モーリス・ドニ

モーリス・ドニ Maurice Denis
1947年ねん以前いぜん
誕生たんじょう日び	(1870-11-25) 1870年ねん11月25日にち
出生しゅっしょう地ち	フランス グランヴィル
死没しぼつ年ねん	(1943-11-13) 1943年ねん11月13日にち（72歳さい没ぼつ）
死没しぼつ地ち	フランス パリ
国籍こくせき	フランス
運動うんどう・動向どうこう	ナビ派は
教育きょういく	エコール・デ・ボザール、アカデミー・ジュリアン

オディロン・ルドンによる肖像しょうぞう画が

モーリス・ドニ（Maurice Denis, 1870年ねん11月25日にち - 1943年ねん11月13日にち）は、フランスの画家がか、著述ちょじゅつ家か。ナビ派はの一員いちいん。ドニの絵画かいが理論りろんはキュビスム、フォーヴィスム、抽象ちゅうしょう絵画かいがにも影響えいきょうを与あたえた。

画家がかとしての経歴けいれき

1870年ねん11月25日にち、フランスのノルマンディー地方ちほうの海岸かいがんの町まち、マンシュ県けんグランヴィルで生うまれた。画家がかになってからも、聖書せいしょから採とった題材だいざいと並ならんで海うみと海岸かいがん線せんを好このんで絵えの主題しゅだいとしている。15歳さいの時とき、「そうだ、僕ぼくがクリスチャンの画家がかになること、キリスト教徒きりすときょうとのあらゆる奇跡きせきを賞賛しょうさんすることが必要ひつようだ。それが必要ひつようなことだと感かんじる。」と書かいている。ドニ家かは富裕ふゆうな家庭かていで、エコール・デ・ボザールとアカデミー・ジュリアンの両方りょうほうに通かよっている。そこでフランス人じん人物じんぶつ画家がか・理論りろん家かのジュール・ジョゼフ・ルフェーブルに学まなんだ。

アカデミーでポール・セリュジエ、ピエール・ボナールら、将来しょうらいのナビ派はのメンバーとなる画家がか仲間なかまと出会であった。また、ボナールを通つうじて、これもナビ派はのメンバーとなるエドゥアール・ヴュイヤール、ケル・グザヴィエ・ルーセルとも出会であった。1890年ねん、彼かれらはナビ派はを結成けっせい。「ナビ」とは預言よげん者しゃのヘブライ語ごであり、自分じぶんたちが新あたらしい表現ひょうげんの形かたちを作つくり出だすという意思いしの表あらわれだった。1890年代ねんだい末まつまでにグループは分裂ぶんれつしたが、ボナールやヴュイヤールの作品さくひんには後ごまで影響えいきょうを残のこし、グループ外がいのアンリ・マティスなどにも影響えいきょうを与あたえた。

『セザンヌ礼賛らいさん』1900年ねん。オルセー美術館びじゅつかん

ナビ派は分裂ぶんれつ後ご、ドニは宗教しゅうきょう的てきな主題しゅだいと壁画へきがに傾倒けいとうするようになる。1922年ねんにはそれまでに発表はっぴょうした論文ろんぶんをまとめ、『現代げんだい美術びじゅつと宗教しゅうきょう美術びじゅつに関かんする新しん理論りろん』と題だいする本ほんを出版しゅっぱんした。

後期こうきの作品さくひんには、風景ふうけい画がや特とくに母子ぼしの人物じんぶつ画がなどもある。しかし、ドニの主要しゅような関心かんしんは宗教しゅうきょう的てきな主題しゅだいに向むけられ、そのことは1931年ねんに国際こくさいクリスチャン労働ろうどう組合くみあい連盟れんめいの発注はっちゅうを受うけてジュネーブのセンター・ウィリアム・ラッパルトの階段かいだんに飾かざられた『労働ろうどうの尊厳そんげん』にも見みられる。

絵画かいが理論りろん

ドニは、最もっとも早はやく絵画かいがの平面へいめん性せいに注目ちゅうもくした画家がかの1人ひとりである。このことは、モダニスムの出発しゅっぱつ点てんであるともいえる。

1890年ねんに発表はっぴょうした『新しん伝統でんとう主義しゅぎの定義ていぎ』という論文ろんぶんで、「絵画かいがが、軍馬ぐんばや裸婦らふや何なんらかの逸話いつわである以前いぜんに、本質ほんしつ的てきに、ある順序じゅんじょで集あつめられた色彩しきさいで覆おおわれた平坦へいたんな表面ひょうめんであることを、思おもい起おこすべきである」という有名ゆうめいな言葉ことばを残のこしている。 この絵画かいがにおける平面へいめん性せいの追求ついきゅうはポンタヴェンで共ともに過すごしたゴーガンの綜合そうごう主義しゅぎやセリジュエの抽象ちゅうしょう画がからの影響えいきょうがある一方いっぽうで、ドニもその平面へいめん性せいを装飾そうしょく性せいへと発展はってんさせていった。

1898年ねん、ドニは芸術げいじゅつの源泉げんせんは画家がかの個性こせいにあるという制作せいさくの理論りろんを発表はっぴょうした。「芸術げいじゅつ作品さくひんを創造そうぞうするものは、画家がかの力ちからであり、意思いしである。」と言いっている。

