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寄託きたく (日本にっぽんほう)

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

寄託きたく(きたく)とは、当事とうじしゃ一方いっぽう寄託きたくしゃ)があるもの保管ほかんすることを相手方あいてがた(受寄しゃ)に委託いたくし、相手方あいてがたがこれを承諾しょうだくすることによって成立せいりつする契約けいやく日本にっぽん民法みんぽうでは典型てんけい契約けいやく一種いっしゅとされ(民法みんぽう657じょう)、商人しょうにんがその営業えいぎょう範囲はんいないにおいて寄託きたくけた場合ばあい商事しょうじ寄託きたく)については商法しょうほう商法しょうほう593じょう以下いか)にとくそくかれている。簡単かんたんえば、「ものあづける」といったところであろうか。

  • 日本にっぽん民法みんぽうは、以下いかじょうすうのみ記載きさいする。

概説がいせつ

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寄託きたく意義いぎ

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民法みんぽう規定きていする寄託きたく民事みんじ寄託きたく)は、当事とうじしゃ一方いっぽう寄託きたくしゃ)があるもの保管ほかんすることを相手方あいてがた委託いたくし、相手方あいてがた(受寄しゃ)がこれを承諾しょうだくすることによって成立せいりつする契約けいやくである(657じょう)。寄託きたくにおいて目的もくてきぶつ所有しょゆうしゃ寄託きたくしゃである必要ひつようはない[1]

寄託きたくもの保管ほかんするために労務ろうむ提供ていきょうがなされるてん契約けいやく類型るいけいとはことなる(通説つうせつ[2]コインロッカーかし金庫きんこかし駐車ちゅうしゃじょうなどもの保管ほかんするための場所ばしょ提供ていきょうするにすぎない場合ばあいには、寄託きたくではなく場所ばしょ賃貸借ちんたいしゃく契約けいやくないし提供ていきょう契約けいやくとなる[2][3][4]他方たほうたんもの保管ほかんにとどまらず目的もくてきぶつ管理かんり改良かいりょう利用りよう)や運営うんえいおよ場合ばあいには寄託きたくではなく委任いにん契約けいやくとなる[2][4]

寄託きたくには委任いにん類似るいじ関係かんけいみとめられるため、民法みんぽう寄託きたく委任いにん規定きてい準用じゅんようする(665じょう)。

委任いにん寄託きたくとの区別くべつ困難こんなん場合ばあいもあり[4]、そもそも寄託きたくもの保管ほかん内容ないようとする事務じむ処理しょり委託いたくするもので実質じっしつてきには委任いにん一種いっしゅにすぎないとみる学説がくせつもある[5]

