとこの突起とっきは抜ぬけ落おちると考かんがえられている^[2]。属ぞく名めいOnychodactylusは「爪つめのある指ゆび趾」の意いで、英名えいめいClawed salamanderと共ともにこの爪つめや幼生ようせいの爪つめが由来ゆらいになっている^[2]。オスはアルファベットの逆ぎゃく「V」字じ状じょう、メスは総そう排泄はいせつ口前くちまえ縁えんを沿そうような形状けいじょうで、総そう排泄はいせつ口こう前部ぜんぶにも角質かくしつ突起とっきが現あらわれる^[2]。オスは繁殖はんしょく期きに後肢あとあしが肥大ひだい化かし^[3]、総そう排泄はいせつ口こう周辺しゅうへんが隆起りゅうきする^[2]。

分類ぶんるい

サンショウウオ科か内ないでは初期しょきに分岐ぶんきした系統けいとうだと考かんがえられている^[2]。2012年ねんに本属ほんぞくのみでOnychodactylinae亜あ科かを構成こうせいする説せつが提唱ていしょうされている^[4]。

以前いぜんは日本にっぽん産さんのハコネサンショウウオと大陸たいりく産さんのハコネサンショウウオモドキの2種しゅのみが知しられていたが、分子ぶんし系統けいとう学がく的てき解析かいせきから複数ふくすうの隠蔽いんぺい種しゅが含ふくまれることが確認かくにんされており、将来しょうらい的てきにはより複数ふくすうの種たねに分わかれる（ハコネサンショウウオ: 近畿きんき個体こたい群ぐん、中国地方ちゅうごくちほう個体こたい群ぐん、ハコネサンショウウオモドキ: 大韓民国だいかんみんこく個体こたい群ぐん、中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこく個体こたい群ぐん、ロシア個体こたい群ぐん）可能かのう性せいが示唆しさされている^[2]。近年きんねんの例れいとして2012年ねんにハコネサンショウウオ東北とうほく地方ちほう北部ほくぶ個体こたい群ぐんがキタオウシュウハコネサンショウウオ、ハコネサンショウウオモドキ大韓民国だいかんみんこく個体こたい群ぐんがO. koreanus、吉林きつりん省しょう個体こたい群ぐんがO. zhangyapingi、遼寧りょうねい省しょう個体こたい群ぐんがO. zhaoermiiとしてそれぞれ新種しんしゅ記載きさいされた^[5]。2013年ねんにハコネサンショウウオ筑波つくば山系さんけい個体こたい群ぐんがツクバハコネサンショウウオとして新種しんしゅ記載きさいされた^[6]。同年どうねんにハコネサンショウウオ四国しこく・中国地方ちゅうごくちほう個体こたい群ぐん（中国山地ちゅうごくさんちではハコネサンショウウオとシコクハコネサンショウウオが同所どうしょ的てきに分布ぶんぷする）がシコクハコネサンショウウオとして新種しんしゅ記載きさいされた^[7]。2014年ねんにはハコネサンショウウオ東北とうほく地方ちほう南部なんぶ個体こたい群ぐんがタダミハコネサンショウウオとバンダイハコネサンショウウオとして記載きさいされた^[8]。2022年ねんにはO. koreanusの慶尚南道けいしょうなんどう個体こたい群ぐんがO. sillanus、ハコネサンショウウオ近畿きんき地方ちほう個体こたい群ぐんがホムラハコネサンショウウオとしてそれぞれ記載きさいされた^[9]^[10]。

以下いかの分類ぶんるい・英名えいめいは2023年ねん時点じてんのAmphibian Species of the WorldおよびAmphibiaWebに従したがい^[1]^[11]、和名わみょうは2012年ねん以前いぜんに記載きさいされた種たねは西川にしかわ (2012)^[2]・2012年ねん以降いこうに記載きさいされた日本にっぽん産さんの種たねは日本にっぽん爬虫両棲類りょうせいるい学会がっかい (2022) の標準ひょうじゅん和名わみょうに従したがうものとする^[12]。2012年ねん以降いこうに記載きさいされた種たねの英名えいめい・タイプ産地さんちを含ふくむ分布ぶんぷ・形態けいたいは、各かく記載きさい論文ろんぶんに従したがう^[5]^[6]^[7]^[8]^[9]^[10]。