第だい1次じ世界せかい大戦たいせん後ごの1919年ねんにドニはジョルジュ・デヴァリエールとともに、教会きょうかいと近代きんだい文明ぶんめいとを和解わかいさせるという潮流ちょうりゅうの一環いっかんとして、宗教しゅうきょう美術びじゅつアトリエを結成けっせいした。このアトリエでは、特とくに戦争せんそうで破壊はかいされた教会きょうかいのために制作せいさくを行おこなった。ドニはアカデミズムについて、しきたりと小手先こてさきの技術ぎじゅつのために情感じょうかんを犠牲ぎせいにするものであるからこれに反対はんたいすると言いい、また、写実しゃじつ主義しゅぎについては散文さんぶんであって、「彼かれの求もとめる音楽おんがくがないからこれにも反対はんたいする」と言いった。何なによりも、ドニは神性しんせいに付属ふぞくするものとしての美びを追求ついきゅうした。

私生活しせいかつ

オーギュスト・ルノワール『モーリス・ドニ夫人ふじん』（マルタ・ドニ）1904年ねん

カトリックの第だい三さん会かいに所属しょぞくしていた。1893年ねん、マルタ・ムリエ (Marthe Meurier) と結婚けっこんし、7人にんの子こを持もった。妻つまは多おおくのドニの作品さくひんのモデルにもなっている。

「マレーヌ姫ひめのメヌエット（ピアノを弾ひくマルタ）」（1891）オルセー美術館びじゅつかん

「婚約こんやく者しゃマルタの三重みえ肖像しょうぞう画が」(1892)、モーリス・ドニ美術館びじゅつかん

マルタが1919年ねんに亡なくなってからドニは、マルタの追悼ついとうのための礼拝れいはい堂どうを描えがいている。2年ねん後ご、エリザベス・グラトロール (Elisabeth Grateroll) と再婚さいこんし、更さらに2人ふたりの子供こどもを持もった。政治せいじ的てき立場たちばとしては、王おう党派とうはのアクション・フランセーズに近ちかかった。

1943年ねん11月、交通こうつう事故じこが原因げんいんでパリで死去しきょした。死亡しぼうの日ひは、2日にち、3日にち、13日にちなど諸説しょせつある。

収蔵しゅうぞう美術館びじゅつかん

1980年ねん、パリ郊外こうがいサン＝ジェルマン＝アン＝レーのドニが住すんでいたところにモーリス・ドニ美術館びじゅつかんが開館かいかんした。

大だい規模きぼな回顧かいこ展てんとしては2007年ねんにモントリオール美術館びじゅつかんで開催かいさいされたものがあり、北きたアメリカで最初さいしょの大おおきなドニ展てんとなった。

1995年ねんには、イギリスのリヴァプールのウォーカー・アート・ギャラリーでもドニの回顧かいこ展てんが開ひらかれている。

日本にっぽん国内こくないには、次つぎのような作品さくひんがある。

• 「母ははと子こ」1895年ねん（うろこ美術館びじゅつかん）
• 「雌めす鶏にわとりと少女しょうじょ」1890年ねん（国立こくりつ西洋せいよう美術館びじゅつかん）
• 「純潔じゅんけつな春はる」1899年ねん（三菱みつびし一いち号館ごうかん美術館びじゅつかん寄託きたく）
• 「聖体せいたい祭さいの行列ぎょうれつ」油彩ゆさい・キャンバス 149.9x201.0cm 1904年ねん（イセ文化ぶんか基金ききん）
• 「踊おどる女おんなたち」1905年ねん（国立こくりつ西洋せいよう美術館びじゅつかん）
• 「波なみ」1916年ねん（大原おおはら美術館びじゅつかん）

日本語にほんご文献ぶんけん

• モーリス・ドニ『イタリア絵画かいが巡礼じゅんれい　芸術げいじゅつの主題しゅだいをもとめて』

  小佐野おさの重利しげとし監修かんしゅう、福島ふくしま勲いさお訳やく、三さん元げん社しゃ、2023年ねん

ギャラリー

• 
  Female bathers at Perros-Guirec (c.1912)、パリ市立しりつプティ・パレ美術館びじゅつかん
• 
  La Princesse dans la tour (1914)、モーリス・ドニ美術館びじゅつかん
• 
  L'Échelle dans le feuillage (1892)、モーリス・ドニ美術館びじゅつかん

外部がいぶリンク

• Musée départemental Maurice Denis-モーリス・ドニ美術館びじゅつかん　ル・プリウレ（フランス語ふらんすご。公式こうしきサイト）
• Musée d'Orsay-オルセー美術館びじゅつかん（フランス語ふらんすご、スペイン語ご、英語えいご。公式こうしきサイト）
• 国立こくりつ西洋せいよう美術館びじゅつかん（公式こうしきサイト。東京とうきょう都と）
• モーリス・ドニ「ドミニク・アングルの箴言しんげん」（田中たなか喜作きさく訳やく） - ARCHIVE。ドニが収集しゅうしゅうしたドミニク・アングルの箴言しんげん集しゅう