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メナキノン (menaquinone; MK)は、2-メチル-1,4-ナフトキノン の3位 い をプレニル化 か した化合 かごう 物 ぶつ の総称 そうしょう 。主 しゅ として原核 げんかく 生物 せいぶつ が合成 ごうせい し、嫌気 いやけ 的 てき 呼吸 こきゅう 鎖 くさり においてユビキノン に相当 そうとう する電子 でんし 伝達 でんたつ 体 たい として機能 きのう している。また動物 どうぶつ 体内 たいない ではガンマグルタミルカルボキシラーゼ の補 ほ 因子 いんし として働 はたら くことから、ビタミンK2 とも呼 よ ばれる。
メナキノンはプレニル側 がわ 鎖 くさり の長 なが さによってメナキノン-4、メナキノン-7の様 よう に区別 くべつ される。この数字 すうじ は側 がわ 鎖 くさり を構成 こうせい するイソプレン単位 たんい の数 かず を表 あらわ しており、それぞれMK-4、MK-7のように略記 りゃっき する。原核 げんかく 生物 せいぶつ が呼吸 こきゅう に用 もち いるメナキノンは通常 つうじょう MK-6からMK-10の範囲 はんい であるが、MK-14までが知 し られている。一方 いっぽう 、多 た 細胞 さいぼう 動物 どうぶつ は食餌 しょくじ から摂取 せっしゅ したビタミンKを体内 たいない でMK-4に変換 へんかん して用 もち いている。
通常 つうじょう プレニル側 がわ 鎖 くさり は全 すべ て不 ふ 飽和 ほうわ であるが、生物 せいぶつ によって部分 ぶぶん 的 てき もしくは完全 かんぜん に[1] 飽和 ほうわ した側 がわ 鎖 くさり を持 も つものがある。特 とく に1ヶ所 かしょ 飽和 ほうわ したものをジヒドロメナキノン と呼 よ ぶ。またプレニル側 がわ 鎖 くさり の二 に 重 じゅう 結合 けつごう は通常 つうじょう 全 すべ てがトランス型 がた であるが、シス型 がた の異性 いせい 体 たい を持 も つ生物 せいぶつ も知 し られている。珍 めずら しい例 れい としては側 がわ 鎖 くさり にカルボニル基 もと を含 ふく むクロロビウムキノン が挙 あ げられる。[2]
またナフトキノン 骨格 こっかく に修飾 しゅうしょく を受 う けた化合 かごう 物 ぶつ を利用 りよう する生物 せいぶつ も知 し られている。
メチルメナキノン (methylmenaquinone; MMK)
デメチルメナキノン(demethylmenaquinone; DMK)
ジメチルメナキノン(dimethylmenaquinone; DMMK)
メチオナキノン(methionaquinone; MTQ)
ナフトキノン骨格 こっかく とプレニル側 がわ 鎖 くさり を別々 べつべつ に合成 ごうせい し、プレニル基 もと 転移 てんい 酵素 こうそ で両者 りょうしゃ を結合 けつごう する。
ナフトキノン骨格 こっかく はシキミ酸 さん 経路 けいろ を通 とお ってコリスミ酸 さん を基質 きしつ として合成 ごうせい されるが、それ以降 いこう は2種類 しゅるい の合成 ごうせい 経路 けいろ が知 し られている。1つ目 め はmen 遺伝子 いでんし 群 ぐん による経路 けいろ で、7段階 だんかい を経 へ て1,4-ジヒドロキシ-2-ナフタレンカルボン酸 さん (DHNA)に至 いた る。もう1つはフタロシン経路 けいろ で、コリスミ酸 さん とイノシン などからフタロシン を経由 けいゆ して4段階 だんかい でDHNAに至 いた る。
プレニル側 がわ 鎖 くさり の合成 ごうせい にはピルビン酸 さん とグリセルアルデヒド-3-リン酸 さん から非 ひ メバロン酸 さん 経路 けいろ を経由 けいゆ する(真正 しんしょう 細菌 さいきん )か、アセチルCoA からメバロン酸 さん 経路 けいろ を経由 けいゆ する(古 こ 細菌 さいきん や一部 いちぶ の真正 しんせい 細菌 さいきん )。
