借地しゃくち借家しゃくやほう

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借地しゃくち借家しゃくやほう
日本国政府国章(準)
日本にっぽん法令ほうれい
法令ほうれい番号ばんごう 平成へいせい3ねん法律ほうりつだい90ごう
種類しゅるい 民法みんぽう
効力こうりょく 現行げんこうほう
成立せいりつ 1991ねん9がつ30にち
公布こうふ 1991ねん10がつ4にち
施行しこう 1992ねん8がつ1にち
所管しょかん 法務省ほうむしょう
おも内容ないよう 不動産ふどうさん賃貸借ちんたいしゃくかんするとくそく
関連かんれん法令ほうれい 民法みんぽう民事みんじ調停ちょうていほう不動産ふどうさん登記とうきほうなど
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借地しゃくち借家しゃくやほう(しゃくちしゃくやほう。平成へいせい3ねん法律ほうりつだい90ごう)は、建物たてもの所有しょゆう目的もくてきとする地上ちじょうけん土地とち賃貸借ちんたいしゃく借地しゃくち契約けいやく)と、建物たてもの賃貸借ちんたいしゃくについてさだめた法律ほうりつである。

ほんこう借地しゃくち借家しゃくやほうについて以下いかではじょうすうのみをげる。

立法りっぽう趣旨しゅし旧法きゅうほうとの関係かんけい[編集へんしゅう]

立法りっぽう趣旨しゅしは、土地とち建物たてもの賃貸借ちんたいしゃく契約けいやくにおける賃借ちんしゃくじん借地しゃくちじん借家しゃくやじん店子たなこ)の保護ほごにある。これらの賃貸借ちんたいしゃく契約けいやくについての規定きていは、民法みんぽうてんにも存在そんざいする。しかし、民法みんぽうてん規定きてい自由じゆう主義しゅぎ思想しそう背景はいけいに、当事とうじしゃ個性こせい重視じゅうしせず、抽象ちゅうしょうてきにしか把握はあくしない。そのため、契約けいやく当事とうじしゃには形式けいしきてき平等びょうどうしか保障ほしょうされていないといえる。

ところが、現実げんじつ賃貸借ちんたいしゃく契約けいやくにおいてはおおくの場合ばあい賃貸ちんたいじん大家たいか)と賃借ちんしゃくじん店子たなこ借家しゃくやじん)とのちから関係かんけいにはがある。そのため、りょう当事とうじしゃ実質じっしつてき平等びょうどう保障ほしょうし、一般いっぱんよわ立場たちばかれがちである賃借ちんしゃくじん保護ほごはかったものである。また、資源しげんとしての建物たてもの保護ほご(まだ使用しようできる建物たてもの早期そうきこわさなければならない状況じょうきょう極力きょくりょくらす)をもはかっているといわれる。

借地しゃくち借家しゃくやほう民法みんぽう特別とくべつほうとしての位置いちづけをつ。もっとも、こうした趣旨しゅし旧法きゅうほうからいだものであり、本法ほんぽうによってはじめてれられたものではない。なお、農地のうち賃貸借ちんたいしゃく契約けいやくについては農地のうちほうにより土地とち賃借ちんしゃくじん保護ほごはかられている。

本法ほんぽう施行しこうにより、「建物たてもの保護ほごせきスル法律ほうりつ」(明治めいじ42ねん法律ほうりつだい40ごう建物たてもの保護ほごほう)・「借地しゃくちほう」(大正たいしょう10ねん法律ほうりつだい49ごう。5月15にち施行しこう)・「借家しゃくやほう」(大正たいしょう10ねん法律ほうりつだい50ごう。5月15にち施行しこう)は廃止はいしされた。

借地しゃくち借家しゃくやほうは、不動産ふどうさん賃貸借ちんたいしゃく契約けいやくにおける賃借ちんしゃくじん保護ほごする目的もくてき制定せいていされた上記じょうきの3ほう統合とうごうしたものである。しかし、本法ほんぽう施行しこうもそれらの法律ほうりつ意味いみうしなったわけではない。

