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契約けいやく

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
法律ほうりつ行為こういさん態様たいよう[1]

契約けいやく(けいやく、: pactum, ふつ: contrat, えい: contract)とは、複数ふくすうもの合意ごういによって当事とうじしゃあいだ法律ほうりつじょう権利けんり義務ぎむ発生はっせいさせる制度せいど[2]で、合意ごういのうち法的ほうてき拘束こうそくりょくつことを期待きたいしておこなわれるもののこと。贈与ぞうよ売買ばいばい交換こうかん賃貸ちんたい請負うけおい雇用こよう委任いにん寄託きたくなど、「だれだれのために、なにいくらでどのようにする。不履行ふりこうとなった場合ばあいはどのようにする」のかをさだめるものがおおい。

私法しほうじょう契約けいやく

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大陸たいりくほうくにであるドイツ日本にっぽんでは、私法しほううえ契約けいやくとは、あい対立たいりつする意思いし表示ひょうじ合致がっちによって成立せいりつする法律ほうりつ行為こういをいう。一方いっぽうえいべいほう契約けいやく概念がいねんについては、大陸たいりくほうにおける契約けいやく概念がいねん多少たしょうことなる特徴とくちょうゆうし、後述こうじゅつのようにたとえばえいべい契約けいやくほうではやくいん(consideration)または捺印なついん証書しょうしょ(deed)が契約けいやく有効ゆうこうせい要件ようけんとなっていることなどの特徴とくちょうがある[3]

契約けいやく機能きのう

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人間にんげん集団しゅうだん社会しゃかい形成けいせいするものであり、歴史れきしなか人間にんげん関係かんけいにおいては合意ごういはもっとも尊重そんちょうされなければならないとする契約けいやく遵守じゅんしゅ原則げんそく確立かくりつされてきた[4]

たとえばふるくから商品しょうひん取引とりひき売買ばいばい契約けいやくによっておこなわれてきたが、近代きんだい社会しゃかいでは本来ほんらい取引とりひきてきでない活動かつどう契約けいやくによっておこなわれている[2]契約けいやく拘束こうそくりょくまえ近代きんだい社会しゃかいからみとめられてきたが、それは身分みぶんてき覊束関係かんけい密接みっせつむすびついたものであった[4]。しかし、近代きんだい社会しゃかいにおいては、人間にんげん自由じゆう平等びょうどう法的ほうてき主体しゅたいであり、その自由じゆう意思いしもとづいてのみ権利けんり取得しゅとく義務ぎむ負担ふたんみとめられるべきであるとかんがえられるようになった[4]たとえば商品しょうひん生産せいさんする労働ろうどう過程かてい中世ちゅうせいまでは親方おやかた徒弟とていという身分みぶん関係かんけいであったが、近代きんだい以降いこう労働ろうどうしゃ使用しようしゃ労働ろうどうりょく提供ていきょうして対価たいかとして賃金ちんぎん支払しはらわれる一種いっしゅ取引とりひき関係かんけいになっている[2]。また、土地とち利用りようにもかつては領主りょうしゅ領民りょうみんという身分みぶん関係かんけいがあり、領主りょうしゅ領民りょうみん保護ほごするわりに領民りょうみんから年貢ねんぐてていた[2]。しかし、近代きんだい社会しゃかいでは地主じぬし農民のうみん土地とちし、農民のうみん対価たいかとして賃料ちんりょう支払しはら一種いっしゅ取引とりひき関係かんけいになっている[2]生活せいかつ全般ぜんぱん契約けいやくによっておこなわれているのが近代きんだい社会しゃかい特徴とくちょうであり、それは中世ちゅうせい身分みぶん制度せいど規律きりつされていた領域りょういきにもおよんでいる[2]。これを表現ひょうげんするかたりとして、イギリスの法制ほうせい史家しかであるメーン(Maine)の「身分みぶんから契約けいやくへ」がある[5]

その社会しゃかいてき背景はいけいとしては、中世ちゅうせいまで自給自足じきゅうじそくてき経済けいざいだったものが、近代きんだいはいって資本しほん主義しゅぎ成立せいりつによって経済けいざいてき自由じゆう主義しゅぎ発達はったつしたことがある[6]資本しほん主義しゅぎ経済けいざいしたでの社会しゃかいは、貨幣かへい経済けいざい高度こうど発達はったつし、商品しょうひん流通りゅうつう過程かていにおいては売買ばいばい契約けいやく資本しほん生産せいさん過程かていにおいては雇用こよう契約けいやく労働ろうどう契約けいやく)のふたつの契約けいやく中核ちゅうかくをなし、このほか他人たにん所有しょゆうする不動産ふどうさん生産せいさん手段しゅだんとして利用りようするための賃貸借ちんたいしゃく契約けいやく資本しほん調達ちょうたつのための金銭きんせん消費しょうひ貸借たいしゃく契約けいやくなどが重要じゅうよう機能きのうたしている[7][8]

また、精神せいしんてき背景はいけいとしては、権威けんい主義しゅぎてき発想はっそうから、自分じぶん意思いししたがって自由じゆう権利けんり義務ぎむ発生はっせいさせることができるというルネサンス以降いこう合理ごうり主義しゅぎ近代きんだい自然しぜん法学ほうがく)への転換てんかんがある[6]。ただ、近代きんだい以後いご自由じゆう意思いしもとづいて締結ていけつされている以上いじょうは、ひとひととの合意ごういはいかなる内容ないようであっても絶対ぜったいてきなものであるとの契約けいやく至上しじょう主義しゅぎがみられるようになったが、一方いっぽう契約けいやく当事とうじしゃ対等たいとう地位ちいでない場合ばあいについては不合理ふごうり内容ないよう契約けいやく締結ていけつされるといったてん問題もんだいし、現代げんだいではいちじるしく社会しゃかいてき妥当だとうせい合理ごうりせいしっする契約けいやく公序良俗こうじょりょうぞく違反いはんあるいは強行きょうこう法規ほうき違反いはんとして拘束こうそくりょく否定ひていされたり、事情じじょう変更へんこう原則げんそくなどによって是正ぜせいけるにいたっている[9]

契約けいやく自由じゆう原則げんそく

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意義いぎ

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契約けいやく自由じゆう原則げんそくとは、私的してき生活せいかつ関係かんけい自由じゆう独立どくりつした法的ほうてき主体しゅたいである個人こじんによって形成けいせいされるべきであり、国家こっか干渉かんしょうすべきではなく個人こじん意思いし尊重そんちょうさせるべきであるという私的してき自治じち原則げんそくから派生はせいする原則げんそくをいう[10]。この原則げんそくは、「レッセ・フェール」の思想しそう法的ほうてきあらわれとして意味いみをもつとされる[11]

なお、契約けいやくほう規定きてい基本きほんてきには契約けいやく自由じゆう原則げんそく妥当だとうすることから、原則げんそくてき強行きょうこう法規ほうきではなく任意にんい法規ほうきとされる[12]

内容ないよう

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  • 契約けいやく締結ていけつ自由じゆう
契約けいやく締結ていけつするかかを選択せんたくする自由じゆうであり、契約けいやく締結ていけつ自由じゆう申込もうしこみの自由じゆう承諾しょうだく自由じゆうけられる[13]
  • 相手方あいてがた選択せんたく自由じゆう
契約けいやく相手方あいてがた選択せんたくする自由じゆうである[14][13]
  • 契約けいやく内容ないよう決定けってい自由じゆう
どのような内容ないよう契約けいやく締結ていけつしてもよいという自由じゆうである[15]
  • 契約けいやく方式ほうしき自由じゆう
どのような方式ほうしき契約けいやく締結ていけつしてもよいという自由じゆうである[15]欧州おうしゅうにおいては中世ちゅうせいまで方式ほうしき主義しゅぎ支配しはいしていたものの、商品しょうひん交換こうかん経済けいざい発達はったつとともに17世紀せいきには方式ほうしき自由じゆう確立かくりつされたという[16]