Onychodactylus fischeri ハコネサンショウウオモドキ Fischer's Clawed Salamander
Onychodactylus fuscus タダミハコネサンショウウオ Tadami clawed salamander: 日本にっぽん（福島ふくしま県けん南西なんせい部ぶ＜只見ただみ町まち＞、新潟にいがた県けん＜三条さんじょう市し南部なんぶ＞）。タイプ産地さんちは只見ただみ町まち。; 脊椎せきつい数すうは18個こ。尾おは長ながい。頭あたま幅はばは広ひろく、背面はいめんに縦縞たてじまは入はいらない。冬季とうきに繁殖はんしょくする。
Onychodactylus intermedius バンダイハコネサンショウウオ Bandai clawed salamander: 日本にっぽん（茨城いばらき県けん北東ほくとう部ぶ・新潟にいがた県けん北部ほくぶ・福島ふくしま県けん北東ほくとう部ぶ・宮城みやぎ県けん南部なんぶ・山形やまがた県けん）。タイプ産地さんちは郡山こおりやま市し。; 脊椎せきつい数すうは18個こ。尾おは長ながい。頭あたま幅はばは狭せまい。冬季とうきに繁殖はんしょくする。
Onychodactylus japonica ハコネサンショウウオ Japanese crawed salamander: 日本にっぽん（喜多方きたかた市しから大子だいご町まち以南いなんおよび以西いせいの本州ほんしゅう）
Onychodactylus kinneburi シコクハコネサンショウウオ Shikoku clawed salamander: 日本にっぽん（四国しこく・中国ちゅうごく山地さんち）。タイプ産地さんちはいの町まち。; 脊椎せきつい数すうは19個こ。肋あばら条じょうは13本ほん。頭あたま幅はばはやや狭せまい。背面はいめんは暗くら褐色かっしょくで、黄色おうしょくみを帯おびた橙色だいだいいろの縦縞たてじまが明瞭めいりょうに入はいる。腹はら面めんは白しろっぽく、胸部きょうぶに斑紋はんもんが入はいらない。
Onychodactylus koreanus Korean crawed salamander: 大韓民国だいかんみんこく。模かたぎ式しき産地さんちは江原えばら道みち三さん陟のぼる市し。
Onychodactylus nipponoborealis キタオウシュウサンショウウオ Tohoku crawed salamander^[5]: 日本にっぽん（秋田あきた県けん・青森あおもり県けん・岩手いわて県けん・宮城みやぎ県けん・山形やまがた県けん）とされるが、分布ぶんぷの南限なんげんは不明ふめい。タイプ産地さんちは矢捨山やすてやま（平川ひらかわ市し）。種たね小名しょうみょうnipponborealisは「日本にっぽん（nippon）」と、ラテン語らてんごで「北きた」の意いがあるborealisの組くみ合あわせで「北日本きたにっぽん」の意い。
Onychodactylus pyrrhonotus ホムラハコネサンショウウオ Fireback clawed salamander: 日本にっぽん（近畿きんき地方ちほう）。タイプ産地さんちは武奈ヶ岳ぶながだけ。背面はいめんは黒くろく、赤色あかいろからピンク色ぴんくいろの縦縞たてじままたは斑紋はんもんが明瞭めいりょうに入はいる。腹はら面めんには灰色はいいろみを帯おびた白しろい斑点はんてんが入はいる。
Onychodactylus sillanus Yangsan clawed salamander: 大韓民国だいかんみんこく（慶尚南道けいしょうなんどう＜梁やな山さん市し・密みつ陽ひ市し＞）。タイプ産地さんちは梁やな山さん市し東面とうめん沙すな松里まつざと。
Onychodactylus tsukubaensis ツクバハコネサンショウウオ Tsukuba clawed salamander: 日本にっぽん（筑波つくば山地さんちの足尾山あしおざん・加波山かばさん・きのこ山ざん・筑波山つくばさん・燕つばめ山さん＜石岡いしおか市し・桜川さくらかわ市し・つくば市し＞）。タイプ産地さんちは筑波つくば山さん（桜川さくらかわ市し旧きゅう真壁まかべ町まち）。種たね小名しょうみょうtsukubaensisは筑波つくば山さんに由来ゆらいする。
Onychodactylus zhangyapingi Jilin clawed salamander: 中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこく（吉林きつりん省しょう）。朝鮮民主主義人民共和国ちょうせんみんしゅしゅぎじんみんきょうわこくとの国境こっきょう付近ふきんでも発見はっけん例れいがあり、遼寧りょうねい省しょうにも分布ぶんぷする可能かのう性せいがある。
Onychodactylus zhaoermii Liaoning clawed salamander: 中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこく（遼寧りょうねい省しょう）

生態せいたい

山地さんちにある渓流けいりゅう周辺しゅうへんの森林しんりんに生息せいそくする^[2]。

卵嚢らんのうは端はしに柄え状じょうの付着ふちゃく部ぶがあり、1対ついで産うむ^[2]。卵たまごは地下ちかの伏流ふくりゅう内ないに産うむと考かんがえられている^[2]。

人間にんげんとの関係かんけい

日本にっぽんでは檜ひのき枝えだ岐村で6 - 7月がつのみ筌で捕獲ほかくし郷土きょうど料理りょうりとする^[13]。調理ちょうり方法ほうほうとしては燻製くんせいや天てんぷら、唐揚からあげなどがある^[13]。