すなわち、原則げんそくとしては、借地しゃくち借家しゃくやほう1992ねん平成へいせい4ねん8がつ1にち施行しこうまえしょうじた事項じこうにも適用てきようされるが(附則ふそく4じょう本文ほんぶん)、施行しこうまえ設定せっていされた借地しゃくちけんかか契約けいやく更新こうしんかんしては従前じゅうぜんれいにより(附則ふそく6じょう)、施行しこうまえにされた建物たてもの賃貸借ちんたいしゃく契約けいやく更新こうしん拒絶きょぜつ通知つうちおよ解約かいやく申入もうしいれにかんしては従前じゅうぜんれいによる(附則ふそく12じょう)など、一部いちぶ事項じこうについてはきゅう借地しゃくちほうきゅう借家しゃくやほう適用てきようされる。施行しこう更新こうしんされた場合ばあいきゅう借地しゃくちほうきゅう借家しゃくやほう適用てきようされる。

このような措置そちがとられた理由りゆうは、おもほう制定せいてい当時とうじ野党やとうから、借地しゃくち借家しゃくやほう賃借ちんしゃくじんにとって不利益ふりえきおよぼすのではないかという懸念けねんしめされたためである。

構成こうせい[編集へんしゅう]

  • だいいちしょう 総則そうそく
  • だいしょう 借地しゃくち
    • だいいちせつ 借地しゃくちけん存続そんぞく期間きかんとう
    • だいせつ 借地しゃくちけん効力こうりょく
    • だいさんせつ 借地しゃくち条件じょうけん変更へんこうとう
    • だいよんせつ 定期ていき借地しゃくちけんひとし
  • だいさんしょう 借家しゃくや
    • だいいちせつ 建物たてもの賃貸借ちんたいしゃく契約けいやく更新こうしんとう
    • だいせつ 建物たてもの賃貸借ちんたいしゃく効力こうりょく
    • だいさんせつ 定期ていき建物たてもの賃貸借ちんたいしゃくとう
  • だいよんしょう 借地しゃくち条件じょうけん変更へんこうとう裁判さいばん手続てつづき
  • 附則ふそく

内容ないよう[編集へんしゅう]

借地しゃくち借家しゃくやほうは、民法みんぽう規定きていされた賃貸借ちんたいしゃく契約けいやく原則げんそく現代げんだい社会しゃかい実状じつじょうわせて修正しゅうせいしている。

まず、借地しゃくちけんしゃおよ建物たてもの賃借ちんしゃくじん土地とち建物たてものしん所有しょゆうしゃたいして比較的ひかくてき容易ようい自己じこ権利けんり対抗たいこうできるようにした。また、借地しゃくち契約けいやくについて、その期間きかんをできるだけなが設定せっていし、かつ借地しゃくちけん設定せっていしゃおよ建物たてもの賃貸ちんたいじん契約けいやく更新こうしんなか強制きょうせいして契約けいやく容易よういには終了しゅうりょうできないようにした。

そして、借地しゃくちかんしては、借地しゃくちけん譲渡じょうと転貸てんたいをするさい本来ほんらい必要ひつよう借地しゃくちけん設定せっていしゃ地主じぬし)の承諾しょうだくなくてもわりに裁判所さいばんしょ許可きょかればよいとされた。さらにこれら借地しゃくち借家しゃくやほう規定きていは、借地しゃくちけんしゃおよ建物たてもの賃借ちんしゃくじん不利ふり特約とくやくをしてその内容ないよう変更へんこうしてはならないという片面かためんてき強行きょうこう規定きていという方法ほうほうがとられている(9じょう16じょう21じょう30じょう37じょう)。これらにくわえて建物たてものちんのうち「継続けいぞく賃料ちんりょう」(初回しょかい契約けいやく家賃やちん)にかか増減ぞうげんについてさだめられた借地しゃくち借家しゃくやほう32じょう1こうについては、おおくの最高裁さいこうさい判例はんれい強行きょうこう規定きていであるむね判示はんじされている(最高裁さいこうさい判決はんけつ平成へいせい17ねん3がつ10にち しゅうみん だい216ごう389ぺーじ など)。ぎゃくに、借地しゃくちけんしゃまた建物たてもの賃借ちんしゃくじん有利ゆうり特約とくやくゆるされる。