寄託きたく性質せいしつ

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  • 片務契約へんむけいやく
寄託きたく契約けいやく原則げんそくとして片務契約へんむけいやくであり同時どうじ履行りこう抗弁こうべんけん(533じょう)や危険きけん負担ふたん(434じょう以下いか)の適用てきようはない。特約とくやくがあれば受寄しゃ保管ほかんりょうることができ、この場合ばあい双務そうむ契約けいやくかつ有償ゆうしょう契約けいやくとなる(後述こうじゅつ有償ゆうしょう寄託きたくとなる)[4][6]
  • 無償むしょう契約けいやく
寄託きたく契約けいやく原則げんそくとして無償むしょう契約けいやくである(無償むしょう寄託きたくという。665じょう648じょう)。先述せんじゅつのように特約とくやくにより受寄しゃ保管ほかんりょう場合ばあいには有償ゆうしょう契約けいやくとなる(有償ゆうしょう寄託きたくという。665じょう648じょう)、現実げんじつには有償ゆうしょう寄託きたくがほとんどであるとされる[3][4][5][7]。なお、委任いにん契約けいやく同様どうよう当事とうじしゃ関係かんけいから有償ゆうしょう寄託きたく推定すいていされる場合ばあいすくなくないとされる[8]
  • だくなり契約けいやく2020ねん4がつ1にち以降いこう
    • 2017ねん改正かいせい民法みんぽうもの交付こうふ必要ひつようとするようもの契約けいやくから合意ごういのみで成立せいりつするだくなり契約けいやく変更へんこうされた[9]2017ねん5月26にち民法みんぽう一部いちぶ改正かいせいする法律ほうりつ平成へいせい29ねん法律ほうりつだい44ごう[1]成立せいりつし、同年どうねん6月2にち公布こうふされた。どう改正かいせいにより、2020ねん4がつ1にち以降いこう寄託きたく契約けいやくだくなり契約けいやくとされる)。書面しょめんによることも必要ひつようではない[9]
    • 改正かいせいまえの657じょうではようもの契約けいやくとされていた(きゅう657じょうの「それをることによって」の文言もんごん)。目的もくてきぶつりは引渡ひきわたによるが、占有せんゆう改定かいてい(183じょう)についてはみとめられないとされていた[1]改正かいせいまえの657じょうではようもの契約けいやくとされていたが、これはローマほう以来いらい沿革えんかくてき理由りゆうにすぎず、寄託きたく予約よやくだくなりてき寄託きたくむすぶこともみとめられていた(通説つうせつ[1][5][3]。また、ようもの契約けいやく無償むしょう寄託きたく場合ばあいかぎられ、有償ゆうしょう寄託きたく場合ばあいにはだくなり契約けいやくとなるとする有力ゆうりょくせつもあった[5]
    • なお、2017ねん改正かいせい民法みんぽうで受寄しゃ寄託きたくぶつるまでの解除かいじょけん規定きてい新設しんせつした(民法みんぽう657じょうの2)[9]
      • 寄託きたくしゃは、受寄しゃ寄託きたくぶつるまで、契約けいやく解除かいじょをすることができる。この場合ばあいにおいて、受寄しゃは、その契約けいやく解除かいじょによって損害そんがいけたときは、寄託きたくしゃたいし、その賠償ばいしょう請求せいきゅうすることができる(民法みんぽう657じょうの2だい1こう)。
      • 報酬ほうしゅうの受寄しゃは、寄託きたくぶつるまで、契約けいやく解除かいじょをすることができる。ただし、書面しょめんによる寄託きたくについては、このかぎりでない(民法みんぽう657じょうの2だい2こう)。書面しょめんによらないことによる軽率けいそつ契約けいやく紛争ふんそう防止ぼうしのためである[9]
      • 受寄しゃ報酬ほうしゅう寄託きたくけた場合ばあいにあっては、書面しょめんによる寄託きたくの受寄しゃかぎる。)は、寄託きたくぶつるべき時期じき経過けいかしたにもかかわらず、寄託きたくしゃ寄託きたくぶつわたさない場合ばあいにおいて、相当そうとう期間きかんさだめてその引渡ひきわたしの催告さいこくをし、その期間きかんない引渡ひきわたしがないときは、契約けいやく解除かいじょをすることができる(民法みんぽう657じょうの2だい3こう)。保管ほかん場所ばしょ確保かくほしている受寄しゃ負担ふたん考慮こうりょした規定きていである[9]
      • 2017ねん改正かいせいまえにも寄託きたく予約よやくだくなりてき寄託きたく締結ていけつされたのち寄託きたくしゃにおいて引渡まえもの保管ほかん必要ひつようなくなり契約けいやく解除かいじょする場合ばあいには、損害そんがい賠償ばいしょうみとめられるとしても目的もくてきぶつ引渡ひきわたしまでめいじることは妥当だとうでないとされていた[10]

寄託きたく効力こうりょく

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受寄しゃ義務ぎむ

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保管ほかん義務ぎむ

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受寄しゃ保管ほかん義務ぎむう。保管ほかんにおける注意ちゅうい義務ぎむ程度ていど有償ゆうしょう寄託きたく無償むしょう寄託きたくかによりことなる。

