ハサン・イブン・アリー

ハサン・イブン・アリー
書道しょどう ハサン・イブン・アリー
生誕せいたん	624年ねん または 625年ねん 2月がつ29日にち ヒジャーズ マディーナ
死没しぼつ	669年ねん 3月26日にち ヒジャーズ マディーナ
死因しいん	毒どく
別名べつめい	イマーム
著名ちょめいな実績じっせき	シーア派はの2番目ばんめのイマーム。 イスラム教いすらむきょうの預言よげん者しゃムハンマドの家族かぞくから。
後任こうにん者しゃ	フサイン・イブン・アリー (イマーム)
子供こども	+13
親おや	アリー・イブン・アビー＝ターリブ(父親ちちおや) ファーティマ(母親ははおや)

ハサン・イブン・アリー・イブン・アビー＝ターリブ（アラビア語ご: حسن بن علي بن أﺑﻲ طالب‎　、624年ねん または 625年ねん 2月がつ29日にち – 669年ねん3月26日にち）は、アリー・イブン・アビー＝ターリブとファーティマ・ザフラーの子こで、ムハンマドの初孫はつまご。スンナ派はからは第だい5代だい正統せいとうカリフとして、また大だい部分ぶぶんのシーア派はムスリムから第だい2代だいイマームとして扱あつかわれるが、弟おとうとフサインを第だい2代だいとして扱あつかうシーア派は分派ぶんぱもある。いずれにしろアフル・アル＝バイト（ムハンマドの「御家おいえ」の人々ひとびと）としてスンナ派は、シーア派はのいずれにおいても重要じゅうような人物じんぶつである。

出自しゅつじ

ハサン・イブン・アリーが生うまれたのは、ヒジュラ（西暦せいれき622年ねん; イスラームの信徒しんとらがマッカからマディーナへと遷ったことを指さす）の約やく2年ねん後ごである。父ちちはムハンマドの従兄弟いとこであり、信頼しんらい厚あついアリー、母はははムハンマドの娘むすめファーティマ・ザフラーであった。

ハサン・イブン・アリーはムハンマドの初孫はつまごに当あたる。シーア派は伝承でんしょうによれば、ハサンの名なは神かみの示唆しさを受うけてムハンマドが名付なづけたものであるという。ハサンはアラビア語ごで「凛々りりしい」を意味いみする。

ハサンと弟おとうとフサインは祖父そふムハンマドに大おおいに愛あいされたといい、これを示しめす多おおくのハディースや口承こうしょう伝承でんしょうが残のこる。またハサンとフサインが楽園らくえんにおいて若者わかものたちの指導しどう者しゃとなるであろうとするハディースもある。シーア派ははハサンを外套がいとうのハディースにおけるの四よん人にんのうちの一人ひとりと信しんじる。

系図けいず

ムハンマド

ハディーシャ

ファーティマ

アリー

ハサン

フサイン

アリ―

カリフ職しょくをめぐって

父ちちカリフ・アリーが現在げんざいのイラク南部なんぶの軍営ぐんえい都市としクーファに没ぼっすると、当地とうちのアリー支持しじ者しゃらはハサンを後継こうけいのカリフとして忠誠ちゅうせいを誓ちかい、アリーとカリフ職しょくを争あらそっていたムアーウィヤの脅威きょういとなった。ムアーウィヤは指揮しき下かにあるシリア、パレスティナ、ヨルダンの指揮しき官かんらに自みずからの勢力せいりょくにつき、闘たたかいに備そなえるよう申もうし渡わたす一方いっぽう、若わかいハサンに対たいし、カリフ職しょく継承けいしょうを断念だんねんするよう書簡しょかんを送おくっている。ハサンにカリフ職しょく継承けいしょうを断念だんねんさせることができれば、ムアーウィヤは内乱ないらんの危機ききを回避かいひすることができる。さらに戦たたかってハサンを屈服くっぷくさせれば、絶対ぜったい的てき権力けんりょくを手中しゅちゅうにすることができるものの正当せいとう性せいに疑問符ぎもんふがつき、問題もんだいが尾おを引ひいてしまうからである。

しかし、交渉こうしょうは進すすまず、ムアーウィヤは6万まんと号ごうされる軍ぐんをハサンに差さし向むけ、一方いっぽうのハサンもこれに対たいして軍ぐんを送おくった。両りょう軍ぐんはサバト近郊きんこうで対峙たいじすることとなる。

この緊張きんちょうの時期じき、ハサンは共同きょうどう体たいの分裂ぶんれつを憎にくみ、支持しじ者しゃらに同意どういできないとしてもなおハサンの命いのちに従したがうよう訴うったえたといわれる。これを降伏ごうぶくへの手配てくばりと捉とらえて、ハサンに反抗はんこうして刃はをむける者ものもいた。ハサンは負傷ふしょうしたものの、忠誠ちゅうせいを誓ちかう兵士へいしらによって守まもられた。これにより反逆はんぎゃく者しゃらを誅ちゅうするを得えたが、ほかにもウバイドゥッラーのようにムアーウィヤにつく指揮しき官かんもいた。

