ブーストアップ

ブーストアップ（Boost up）とは、過か給きゅう機き付つきのエンジンにおける改造かいぞう方法ほうほう（チューニング）の一ひとつ。

概要がいよう[編集へんしゅう]

過か給きゅう機き付つきエンジンでは、ターボチャージャーなどの過か給きゅう機きを用もちいてエンジンが吸入きゅうにゅうする空気くうきに圧力あつりょく（過か給きゅう圧あつ、ブースト圧あつ）をかけて押おし込こむことにより、より多おおくの酸素さんそを取とり込こみ、それに見合みあった燃料ねんりょうを供給きょうきゅう（増量ぞうりょう）することで、NAエンジンに比くらべ出力しゅつりょくを増加ぞうかさせている。

一般いっぱん的てきに、過か給きゅう圧あつをより高たかめることでそれに合あわせてエンジン出力しゅつりょくを増加ぞうかさせることができるが、過度かどに過か給きゅう圧あつを高たかめるとノッキングやデトネーションなどの異常いじょう燃焼ねんしょうが発生はっせいするため、ピストンを守まもるために燃焼ねんしょう室しつの圧縮あっしゅく比ひを下さげる必要ひつようがあり、それに伴ともなう低てい回転かいてん域いきでのドライバビリティーや燃費ねんぴの低下ていかが避さけられない。さらに、エンジンやターボチャージャーが耐たえることができる過か給きゅう圧あつには限界げんかいがあり、過か給きゅう圧あつを高たかめすぎるとそれらの耐久たいきゅう性せいが減少げんしょうし、あるいは損傷そんしょうする。

市販しはん車しゃでは、これらのデメリットを回避かいひするために低ひくめの過か給きゅう圧あつが設定せっていされており、その結果けっかとしてエンジンやターボチャージャーは出力しゅつりょく性能せいのうに余力よりょくを持もっている。この余力よりょくを生いかしてエンジンやターボチャージャーの耐久たいきゅう限界げんかいを超こえない程度ていどに過か給きゅう圧あつを高たかめ、デメリットとトレードオフさせ、より高たかいエンジン出力しゅつりょくを得えることをブーストアップという。

ブーストアップの方法ほうほう[編集へんしゅう]

吸気きゅうき抵抗ていこうの低減ていげん
- エアクリーナーの容量ようりょうを上あげる、濾過ろか性能せいのうを低下ていかさせ風気かざけ性せいの良よい物ものに交換こうかんする。
- 吸気きゅうき管かんの内径ないけいや取とり回まわしを適正てきせい化か。
- インタークーラー容量ようりょうの適正てきせい化か。
排気はいき抵抗ていこうの低減ていげん
- タービンのレスポンスや回転かいてん力りょくを向上こうじょうさせる、適切てきせつなエキゾーストマニホールドの選択せんたく。
- マフラーの容量ようりょう拡大かくだいを含ふくめ、排気はいき管かんの内径ないけいの適正てきせい化か。
過か給きゅう圧あつの制御せいぎょ
- ブーストコントローラーを装備そうびし、最さい大過たいか給きゅう圧あつを変更へんこうする。
- アクチュエーターやウェイストゲートバルブなどのバイパスバルブ本体ほんたいやばねを強化きょうか品ひんに変更へんこうする。
- 調整ちょうせい式しきバイパスバルブの場合ばあいは、それを調整ちょうせいして最さい大過たいか給きゅう圧あつを変更へんこうする。

メリット[編集へんしゅう]

特筆とくひつすべき点てんは「パワー的てきに失うしなう物ものが無ない」という事ことである。タービン交換こうかんの場合ばあいは、ある回転かいてん域いきでの出力しゅつりょくは向上こうじょうしても、全域ぜんいきでは望のぞむような出力しゅつりょく特性とくせいとならないことが多おおい。しかしブーストアップでは、ノーマルを一回ひとまわり太ふとらせたような（排気はいき量りょうを拡大かくだいしたような）特性とくせいとなることが多おおく、ドライバビリティー低下ていかの心配しんぱいが少すくない。

日産にっさん・RB26DETT型かたエンジンでは、ブーストアップのみで500ps（ノーマルは自主じしゅ規制きせい値ちの280ps）を超こえる例れいもあり、タービン交換こうかんにも引ひけを取とらないパワーを得えることが出来できる。

デメリット[編集へんしゅう]

ブーストアップは、安全あんぜんの為ためのリミッターを外はずす（もしくは変更へんこうする）事ことと同義どうぎであり、自動車じどうしゃメーカーの計算けいさんにより設定せっていされたエンジンやタービンへの保護ほご機能きのうを意図いと的てきに狂くるわす事ことになるため、これを実行じっこうしてそれらを破損はそんしたとしても、メーカー保証ほしょうの対象たいしょう外がいとなる。また、特とくに使用しよう過程かてい車しゃではエンジンの状態じょうたいに個体こたい差さが大おおきく、同おなじ過か給きゅう圧あつ設定せっていでも寿命じゅみょうが大おおきく異ことなる場合ばあいがある。

また、エンジンの燃焼ねんしょうエネルギーの増大ぞうだいに伴ともない、熱ねつの発生はっせいが多おおくなる。そのため、冷却れいきゃく系けい（ラジエーター、オイルクーラー、インタークーラー）の能力のうりょくを向上こうじょうさせる必要ひつようがある。車両しゃりょうによっては燃料ねんりょうポンプやインジェクターの供給きょうきゅう容量ようりょうが要求ようきゅう量りょうに追おいつかなくなり、交換こうかんしなければならないこともある。

また、大幅おおはばなブーストアップを行おこなった場合ばあい、標準ひょうじゅんのエンジンコントロールユニット（ECU）が増加ぞうかした空気くうきの流入りゅうにゅう量りょうを認識にんしきできず、適切てきせつな空そら燃もえ比ひ調整ちょうせいができなくなることがある。その場合ばあい、相対そうたい的てきに燃料ねんりょうが不足ふそくする「リーン」状態じょうたいとなり、期待きたいしたほどにパワーが上あがらないばかりか、燃料ねんりょうの気化きかによる燃焼ねんしょう室しつまわりの冷却れいきゃくが不足ふそくし、ピストンやバルブの溶解ようかいを引ひき起おこすなど、致命ちめい的てきな故障こしょう（エンジンブロー）につながることがある。大幅おおはばなブーストアップを行おこなうときには、ECUの燃料ねんりょうマッピングデータを書かき換かえる、もしくはチューニング専用せんようコントロールユニットに交換こうかんし、吸入きゅうにゅう空気くうき量りょうに見合みあった燃料ねんりょうの供給きょうきゅう量りょうとする必要ひつようがある。

スーパーチャージャーにおけるブーストアップ[編集へんしゅう]

過か給きゅうするという点てんではスーパーチャージャーも同様どうようである。スーパーチャージャーの場合ばあいはバイパスバルブに当あたる存在そんざいは無ないが、プーリーを変更へんこうし、スーパーチャージャーの回転かいてん数すうを変更へんこうする事ことによって過か給きゅう圧あつを調整ちょうせいすることが可能かのうである。この場合ばあい、失うしなうパワーは少すくない（駆動くどう損失そんしつがやや増ふえる）が、燃費ねんぴの悪化あっかは避さけられない。