DHNAと様々 さまざま な長 なが さのプレニル二 に リン酸 さん をプレニル基 もと 転移 てんい 酵素 こうそ で結合 けつごう し、最後 さいご に2位 い をメチル化 か することで還元 かんげん 型 がた メナキノンが合成 ごうせい される。
原核 げんかく 生物 せいぶつ において、メナキノンの主 しゅ たる機能 きのう は呼吸 こきゅう 鎖 くさり や光化学 こうかがく 系 けい における電子 でんし 伝達 でんたつ 体 たい である。原核 げんかく 生物 せいぶつ の呼吸 こきゅう 鎖 くさり は非常 ひじょう に多様 たよう であるが、多 おお くの生物 せいぶつ がNADH:メナキノン酸化 さんか 還元 かんげん 酵素 こうそ を持 も っている。これはミトコンドリア の呼吸 こきゅう 鎖 くさり 複 ふく 合体 がったい Iと相 あい 同 どう なタンパク質 たんぱくしつ 複 ふく 合体 がったい で、NADHを酸化 さんか しメナキノンを還元 かんげん する際 さい に細胞 さいぼう 膜 まく を挟 はさ んでプロトンを輸送 ゆそう する。こうして生 しょう じるプロトン勾配 こうばい を利用 りよう してATPが合成 ごうせい される。ほかに補 ほ 酵素 こうそ F420 、リンゴ酸 さん 、ピルビン酸 さん などがメナキノンに対 たい して電子 でんし を供給 きょうきゅう する。
生 しょう じた還元 かんげん 型 がた メナキノン(メナキノール)は、他 た の化合 かごう 物 ぶつ に電子 でんし を渡 わた してメナキノンに戻 もど る。例 たと えばメナキノール:フマル酸 さん 酸化 さんか 還元 かんげん 酵素 こうそ はミトコンドリアの呼吸 こきゅう 鎖 くさり 複 ふく 合体 がったい IIと相 あい 同 どう なタンパク質 たんぱくしつ 複 ふく 合体 がったい で、メナキノールをメナキノンに酸化 さんか すると共 とも にフマル酸 さん をコハク酸 さん へと還元 かんげん する。
メナキノンは酸化 さんか 還元 かんげん 電位 でんい (Eo ')が-74 mVとユビキノン よりも低 ひく い。このため酸素 さんそ 分子 ぶんし の存在 そんざい 下 か では自発 じはつ 的 てき に酸化 さんか 状態 じょうたい になるため電子 でんし 伝達 でんたつ 体 たい としては機能 きのう できず、より還元 かんげん 的 てき (嫌気 いやけ 的 てき )環境 かんきょう における電子 でんし 伝達 でんたつ 体 たい として機能 きのう する。地球 ちきゅう の歴史 れきし 上 じょう 、原生代 げんせいだい 以前 いぜん は大気 たいき 中 ちゅう の酸素 さんそ 濃度 のうど が低 ひく かったことからほぼ全 すべ ての生物 せいぶつ がメナキノンを利用 りよう しており、およそ6億 おく 年 ねん 前 まえ 以降 いこう に酸素 さんそ 濃度 のうど が上昇 じょうしょう するに従 したが ってユビキノンを利用 りよう できる生物 せいぶつ が広 ひろ がったと考 かんが えられる。メナキノンのような低 てい 電位 でんい キノンから、ユビキノンのような高 こう 電位 でんい キノンへの移行 いこう は、原核 げんかく 生物 せいぶつ のいくつかの系統 けいとう で独立 どくりつ に起 お こったと考 かんが えられている。[2]
^ Tindall BJ et al. (1989). “A Novel, Fully Saturated Menaquinone from the Thermophilic, Sulphate-reducing Archaebacterium Archaeoglobus fulgidus ”. Microbiology 135 (3): 693-696. doi :10.1099/00221287-135-3-693 .
^ a b Nowicka B & Kruk J (2010). “Occurrence, biosynthesis and function of isoprenoid quinones”. Biochim Biophys Acta 1797 (9): 1587-1605. doi :10.1016/j.bbabio.2010.06.007 .