参考さんこう文献ぶんけん

[脚注きゃくちゅうの使つかい方かた]

^ ^a ^b Onychodactylus. In: Frost, Darrel R. 2023. Amphibian Species of the World: an Online Reference. Version 6.1 (Accessed: April 11, 2023). Electronic Database accessible at http://research.amnh.org/herpetology/amphibia/index.html. American Museum of Natural History, New York, USA. https://doi.org/10.5531/db.vz.0001
^ ^a ^b ^c ^d ^e ^f ^g ^h ⁱ ^j ^k ^l ^m ⁿ ^o ^p ^q ^r ^s ^t 西川にしかわ完かん途と「東ひがしアジアの有尾ありお類るい第だい8回かいハコネサンショウウオ属ぞくハコネサンショウウオモドキ」『クリーパー』第だい60号ごう、クリーパー社しゃ、2012年ねん、60-64頁ぺーじ。
^ ^a ^b 千せん石せき正一しょういち監修かんしゅう長坂ながさか拓也たくや編著へんちょ『爬虫類はちゅうるい・両生類りょうせいるい800種しゅ図鑑ずかん第だい3版はん』、ピーシーズ、2002年ねん、231、295頁ぺーじ。
^ Alain Dubois, and Jean Raffaelli, "A new ergotaxonomy of the order Urodela Dumeril, 1805 (Amphibia, Batrachia)," Alytes, Volume 28, Number 3-4, Paris, France, 2012, Pages 77-161.
^ ^a ^b ^c Nikolya A. Poyarkov, Jr., Jing Che, Mi-sook Min, Makaki Kuro-o, Fang Yan, Cheng Li, Koji Iizuka & David R. Vieites, "Review of the systematics, morphology and distribution of Asian Clawed Salamanders, genus Onychodactylus (Amphibia, Caudata: Hynobiidae), with the description of four new species." Zootaxa, 3465, Auckland New Zealand, Magnolia press, 2012, pp. 1-106.
^ ^a ^b Natsuhiko Yoshikawa, and Masahumi Matsui, "A New Salamander of the Genus Onychodactylus from Tsukuba Mountains, Eastern Honshu, Japan (Amphibia, Caudata, Hynobiidae)," Current Herpetology, 32, Kyoto, 2013, pp. 9-25.
^ ^a ^b Natsuhiko Yoshikawa, Masahumi Matsui, Shingo Tanabe, and Takehito Okayama, "Description of a new salamander of the genus Onychodactylus from Shikoku and western Honshu, Japan (Amphibia, Caudata, Hynobiidae)," Zootaxa, Volume 3693, Number 4, 2013, pp. 441-464.
^ ^a ^b Natsuhiko Yoshikawa and Masahumi Matsui, "Two new Salamanders of the genus Onychodactylus from Eastern Honshu, Japan (Amphibia, Caudata, Hynobiidae)," Zootaxa, Volume 3866, Number 1, Auckland New Zealand, Magnolia press, 2014, pp. 53-78.
^ ^a ^b Amaël Borzée, Yucheol Shin, Nikolay A. Poyarkov, Jong Yoon Jeon, Hae Jun Baek, Chang Hoon Lee, Junghwa An, Yoon Jee Hong & Mi-Sook Min, “Dwindling in the mountains: Description of a critically endangered and microendemic Onychodactylus species (Amphibia, Hynobiidae) from the Korean Peninsula,” Zoological Research, Volume 43, Issue 5, Kunming Institute of Zoology, Chinese Academy of Sciences, 2022, Pages 750-755.
^ ^a ^b Natsuhiko Yoshikawa & Masafumi Matsui,“A New Salamander of the Genus Onychodactylus from Central Honshu, Japan (Amphibia, Caudata, Hynobiidae),” Current Herpetology, Volume 4, Issue 1, The Herpetological Society of Japan, 2022, Pages 82-100.
^ Hynobiidae. In: AmphibiaWeb: Information on amphibian biology and conservation. [web application]. 2023. Berkeley, California: AmphibiaWeb. Available: http://amphibiaweb.org/. (Accessed: April 11, 2023).
^ 日本にっぽん産さん爬虫両生類りょうせいるい標準ひょうじゅん和名わみょうリスト（2022年ねん11月6日にち版ばん）・日本にっぽん爬虫両棲類りょうせいるい学会がっかい（2023年ねん4月がつ11日にち閲覧えつらん）
^ ^a ^b 岩沢いわさわ久ひさ彰あきら「桧枝岐ひのえまたにおけるハコネサンショウウオの漁法ぎょほうと燻製くんせい」『爬虫両棲類りょうせいるい学がく雑誌ざっし』第だい6巻かん 4号ごう、日本にっぽん爬虫両棲類りょうせいるい学会がっかい、1976年ねん、p.105-109, doi:10.5358/hsj1972.6.4_105。