ボートゥール (航空機こうくうき)

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ボートゥールIIN

S.O.4050ボートゥール (Vautour) は、フランスシュド・ウエスト(SNCASO)しゃ開発かいはつした戦闘せんとう爆撃ばくげきである。主翼しゅよく両側りょうがわにエンジンポッドを配置はいちした双発そうはつジェット機じぇっときで、胴体どうたい前後ぜんごにタンデムしき降着こうちゃく装置そうちゆうしていた[1]1952ねんはつ飛行ひこうし、そのすぐに量産りょうさん命令めいれいされた。

量産りょうさんがたボートゥールIIばれ、1979ねんまで運用うんようされた。全天候ぜんてんこう戦闘せんとうがた攻撃こうげきがたばくげきがたの3つの型式けいしきがあったが、生産せいさんすうやく半分はんぶん全天候ぜんてんこう戦闘せんとうがたであった。なお、「ボートゥール」は英語えいごの「ヴァルチャー」と同様どうようハゲタカという意味いみである。

概要がいよう[編集へんしゅう]

低空ていくう爆撃ばくげき全天候ぜんてんこう迎撃げいげき近接きんせつ戦術せんじゅつ支援しえん偵察ていさつとして兼用けんようできる航空機こうくうきというフランス空軍くうぐん要求ようきゅうもとづいて、1951ねん6がつから設計せっけい開始かいし単座たんざ攻撃こうげきがたのAがたふく爆撃ばくげきがたのBがたふく全天候ぜんてんこう戦闘せんとうがたのCがたの3しゅがあり、最初さいしょにCがた試作しさくSO.4050-01が1952ねん10月16にちはつ飛行ひこうした。その、Aがた試作しさくSO.4050-02が1953ねん12月16にちに、Bがた試作しさくSO.4050-03が1954ねん12月5にちはつ飛行ひこうし、6ぜん量産りょうさんがた製造せいぞうのち1957ねん量産りょうさん開始かいしされた。ただしCがた量産りょうさんにNがた名称めいしょう変更へんこうされている。

Aがたは30mm機関きかんほう4もん固定こてい武装ぶそうとし、胴体どうたいないばくだん主翼しゅよくばくだん搭載とうさい可能かのうだった。しかし30製造せいぞうされたAがたはフランス空軍くうぐんでは実戦じっせん配備はいびされず、試験しけんとして使用しようされた。

Bがた機首きしゅばくげきしゅようのキャノピーがあるのが特徴とくちょうで、ばくだん搭載とうさいりょうはAがたおなじであった。40製造せいぞうされ、フランス空軍くうぐんはつかく攻撃こうげきとしてミラージュIV配備はいびされるまで戦略せんりゃく航空こうくう軍団ぐんだん使用しようされた。

Nがた機首きしゅにレーダーを搭載とうさいし、30mm機関きかんほう4もんくわえてばくだん転用てんようした兵器へいきに68mmロケットだんを116はつ携行けいこうできた。のち主翼しゅよくR.511英語えいごばんフランス語ふらんすごばんそら対空たいくうミサイル装備そうび可能かのうになっている。当初とうしょは140発注はっちゅうがあったが製造せいぞうされたのは70で、そのおおくはだい30全天候ぜんてんこう航空こうくうだん配備はいびされた。

イスラエルにおける運用うんよう[編集へんしゅう]

ボートゥールIIは母国ぼこくフランス以外いがいではイスラエル輸出ゆしゅつされており、1967ねん第三次中東戦争だいさんじちゅうとうせんそう実戦じっせん投入とうにゅうされている。

イスラエル空軍くうぐんへの導入どうにゅう契約けいやくかくタイプあわせて28)は1957ねんおこなわれ、1958ねんに17のAがたと4のBがたラマト・ダヴィド空軍くうぐん基地きちだい110飛行ひこうたいに、6[2]のNがたテルノフ空軍くうぐん基地きちだい119飛行ひこうたい配備はいびされた。1963ねんになるとだい119飛行ひこうたいのNがただい110飛行ひこうたい移管いかんされたが、このさいNがた夜間やかん戦闘せんとうようレーダーははずされ、Aがたおな対地たいち攻撃こうげきとして運用うんようされることとなった。

1967ねん第三次中東戦争だいさんじちゅうとうせんそうだい110飛行ひこうたいのAがたおよびNがた実戦じっせん投入とうにゅうされ、初日しょにちに1がシリア上空じょうくう撃墜げきついされたが、翌日よくじつにはイラクぐんホーカー ハンター撃墜げきついする戦果せんかげた。これはボートゥールによる唯一ゆいいつそら対空たいくう戦闘せんとうにおける撃墜げきつい記録きろくである。イスラエル空軍くうぐんのボートゥールIIは1970ねんから1972ねんにかけて退役たいえきし、アメリカせいA-4 スカイホーク更新こうしんされた。

派生はせいがた[編集へんしゅう]

  • ボートゥールⅡA:機関きかんほうばくだんおも武装ぶそうにした単座たんざ長距離ちょうきょり仕様しよう戦闘せんとう攻撃こうげきがた
  • ボートゥールⅡN:2座席ざせき全天候ぜんてんこうがた迎撃げいげきで、機首きしゅにDRAC-25AIまたはDRAC-32AIレーダーを装備そうびする。機関きかんほうそら対空たいくうミサイル、および誘導ゆうどうロケットを装備そうび
  • ボートゥールⅡ-1N:仕様しようあらためたⅡN。
  • ボートゥールⅡB:内部ないぶ翼下よくかのパイロンにばくだんはこぶための、ガラス張がらすばりの機首きしゅそなえたふくばくげき
  • ボートゥールⅡBR:カメラを装備そうびした偵察ていさつがた
  • ボートゥールⅡBN:ECM機器きき搭載とうさいした電子でんし戦機せんきがた
  • ボートゥールⅡB-Ⅱ:標的ひょうてき曳航えいこうがた

スペック[編集へんしゅう]

三面さんめん
  • 全長ぜんちょう: 15.57 m
  • ぜんはば: 15.10 m
  • 全高ぜんこう: 4.94 m
  • つばさ面積めんせき: 45.0 m2
  • 空虚くうきょ重量じゅうりょう: 14,900 kg
  • 最大さいだい離陸りりく重量じゅうりょう: 20,700 kg
  • エンジン: スネクマ アター101E-3ターボジェットエンジン×2 推力すいりょく3,500kg
  • 最大さいだい速度そくど: 951 km/h
  • 航続こうぞく距離きょり: 2,420 km
  • 武装ぶそう:
  • DEFA 30mm機関きかんほう×4もん
  • 68mmロケットだん×116はつ
  • 450kgばくだん×6はつ
  • SNEB 68mmロケットだん×4はつ
  • R.530短距離たんきょりそら対空たいくうミサイル×4はつ
  • ナパームだん×4はつ(翼下よくかパイロン)
  • カメラパック(偵察ていさつがた)
  • 1,500リットル内部ないぶ燃料ねんりょうタンク(ばくだんそう内蔵ないぞう)
  • 翼下よくかぞうそう×2ほん
  • 乗員じょういん: 1めい(一部いちぶは2めい)


  • かく形式けいしき側面そくめん

脚注きゃくちゅう出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ アメリカB-47ばくげきおな構造こうぞうである
  2. ^ 導入どうにゅう契約けいやくは7であったが輸送ゆそうちゅうに1墜落ついらくした。

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]