ただし、商事しょうじ寄託きたく場合ばあいには無償むしょう場合ばあいであってもぜんかん注意ちゅうい義務ぎむう(商法しょうほう593じょう)。
  • 使用しようさい寄託きたく制限せいげん
    • 受寄しゃ寄託きたくぶつ使用しようするには寄託きたくしゃ承諾しょうだくようする(658じょうだい1こう)。
    • 受寄しゃ寄託きたくぶつ第三者だいさんしゃ保管ほかんさい寄託きたくふく寄託きたく)させるには寄託きたくしゃ承諾しょうだくようする(658じょうだい2こう)。さい受寄しゃは、寄託きたくしゃたいして、その権限けんげん範囲はんいないにおいて、受寄しゃ同一どういつ権利けんりゆうし、義務ぎむう(658じょうだい3こう)。2017ねん民法みんぽう改正かいせいまえふく代理だいり規定きていきゅう105じょう・107じょう2こう)を準用じゅんようしていたが(きゅう658じょう2こう)、受寄しゃ責任せきにん選任せんにん監督かんとく限定げんていすることについて疑問ぎもんする見解けんかいがあった[11]

このほか保管ほかん付随ふずいする義務ぎむとして以下いか義務ぎむう。

  • 危険きけん通知つうち義務ぎむ
    • 寄託きたくぶつについて権利けんり主張しゅちょうする第三者だいさんしゃが受寄しゃたいして訴訟そしょう提起ていきし、また差押さしおさかり差押さしおさしくは仮処分かりしょぶんをしたときは、受寄しゃは、遅滞ちたいなくその事実じじつ寄託きたくしゃ通知つうちしなければならない。ただし、寄託きたくしゃすでにこれをっているときは、このかぎりでない(660じょう1こう)。2017ねん改正かいせい民法みんぽうでただししょ追加ついかした。
    • 第三者だいさんしゃ寄託きたくぶつについて権利けんり主張しゅちょうする場合ばあいであっても、受寄しゃは、寄託きたくしゃ指図さしずがないかぎり、寄託きたくしゃたいしその寄託きたくぶつ返還へんかんしなければならない。ただし、受寄しゃ前項ぜんこう通知つうちをした場合ばあいまたどうこうただししょ規定きていによりその通知つうちようしない場合ばあいにおいて、その寄託きたくぶつをその第三者だいさんしゃわたすべきむねめいずる確定かくてい判決はんけつ確定かくてい判決はんけつ同一どういつ効力こうりょくゆうするものをふくむ。)があったときであって、その第三者だいさんしゃにその寄託きたくぶつわたしたときは、このかぎりでない(660じょう2こう)。2017ねん改正かいせい民法みんぽう新設しんせつされた規定きていである。
    • 受寄しゃは、前項ぜんこう規定きていにより寄託きたくしゃたいして寄託きたくぶつ返還へんかんしなければならない場合ばあいには、寄託きたくしゃにその寄託きたくぶつわたしたことによって第三者だいさんしゃ損害そんがいしょうじたときであっても、その賠償ばいしょう責任せきにんわない(660じょう3こう)。2017ねん改正かいせい民法みんぽう新設しんせつされた規定きていである。
  • 受取うけとりぶつとう引渡義務ぎむ
受寄しゃ寄託きたくたってった金銭きんせんそのもの寄託きたくしゃわたさなければならない(665じょう646じょう1こう前段ぜんだん)。おさむした果実かじつ同様どうようわたされなければならない(665じょう646じょう1こう後段こうだん)。
なお、金銭きんせん消費しょうひした場合ばあい責任せきにんにつき665じょうにより647じょう準用じゅんようがある。
  • 取得しゅとく権利けんり移転いてん義務ぎむ
受寄しゃ寄託きたくしゃのために自己じこ取得しゅとくした権利けんり寄託きたくしゃ移転いてんしなければならない(665じょう646じょう2こう)。

目的もくてきぶつ返還へんかん義務ぎむ

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返還へんかん時期じきさだめなかった場合ばあいには寄託きたくしゃはいつでも返還へんかん請求せいきゅうできる。ただし、消費しょうひ寄託きたく契約けいやくにおいて、返還へんかん時期じきさだめた場合ばあいは、寄託きたくしゃはその時期じきまで受寄しゃたいして返還へんかん請求せいきゅうをすることができない(666じょう反対はんたい解釈かいしゃく)。寄託きたくぶつ返還へんかん原則げんそくとして寄託きたくぶつ保管ほかん場所ばしょでしなければならないが、受寄しゃ正当せいとう事由じゆうによって寄託きたくぶつ保管ほかん場所ばしょ変更へんこうしたときは、その現在げんざい場所ばしょ返還へんかんをすることができる(664じょう)。

