ブービートラップ

ブービートラップ（booby trap）は、戦争せんそうにおける戦術せんじゅつの一種いっしゅ。自陣じじんに侵攻しんこうする勢力せいりょくに対たいし、撤退てったいする部隊ぶたいやゲリラ組織そしきが残のこしたり、警戒けいかい線せんに張はっておく罠わな（トラップ：trap）のこと。一見いっけん無害むがいに見みえるものに仕掛しかけられ、油断ゆだんした兵士へいし（まぬけ：booby）が触ふれると爆発ばくはつし殺傷さっしょうする。また、爆発ばくはつ物ぶつではなく、スパイク状じょうのもので殺傷さっしょうする猟師りょうしの用もちいる罠わなに類似るいじしたものや、銃弾じゅうだんが発射はっしゃされるものもこれに含ふくまれる。

解説かいせつ

前線ぜんせんにおける地雷じらいと同様どうようの木々きぎの間隙かんげきに張はったワイヤーと手榴弾しゅりゅうだんなどを用もちいた仕掛しかけ爆ばく弾だんなどが連想れんそうされるが、落おとし穴あななど原始げんし的てきな罠わなから、箱はこ型がた地雷じらいの蓋ぶたやクレイモア地雷じらいの足あしの間あいだに手榴弾しゅりゅうだんを仕掛しかけるなど既存きそんの罠わなを応用おうようした物もの、瓦礫がれきや死体したいが散乱さんらんした戦場せんじょう跡あとで、兵器へいきや食料しょくりょうなどの必要ひつよう物資ぶっし、日にち用品ようひんや貴重きちょう品ひんなどの兵士へいしにとって戦利せんり品ひんになりそうなものなどの残留ざんりゅう物ぶつに仕掛しかけ、占領せんりょう軍ぐんの兵士へいしがそれらを鹵獲ろかく・無力むりょく化か（もしくは私物しぶつ化か）しようと手てを出だすと、内蔵ないぞうされた爆薬ばくやくやワイヤーで繋つながれた手榴弾しゅりゅうだんなどの爆発ばくはつ物ぶつが爆発ばくはつするなど、連動れんどうしていた殺傷さっしょう性せいの仕掛しかけが起動きどうする意表いひょうをついた物ものなど多岐たきに渡わたる。撤退てったい後ごという非ひ戦闘せんとう状じょう況きょう下かでの相手あいての心理しんり的てき余裕よゆうを巧妙こうみょうに利用りようした物ものも多おおく、殺傷さっしょう能力のうりょくは低ひくく戦局せんきょくを覆くつがえすほどの兵器へいきではないが、占領せんりょう側がわを疑心暗鬼ぎしんあんきに陥おとしいれ、精神せいしん的てきにストレスを与あたえる効果こうかが望のぞめる。よって、奪うばわれた建物たてものや物資ぶっしを敵てきに使用しようされにくくするためなどにも使つかわれる。日本にっぽんではベトナム戦争せんそう中なか、アメリカ軍ぐんに対たいし劣勢れっせいなベトコンが用もちいたゲリラ戦術せんじゅつとして有名ゆうめいになった。

1850年代ねんだいにアメリカで使つかわれだした軍事ぐんじ用語ようごであり、語源ごげんについてはいくつか説せつがある。

• カツオドリ（booby）を獲えるために猟師りょうしなどが使用しようした罠わな。
• ガラパゴス諸島しょとうの棘とげの多おおい低木ていぼくにカツオドリが突つっ込こみ出でられなくなったのを見みた欧米おうべい人じんが命名めいめいした。

日本にっぽんでは一時期いちじき「間抜まぬけ落おとし」「偽装ぎそう爆ばく弾だん」などの訳語やくごが使つかわれていたが、やがて「ブービートラップ」そのものが外来がいらい語ごとして定着ていちゃくした。

アイヌは獣ししが通過つうかすると仕掛しかけた糸いとが引ひかれて毒矢どくやが発射はっしゃされるアマッポを狩猟しゅりょうに利用りようしていたが、人間にんげんがかかった事例じれいも多おおく報告ほうこくされている。

使用しようされた例れい

海兵かいへい隊たいの博物館はくぶつかんに展示てんじされているパンジステーク

• 第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん中なか、倉庫そうこや工場こうじょうの体重たいじゅう計けいは撤退てったいする際さいに爆ばく弾だんを仕掛しかけられた。占領せんりょうした兵士へいしは同僚どうりょうと体重たいじゅうを比くらべたくなり、罠わなにかかった。

• 第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん中なかのワルシャワ・ゲットー蜂起ほうき時とき、ユダヤ人じんのゲリラは建物たてものの地下ちか室しつにブービートラップを設置せっちし、ドイツ側がわに犠牲ぎせい者しゃを出だした。一方いっぽう、ドイツ側がわは解除かいじょの手間てまを省はぶくため、建物たてものごと砲撃ほうげきや爆ばく撃げきで破壊はかいする手法しゅほうに転換てんかんした。

• 硫黄いおう島とうの戦たたかいにおいて、本土ほんど防衛ぼうえいのために持久じきゅう戦せんを強しいられた日本にっぽん軍ぐんの守備しゅび隊たいは、アメリカ軍ぐんの兵力へいりょくと戦意せんいを消耗しょうもうさせるために自軍じぐんの遺留いりゅう品ひんなどにトラップを仕掛しかけた。また、小ちいさな祠ほこらなど「米べい軍兵ぐんびょうが土産みやげにと手てに取とりそうなもの」によくブービートラップが仕掛しかけられていた。

• 実際じっさいの殺傷さっしょう能力のうりょくは無ないが、日本にっぽん軍ぐんが撤退てったいの折おりにペスト患者かんじゃ隔離かくり施設しせつの看板かんばんを設置せっちして戦闘せんとう継続けいぞく能力のうりょくを阻害そがいする作戦さくせんも同種どうしゅの罠わなとされている。（キスカ島とう撤退てったい作戦さくせん）

• ベトナム戦争せんそう時とき、死亡しぼうした米兵べいへいの死体したいの下したに爆ばく弾だんが敷しかれ、米兵べいへいが死体したいを回収かいしゅうしようとすると爆発ばくはつした。ベトナムでは他たに、落おとし穴あなの底そこに釘くぎや竹槍たけやり・杭くいを設置せっちして殺傷さっしょうする火薬かやくを用もちいないトラップ（パンジ・スティック）も多用たようされ、一部いちぶには人糞じんぷんなどを塗付ぬりつけして黴菌ばいきんによる感染かんせん症しょうを狙ねらったものもあった。
• 2022年ねんロシアのウクライナ侵攻しんこうでは、撤退てったいしたロシア軍ぐんがブービートラップを多おおく仕掛しかけており、特とくにヘルソンではインフラの破壊はかいに加くわえ、約やく2000個この地雷じらいとブービートラップが確認かくにんされている。

関連かんれん項目こうもく

• 鉤かぎ縄なわ - トラップ破壊はかい用ように工兵こうへいが使用しようする。
• ゲリラ

外部がいぶリンク

• The Straight Dope: What's the origin of "booby trap"?