(Translated by https://www.hiragana.jp/)
ピタゴラス音律 - Wikipedia コンテンツにスキップ

ピタゴラス音律おんりつ

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

ピタゴラス音律おんりつ(ピタゴラスおんりつ)は、音階おんかいすべてのおと音程おんてい周波数しゅうはすう3:2の純正じゅんせい完全かんぜんもとづいて導出どうしゅつする音律おんりつである[1]

ピタゴラス音律おんりつ初期しょきルネサンスまでの西洋せいよう音楽おんがく標準ひょうじゅんてき音律おんりつであり、また中国ちゅうごく日本にっぽん伝統でんとう音楽おんがく音律おんりつ同様どうよう原理げんりもとづくものである(さんふん損益そんえきほう)。

ピタゴラス音律おんりつでは純正じゅんせいよん音程おんていられるが、さんろく純正じゅんせいにならない。ルネサンス音楽おんがくにおいてさんろく使用しようえると、せばめることによってさんをより純正じゅんせいちかづけるちゅうぜん音律おんりつ普及ふきゅうした。

方法ほうほう[編集へんしゅう]

れいとしてD)を起点きてんに、上下じょうげに3かいずつ、周波数しゅうはすう3:2の純正じゅんせい完全かんぜん音程おんていにあるおとることをかえすと以下いかのようになる。

F - C - G - D - A - E - B

この7つのおとぜん音階おんかい構成こうせいするおとである。られたおと実際じっさいにはひろ音域おんいきわたっているが、オクターヴ関係かんけいにあるおとにはおなおとめいあたえられるため、オクターヴ単位たんいおとだかうつして、これらを1オクターヴの範囲はんいない配列はいれつすることでピタゴラス音律おんりつによる全音ぜんおんかいられる。

この作業さぎょうをさらに拡張かくちょうしようとすると問題もんだい浮上ふじょうする。同様どうよう作業さぎょうをさらに上下じょうげに3かいずつおこなうと以下いかのようになる。

A♭ - E♭ - B♭ - F - C - G - D - A - E - B - F♯ - C♯ - G♯

12平均へいきんりつにおいてはA♭とG♯のような異名いみょう同音どうおん実際じっさいまったおなおんであるが、このA♭とG♯にはやく23.460セント≒1/4半音はんおんしょうじる。このピタゴラスコンマぶ。

したがって、半音はんおんかい構成こうせいするために、A♭をはぶいてE♭からG♯までの12おともちいた場合ばあい、G♯からE♭への音程おんていは、3:2の比率ひりつによる純正じゅんせい完全かんぜんやく701.955セント)よりもピタゴラスコンマ1つぶんせま音程おんていやく678.495セント)になる。この音程おんていによる和音わおん顕著けんちょうなりしょうじるため、おおかみほえごえたとえてウルフの(en:Wolf interval)とばれる。

ピタゴラス音律おんりつけん
おとめい Dからの音程おんてい 計算けいさんしき 比率ひりつ おおきさ
(セント)
平均へいきんりつとの
(セント)
A げん 588.27 -11.73
E たん 90.225 -9.775
B たんろく 792.18 -7.82
F たんさん 294.135 -5.865
C たんなな 996.09 -3.91
G 完全かんぜんよん 498.045 -1.955
D いち 0.000 0.000
A 完全かんぜん 701.955 1.955
E ちょう 203.91 3.91
B ちょうろく 905.865 5.865
F ちょうさん 407.82 7.82
C ちょうなな 1109.775 9.775
G ぞうよん 611.73 11.73

上記じょうき音律おんりつ長調ちょうちょう音階おんかい構成こうせいすれば以下いかのようになる。

おとめい C D E F G A B C
比率ひりつ 1/1 9/8 81/64 4/3 3/2 27/16 243/128 2/1
間隔かんかく 9/8 9/8 256/243 9/8 9/8 9/8 256/243

音程おんていおおきさ[編集へんしゅう]

Dを起点きてんとしたピタゴラス音律おんりつかく音程おんてい周波数しゅうはすう比率ひりつ音程おんていめい英語えいご略称りゃくしょうれい完全かんぜん→P5)。純正じゅんせい音程おんてい太字ふとじしるし、ウルフの音程おんていあかでハイライトしている。
Dを起点きてんとしたピタゴラス音律おんりつかく音程おんていのセント概数がいすう音程おんていめい英語えいご略称りゃくしょうれい完全かんぜん→P5)。純正じゅんせい音程おんてい太字ふとじしるし、ウルフの音程おんていあかでハイライトしている。

ピタゴラス音律おんりつでは異名いみょう同音どうおんてき音程おんていことなるおおきさをつ。ひょう上記じょうきの12のおとからのかく音程おんてい周波数しゅうはすう比率ひりつとおおよそのセントしめす。

その定義ていぎじょう、ピタゴラス音律おんりつの11の完全かんぜん比率ひりつ3:2、すなわちやく701.955セントである。けんじるためには、平均へいきんりつがそうであるように、12完全かんぜん平均へいきんは700セントであることが要求ようきゅうされるため、 のこる1つはやく678.495セントになる(ウルフの)。このウルフの異名いみょう同音どうおんによるであるため、より正確せいかくにはげんろくである[2]

つまりピタゴラス音律おんりつでは、異名いみょう同音どうおんてき音程おんていにはピタゴラスコンマ1つぶん(やく23.460セント)の存在そんざいする。

ピタゴラス音律おんりつ純正じゅんせいちょうさんたないが、げんよんとして生成せいせいされた音程おんていちょうさん純正じゅんせい音程おんてい(比率ひりつ5:4、やく386.314セント)と僅差きんさ(やく1.954セント)になる。これはピタゴラス音律おんりつちょうさん純正じゅんせいちょうさんであるシントニックコンマ(やく21.506セント)が、ピタゴラスコンマとごくちかいことによる結果けっかである。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ Margo Schulter. “Pythagorean Tuning and Medieval Polyphony”. 2018ねん4がつ7にち閲覧えつらん
  2. ^ Kenneth P. Scholtz, Algorithms for Mapping Diatonic Keyboard Tunings and Temperaments. https://mtosmt.org/issues/mto.98.4.4/mto.98.4.4.scholtz.php

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  • Barbour, J. Murray. "The Persistence of the Pythagorean Tuning System." Scripta Mathematica. 1933, 1:286-304.
  • Lindley, Mark. "Pythagorean intonation." The New Grove Dictionary of Music and Musicians. 2nd ed. London: Macmillan, 2001.

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]