寄託きたくぶつ一部いちぶ滅失めっしつまた損傷そんしょうによってしょうじた損害そんがい賠償ばいしょうおよび受寄しゃ支出ししゅつした費用ひよう償還しょうかんは、寄託きたくしゃ返還へんかんけたときから1ねん以内いない請求せいきゅうしなければならない(664じょうの2だい1こう)。この損害そんがい賠償ばいしょう請求せいきゅうけんについては、寄託きたくしゃ返還へんかんけたときから1ねん経過けいかするまでのあいだは、時効じこうは、完成かんせいしない(664じょうの2だい2こう)。寄託きたくぶつ返還へんかん寄託きたくしゃ損害そんがい賠償ばいしょう請求せいきゅうとうがされる場合ばあいには一部いちぶ滅失めっしつとうが受寄しゃ保管ほかんちゅうしょうじたものかかについてあらそいがしょうじやすく、寄託きたくしゃ保管ほかんちゅう寄託きたくしゃ損害そんがい賠償ばいしょう請求せいきゅうけん消滅しょうめつ時効じこう完成かんせいするのは不合理ふごうりとされ、2017ねん改正かいせい民法みんぽう新設しんせつされた[9]

なお、契約けいやくじょう返還へんかん請求せいきゅうけん時効じこうにより消滅しょうめつしても、所有しょゆうけんもとづく返還へんかん請求せいきゅうけんみとめられる(通説つうせつ判例はんれい判例はんれいとして大判おおばんだい11・8・21みんしゅう1かん493ぺーじ[12][13]

寄託きたくしゃ義務ぎむ

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委任いにん規定きてい準用じゅんよう

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  • 費用ひよう前払まえばらい義務ぎむ
寄託きたくについて費用ひようようするときは、寄託きたくしゃは受寄しゃ請求せいきゅうにより、その前払まえばらいをしなければならない(665じょう649じょう)。
  • 立替たてかえ費用ひよう償還しょうかん義務ぎむ
受寄しゃ寄託きたく必要ひつようみとめられる費用ひよう支出ししゅつしたときは、寄託きたくしゃたいして費用ひようおよ支出ししゅつ以後いごにおけるその利息りそく償還しょうかん請求せいきゅうすることができる(665じょう650じょう1こう)。
  • 債務さいむ代弁だいべんずみ義務ぎむ担保たんぽ供与きょうよ義務ぎむ
受寄しゃ寄託きたく必要ひつようみとめられる債務さいむ負担ふたんしたときは、寄託きたくしゃたい自己じこわってその弁済べんさいをすることを請求せいきゅうすることができる(665じょう650じょう2こう前段ぜんだん)。債務さいむ弁済べんさいにない場合ばあいには担保たんぽ供与きょうよ義務ぎむみとめられる(665じょう650じょう2こう後段こうだん)。
  • 報酬ほうしゅう支払しはらい義務ぎむ
報酬ほうしゅう支払しはらい義務ぎむ報酬ほうしゅう特約とくやくがある有償ゆうしょう寄託きたくのみにみとめられる(665じょう648じょう1こう)。ただし、商人しょうにん他人たにんのために寄託きたくをしたときはつね報酬ほうしゅう請求せいきゅうけんみとめられる(商法しょうほう512じょう#商事しょうじ寄託きたく参照さんしょう[14]報酬ほうしゅう後払あとばらいを原則げんそくとするが、期間きかんによって報酬ほうしゅうさだめたときは624じょうだい2こう規定きてい準用じゅんようされる(665じょう648じょう2こう)。寄託きたくが受寄しゃめにすることができない事由じゆうによって履行りこう中途ちゅうと終了しゅうりょうしたときは、受寄しゃすでにした履行りこう割合わりあいおうじて報酬ほうしゅう請求せいきゅうすることができる(665じょう648じょう3こう)。