修正しゅうせい

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資本しほん主義しゅぎ発展はってんとともに社会しゃかいてき格差かくさおおきくなると、国家こっかによって契約けいやく自由じゆう原則げんそく修正しゅうせいはかられるようになった[17]

なお、契約けいやく締結ていけつ自由じゆう制限せいげん必然ひつぜんてき相手方あいてがた選択せんたく自由じゆう制限せいげんともなうことになる[17]
  • 相手方あいてがた選択せんたく自由じゆう制限せいげん
採用さいようにおいて労働ろうどう組合くみあい組合くみあいいんであることを要件ようけんとする労働ろうどう組合くみあいほうクローズド・ショップ労働ろうどう組合くみあいほう7じょう1こう)などがこれにあたる。
  • 契約けいやく方式ほうしき自由じゆう制限せいげん
    契約けいやく方式ほうしき自由じゆうにも制限せいげんがある。たとえば、贈与ぞうよ契約けいやく日本にっぽんほうではだくなり契約けいやくであるが、しょ外国がいこくでは要式ようしき契約けいやくとされることがおおく、ドイツ民法みんぽうやフランス民法みんぽうでは公正こうせい証書しょうしょ必要ひつようとされる[22]日本にっぽんほうでも、農地のうちまた採草さいそう放牧ほうぼく賃貸借ちんたいしゃく契約けいやくについては書面しょめんによらねばならないとされている(農地のうちほう21じょう)など、一定いってい方式ほうしきようする契約けいやく存在そんざいし、また、大量たいりょう複雑ふくざつするしょう取引とりひきにおいては取引とりひき関係かんけい明確めいかく迅速じんそくするため商法しょうほうじょう例外れいがいもうけられている[23][17]
    ようもの契約けいやくもの引渡ひきわたしをようする契約けいやく合意ごういだけでは成立せいりつしないてんで、契約けいやく方式ほうしき自由じゆう制限せいげんするものとなるが、これらの契約けいやくようもの契約けいやくとされるのは沿革えんかくじょう理由りゆうによる[24]日本にっぽん民法みんぽうでは587じょうによる消費しょうひ貸借たいしゃくようもの契約けいやくである(ただし2017ねん改正かいせい民法みんぽう(2020ねん4がつ1にち施行しこう予定よてい)で587じょうの2が新設しんせつされ、書面しょめんによる消費しょうひ貸借たいしゃく場合ばあいもの交付こうふ不要ふようとされた)[25]。スイス民法みんぽうでは現実げんじつ贈与ぞうよのみようもの契約けいやくとしている[26]

契約けいやく種類しゅるい

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典型てんけい契約けいやく典型てんけい契約けいやく

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典型てんけい契約けいやく
民法みんぽうてん規定きていする契約けいやく類型るいけい典型てんけい契約けいやくという。日本にっぽんほうにおいては、贈与ぞうよ売買ばいばい交換こうかん消費しょうひ貸借たいしゃく使用しよう貸借たいしゃく賃貸借ちんたいしゃく雇用こよう雇傭こよう)、請負うけおい委任いにん寄託きたく組合くみあい終身しゅうしん定期ていききん和解わかいの13種類しゅるい契約けいやくをいう[27][28]有名ゆうめい契約けいやくともいう[28]典型てんけい契約けいやく広義こうぎにはしょう法典ほうてん規定きていする契約けいやく類型るいけい、すなわち日本にっぽんほうにおいては、商法しょうほうだい2へん商行為しょうこうい規定きていする9種類しゅるい契約けいやくである商事しょうじ売買ばいばい売買ばいばい)、交互こうご計算けいさん匿名とくめい組合くみあい仲立なかだち営業えいぎょう問屋とんや営業えいぎょう運送うんそう取扱とりあつかい営業えいぎょう運送うんそう営業えいぎょう商事しょうじ寄託きたく寄託きたく)、保険ほけんをもふく[29]典型てんけい契約けいやくについては民法みんぽう商法しょうほう二元にげんてきさだめる法制ほうせい(フランス民法みんぽうやドイツ民法みんぽう)と、まとめて一元いちげんてきさだめる法制ほうせいスイス民法みんぽう)とがあるが、日本にっぽんでは前者ぜんしゃ法制ほうせいをとる[29]
古代こだいローマほうでは、売買ばいばい賃貸借ちんたいしゃく委任いにん組合くみあいの4しゅのみが典型てんけい契約けいやくとされていた[25]。しかし中世ちゅうせいはいると取引とりひき複雑ふくざつにより典型てんけい契約けいやくかずえた[25]
典型てんけい契約けいやく種類しゅるい各国かっこくごとにことなっており、たとえばフランス民法みんぽう典型てんけい契約けいやくとして売買ばいばい交換こうかん賃貸借ちんたいしゃく会社かいしゃ貸借たいしゃく寄託きたく係争けいそうぶつ寄託きたく射倖しゃこう契約けいやく委託いたく保証ほしょう和解わかいの11種類しゅるい規定きていする[30]
契約けいやく自由じゆう原則げんそくにより基本きほんてき契約けいやく内容ないよう効果こうか当事とうじしゃあいだ自由じゆうさだめうるにもかかわらず、法律ほうりつ典型てんけい契約けいやく規定きていする意味いみは、どう時代じだい社会しゃかいにおいては契約けいやく類型るいけいがほぼ一定いっていしており、また、当事とうじしゃ意思いし明確めいかく場合ばあい契約けいやく解釈かいしゃく標準ひょうじゅんとするためである[31]
典型てんけい契約けいやく
具体ぐたいてき契約けいやくについて、全体ぜんたいてきにも部分ぶぶんてきにも契約けいやく定型ていけい典型てんけい契約けいやく)に適合てきごうしない契約けいやく典型てんけい契約けいやくという[32]日本にっぽんでは、出版しゅっぱん契約けいやくなどがこれにあたる[33][32]無名むめい契約けいやくともいう[34]
中世ちゅうせいには典型てんけい契約けいやくは「ころもをまとった合意ごうい」とばれたのにたいし、典型てんけい契約けいやく該当がいとうしない契約けいやくは「はだか合意ごうい」といわれ法的ほうてき効力こうりょくみとめられなかった[25]近代きんだいになって人間にんげん自分じぶん意思いししたがって自由じゆう権利けんり義務ぎむ発生はっせいさせることができるとかんがえられるようになったことで無名むめい契約けいやくにも法的ほうてき効力こうりょくみとめられるようになった[25]
混合こんごう契約けいやく
具体ぐたいてき契約けいやくについて、それにふくまれる要素ようそ個別こべつてきにみると契約けいやく定型ていけい典型てんけい契約けいやく)にぞくしているとみられるものの、全体ぜんたいてきにみるとそれが相互そうごむすびついており当事とうじしゃ一体いったいてきなものとしてみている契約けいやく[35]混合こんごう典型てんけい契約けいやく[35]混成こんせい契約けいやく[36]ともいう。製造せいぞうぶつ供給きょうきゅう契約けいやくがこれにあたる(請負うけおい売買ばいばい混合こんごう契約けいやく[37]。なお、契約けいやく自由じゆう原則げんそくから、基本きほんてきには契約けいやく内容ないよう効果こうか当事とうじしゃあいだ自由じゆうさだめうるとされ[31]混合こんごう契約けいやくについても当事とうじしゃ真意しんい慣行かんこう考慮こうりょして合理ごうりてき解釈かいしゃくおこなうべきで典型てんけい契約けいやく規定きてい機械きかいてき適用てきようすべきでないとされる[36]

