ペディメント

ペディメント(pediment)とは西洋せいよう建築けんちくにおける切妻きりづま屋根やねの、妻つま側がわ屋根やね下部かぶと水平すいへい材ざいに囲かこまれた三角形さんかっけいの部分ぶぶんである。切きり妻づまの壁面へきめんのこと。切きり妻づまで囲かこわれた三角形さんかっけいの面めんのことをギリシャ語ごで「テュンパノン」といい、この面めんに装飾そうしょくがほどこされる^[1]。ペディメントは開口かいこう部ぶの装飾そうしょくにも使つかわれ、三角形さんかっけいの頂いただき部ぶを離はなしてつくったものをブロークン・ペディメントという^[1]。

日本にっぽん建築けんちくの「破風はふ（はふ）」に該当がいとうする。

概説がいせつ[編集へんしゅう]

ペディメントは、古典こてん的てきな神殿しんでん形式けいしきの正面しょうめんにおける重要じゅうような要素ようそであり、開口かいこう部ぶの頂いただき部ぶに用もちいられることが多おおい。多おおくの場合ばあいでポルティコ（柱廊ちゅうろう玄関げんかん）の上うえに位置いちしている。窓まどや戸と枠わくの建築けんちく的てきなモチーフとしても用もちいられ、墓碑ぼひや記念きねん碑ひにも使つかわれている。古典こてん建築けんちくにおいて、三角形さんかっけいもしくは断片だんぺん的てきなペディメントによってつくられる空間くうかんをテュンパノンという。通常つうじょうは面めんが奥おくに後退こうたいして、主おもに造形ぞうけい的てきな彫刻ちょうこくで装飾そうしょくが施ほどこされている。中世ちゅうせいの建築けんちくでは２ふたつの小ちいさなアーチに支ささえられたアーチの上うえの装飾そうしょくを伴ともなうことが多おおく、ふさがれた部分ぶぶんを指さす。また、水平すいへいなリンテルとそれを囲かこんだ上部じょうぶのアーチの間あいだの装飾そうしょくされた空間くうかんも指さす。

歴史れきし[編集へんしゅう]

古代こだいギリシアの神殿しんでん建築けんちくが原型げんけいと考かんがえられている。それらは、緩ゆるやか勾配こうばいの切妻きりづま屋根やねを持もち、妻つま側がわが正面しょうめんとされたためペディメントは正面しょうめんの象徴しょうちょうと解かいされた。ペディメントには丸まる彫ほりの彫刻ちょうこくなどが施ほどこされることもあった。古代こだいローマは、ギリシアに倣ならい、ペディメントのある建築けんちくを作つくったが、それは神殿しんでんに限かぎらず、集会しゅうかい場じょうなどにも用もちいられた。

中世ちゅうせいにおいてペディメントはほとんど用もちいられなかったが、ルネサンスにおいて再ふたたび多用たようされるようになった。教会きょうかい・公共こうきょう施設しせつの正面しょうめん入いり口くちに取とり付つけられ、正面しょうめん性せいの強調きょうちょうの意味いみで使つかわれることが多おおかった。基本きほん的てきに古代こだいギリシアの形態けいたいを守まもっていたが、勾配こうばいが強つよくなったことと、ペディメントに彫刻ちょうこくを施ほどこすことがほとんど無なくなったことなどの変化へんかがある。しかし設置せっちされる場所ばしょは、古代こだいギリシアがコロネード（列れつ柱ばしら）の上うえと決きまっていたのに対たいし、柱はしらと無関係むかんけいに取とり付つけられることが多おおく、エディクラの上部じょうぶに用もちいられることもあった。

バロック時代じだいになると、ペデイメントは弓形きゅうけいの物ものや一部いちぶ欠かけたもの（ブロークン・ペディメント）も登場とうじょうし、ペディメントは本来ほんらいの形かたちを失うしなっていったが、新しん古典こてん主義しゅぎの時代じだいには古代こだいギリシアの原型げんけいに近ちかい形かたちでペディメントが扱あつかわれだし、現在げんざいに至いたっている。アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくのホワイトハウスや議事堂ぎじどうなどがその例れいである。

特徴とくちょう[編集へんしゅう]

ペディメントは、セグメンタル・ペディメント、ブロークン・ペディメント、オープン・ペディメント、スクロールド・ペディメント、スワンネック・ペディメントがある。セグメンタル・ペディメントとは三角形さんかっけいのペディメントと似にているが、三角形さんかっけいの形状けいじょうが平たいらな曲線きょくせんになっているものをいう。ブロークン・ペディメントとはバロック建築けんちくで多用たようされるものの１ひとつで、下部かぶのコーニスが中央ちゅうおう部ぶで断絶だんぜつしたものをいう。隙間すきまは冠状かんじょうの装飾そうしょくで施ほどこされることが多おおい。オープン・ペディメントとは上部じょうぶの斜ななめのコーニスが断絶だんぜつしたものをいい、頂いただき部ぶが開ひらいているため端はし部ぶが中心ちゅうしんで重かさならない、テュンパノンまたはセグメンタル・ペディメントをいう。このブロークン・ペディメントとオープン・ペディメントは全すべてを総称そうしょうしてブロークン・ペディメントといわれることが多おおい。スクロールド・ペディメントとは開口かいこうのあるセグメンタル・ペディメントと似にているが、端はし部ぶが内うち向むきの渦巻うずまき形がたになっているものをいう。スワンネック・ペディメントとはスクロールド・ペディメントと類似るいじするが、２ふたつの向むかい合あう平たいらなS字形じけいの曲線きょくせんで構成こうせいされたものをいう。