プレニル化か

プレニル化か反応はんのう（Prenylation）とは、疎水そすい性せいのプレニル基もとを付加ふかする反応はんのうのことである。 プレニル基もとはグリコシルホスファチジルイノシトールなどのように、タンパク質たんぱくしつの細胞さいぼう膜まくへの結合けつごうを促進そくしんすると考かんがえられている。

プレニル基もと

C-5, ジメチルアリル基もと

プレニル基もととは、炭素たんそ数すう5のイソプレン単位たんいで構成こうせいされる構造こうぞう単位たんいの総称そうしょうで、各かくプレニル基もとにはイソプレン単位たんい数すうによって次つぎの表ひょうのような呼よび名ながついている。

プレニル基もとの名称めいしょう

イソプレン単位たんい数すう	炭素たんそ数すう	プレニル基もとの名称めいしょう
1	C5	ジメチルアリル基もと
2	C10	ゲラニル基もと
3	C15	ファルネシル基もと
4	C20	ゲラニルゲラニル基もと
5	C25	ゲラニルファルネシル基もと
6	C30	ヘキサプレニル基もと
8	C40	オクタプレニル基もと
10	C50	デカプレニル基もと

母はは核かくとなる有機ゆうき化合かごう物ぶつの生理せいり活性かっせいが、プレニル基もとがヒゲのように修飾しゅうしょくする長ながさや位置いちの違ちがいによってさまざまに変化へんかすることが知しられている。

タンパク質たんぱくしつのプレニル化か

タンパク質たんぱくしつのプレニル化かは、プレニル基もとがタンパク質たんぱくしつのC末端まったんのシステイン残ざん基もとに結合けつごうすることによって起おこる。細胞さいぼう内ないでのプレニル化かには3つのプレニル基もと転移てんい酵素こうそが関与かんよする。

ファルネシルトランスフェラーゼとゲラニルゲラニルトランスフェラーゼI

ファルネシルトランスフェラーゼとゲラニルゲラニルトランスフェラーゼIはとてもよく似にたタンパク質たんぱくしつである。両方りょうほうとも2つのサブユニットからなり、αあるふぁサブユニットは共通きょうつうしているが、βべーたサブユニットの相あい同性どうせいはちょうど25%である。これらの酵素こうそは標的ひょうてきタンパク質たんぱくしつのC末端まったんのCaaXボックスを認識にんしきする。Cはプレニル化かされたシステイン残ざん基もと、aは任意にんいの脂肪しぼう族ぞくアミノ酸あみのさん、そしてXがどちらの酵素こうそが作用さようするか決定けっていするアミノ酸あみのさんである。

Rabゲラニルゲラニルトランスフェラーゼ

RabゲラニルゲラニルトランスフェラーゼまたはゲラニルゲラニルトランスフェラーゼIIは、Rabタンパク質たんぱくしつのC末端まったんに2つのゲラニルゲラニル基もとを転移てんいする。Rabタンパク質たんぱくしつのC末端まったんは長ながさも配列はいれつも様々さまざまで、超ちょう可変かへん領域りょういきと言いわれる。このためRabタンパク質たんぱくしつはCaaXボックスのような、酵素こうそが認識にんしきできるコンセンサス配列はいれつを持もたない。その代かわりRabタンパク質たんぱくしつには保存ほぞん領域りょういきの多おおいRabエスコートタンパク質たんぱくしつが結合けつごうしていて、Rabゲラニルゲラニルトランスフェラーゼはこの部分ぶぶんを認識にんしきする。Rabタンパク質たんぱくしつがプレニル化かされて脂質ししつのアンカーが付つけられると、Rabタンパク質たんぱくしつは水みずに溶とけなくなり、細胞さいぼう膜まく上じょうに留とめられる。

ゲラニルゲラニルピロリン酸さんとファルネシルピロリン酸さんのイソプレノイド鎖くさりはメバロン酸さん経路けいろによって作つくられたメバロン酸さんが由来ゆらいである。5炭素たんその前駆ぜんく体たいを組くみ合あわせることで、ゲラニルピロリン酸さん（10炭素たんそ）、ファルネシルピロリン酸さん（15炭素たんそ）、ゲラニルゲラニルピロリン酸さん（20炭素たんそ）が作つくられる。2つのファルネシルピロリン酸さんからはコレステロールの前駆ぜんく体たいであるスクアレンが作つくられることがある。これはメバロン酸さん経路けいろの阻害そがい剤ざいであるスタチンによってコレステロールやイソプレノイドの生なま合成ごうせいが止とまることを意味いみする。

メバロン酸さん経路けいろでは、前駆ぜんく体たいの中なかに最初さいしょからイソプレノイドの合成ごうせいに必要ひつようなピロリン酸さん基もとが含ふくまれている。ファルネソールなどのイソプレノイドにピロリン酸さんが付加ふかされる酵素こうそ機構きこうは明あきらかではないが、ファルネソールがスタチンによって起おこる病気びょうきに効きくことから、プレニル化かにはアルコールが関与かんよすると考かんがえられている。

プレニル化かを受うけるRasタンパク質たんぱくしつはがんの進行しんこうに大おおきな役割やくわりを果はたす。このことは、プレニル化かを引ひき起おこす酵素こうその阻害そがい剤ざいが腫瘍しゅようの成長せいちょうに影響えいきょうを与あたえられる可能かのう性せいを示唆しさする。

またトリパノソーマやマラリアなどの感染かんせんを止とめるためにもファルネシルトランスフェラーゼの阻害そがい剤ざいが使つかわれる。このような寄生虫きせいちゅうはゲラニルゲラニルトランスフェラーゼIを欠かいているためにヒトよりもファルネシルトランスフェラーゼ阻害そがい剤ざいの作用さようを受うけやすいため、感染かんせんが抑おさえられる。さらにファルネシルトランスフェラーゼはマウスのハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群しょうこうぐんを抑おさえる効果こうかがあったことも報告ほうこくされている。