双務そうむ契約けいやく片務契約へんむけいやく

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双務そうむ契約けいやく
契約けいやく当事とうじしゃ双方そうほう対価たいかてき性質せいしつゆうする債務さいむっている契約けいやく[38]売買ばいばい契約けいやくれいにとると、売主うりぬし買主かいぬしたいして財産ざいさんけん移転いてんする義務ぎむ債務さいむ)があり、買主かいぬし売主うりぬしたいしてその代金だいきん支払しはら義務ぎむ債務さいむ)がある。よって売主うりぬし買主かいぬし双方そうほうがおたがいに債務さいむっている(債権さいけんゆうしている)ため、売買ばいばい契約けいやく双務そうむ契約けいやくであるといえる。債務さいむ対価たいかてき性質せいしつゆうするかかは客観きゃっかんではなく当事とうじしゃ主観しゅかんによりさだまる[39]日本にっぽん民法みんぽう典型てんけい契約けいやくなかでは、売買ばいばい交換こうかん賃貸借ちんたいしゃく雇用こよう請負うけおい組合くみあい和解わかいの7しゅつね双務そうむ契約けいやくとされる[38]双務そうむ契約けいやくには存続そんぞくの牽連せい消滅しょうめつの牽連せいといった特殊とくしゅ効力こうりょくがある[40]
片務契約へんむけいやく
契約けいやく当事とうじしゃ一方いっぽうのみが対価たいかてき性質せいしつゆうする債務さいむっている契約けいやく贈与ぞうよ消費しょうひ貸借たいしゃく使用しよう貸借たいしゃくの3しゅつね片務契約へんむけいやくとされる[38]。このうち贈与ぞうよには負担ふたんづけ贈与ぞうよふくまれる(負担ふたんづけ贈与ぞうよにおける負担ふたんしたがえてき関係かんけいのものであり、対等たいとう関係かんけい反対はんたい給付きゅうふとはいえず片務契約へんむけいやくとされる[39])。
委任いにん寄託きたく終身しゅうしん定期ていききんの3しゅ双務そうむである場合ばあいかたつとむである場合ばあいとがある[38]
なお、えいべいほうでは捺印なついん証書しょうしょまたはやくいん対価たいか)が契約けいやく有効ゆうこう要件ようけんになっているので、たとえば日本にっぽんほうにおけるたんなる贈与ぞうよ契約けいやくにあたる契約けいやく捺印なついん証書しょうしょによらないかぎえいべいほうじょう契約けいやくとしては有効ゆうこうにならない[3]

有償ゆうしょう契約けいやく無償むしょう契約けいやく

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有償ゆうしょう契約けいやく
契約けいやくすべての過程かていにおいて対価たいかてき性質せいしつをもつ出捐しゅつえん経済けいざいてき損失そんしつ)があるとみとめられる契約けいやく[34]日本にっぽん民法みんぽう典型てんけい契約けいやくなかでは、売買ばいばい交換こうかん賃貸借ちんたいしゃく雇用こよう請負うけおい組合くみあい和解わかいの7しゅつね有償ゆうしょう契約けいやくとされる[38]消費しょうひ貸借たいしゃく委任いにん寄託きたく終身しゅうしん定期ていききんの4しゅ有償ゆうしょうである場合ばあい無償むしょうである場合ばあいとがある[38]有償ゆうしょう契約けいやくには原則げんそくとして売買ばいばい契約けいやく規定きてい準用じゅんようされる(民法みんぽう559じょう)。
無償むしょう契約けいやく
対価たいかてき性質せいしつをもつ出捐しゅつえん経済けいざいてき損失そんしつ)が存在そんざいしない契約けいやく日本にっぽん民法みんぽう典型てんけい契約けいやくなかでは、贈与ぞうよ使用しよう貸借たいしゃくの2しゅつね無償むしょう契約けいやくとされる[38]消費しょうひ貸借たいしゃく委任いにん寄託きたく終身しゅうしん定期ていききんの4しゅ有償ゆうしょうである場合ばあい無償むしょうである場合ばあいとがある[38]双務そうむ契約けいやくおおくは有償ゆうしょう契約けいやくであり、片務契約へんむけいやくおおくは無償むしょう契約けいやくであるが、例外れいがいてき利息りそくづけ消費しょうひ貸借たいしゃく契約けいやくかたつとむ有償ゆうしょう契約けいやくである[41][42]。なお、双務そうむ契約けいやく片務契約へんむけいやく分類ぶんるいローマほう由来ゆらいする[36]
無償むしょう契約けいやく有償ゆうしょう契約けいやくくらべて注意ちゅうい義務ぎむ軽減けいげんされる場合ばあいおお[43]目的もくてきであるもの権利けんりかんする責任せきにん限定げんていされる(民法みんぽう551じょう1こう民法みんぽう590じょう2こう民法みんぽう596じょう)。なお、負担ふたんづけ贈与ぞうよ契約けいやくについては、その負担ふたん限度げんど実質じっしつてきには有償ゆうしょう契約けいやくとしての性質せいしつみとめられるため、その限度げんどにおいて担保たんぽ責任せきにんう(民法みんぽう551じょう2こう[44]

だくなり契約けいやくようもの契約けいやく

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だくなり契約けいやく
当事とうじしゃ合意ごういだけで、契約けいやく目的もくてきぶつ交付こうふ必要ひつようとせず成立せいりつする契約けいやく[45]近代きんだいほうにおいては、契約けいやく自由じゆう原則げんそく方式ほうしき自由じゆうから、契約けいやく原則げんそくとして当事とうじしゃ合意ごういのみで成立せいりつするだくなり契約けいやく原則げんそくとされ[46]日本にっぽん民法みんぽうもこれにならう。また、ヨーロッパ契約けいやくほう原則げんそくだい2-101には、「契約けいやくは、書面しょめんによって締結ていけつされまた証明しょうめいされることをようさず、形式けいしきかんするそののいかなる条件じょうけんしたがうこともようさない」として、だくなり主義しゅぎ原則げんそく規定きていされている。
ようもの契約けいやく
当事とうじしゃ合意ごういだけでなく目的もくてきぶつ交付こうふとによって成立せいりつする契約けいやく践成契約けいやくあるいは実践じっせん契約けいやくともいう[47]ようもの契約けいやく存在そんざい歴史れきしてき経緯けいいによる[25]
日本にっぽん民法みんぽうでは587じょうによる消費しょうひ貸借たいしゃくようもの契約けいやくである(ただし2017ねん改正かいせい民法みんぽう(2020ねん4がつ1にち施行しこう予定よてい)で587じょうの2が新設しんせつされ、書面しょめんによる消費しょうひ貸借たいしゃく場合ばあいもの交付こうふ不要ふようとされた)[25]。フランス民法みんぽうやオランダ民法みんぽうでも、消費しょうひ貸借たいしゃく契約けいやくようもの契約けいやくとして規定きていされている(フランス民法みんぽう1892じょう、オランダ民法みんぽう7Aへん1791じょう)。ドイツ民法みんぽうでは、かつては消費しょうひ貸借たいしゃく契約けいやくようもの契約けいやくとして規定きていされていたが、2001ねん改正かいせいによりだくなり契約けいやくとされた。日本にっぽんでは2017ねん改正かいせい民法みんぽう典型てんけい契約けいやく使用しよう貸借たいしゃく寄託きたくだくなり契約けいやくとなり、代物しろもの弁済べんさい契約けいやくだくなり契約けいやくとなった(2020ねん4がつ1にち施行しこう予定よてい)。