平和へいわの手紙てがみ

両りょう軍ぐんのあいだに数すう度どの衝突しょうとつはあったが、雌雄しゆうを決けっするものではなかった。ムアーウィヤは、戦たたかいが多おおくの人命じんめいを損そこねない人口じんこうを減へらすことを憂慮ゆうりょし、二人ふたりのクライシュ族ぞくの男性だんせいを停戦ていせん交渉こうしょうのため、ハサンの許もとへ送おくった。ハサンも自身じしんが負傷ふしょうし、また自軍じぐん内ないでの不満ふまんの高たかまったことにあわせ、もとより長ながく続つづく内乱ないらんの終結しゅうけつは望のぞむところであり、最終さいしゅう的てきに停戦ていせん交渉こうしょうをもつこととした。スンナ派は学者がくしゃによれば、ハサンは、ムアーウィヤがクルアーンとスンナに従したがうこと、そしてその死後しごにはカリフ職しょく選任せんにんのシューラー（集会しゅうかい）がもたれるべきこと、そしてハサンの支持しじ者しゃに対たいするいかなる報復ほうふくをも禁きんずることを条件じょうけんとしたという。そして、彼かれは自分じぶんのために後継こうけい者しゃを選えらぶべきではありません。シーア派は学者がくしゃはさらに、ムアーウィヤ没後ぼつごハサンが生存せいぞんしていればハサンへ、ハサン没ぼつ後ごであれば弟おとうとフサイン・イブン・アリーにカリフ職しょくを返還へんかんすることも条件じょうけんであったという。

ムアーウィヤはクーファへ進軍しんぐんし、当地とうちのムスリムに自身じしんへの忠誠ちゅうせい（バイア）を要求ようきゅうした。またハサンにも、反抗はんこう的てきなハワーリジュ派はとの戦たたかいにおいてムアーウィヤへの支持しじを強制きょうせいしようとしている。ハサンはこれに対たいして書簡しょかんを送おくったという。「私わたしは、正統せいとうな権利けんりの主張しゅちょうによる戦たたかいさえも、平和へいわと調和ちょうわのために断念だんねんした。そのような私わたしがあなたとともに戦たたかうとお思おもいか」と。

ハサンはスンナ派はカリフか？

ほとんどのカリフ年代ねんだい記きはハサンをカリフに含ふくめない。ハサンがカリフ職しょくを称しょうしたのはごく短期間たんきかんであり、またイスラーム帝国ていこくのわずかな部分ぶぶんに承認しょうにんされたに過すぎず、やがてムアーウィヤのカリフ職しょくを承認しょうにんしている。しかし一部いちぶのスンナ派は史家しか、たとえばスユーティー、イブン・アラビー、イブン・カスィールらはハサンをムアーウィヤの前代ぜんだいカリフとして認みとめる。12イマーム派はシーア派はムスリムでは、ハサンを無む謬の12イマームの一人ひとりとする。

配偶はいぐう者しゃの数かず

ハッサンの妻つまの数かずについては意見いけんの相違そういがあります。

歴史れきし的てき報告ほうこくとそれらの比較ひかくに基もとづいて、マドルングはハッサンの結婚けっこんの歴史れきし的てき順序じゅんじょを述のべており、それによればハッサンの6人にんの女性じょせいとの結婚けっこんは証明しょうめい可能かのうである。

は200人にん以上いじょうという説せつを挙あげている。ガッザーリは、ムハンマドが、ハサンが自分じぶんに似にて、フサインはアリーに似にたと述のべたというハディースを引ひきながら、ハサンの多た婚こんは預言よげん者しゃムハンマドに似にたものであるとしている。

バケル シャリーフは、この点てんに関かんするナレーションの文書ぶんしょを調しらべることにより、これらのナレーションは偽物にせものであり、アッバース朝あさによって作成さくせいされたこのナレーションのグループはハッサン家かに反対はんたいしている可能かのう性せいがあるという結論けつろんに達たっしました。

ウィルフレッド・マドルングは、引用いんようされた数かずをばかげて非ひ現実げんじつ的てきであると説明せつめいしています。マドルングは、6人にんの妻つまが最もっとも正確せいかくな数かずであると考かんがえています。

イラン百科ひゃっか事典じてんによると、ハッサンは他たの人ひととの取引とりひきと同様どうように、妻つまとの取引とりひきにおいて忍耐にんたいと寛大かんだいさを選択せんたくします。