以上いじょう土地とち建物たてもの賃借ちんしゃくじんにとって有利ゆうりとされる規定きていであるが、そうでないものも本法ほんぽうにはふくまれる。それが定期ていき借地しゃくちけん定期ていき借家しゃくやけんである。

適用てきよう範囲はんい[編集へんしゅう]

借地しゃくち[編集へんしゅう]

借地しゃくち借家しゃくやほうは、建物たてもの所有しょゆう目的もくてきとする地上ちじょうけんまた土地とち賃借ちんしゃくけんを、借地しゃくちけん定義ていぎして、これを適用てきよう対象たいしょうとしている(1じょう2じょう1ごう以下いか本稿ほんこう建物たてもの所有しょゆう目的もくてき地上ちじょうけん設定せってい契約けいやくまた土地とち賃貸借ちんたいしゃく契約けいやくを「借地しゃくち契約けいやく」といい、借地しゃくちけんしゃ、すなわち借主かりぬしを「借地しゃくちじん」という)。無償むしょう原則げんそく使用しよう貸借たいしゃく契約けいやくには本法ほんぽう適用てきようがない。

なお、借地しゃくちけん付着ふちゃくしている土地とち所有しょゆうけんそこぶこともあるが、これは本法ほんぽう民法みんぽうじょう正式せいしき用語ようごではない。つまり不動産ふどうさん用語ようごもしくは俗語ぞくごである。

建物たてもの所有しょゆう目的もくてき」というには、事業じぎょうよう居住きょじゅうよう区別くべつわれないが、土地とち全体ぜんたい用途ようとから建物たてもの所有しょゆうしゅたる目的もくてきとするか、あるいは目的もくてきじょう建物たてもの所有しょゆう不可欠ふかけつであるかが必要ひつようとなる。具体ぐたいてきには、建物たてもの敷地しきち割合わりあいをもとに、実際じっさい使用しよう形態けいたいから「建物たてもの所有しょゆう目的もくてき」を判断はんだんする。

  • 自動車じどうしゃ教習所きょうしゅうじょ経営けいえいする目的もくてきでなされた土地とち賃貸借ちんたいしゃくについて、建物たてもの敷地しきち面積めんせき土地とち全体ぜんたいたいする割合わりあいが4.5%にすぎない場合ばあいであっても、「自動車じどうしゃ学校がっこう運営上うんえいじょう運転うんてん技術ぎじゅつ実地じっち練習れんしゅうのための教習きょうしゅうコースとして相当そうとう規模きぼ土地とち必要ひつようであると同時どうじに、交通こうつう法規ほうきとう教習きょうしゅうするための校舎こうしゃ事務じむしつとう建物たてもの不可欠ふかけつであり、その両者りょうしゃ一体いったいとなつてはじめて自動車じどうしゃ学校がっこう経営けいえい目的もくてきたっしうるのであるから」、建物たてもの所有しょゆう目的もくてきとしているとみとめた(さいはんあきら58.9.9)。
  • 幼稚園ようちえん運動うんどうじょうとして使用しようする目的もくてきでなされた土地とち賃貸借ちんたいしゃくについて、隣接りんせつするえんしゃ敷地しきち不可分ふかぶん一体いったい関係かんけいにある土地とちであっても、えんしゃ所有しょゆうそれ自体じたいのために使用しようされていなければ、建物たてもの所有しょゆう目的もくてきとしているとみとめなかった(さいはんひらめ7.6.29)。