要式ようしき契約けいやく要式ようしき契約けいやく

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要式ようしき契約けいやくとは契約けいやく成立せいりつ一定いってい方式ほうしき必要ひつようとする契約けいやく要式ようしき契約けいやくとは契約けいやく成立せいりつなにらの方式ほうしきをも必要ひつようとしない契約けいやくをいう。財産ざいさん行為こういにおける契約けいやくにおいては、契約けいやく自由じゆう原則げんそく具体ぐたいてきには契約けいやく方式ほうしき自由じゆう)がつよ妥当だとうするので、要式ようしきせい要求ようきゅうされる契約けいやく一定いってい場合ばあい限定げんていされることとなる。したがって、ほとんどの財産ざいさん行為こうい契約けいやく要式ようしき契約けいやくである。これにたいし、身分みぶん行為こういにおいては当事とうじしゃ慎重しんちょう考慮こうりょとその意思いし明確めいかく、さらに第三者だいさんしゃたいする公示こうじなどが必要ひつようとされるので、そのほとんどが要式ようしき契約けいやくである(婚姻こんいん養子ようし縁組えんぐみなどは届出とどけでようする典型てんけいてき要式ようしき契約けいやくである)。

日本にっぽん民法みんぽう保証人ほしょうにん意思いし慎重しんちょうかつ明確めいかくなものにするという観点かんてんから保証ほしょう契約けいやくにつき要式ようしき契約けいやくとしている(保証ほしょう契約けいやくについては平成へいせい16ねん民法みんぽう改正かいせいにより446じょう2こう要式ようしき契約けいやくとされることになった)。また、ドイツほうでは、不動産ふどうさん物権ぶっけん変動へんどう成立せいりつ要件ようけんとして登記とうき要求ようきゅうしている(ドイツ民法みんぽう873じょう1こう)。フランスほうでは、贈与ぞうよ抵当ていとうけん設定せってい建築けんちく予定よてい不動産ふどうさん売買ばいばいとうにつき、公証こうしょうじんによるおおやけしょ証書しょうしょ作成さくせいようする[48]

後述こうじゅつするように米国べいこくでは種々しゅじゅ契約けいやく書面しょめんによって契約けいやくおこなうことが要求ようきゅうされている[49]

一回いっかいてき契約けいやく継続けいぞくてき契約けいやく

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一回いっかいてき契約けいやくとは売買ばいばい契約けいやくなどいちかい給付きゅうふをもって終了しゅうりょうする契約けいやく継続けいぞくてき契約けいやくとは賃貸借ちんたいしゃくなど契約けいやく関係かんけい継続けいぞくする契約けいやくをいう[44]一回いっかいてき契約けいやく解除かいじょでは契約けいやく効力こうりょく遡及そきゅうてき消滅しょうめつするのにたいし、継続けいぞくてき契約けいやくにおいては契約けいやく効力こうりょく将来しょうらいかってのみ消滅しょうめつするというてん両者りょうしゃにはちがいがある(このほか継続けいぞくてき契約けいやく解除かいじょにおいては信頼しんらい関係かんけい破壊はかいによる解除かいじょみとめられる。信頼しんらい関係かんけい破壊はかい法理ほうり参照さんしょう[44]

ゆういん契約けいやくいん契約けいやく

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債務さいむ成立せいりつにおいて、その原因げんいん事実じじつむすびついている契約けいやくで、原因げんいん事実じじつ存在そんざい不成立ふせいりつ場合ばあいには債権さいけん無効むこうとなる契約けいやくゆういん契約けいやくという[50]反対はんたい原因げんいん事実じじつ存在そんざい不成立ふせいりつ場合ばあいにも債権さいけんについては無効むこうとはならない契約けいやくいん契約けいやくというが、日本にっぽん民法みんぽうじょう典型てんけい契約けいやくはすべてゆういん契約けいやくである(ただし、契約けいやく自由じゆう原則げんそくからいん契約けいやく締結ていけつすることは可能かのうとされる)[51]

しゅたる契約けいやくしたがえたる契約けいやく

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複数ふくすう契約けいやくあいだ主従しゅうじゅう関係かんけいみとめられる場合ばあいであり、金銭きんせん消費しょうひ貸借たいしゃく契約けいやくしゅたる契約けいやくとすると、その保証ほしょう契約けいやく利息りそく契約けいやくしたがえたる契約けいやくという[52]

契約けいやく成立せいりつ

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契約けいやく当事とうじしゃ申込もうしこみと承諾しょうだく合致がっちによって成立せいりつし、これが基本きほんてき契約けいやく成立せいりつ形態けいたいである。契約けいやく成立せいりつには客観きゃっかんてき合致がっち申込もうしこみと承諾しょうだく内容ないよう客観きゃっかんてき一致いっち)と主観しゅかんてき合致がっち当事とうじしゃあいだでの契約けいやく成立せいりつさせる意図いと)が必要ひつようとなる[53]

申込もうしこみと承諾しょうだく合致がっち

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契約けいやくは、当事とうじしゃあいだ申込もうしこみと承諾しょうだくというふたつの意思いし表示ひょうじ合致がっちによって成立せいりつする。たとえば、たいして「これをります」とうのにたいしてが「では、それをいます」とえば両者りょうしゃあいだ売買ばいばい契約けいやく成立せいりつする。

日本にっぽんほうにおいてはこのように意思いし表示ひょうじだけで契約けいやく成立せいりつするだくなり主義しゅぎ原則げんそくである。これにたいし、契約けいやく成立せいりつのためには一定いってい方式ほうしきをふまなければならないというかんがかたないし規範きはん要式ようしき主義しゅぎという(たとえば、保証ほしょう契約けいやく契約けいやくしょがなければ成立せいりつしない、など)。

えいべい契約けいやくほうでも契約けいやく成立せいりつ申込もうしこみと承諾しょうだく基本きほんにしているが、後述こうじゅつ捺印なついん証書しょうしょ(deed)またはやくいん(consideration)がなければ契約けいやく有効ゆうこう(enforceable)とならない[3]