倫理りんり的てき特徴とくちょう

歴史れきし的てきなナレーションによると、ハッサンは外見がいけんと道徳どうとくにおいて預言よげん者しゃに非常ひじょうに似にていたので、ムハンマドは彼かれの説明せつめいの中なかであなたは性格せいかくと気質きしつにおいて私わたしに似にていると言いった。ハッサンが到達とうたつした名誉めいよのピークに到達とうたつした人ひとは誰だれもいない。 彼かれの寛容かんようさは、マーワンの侮辱ぶじょくに対たいする彼かれの行動こうどうなど、バニ・ハシェムの敵てきに直面ちょくめんしても見みることができます。ハッジ・マヌシェリは、そのような場合ばあいのハッサンの寛容かんようは、知性ちせいと状況じょうきょうの正ただしい理解りかいによるものと思おもわれると言いいます。彼かれは自分じぶんの勇気ゆうきをアリ・イブン・アビ・タリブの息子むすこだと考かんがえており、父親ちちおやはハッサンの勇気ゆうきを称賛しょうさんしています。彼かれの禁欲きんよく主義しゅぎと信心しんじん深ふかさは、彼かれが彼かれのすべての富とみを貧まずしい人々ひとびとに数すう回かい分配ぶんぱいしたと伝つたえられているようなものでした。彼かれは死し、復活ふっかつ、そして地獄じごくの説明せつめいを聞きくことによって変容へんようしました。

イラン百科ひゃっか事典じてんでは、ウィルフレッド・マドルングはハッサンがムハンマドの気質きしつを持もっていたと信しんじており、父親ちちおやのアリの政策せいさくを批判ひはんした。

ジャファリアンはそのようなナレーションを偽物にせものだと考かんがえています。彼かれによると、これらのナレーションで提示ていじされた画像がぞうは、アリとアシュラの顔かおを破壊はかいし、オスマン帝国ていこくの傾向けいこうに賛成さんせいした人々ひとびとによって使用しようされた可能かのう性せいがあります。

タバタバイは、ハッサンとフセインの行動こうどうの比較ひかくについて次つぎのように書かいています。

そしてこのようにして、一部いちぶのナレーターが2人ふたり（イマームハッサンとイマームフセイン）が反対はんたいし、イマームフセインとは異ことなり、イマームハッサンが平和へいわを好このんだと言いったことは間違まちがっていることが明あきらかになります。 ある日ひヤズィードと和解わかいしなかったイマーム・フセインは、弟おとうとのイマーム・ハッサン（ムアウィヤと10年ねんも過すごした）のようにムアウィヤの支配しはい下かで10年ねんを過すごし、決けっして反対はんたいしなかったことがわかるからです。

ハサンの死し

ハサンは669年ねん（若干じゃっかんの史料しりょうでは670年ねん）、マディーナに没ぼっしたとするのが史家しかの説せつである。マディーナの預言よげん者しゃモスク（マスジド・アン＝ ナバーウィー）に対たいする有名ゆうめいなジャンナトゥル・バキー墓地ぼちに葬ほうむられた。

毒殺どくさつ説せつ

ほとんどの初期しょきの情報じょうほう源げんは、死因しいんは毒どくであると考かんがえています、とウィルフレッド・マドルングは書かいています。それによるとムアーウィヤはカリフ職しょくを息子むすこヤズィード・イブン・ムアーウィヤへと相続そうぞくすることを望のぞみ、ハサンをその障害しょうがいと考かんがえて殺害さつがいをもくろんだ。ムアーウィヤはハサンの妻つまジャーダ・ビント・アル＝アシュアース・イブン・カイスに通つうじ、毒殺どくさつをけしかけた。ジャーダはムアーウィヤの提案ていあん通どおり、蜂蜜はちみつに毒どくを混まぜ合あわせてハサンに供きょうした、というものである。マデルングは毒どくを盛もったのは、別べつの妻つまスハイル・イブン・アムルの娘むすめ、あるいは従者じゅうしゃによるとする伝承でんしょうについても指摘してきしており（pp. 331-3）、さらにバラーズリーやワーキディーなども引用いんようしている。マデルングは歴史れきし研究けんきゅう者しゃでもシーア派は伝承でんしょうを多おおく受うけ入いれているが、ハサンの毒殺どくさつ説せつについても、有名ゆうめいな初期しょきイスラーム史家しかタバリーが人々ひとびとの信仰しんこうに揺ゆらぎを与あたえることをおそれて隠蔽いんぺいしたものと考かんがえている。

ジャーダは黄金おうごんとヤズィードとの結婚けっこんが約束やくそくされていたという。金銭きんせんと権力けんりょくに誘さそわれた彼女かのじょはダマスカスのムアーウィヤの宮廷きゅうていへと急いそいだ。しかしムアーウィヤは約束やくそくを違ちがえて、別べつの男性だんせいと結婚けっこんさせてしまった、というものである。