なお、寄託きたくにおける損害そんがい賠償ばいしょう義務ぎむについては委任いにん規定きてい準用じゅんようされず(665じょう参照さんしょう)、後述こうじゅつとお661じょうさだめがある。

損害そんがい賠償ばいしょう義務ぎむ

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寄託きたくしゃは、寄託きたくぶつ性質せいしつまた瑕疵かしによってしょうじた損害そんがいを受寄しゃ賠償ばいしょうしなければならない (661じょう本文ほんぶん)。ただし、寄託きたくしゃ過失かしつなくその性質せいしつしくは瑕疵かしらなかったとき、または受寄しゃがこれをっていたときは、このかぎりでない (661じょう但書ただしがき)。

寄託きたくしゃ損害そんがい賠償ばいしょう義務ぎむ寄託きたくぶつ性質せいしつあるいは瑕疵かしによる場合ばあい限定げんていされており、委任いにん契約けいやく受任じゅにんしゃして損害そんがい賠償ばいしょう責任せきにん限定げんていされている[15]日本にっぽん民法みんぽう損害そんがい賠償ばいしょう義務ぎむについては委任いにん契約けいやく規定きてい準用じゅんようしていないが、その理由りゆうかならずしもあきらかでないとされる[16]

寄託きたく終了しゅうりょう

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契約けいやく終了しゅうりょう

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寄託きたく継続けいぞくてき契約けいやくであるため契約けいやく告知こくちによって終了しゅうりょうする[16][17]理由りゆう告知こくちであり履行りこう催告さいこくする必要ひつようはなく662じょう・663じょうによって告知こくちすればりる[18]。このほか契約けいやく一般いっぱん終了しゅうりょう原因げんいん期間きかん満了まんりょう目的もくてきぶつ滅失めっしつなど)によっても終了しゅうりょうするが、委任いにんとはことなり当事とうじしゃ死亡しぼう破産はさん後見こうけん開始かいし終了しゅうりょう原因げんいんではない[19]

寄託きたくぶつ返還へんかん時期じき

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寄託きたくぶつ返還へんかん先述せんじゅつ告知こくち前提ぜんていとする[20]

  • 寄託きたくしゃによる寄託きたくぶつ返還へんかん請求せいきゅう
    • 契約けいやく返還へんかん時期じきさだめがあるかかにかかわらず、寄託きたくしゃはいつでも目的もくてきぶつ返還へんかん請求せいきゅうしうる(662じょう1こう)。寄託きたくしゃ保管ほかん委託いたく必要ひつようがなくなった以上いじょう寄託きたくしゃのぞまない寄託きたくいるべきではないためとされる[19][17]
    • 前項ぜんこう規定きていする場合ばあいにおいて、受寄しゃは、寄託きたくしゃがその時期じきまえ返還へんかん請求せいきゅうしたことによって損害そんがいけたときは、寄託きたくしゃたいし、その賠償ばいしょう請求せいきゅうすることができる(662じょう2こう)。2こうは2017ねん改正かいせい民法みんぽう新設しんせつされた規定きていである。
  • 受寄しゃによる寄託きたくぶつ返還へんかん
    • 契約けいやく寄託きたくぶつ返還へんかん時期じきさだめなかったときは、受寄しゃはいつでもその返還へんかんをすることができる(663じょうだい1こう)。
    • 契約けいやく寄託きたくぶつ返還へんかん時期じきさだめがあるときは、受寄しゃは、やむをない事由じゆうがなければ、その期限きげんまえ返還へんかんをすることができない(663じょうだい2こう)。寄託きたくしゃ寄託きたくによる利益りえきそこなわれるためである[17]

特殊とくしゅ寄託きたく

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混合こんごう寄託きたく

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2017ねん民法みんぽう改正かいせい実務じつむでよくおこなわれている受寄しゃ複数ふくすう寄託きたくしゃから同一どういつ種類しゅるい品質ひんしつもの寄託きたくけて混合こんごうして保管ほかんし、のちおな数量すうりょう返還へんかんする類型るいけい寄託きたくについて混合こんごう寄託きたくとしてあらたな規定きてい新設しんせつされた[9]目的もくてきぶつとしては石油せきゆ穀物こくもつなどがげられる[1]