申込もうしこ
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  • 申込もうしこみの意義いぎ
    申込もうしこみとは、承諾しょうだくがあれば契約けいやく成立せいりつさせることを内容ないようとする意思いし表示ひょうじをいう[54][55]申込もうしこみと区別くべつされる概念がいねん申込もうしこみの誘引ゆういんがあり、他人たにんたいして申込もうしこみをうながすための行為こういをいう[56][54]交通こうつう機関きかん時刻じこくひょう掲示けいじ旅客りょかく運送うんそう契約けいやく)、商品しょうひん目録もくろく商品しょうひん見本みほん送付そうふ売買ばいばい契約けいやくとう)などがこれにあたる[57]
  • 申込もうしこみの到達とうたつ時期じき
    日本にっぽんほうでは申込もうしこみの意思いし表示ひょうじ効力こうりょくは、意思いし表示ひょうじ到達とうたつ主義しゅぎ原則げんそくにより、その通知つうち相手方あいてがた到達とうたつしたときからその効力こうりょくしょうずる(97じょう1こう)。通知つうち到達とうたつまえまでは意思いし表示ひょうじ効力こうりょくしょうじていないので、申込もうしこみは依然いぜんとして撤回てっかい可能かのうである[58]
  • 申込もうしこみの形式けいしきてき効力こうりょく拘束こうそくりょく
    申込もうしこみの形式けいしきてき効力こうりょく消極しょうきょくてき効力こうりょく拘束こうそくりょく)とは、一定いってい期間きかん申込もうしこみの効力こうりょく継続けいぞく撤回てっかいしえないことをいう[59]申込もうしこみの拘束こうそくりょくは、ローマほう、フランスほう、イギリスほうでは原則げんそくとしてみとめられていない(相手方あいてがた承諾しょうだくがあるまでは自由じゆう撤回てっかいできる)のにたいし、ドイツ民法みんぽう、スイス債務さいむほう日本にっぽん民法みんぽうはこれをみとめる[60]申込もうしこみの拘束こうそくりょく消滅しょうめつした場合ばあい申込もうしこみしゃ申込もうしこみの意思いし表示ひょうじ自由じゆう撤回てっかいして申込もうしこみの効力こうりょく消滅しょうめつさせることができる(撤回てっかいにより承諾しょうだく適格てきかく消滅しょうめつ契約けいやく不成立ふせいりつとなる)[61]
    えいべいほうでは一定いってい期間きかん申込もうしこみを撤回てっかいしないと約束やくそくした確定かくていてき申込もうしこみをfirm offerという[49]英国えいこくほうでは原則げんそくとして契約けいやく申込もうしこみに拘束こうそくりょくみとめられていないが、それはこのような約束やくそくにもやくいんようするとされているためで、相手方あいてがたになるもの対価たいか支払しはらっているなどやくいんがないかぎ申込もうしこみにも拘束こうそくりょくみとめられない[49]。しかし、これでは不便ふべんなので米国べいこくほうでは統一とういつ商事しょうじ法典ほうてん一定いってい期限きげんきで一定いってい期間きかん申込もうしこみを撤回てっかいしないという約束やくそく効力こうりょくみとめている[49]詳細しょうさい後述こうじゅつ)。
    なお、日本にっぽんでは特定とくてい多数たすうものたいする申込もうしこみについては懸賞けんしょう広告こうこく規定きてい準用じゅんようすべきとほぐされており、原則げんそくとしていつでも撤回てっかいしうるが、指定してい行為こういについて期間きかんさだめたときは取消とりけしけん放棄ほうきしたものとの推定すいていける(530じょう[62]
  • 申込もうしこみの実質じっしつてき効力こうりょく承諾しょうだく適格てきかく
    申込もうしこみの実質じっしつてき効力こうりょく積極せっきょくてき効力こうりょく承諾しょうだく適格てきかく)とは、承諾しょうだくがあればただちに契約けいやく成立せいりつしうる法律ほうりつじょう可能かのうせいをいう[63]申込もうしこみの形式けいしきてき効力こうりょく拘束こうそくりょく)の失効しっこう申込もうしこみしゃ申込もうしこみの意思いし表示ひょうじ撤回てっかいしうる状態じょうたいとなるにとどまり、申込もうしこみしゃ撤回てっかいしないかぎりは申込もうしこみの実質じっしつてき効力こうりょく承諾しょうだく適格てきかく)はうしなわれないので相手方あいてがたはなお承諾しょうだくしうる[64][65]
    たとえば、承諾しょうだく期間きかんさだめのない申込もうしこみの承諾しょうだく適格てきかくについてドイツ民法みんぽう相当そうとう期間きかん経過けいかによって効力こうりょくうしなうものと規定きていする(ドイツ民法みんぽう146じょう)。
承諾しょうだく
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  • 承諾しょうだく意義いぎ
    承諾しょうだくとは、申込もうしこみとわせて契約けいやく成立せいりつさせることを内容ないようとする意思いし表示ひょうじをいう[66][55]
  • 承諾しょうだく効力こうりょく発生はっせい時期じき
    イギリスほうでは承諾しょうだく発信はっしん契約けいやく成立せいりつする発信はっしん主義しゅぎ、ドイツほうでは承諾しょうだく到達とうたつ契約けいやく成立せいりつする到達とうたつ主義しゅぎがとられている[67]
    日本にっぽん民法みんぽうでは2017ねん改正かいせい民法みんぽうにより申込もうしこみしゃ承諾しょうだく意思いし表示ひょうじ到達とうたつしたとき効力こうりょくしょう契約けいやく成立せいりつすることとなった[67]改正かいせいまえ承諾しょうだく意思いし表示ひょうじについて発信はっしん主義しゅぎがとられていた(きゅう526じょう1こう)。

交叉こうさ申込もうしこみ意思いし実現じつげん

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変則へんそくてき契約けいやく成立せいりつ形態けいたいとして交叉こうさ申込もうしこみ意思いし実現じつげんがある。

交叉こうさ申込もうしこみ
交叉こうさ申込もうしこみとは契約けいやく当事とうじしゃ偶然ぐうぜん相互そうご内容ないよう合致がっちする申込もうしこみをなすことをいい、この場合ばあいにも当事とうじしゃあいだ意思いし表示ひょうじ合致がっちみとめられるから契約けいやく成立せいりつする[68]
意思いし実現じつげん
意思いし実現じつげんとは申込もうしこみしゃ意思いし表示ひょうじまた取引とりひきじょう慣習かんしゅうにより承諾しょうだく通知つうち必要ひつようとしない場合ばあいには、契約けいやくは、承諾しょうだく意思いし表示ひょうじみとめるべき事実じじつがあったとき成立せいりつすることをいう(526じょう2こう[68]意思いし実現じつげんともいう。

契約けいやく締結ていけつじょう過失かしつ

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一方いっぽう当事とうじしゃ契約けいやく締結ていけつ過程かていでの過失かしつによって、相手方あいてがた損害そんがいこうむったときは信頼しんらい利益りえき範囲はんい損害そんがい賠償ばいしょう責任せきにんう(契約けいやく締結ていけつじょう過失かしつという)[69]

契約けいやく効力こうりょく

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契約けいやく有効ゆうこうせい

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契約けいやく効力こうりょくしょうじるためには、その前提ぜんていとして契約けいやく有効ゆうこうでなければならない。契約けいやく有効ゆうこうとされるためには、(1)確定かくてい可能かのうせい内容ないようがある程度ていど具体ぐたいてき特定とくていできること)、(2)実現じつげん可能かのうせい(契約けいやく締結ていけつ実現じつげん可能かのう内容ないようであること)、(3)適法てきほうせいようする[70]適法てきほうせいから社会しゃかいてき妥当だとうせいけて4つを有効ゆうこうせい要件ようけん分析ぶんせきされる場合ばあいもある[71]

契約けいやくは、公序良俗こうじょりょうぞくはんする場合ばあい(90じょう)や、強行きょうこう法規ほうきはんする場合ばあい(91じょう)、無効むこうとなる。契約けいやく構成こうせいする申込もうしこまた承諾しょうだく無効むこうである場合ばあい(93じょうただししょなど)も、「その契約けいやく無効むこうである」と表現ひょうげんされる。同様どうように、契約けいやく構成こうせいする申込もうしこまた承諾しょうだくされた場合ばあい(96じょう1こうなど)にも、「その契約けいやくされた」と表現ひょうげんされる。意思いし表示ひょうじ有効ゆうこうせい契約けいやく有効ゆうこうせい区別くべつする意味いみがないため、このような用語ようごほう混乱こんらんしょうじている。