ただし、一時いちじ使用しよう目的もくてき借地しゃくちけんには、存続そんぞく期間きかん契約けいやく更新こうしんとうかんする本法ほんぽう規定きてい適用てきようされない(25じょう)。 ここでいう一時いちじ使用しようとは、賃貸借ちんたいしゃく目的もくてき動機どうきなどの事情じじょうからその契約けいやく短期間たんきかんえることが客観きゃっかんてき判断はんだんできる場合ばあいをいう。サーカス興行こうぎょうのために土地とちりるような場合ばあい一時いちじ使用しよう目的もくてきたるとされる。

  • 一時いちじ使用しようというためには、その存続そんぞく期間きかんほうさだめる存続そんぞく期間きかんより相当そうとうみじかいものであることをようする(さいはんあきら45.7.21)。もっとも、存続そんぞく期間きかんを10ねんとした約定やくじょう一時いちじ使用しようみとめた判例はんれいもあり(さいはんあきら36.7.6)、たん期間きかん長短ちょうたんだけでなく個別こべつ事情じじょう考慮こうりょされる。

借家しゃくや[編集へんしゅう]

借地しゃくち借家しゃくやほうは、上記じょうき借地しゃくちのほか、建物たてもの賃貸借ちんたいしゃく契約けいやく適用てきよう対象たいしょうとしている(1じょう以下いか本稿ほんこう建物たてもの賃貸借ちんたいしゃく契約けいやくを「借家しゃくや契約けいやく」といい、その賃借ちんしゃくじんを「借家しゃくやじん」という)。

ここにいう「建物たてもの」は、一軒家いっけんやりている場合ばあいはもちろん、建物たてもの一部いちぶ間借まがりであっても、部分ぶぶん区画くかくされており、構造こうぞう規模きぼから独立どくりつてき排他はいたてき支配しはい可能かのうであればこれに該当がいとうする(さいはん昭和しょうわ42ねん6がつ2にちみんしゅう21かん6ごう1433ぺーじ)。

一時いちじ使用しよう目的もくてき借家しゃくや契約けいやくには、本法ほんぽう規定きてい適用てきようされない(40じょう)。イベント開催かいさいちゅう出店しゅってんすためだけに店舗てんぽりるという場合ばあいなどがこの一時いちじ使用しようたる。

対抗たいこうりょく[編集へんしゅう]

借地しゃくち借家しゃくやほうでは、借地しゃくちじん借家しゃくやじんが、借地しゃくちけん借家しゃくやけん第三者だいさんしゃ対抗たいこうするための対抗たいこう要件ようけんについて、民法みんぽうとくそくいている(10じょう31じょう)。

そもそも、賃借ちんしゃくけん貸主かしぬし借主かりぬしとの契約けいやくによりしょうじる債権さいけんにすぎないため、物権ぶっけんのような絶対ぜったいせいがなく、第三者だいさんしゃ対抗たいこうすることはできないのが民法みんぽう原則げんそくである。れいげると、

  • Aは地主じぬしであるかぶと土地とち賃貸借ちんたいしゃく契約けいやくむすび、その借地しゃくちいえててんでいた。あるかぶとがその土地とち第三者だいさんしゃであるおつ売却ばいきゃくした。土地とちあらたな所有しょゆうしゃとなったおつはAに退きを要求ようきゅうした。
  • Aは家主やぬしであるかぶと建物たてもの賃貸借ちんたいしゃく契約けいやくむすび、その借家しゃくやんでいた。あるかぶとがその建物たてもの第三者だいさんしゃであるおつ売却ばいきゃくした。家屋かおくあらたな所有しょゆうしゃとなったおつはAに退きを要求ようきゅうした。

上記じょうきの2つのれいでは、Aとかぶととのあいだ賃貸借ちんたいしゃく契約けいやくは、あくまでその2人ふたりあいだ締結ていけつされたものであるから、契約けいやくがいおつにとっては無関係むかんけいである。したがって、Aはおつたいしてその土地とち建物たてものについての賃借ちんしゃくけん主張しゅちょうできず、おつ所有しょゆうけんもとづき、Aにたいして明渡あけわたしをもとめることができることになる(「売買ばいばい賃貸借ちんたいしゃくやぶる」という原則げんそく)。