  • 複数ふくすうもの寄託きたくしたもの種類しゅるいおよ品質ひんしつ同一どういつである場合ばあいには、受寄しゃは、かく寄託きたくしゃ承諾しょうだくたときにかぎり、これらを混合こんごうして保管ほかんすることができる(665じょうの2だい1こう)。
  • 前項ぜんこう規定きていもとづき受寄しゃ複数ふくすう寄託きたくしゃからの寄託きたくぶつ混合こんごうして保管ほかんしたときは、寄託きたくしゃは、その寄託きたくしたものおな数量すうりょうもの返還へんかん請求せいきゅうすることができる(665じょうの2だい2こう)。
  • 前項ぜんこう規定きていする場合ばあいにおいて、寄託きたくぶつ一部いちぶ滅失めっしつしたときは、寄託きたくしゃは、混合こんごうして保管ほかんされているそう寄託きたくぶつたいするその寄託きたくしたもの割合わりあいおうじた数量すうりょうもの返還へんかん請求せいきゅうすることができる。この場合ばあいにおいては、損害そんがい賠償ばいしょう請求せいきゅうさまたげない(665じょうの2だい2こう)。

2017ねん民法みんぽう改正かいせいまえ複数ふくすう寄託きたくしゃおな種類しゅるい品質ひんしつもの寄託きたくし、それを混合こんごうするかたちで受寄しゃ保管ほかんし、契約けいやくさだめられた返還へんかん時期じきかく寄託きたくしゃ寄託きたくした割合わりあいおうじて返還へんかんけることとした寄託きたくこんぞう寄託きたくばれていたものの民法みんぽう規定きていはなかった。こんぞう寄託きたく寄託きたくぶつ消費しょうひ予定よていされていないてん消費しょうひ寄託きたくとは性質せいしつことなるとされていた[17][1]

消費しょうひ寄託きたく

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受寄しゃ寄託きたくぶつ消費しょうひすることができることとされ、寄託きたくしゃにより寄託きたくされたものおな種類しゅるい品質ひんしつ数量すうりょうものを受寄しゃ返還へんかんすることとした寄託きたく契約けいやく消費しょうひ寄託きたくという(666じょう1こう)。不規則ふきそく寄託きたくともばれる[10][17][4]

消費しょうひ寄託きたく典型てんけいれいとして銀行ぎんこう預金よきん預金よきん契約けいやく)があり、おも銀行ぎんこう取引とりひき約款やっかん取引とりひきじょう慣習かんしゅう行政ぎょうせい法規ほうき出資法しゅっしほうひとし)によって規律きりつされている[21][22][23]

2017ねん改正かいせいまえ民法みんぽうでは、消費しょうひ寄託きたくには原則げんそくとして消費しょうひ貸借たいしゃく規定きてい準用じゅんようされるとし(きゅう666じょう1こう)、消費しょうひ寄託きたく契約けいやく返還へんかん時期じきさだめなかった場合ばあい返還へんかん時期じきについては消費しょうひ貸借たいしゃく規定きていきゅう591じょう1こう)を準用じゅんようせず寄託きたくしゃはいつでも返還へんかん請求せいきゅうすることができるとしていた(きゅう666じょう2こう[17]。しかし、消費しょうひ寄託きたく場合ばあい返還へんかん時期じきさだめたときでも寄託きたくしゃはいつでも寄託きたくぶつ返還へんかん請求せいきゅうできるとするのが合理ごうりてきであるなど、消費しょうひ貸借たいしゃく規定きてい寄託きたく性質せいしつにそぐわないといわれていた[9]