契約けいやく当事とうじしゃあいだ効力こうりょく

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契約けいやく一般いっぱんてき効力こうりょく
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契約けいやく有効ゆうこう成立せいりつすると、当事とうじしゃはこれに拘束こうそくされ、契約けいやくまも義務ぎむしょうじる。契約けいやく当事とうじしゃは、契約けいやくによって発生はっせいした債権さいけん行使こうしし、債務さいむ履行りこうする。民法みんぽうなどの規定きていことなる契約けいやくをした場合ばあいでも、その規定きてい任意にんい規定きていであるかぎり、契約けいやく内容ないよう優先ゆうせんする。「契約けいやく当事とうじしゃあいだほうとなる」といわれるゆえんである。

契約けいやくによりしょうじた債務さいむを、債務さいむしゃ任意にんい履行りこうしない(債務さいむ不履行ふりこう)ときは、債権さいけんしゃは、訴訟そしょう手続てつづき強制きょうせい執行しっこう手続てつづきむことによって、債務さいむしゃたい強制きょうせいてき債務さいむ内容ないよう実現じつげんもとめることができる(強制きょうせい履行りこう現実げんじつてき履行りこう強制きょうせい)。また、債務さいむ不履行ふりこう発生はっせいした場合ばあい債権さいけんしゃは、契約けいやく解除かいじょをしたり、債務さいむしゃたい損害そんがい賠償ばいしょう請求せいきゅうをすることができる。

双務そうむ契約けいやく特有とくゆう効力こうりょく
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日本にっぽん民法みんぽうには契約けいやく効力こうりょくという款がおかれているが、実際じっさいじょう契約けいやく効力こうりょく」の問題もんだいとされる事柄ことがらはつまるところ「債権さいけん効力こうりょく」の問題もんだいなのであって、債権さいけん総則そうそくしょうにおいて規定きていされている。そして、債権さいけん総則そうそくでは包含ほうがんしきれないような契約けいやく関係かんけいとく双務そうむ契約けいやく独自どくじ規定きてい契約けいやく効力こうりょくの款においている。

契約けいやくたい第三者だいさんしゃ効力こうりょく

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近代きんだいほうにおいては、本来ほんらい契約けいやくによって権利けんり義務ぎむ取得しゅとくするのは契約けいやく当事とうじしゃのみであり、それ以外いがいものには利益りえき不利益ふりえきをもたらすことはできないとかんがえられていた(契約けいやく相対そうたいせい原則げんそくばれる)[72]。しかし、取引とりひき関係かんけい複雑ふくざつともなって、契約けいやくにより当事とうじしゃ一方いっぽう第三者だいさんしゃたいしてある給付きゅうふをすることをやくする契約けいやく締結ていけつされるようになり、このような契約けいやく第三者だいさんしゃのためにする契約けいやく537じょう)とばれる(詳細しょうさいについては第三者だいさんしゃのためにする契約けいやく参照さんしょう)。

第三者だいさんしゃのためにする契約けいやくは、当事とうじしゃ一方いっぽう第三者だいさんしゃたいして給付きゅうふおこなうことをやくするものであり、それぞれ独自どくじ主体しゅたいてき立場たちばことなるさんにん当事とうじしゃあいだ成立せいりつする三面さんめん契約けいやくとはことなる。また、第三者だいさんしゃのためにする契約けいやくでは要約ようやくしゃ権利けんり義務ぎむ帰属きぞくしたうえ一部いちぶ権利けんりのみが受益じゅえきしゃ帰属きぞくすることになるてんで、権利けんり義務ぎむ一切いっさい本人ほんにん直接ちょくせつ帰属きぞくする代理だいりとはことなる。沿革えんかくてきにはローマほう他人たにんのための契約けいやく締結ていけつゆるさなかったが、フランス民法みんぽうがローマほうけて原則げんそくとしてこのような契約けいやく締結ていけつみとめなかった(例外れいがいてき自己じこ他人たにんたいする贈与ぞうよ条件じょうけんとしてのみとする)のにたいし、ドイツほうやスイスほうはこのような契約けいやく締結ていけつみとめる法制ほうせいをとった[73][74]

契約けいやく終了しゅうりょう

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契約けいやく終了しゅうりょう原因げんいん

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契約けいやく終了しゅうりょう原因げんいんとしては、単発たんぱつてき契約けいやく場合ばあいには履行りこう弁済べんさい)、期間きかんさだめのある継続けいぞくてき契約けいやく場合ばあいには期間きかん満了まんりょう更新こうしんつづいている場合ばあいには更新こうしん拒絶きょぜつ)、期間きかんさだめのない継続けいぞくてき契約けいやく場合ばあいには解約かいやく申入もうしいれがある[75]。また、契約けいやく一般いっぱん終了しゅうりょう原因げんいんとして解除かいじょ合意ごうい解除かいじょがある(なお、合意ごうい解除かいじょはそれ自体じたい独立どくりつしたひとつの契約けいやくであり解除かいじょけん行使こうしとはことなる)[75]

契約けいやく解除かいじょ

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契約けいやく解除かいじょすることによって終了しゅうりょうすることができるが、契約けいやく解除かいじょされる場合ばあいにはおおきくけてふたつある。

ひとつは当事とうじしゃ片方かたがた一方いっぽうてき契約けいやく解除かいじょする場合ばあいであり、通常つうじょう解除かいじょ」といえばこちらをす。このとき、解除かいじょ契約けいやく一方いっぽうてき解除かいじょする権限けんげん解除かいじょけん)が法律ほうりつ規定きていによって一定いってい条件じょうけんたとえば債務さいむ不履行ふりこうなど)のもと発生はっせいするものを法定ほうてい解除かいじょけんといい、契約けいやくなどでさだめた条件じょうけんしたがって発生はっせいするものを約定やくじょう解除かいじょけんという。

上記じょうき意味いみ解除かいじょについては、こうがくじょう遡及そきゅうこうゆうするものを「解除かいじょ」、ゆうさないものを「解約かいやく告知こくち)」と分類ぶんるいすることがあるが、民法みんぽう法文ほうぶんじょうはともに「解除かいじょ」である。 もうひとつの解除かいじょは、契約けいやく当事とうじしゃはなって契約けいやくをなかったことにする合意ごうい解除かいじょである。合意ごうい解除かいじょも「契約けいやくをなかったことにする契約けいやく」というひとつの契約けいやくである。

契約けいやくこう

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信義しんぎそくうえ契約けいやく関係かんけいった当事とうじしゃは、契約けいやく終了しゅうりょうによっても権利けんり義務ぎむ関係かんけい当然とうぜんには終了しゅうりょうせず相手方あいてがた不利益ふりえきをこうむらせることのいようにする義務ぎむ[41][76]。これは契約けいやくこうばれており、ドイツほう由来ゆらいする概念がいねんである[77]。これを実定法じっていほうしたものとして日本にっぽんほうでは民法みんぽう654じょう委任いにん終了しゅうりょう処分しょぶん)や商法しょうほう16じょうきおいぎょう避止義務ぎむ)などがある。