もっとも、民法みんぽうじょう賃借ちんしゃくけん登記とうきしていれば、賃借ちんしゃくじんは、しん所有しょゆうしゃたいしてもこれを対抗たいこうすることができる(民法みんぽうだい605じょう)。すなわち、かぶと賃貸ちんたい物件ぶっけんおつ売却ばいきゃくした場合ばあいも、賃借ちんしゃくじんAは、あらかじ賃借ちんしゃくけん設定せってい登記とうきけておけば、しん所有しょゆうしゃおつ賃借ちんしゃくけん主張しゅちょうし、つづけることができる。

しかし、賃貸借ちんたいしゃく契約けいやくにおいては、特約とくやくがないかぎり、賃借ちんしゃくじん賃貸ちんたいじん賃借ちんしゃくけん登記とうきもとめることはできないというのが判例はんれい通説つうせつである(大審院だいしんいん大正たいしょう10ねん7がつ11にち判決はんけつみんろく27かん1378ごう)。そして、実際じっさいじょうも、通常つうじょう地主じぬし家主やぬしは、賃借ちんしゃくけん登記とうきすることによってられる強力きょうりょく効果こうかきらい、任意にんい登記とうき協力きょうりょくすることはまずない。そのため、賃借ちんしゃくけん設定せってい登記とうきという方法ほうほうによって賃借ちんしゃくじんしん所有しょゆうしゃ自己じこ権利けんり主張しゅちょうするという方法ほうほう有名ゆうめい無実むじつしていた。

しかし、これでは、賃貸ちんたいじんが、賃料ちんりょう値上ねあげにおうじない賃借ちんしゃくじんについて賃貸ちんたい物件ぶっけん第三者だいさんしゃ売却ばいきゃくして退かせるなどして、値上ねあげをせまることもできることになり、賃借ちんしゃくじん立場たちば非常ひじょうよわいものになる。そこで、借地しゃくちじん借家しゃくやじん地位ちい保護ほごするために、本法ほんぽうでは以下いかのような規定きていもうけられている。

  • 借地しゃくちじんは、その土地とちじょう自己じこ名義めいぎ登記とうきすみ建物たてもの所有しょゆうしていれば、第三者だいさんしゃたいして借地しゃくちけん対抗たいこうすることができる(10じょう1こう)。登記とうきずみ建物たてもの滅失めっしつ2ねん以内いないならば、その土地とちじょうやすい場所ばしょに、建物たてもの特定とくていするために必要ひつよう事項じこう滅失めっしつがあった、および建物たてものあらたに築造ちくぞうするむね掲示けいじすることで、第三者だいさんしゃたいして借地しゃくちけん対抗たいこうできる(10じょう2こう)。一時いちじ使用しよう借地しゃくちであっても適用てきようされる(25じょうは10じょう適用てきよう排除はいじょしていない)。
    登記とうきは「表示ひょうじ登記とうき」でよい(さいはんあきら50.2.13)が、借地しゃくちじん本人ほんにん名義めいぎ登記とうきである必要ひつようがある(家族かぞく名義めいぎ登記とうき対抗たいこうりょくみとめなかった判例はんれいつま名義めいぎにつきさいはんあきら47.6.22、長男ちょうなん名義めいぎにつきさいはんあきら41.4.27)がある)。
  • 借家しゃくやじんは、建物たてもの引渡ひきわたがあったとき、すなわち借家しゃくやじんがその借家しゃくや居住きょじゅうとう占有せんゆうしていれば、第三者だいさんしゃ建物たてもの賃借ちんしゃくけん対抗たいこうすることができる(31じょう1こう)。借地しゃくちことなり、一時いちじ使用しよう借家しゃくやでは適用てきようされない(40じょうは31じょう適用てきよう排除はいじょしている)。