2017ねん改正かいせい民法みんぽう(2020ねん4がつ1にち法律ほうりつ施行しこう)では、消費しょうひ寄託きたくにも原則げんそくとして寄託きたく規定きてい適用てきようされることとなった[9]。そして寄託きたくぶつ担保たんぽ責任せきにんについて消費しょうひ貸借たいしゃく規定きてい準用じゅんようするとあらためた(666じょう2こう[9]。さらに預金よきんまた貯金ちょきんかか契約けいやくにより金銭きんせん寄託きたくした場合ばあい預貯金よちょきん)については、受寄しゃによる期限きげんまえ返還へんかん可能かのうにする規定きていもうけられた(666じょう3こう[9]

商法しょうほうじょう寄託きたく

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商事しょうじ寄託きたく

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商事しょうじ寄託きたくについては商法しょうほう593じょう以下いか条文じょうぶんがある[24]商事しょうじ寄託きたく社会しゃかいじょう重要じゅうよう役割やくわりたしている[4]商人しょうにん他人たにんのために寄託きたくをしたときは報酬ほうしゅう請求せいきゅうけんみとめられ有償ゆうしょう寄託きたくとなる(商法しょうほう512じょう[14]

  • ぜんかん注意ちゅうい義務ぎむ
    商人しょうにんがその営業えいぎょう範囲はんいないにおいて寄託きたくけたときは報酬ほうしゅうけないときであってもぜんかん注意ちゅうい義務ぎむう(商法しょうほう593じょう)。その趣旨しゅし商人しょうにん信用しんようたかめるてんにある[25]
  • 寄託きたくけた物品ぶっぴん滅失めっしつ毀損きそん責任せきにん
    主人しゅじんは、きゃくより寄託きたくけた物品ぶっぴん滅失めっしつまたは毀損きそんについて、その不可抗力ふかこうりょくによってしょうじたことを証明しょうめいしなければ責任せきにんまぬかれることができない(商法しょうほう594じょう1こう)。
  • 寄託きたくされなかった物品ぶっぴん滅失めっしつ毀損きそん責任せきにん
    主人しゅじんは、きゃくとく寄託きたくしなかった物品ぶっぴんであってもちゅう携帯けいたいした物品ぶっぴん主人しゅじん使用人しようにん注意ちゅういによって滅失めっしつ毀損きそんしたときは主人しゅじん損害そんがい賠償ばいしょう責任せきにんう(商法しょうほう594じょう2こう)。きゃく携帯けいたいひんにつき責任せきにんわないむね告示こくじしたときであっても主人しゅじんはこれらの責任せきにんまぬかれない(商法しょうほう594じょう3こう)。
  • 高価こうかひん滅失めっしつ毀損きそん責任せきにん
    高価こうかひんについてはきゃくがその種類しゅるい価額かがく主人しゅじん明示めいじして寄託きたくしたのでなければ、主人しゅじん物品ぶっぴん滅失めっしつ毀損きそんによってしょうじた損害そんがい賠償ばいしょう責任せきにんわない(商法しょうほう595じょう)。

倉庫そうこ営業えいぎょう

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他人たにんのために物品ぶっぴん倉庫そうこ保管ほかんする営業えいぎょう倉庫そうこ営業えいぎょうという(商法しょうほうだい597じょう以下いか)。倉庫そうこ営業えいぎょう実質じっしつてきには有償ゆうしょう寄託きたくであり、沿革えんかくてきには民事みんじ寄託きたくとは別個べっこ発達はったつしてきたもので、本来ほんらい民法みんぽう適用てきよう余地よちはないとされる[24]。ただ、実際じっさいには商法しょうほう倉庫そうこ営業えいぎょうかんする規定きていおおくは倉庫そうこ証券しょうけんかんする規定きていであり、商法しょうほうがくでは倉庫そうこ寄託きたく契約けいやく寄託きたく一種いっしゅであるとして民法みんぽう寄託きたく規定きてい適用てきようがあるとほぐされている[26][27]。なお、倉庫そうこ寄託きたく契約けいやくだくなり契約けいやくようもの契約けいやくかというてんについては論争ろんそうがある[28][29]