大陸たいりくほうにおける契約けいやく

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狭義きょうぎには、義務ぎむ債務さいむ)の発生はっせい目的もくてきとする合意ごうい債権さいけん契約けいやく:えいcontract、ふつcontrat)のみをし、広義こうぎには(義務ぎむ発生はっせい以外いがいの)権利けんり変動へんどう物権ぶっけん変動へんどうまたじゅん物権ぶっけん変動へんどう)を目的もくてきとする合意ごうい物権ぶっけん契約けいやくおよじゅん物権ぶっけん契約けいやく)をふくみ(ふつ:convention)、さらには婚姻こんいん養子ようし縁組えんぐみといった身分みぶん関係かんけい設定せってい変更へんこう目的もくてきとする合意ごうい身分みぶん契約けいやく)をもふく[78][79]ことなる利益りえき状況じょうきょうにあるもの相互そうご利益りえきはか目的もくてき一定いってい給付きゅうふをする合意ごういをした場合ばあいにそれを法的ほうてき強制きょうせいりょくにより保護ほごするための制度せいどである。

契約けいやく」は狭義きょうぎには債権さいけん契約けいやくのみをし、広義こうぎには物権ぶっけん契約けいやくおよじゅん物権ぶっけん契約けいやくふくむが、ドイツ民法みんぽうフランス民法みんぽう一般いっぱん広義こうぎ意味いみ契約けいやくしているのにたいし、日本にっぽん民法みんぽうの「契約けいやく」は一般いっぱんには狭義きょうぎ意味いみもちいられている[78]債権さいけん契約けいやくとは、一定いってい債権さいけん関係かんけい発生はっせい目的もくてきとして複数ふくすう当事とうじしゃ合意ごういによって成立せいりつする法律ほうりつ行為こうい意味いみする[78]

日本にっぽんほうにおいても民法みんぽう契約けいやくかんする規定きてい物権ぶっけん契約けいやくじゅん物権ぶっけん契約けいやく準用じゅんようすべきとされる[78]

えいべいほうにおける契約けいやく

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えいべいほうにおいては、契約けいやく(Contract)とは2めい以上いじょう当事とうじしゃあいだむすばれた法律ほうりつじょう強制きょうせいりょくのある合意ごうい意味いみする。大陸たいりくほうえいべいほう比較ひかくすると、破産はさんほうなどのほう分野ぶんやくらべると、契約けいやくほうほう分野ぶんや非常ひじょう似通にかよっている[3]たとえば、契約けいやく成立せいりつ申込もうしこみと承諾しょうだく基本きほんにしている[3]。また、原則げんそくとして承諾しょうだく申込もうしこみを変更へんこうしてはならず、申込もうしこみを変更へんこうしたり、申込もうしこみに条件じょうけんなどを付加ふかしたときはあらたな申込もうしこみとしてあつかわれる[3]一方いっぽう捺印なついん証書しょうしょ(deed)またはやくいん(consideration)がなければ契約けいやく有効ゆうこう(enforceable)とならないといった特色とくしょくもある[3]

コンシダレイション(Consideration)法理ほうり

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コモン・ローにおいては、契約けいやく(Contract)が成立せいりつするためには、捺印なついん証書しょうしょ(deed)という厳格げんかく書面しょめんによって作成さくせいされているか、内容ないよう約束やくそくがコンシダレイション(Consideration)法理ほうりによりささえられている必要ひつようがある[80]。コンシダレイションとは「契約けいやく一方いっぽう当事とうじしゃがその約束やくそく交換こうかんに、相手方あいてがた当事とうじしゃから利益りえきもしくは不利益ふりえき」のことで道徳どうとく正義せいぎともイギリスじん慣行かんこうとも無関係むかんけいである。considerationは日本語にほんごでは「やくいん」とやくされている[3]

契約けいやく成立せいりつ要件ようけん

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契約けいやく成立せいりつ要件ようけん申込もうしこみ(Offer)、承諾しょうだく(Agreement)、やくいん(Consideration)、契約けいやく能力のうりょく(Capacity)、合法ごうほうせい(Legitimacy)の5つであり、原則げんそくとしてやくいん必要ひつようとするのが大陸たいりくほう諸国しょこくとのおおきな相違そういてんである。さらに、一定いってい契約けいやく詐欺さぎ防止ぼうしほう規定きていしたが書面しょめんにより作成さくせいされなければならない。

捺印なついん証書しょうしょやくいん

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えいべい契約けいやくほうでは契約けいやくには捺印なついん証書しょうしょ(deed)またはやくいん(consideration)がなければ有効ゆうこう(enforceable)とならない[3]

捺印なついん証書しょうしょ(deed)
捺印なついん証書しょうしょ(deed)はしるし(seal)をした形式けいしきのものをいう[3]
やくいん(Consideration)
やくいん契約けいやく当事とうじしゃあいだしょうじる対価たいかをいう[3]やくいん(Consideration)は当事とうじしゃあいだ交換こうかん取引とりひき存在そんざい裏付うらづけるものを意味いみえいべいほうじょう契約けいやく最大さいだい特色とくしょくとされる[81]
えいべいほうじょう契約けいやくやくいんすなわち交換こうかん取引とりひき存在そんざい(コンシダレイション)を前提ぜんていとしており、たとえばかたつとむてき交換こうかん取引とりひき存在そんざいしない日本にっぽんほうにおけるたんなる贈与ぞうよ契約けいやく捺印なついん証書しょうしょによらないかぎえいべいほうじょう契約けいやくにはあてはまらない[3][82]。そのため、エクイティによる救済きゅうさい手段しゅだんられない(エクイティじょう法律ほうりつ効果こうか有効ゆうこうでない)とされている。

えいべいほうにおける契約けいやく申込もうしこ

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申込もうしこみしゃみずかおこなった申込もうしこみを撤回てっかいできないという効力こうりょく申込もうしこみの拘束こうそくりょくというが、イギリスでは申込もうしこみの拘束こうそくりょく原則げんそくとしてみとめていない[83]

えいべいほうでは一定いってい期間きかん申込もうしこみを撤回てっかいしないと約束やくそくした確定かくていてき申込もうしこみをfirm offerという[49]英国えいこくほうでは原則げんそくとして契約けいやく申込もうしこみに拘束こうそくりょくみとめられていないが、これは一定いってい期間きかん申込もうしこみを撤回てっかいしないという約束やくそくにもやくいんようするとかんがえられているためで、相手方あいてがたになるもの対価たいか支払しはらっているなどやくいんがないかぎ申込もうしこみにも拘束こうそくりょくみとめられない[49]やくいんがなくいま契約けいやく成立せいりつしていなければ原則げんそくとして申込もうしこみしゃ申込もうしこみを撤回てっかいできる。

しかし、これでは不便ふべんなので米国べいこくほうでは統一とういつ商事しょうじ法典ほうてんで3かげつ期限きげんきで一定いってい期間きかん申込もうしこみを撤回てっかいしないという約束やくそく効力こうりょくみとめている[49]。3かげつえる確定かくていてき申込もうしこみ(firm offer)が必要ひつよう場合ばあい相手方あいてがたになるもの申込もうしこみしゃたいして対価たいか通常つうじょうOption teeという)を支払しはらえばやくいんしょうじ、申込もうしこみしゃ申込もうしこみに拘束こうそくされ、3かげつえて有効ゆうこう確定かくていてき申込もうしこみ(firm offer)を取得しゅとくできる[49]

えいべいほうにおける要式ようしき契約けいやく

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米国べいこくでは種々しゅじゅ契約けいやく書面しょめん必要ひつよう要式ようしき契約けいやくとされている[49]統一とういつ商事しょうじ法典ほうてんでは500ドル以上いじょう物品ぶっぴん売買ばいばい契約けいやくには相手方あいてがた署名しょめいりの書面しょめんがなければ契約けいやく有効ゆうこうにならないとされている[49]。また、おおくのしゅうで、不動産ふどうさん売買ばいばい契約けいやく保証ほしょう契約けいやくなどが書面しょめん必要ひつよう要式ようしき契約けいやくとされている[49]