一部いちぶのスンニ派はの情報じょうほう筋すじは、ハッサンの死しは病気びょうきによるものであり、ムアーウィヤは何なにもしなかったと述のべています。

新あたらしい研究けんきゅう

2016年ねん、米国べいこくのナシュア大学だいがくのニコール・バークらによる研究けんきゅうチームは、医学いがく的てき毒物どくぶつ学がくの証拠しょうこと歴史れきし的てき文書ぶんしょを調しらべて、ハッサン・ビン・アリの死しの原因げんいんがカロメルによる中毒ちゅうどくであることがわかりました(塩化えんか水銀すいぎん(I))で作つくられたビザンチンでした。 ハッサン・ビン・アリの政治せいじ的てき暗殺あんさつを企くわだてることへのムアーウィヤの関与かんよを証明しょうめいしています。

葬そう地ちをめぐって

破壊はかいされる前まえのバキヤ墓地ぼちにあるハッサンと他たの3人にんのジャンナトゥル・バキー墓地ぼち。

シーア派はでは葬そう地ちを巡めぐって次つぎのようにいう。ハサンはその死しの前まえに、可能かのうであれば祖父そふ・預言よげん者しゃムハンマドに並ならんで葬ほうむってほしいとの願ねがいを口くちにした。当時とうじ、預言よげん者しゃの墓はかのまわりに誰だれかを葬ほうむるについては、ムハンマドの妻つまアーイシャの許可きょかが必要ひつようであった。しかしハサンについてはアーイシャがこれを拒絶きょぜつした。ムアーウィヤに任にんじられたマディーナの統治とうち者しゃは、預言よげん者しゃに並ならんでハサンが葬ほうむられることを防ふせぐために部隊ぶたいを派遣はけんした。こうしてハサンの家族かぞくは別べつの場所ばしょへの埋葬まいそうを余儀よぎなくされ、ジャンナトゥル・バキー墓地ぼちへと埋葬まいそうした。一部いちぶの情報じょうほう筋すじによると、兵士へいしたちはハッサンの遺体いたいに発砲はっぽうした。

ハッサンの墓はか

バキヤ墓地ぼちにあるハッサンと他たの3人にんのジャンナトゥル・バキー墓地ぼち

ハッサンの墓はかは特とくにシーア派はの巡礼じゅんれい地ちとなり、その上うえに大おおきなドームが建たてられました。 しかし、ドームは1806年ねんと1927年ねんにワッハーブ派はによって2度ど破壊はかいされました。

スンナ派はでの評価ひょうか

スンナ派はではハサン・イブン・アリーはアフル・アル＝バイト、そしてサハーバ（教きょう友とも）のひとりとして崇敬すうけいされる。またスンナ派は学者がくしゃの一部いちぶは先述せんじゅつのようにアリーによる指名しめいを根拠こんきょとして、第だい5代だいカリフとしての栄誉えいよを与あたえている。

シーア派はでの評価ひょうか

詳細しょうさいは「シーア派は的てき観点かんてんからのハサン・イブン・アリー」を参照さんしょう

テレビシリーズ: タンハータリーン・サルダールは、ペルシア語ご、アラビア語ご、トルコ語ごおよび同時どうじ音声おんせいによるウルドゥー語ご、字幕じまくスーパーでの英語えいご、スペイン語ご、スワヒリ語ご版はんがある。このシリーズでは、父ちちの悲劇ひげきから説とき起おこし、ハサンをめぐる数々かずかずの政治せいじ的てき事件じけん、イマームとしてのハサン、ムアーウィヤとの停戦ていせん、その死しと埋葬まいそうまでを描えがく。イランの連続れんぞくテレビドラマとして制作せいさくされ、全ぜん19話わ、DVDで7巻かん組ぐみである。

シーア派はではハサン・イブン・アリーについて非常ひじょうに肯定こうてい的てきに扱あつかう。ハサンは第だい2代だいイマームであり、また殉教者じゅんきょうしゃとされる。

関連かんれん項目こうもく

• ムハンマド・イブン・アブドゥッラーフ
• アリー・イブン・アビー＝ターリブ
• ハサン (イスラーム)
• フサイン・イブン・アリー
• シーア派は
• カースィム・イブン・ハサン
• シャリーフ

外部がいぶリンク

• キターブ・アル＝イルシャード, シャイフ・ムフィード著ちょ, I.K.A Howard訳やく :Pages 279 - 289
• http://home.swipnet.se/islam/imamhassan.htm
• The Second Imam
• Sulh al-Hasan The Peace Treaty of al-Hasan by Shaykh Radi Al-Yasin.
• [2]

先代せんだい アリー・イブン・アビー＝ターリブ

12イマーム派はイマーム 661年ねん - 669年ねん

次代じだい フサイン・イブン・アリー