脚注きゃくちゅう

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出典しゅってん

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  1. ^ a b c d e 川井かわいけん 2010, p. 320.
  2. ^ a b c 遠藤えんどうひろしほか 1997, p. 250.
  3. ^ a b c 近江おうみ幸治こうじ 2006, p. 269.
  4. ^ a b c d e f g 川井かわいけん 2010, p. 319.
  5. ^ a b c d 遠藤えんどうひろしほか 1997, p. 251.
  6. ^ 我妻あづまさかえほか 2005, p. 288.
  7. ^ 我妻あづまさかえほか 2005, p. 368.
  8. ^ 遠藤えんどうひろしほか 1997, p. 255.
  9. ^ a b c d e f g h i j k 寄託きたく成立せいりつ要件ようけん見直みなお” (PDF). 法務省ほうむしょう. 2020ねん3がつ16にち閲覧えつらん
  10. ^ a b 遠藤えんどうひろしほか 1997, p. 252.
  11. ^ 内田うちだたか 2011, p. 305.
  12. ^ 近江おうみ幸治こうじ 2006, p. 270.
  13. ^ 川井かわいけん 2010, p. 322.
  14. ^ a b 落合おちあい誠一せいいちほか 2006, p. 141.
  15. ^ 内田うちだたか 2011, p. 306.
  16. ^ a b 遠藤えんどうひろしほか 1997, p. 256.
  17. ^ a b c d e f 近江おうみ幸治こうじ 2006, p. 272.
  18. ^ 遠藤えんどうひろしほか 1997, pp. 256–257.
  19. ^ a b 遠藤えんどうひろしほか 1997, p. 257.
  20. ^ 我妻あづまさかえほか 2005, p. 370.
  21. ^ 内田うちだたか 2011, p. 307.
  22. ^ 遠藤えんどうひろしほか 1997, pp. 252–253.
  23. ^ 我妻あづまさかえほか 2005, pp. 372–373.
  24. ^ a b 遠藤えんどうひろしほか 1997, p. 253.
  25. ^ 落合おちあい誠一せいいちほか 2006, p. 143.
  26. ^ 江頭えがしら憲治けんじろう 2005, p. 337.
  27. ^ 落合おちあい誠一せいいちほか 2006, p. 240.
  28. ^ 江頭えがしら憲治けんじろう 2005, p. 338.
  29. ^ 落合おちあい誠一せいいちほか 2006, pp. 240–241.

参考さんこう文献ぶんけん

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  • 遠藤えんどうひろし原島はらしま重義しげよし水本みずもとひろし川井かわいけん民法みんぽう6 契約けいやく各論かくろん』(だい4はん有斐閣ゆうひかく有斐閣ゆうひかく双書そうしょ〉、1997ねん4がつISBN 4-6411-1166-9 
  • 我妻あづまさかえ有泉ありいずみとおる川井かわいけん民法みんぽう2 債権さいけんほう』(だい2はん)勁草書房しょぼう、2005ねん4がつISBN 4-3264-5074-6 
  • 江頭えがしら憲治けんじろうしょう取引とりひきほう』(だい4はん弘文こうぶんどう法律ほうりつがく講座こうざ双書そうしょ〉、2005ねん4がつISBN 4-3353-0227-4 
  • 落合おちあい誠一せいいち大塚おおつかりゅう山下やました友信とものぶ商法しょうほうI 総則そうそく商行為しょうこうい』(だい3はん有斐閣ゆうひかく有斐閣ゆうひかくSシリーズ〉、2006ねん4がつISBN 4-6411-5918-1 
  • 近江おうみ幸治こうじ民法みんぽう講義こうぎV 契約けいやくほう』(だい3はん成文せいぶんどう、2006ねん10がつISBN 4-7923-2501-3 
  • 川井かわいけん民法みんぽう概論がいろん4 債権さいけん各論かくろん』(ていばん有斐閣ゆうひかく、2010ねん12月。ISBN 978-4-641-13588-8 
  • 内田うちだたか民法みんぽうII 債権さいけん各論かくろん』(だい3はん東京大学とうきょうだいがく出版しゅっぱんかい、2011ねん2がつISBN 978-4-13-032332-1 

外部がいぶリンク

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