おおくの契約けいやく書面しょめん必要ひつようとされているのは詐欺さぎ防止ぼうしほう(statute of frauds)に由来ゆらいする[49]

イギリスでは1954ねんのLaw Reform Actによりおおくの契約けいやく書面しょめん要件ようけん撤廃てっぱいしたが、保証ほしょう契約けいやく不動産ふどうさん売買ばいばい契約けいやくには書面しょめん必要ひつようである[49]

国際こくさい契約けいやく

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国際こくさい契約けいやくかんする条約じょうやくとしては国際こくさい物品ぶっぴん売買ばいばい契約けいやくかんする国際こくさい連合れんごう条約じょうやく(CISG)がある[3]日本にっぽん国際こくさい物品ぶっぴん売買ばいばい契約けいやくかんする国際こくさい連合れんごう条約じょうやくに2008ねん加入かにゅうし、2009ねん8がつ1にち発効はっこうした[3]

へだたしゃあいだ契約けいやくにおける契約けいやく成立せいりつ時期じきにつき、国際こくさいてきには承諾しょうだく意思いし表示ひょうじ申込もうしこみしゃ到達とうたつした時点じてんとする到達とうたつ主義しゅぎ支配しはいてきであり[84]国際こくさいてき取引とりひき場面ばめんにおいては、国際こくさい物品ぶっぴん売買ばいばい契約けいやくかんする国際こくさい連合れんごう条約じょうやくにおいて、国際こくさいてき物品ぶっぴん売買ばいばい契約けいやくかんする承諾しょうだく意思いし表示ひょうじは、申込もうしこみしゃ到達とうたつしたとき効力こうりょくしょうずることが規定きていされ(どう条約じょうやく18じょう)、承諾しょうだく効力こうりょくしょうじた時点じてん契約けいやく成立せいりつするとされている(どう条約じょうやく23じょう)。

公法こうほうじょう契約けいやく

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行政ぎょうせい契約けいやく意義いぎ

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行政ぎょうせい主体しゅたいくに地方ちほう公共こうきょう団体だんたいがその典型てんけいれい)が一方いっぽう当事とうじしゃとして締結ていけつする契約けいやくのことをとく行政ぎょうせい契約けいやく狭義きょうぎ行政ぎょうせい契約けいやく)という[85]。また行政ぎょうせい主体しゅたい同士どうしむすばれる契約けいやく行政ぎょうせい契約けいやくひとつである。

行政ぎょうせい主体しゅたい私人しじんとのあいだむす行政ぎょうせい契約けいやくれい多岐たきおよぶが、公共こうきょう施設しせつりたり、補助ほじょきん交付こうふさい贈与ぞうよ契約けいやくや、公共こうきょう事業じぎょう請負うけおい以上いじょう準備じゅんび行政ぎょうせいがた)、水道すいどう給水きゅうすい以上いじょう給付きゅうふ行政ぎょうせいがた)、公害こうがい防止ぼうし協定きょうていとう協定きょうていむす場合ばあい規制きせい行政ぎょうせいがた)、国有こくゆう財産ざいさん地方ちほう公共こうきょう団体だんたいへの売払うりはらい(行政ぎょうせい主体しゅたいあいだがた)がげられる。

従来じゅうらい行政ぎょうせいむす契約けいやくを「私法しほうじょう契約けいやく」と「公法こうほうじょう契約けいやく」に峻別しゅんべつしてきたが、現在げんざいは、行政ぎょうせい主体しゅたい契約けいやく当事とうじしゃとする契約けいやくをまとめて「行政ぎょうせい契約けいやく」(行政ぎょうせいじょう契約けいやく)とする。

行政ぎょうせい契約けいやく契約けいやく一種いっしゅだが、行政ぎょうせい主体しゅたいがその当事とうじしゃであるため特殊とくしゅ考慮こうりょ必要ひつようとなる場合ばあいがある。たとえば、本来ほんらいならどのような契約けいやくむすんでもいのが原則げんそくであるが(契約けいやく自由じゆう原則げんそく)、法律ほうりつ優位ゆうい全面ぜんめんてきけ、行政ぎょうせい主体しゅたい権力けんりょくてき権限けんげんをあたえるような契約けいやく制限せいげんされる。さもなければ権力けんりょくてき行政ぎょうせい作用さよう法律ほうりつもとづいておこなわれなければならないとする「法律ほうりつによる行政ぎょうせい原理げんり」が骨抜ほねぬきにされかねないからである。さらに、合理ごうりてき理由りゆうのない差別さべつてき取扱とりあつかいについてもきんじられるとかんがえられている(平等びょうどう原則げんそく適用てきよう)。また、本来ほんらいならば契約けいやくむすぶかかも自由じゆうなはずであるが、水道すいどうなどの給付きゅうふ契約けいやくにおいては契約けいやく締結ていけつする義務ぎむされている場合ばあいもある。

規制きせい行政ぎょうせい行政ぎょうせい行為こうい形式けいしき原則げんそくであるが、例外れいがいてき契約けいやく方式ほうしきみとめられる。公害こうがい防止ぼうし協定きょうてい内容ないようについて、法律ほうりつさだめよりきびしい規制きせいおこなうとともに、立入検査たちいりけんさけんなどをさだめているれいがあるが、刑罰けいばつすことや強制きょうせい調査ちょうさまではみとめられないとするのが判例はんれいである。

行政ぎょうせい主体しゅたいあいだ契約けいやくについては、国有こくゆう財産ざいさん地方ちほう公共こうきょう団体だんたいへのうればらいは純然じゅんぜんたる民法みんぽうじょう契約けいやくであるが、事務じむ委託いたくは、権限けんげん委任いにんであるため、法律ほうりつじょう根拠こんきょ必要ひつようである。

行政ぎょうせい契約けいやくは、住民じゅうみん監査かんさ請求せいきゅう地方ちほう自治じちほう242じょう)・住民じゅうみん訴訟そしょうどう242じょうの2)の対象たいしょうとなる。

[86]

判例はんれい

地方ちほう自治じちほう

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契約けいやく締結ていけつ234じょう

契約けいやくは、一般いっぱん競争きょうそう入札にゅうさつ原則げんそくとし、指名しめい競争きょうそう入札にゅうさつ随意ずいい契約けいやくまたはせりりは、政令せいれいさだめる場合ばあい該当がいとうするときにかぎる(234じょう2こう)。

判例はんれい
  • 損害そんがい賠償ばいしょう請求せいきゅう事件じけん最高裁さいこうさい判例はんれい 平成へいせい18ねん10がつ26にち
    • むら発注はっちゅうする公共こうきょう工事こうじ指名しめい競争きょうそう入札にゅうさつ長年ながねん指名しめいけて継続けいぞくてき参加さんかしていた建設けんせつ業者ぎょうしゃ特定とくてい年度ねんど以降いこうまった指名しめいせず入札にゅうさつ参加さんかさせなかったむら措置そちにつき上記じょうき業者ぎょうしゃむらがい業者ぎょうしゃたることを理由りゆう違法いほうとはいえないとした原審げんしん判断はんだん違法いほうがあるとした

脚注きゃくちゅう

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出典しゅってん

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参考さんこう文献ぶんけん

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関連かんれん項目こうもく

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