このように、本来ほんらい債権さいけんぎない賃借ちんしゃくけんだが、本法ほんぽう規定きていにより物権ぶっけん類似るいじする対外たいがいてき効力こうりょくゆうするにいたっている。これを「賃借ちんしゃくけん物権ぶっけん」という。

契約けいやく期間きかん[編集へんしゅう]

借地しゃくち契約けいやく[編集へんしゅう]

借地しゃくち契約けいやく存続そんぞく期間きかんは、

  • 契約けいやく期間きかんとくさだめなかった場合ばあいは、30ねんとなる(3じょう本文ほんぶん)。
  • 30ねんよりなが期間きかんさだめた場合ばあいは、そのさだめた期間きかんとなる(3じょう但書ただしがき)、期間きかん上限じょうげんはない。
  • 30ねんよりみじか期間きかんさだめた場合ばあいは、その約定やくじょう無効むこうであるから(9じょうさいはんあきら44.11.26)、期間きかんさだめなかった契約けいやくとなり、30ねんとなる。
  • 借家しゃくやとはことなり、「期間きかんさだめのない契約けいやく」はみとめられない。

なお、きゅう借地しゃくちほうでは、借地しゃくちじょうてられている建築けんちくぶつについて石造いしづくり、づくり、レンガづくりなどの「堅固けんご建物たてもの」と、木造もくぞうなどそれ以外いがい材質ざいしつの「堅固けんご建物たてもの」という区別くべつもうけ、前者ぜんしゃ所有しょゆう目的もくてきとする借地しゃくちけん契約けいやく期間きかんが30ねん未満みまん場合ばあいには一律いちりつ60ねんとし、後者こうしゃ契約けいやく期間きかんが20ねん未満みまん場合ばあいには一律いちりつ30ねんとして規定きていしていた(きゅう借地しゃくちほう2じょう)。しかし、この区別くべつ建築けんちく技術ぎじゅつ発展はってんともなって合理ごうりせいうしない、現在げんざい借地しゃくち借家しゃくやほうにはがれなかった。

借地しゃくち契約けいやくなかで、建物たてもの種類しゅるい構造こうぞう規模きぼまたは用途ようと制限せいげんするむねの「借地しゃくち条件じょうけん」がある場合ばあいは、その、トラブルをむケースがある。具体ぐたいれいは、法令ほうれいによる土地とち利用りよう規制きせい変更へんこうによって、その借地しゃくち条件じょうけん時代じだいわなくなったケース、付近ふきん土地とち利用りようじょうきょう変化へんかとその事情じじょう変更へんこうにより、その借地しゃくちけん契約けいやくなかのその借地しゃくち条件じょうけんことなる建物たてもの所有しょゆう目的もくてきとすることが相当そうとうであるにもかかわらず、その借地しゃくち条件じょうけん変更へんこうめぐって借主かりぬし貸主かしぬしあいだ合意ごういられないケース、などである。

そういうときは、裁判所さいばんしょは、当事とうじしゃ申立もうしたてにより借地しゃくち事件じけんとして、その借地しゃくち条件じょうけん変更へんこうすることができる(17じょう1こう)。

ぞう改築かいちく制限せいげんするむね借地しゃくち条件じょうけんがある場合ばあいにおいて、土地とち通常つうじょう利用りようじょう相当そうとうとすべきぞう改築かいちくにつき当事とうじしゃあいだ協議きょうぎ調ととのわないときは、裁判所さいばんしょは、借地しゃくちけんしゃ申立もうしたてにより、そのぞう改築かいちくについての借地しゃくちけん設定せっていしゃ承諾しょうだくわる許可きょかあたえることができる(17じょう2こう)。裁判所さいばんしょは、これらの裁判さいばんをする場合ばあいにおいて、当事とうじしゃあいだ利益りえき衡平こうへいはかるため必要ひつようがあるときは、借地しゃくち条件じょうけん変更へんこうし、財産ざいさんじょう給付きゅうふめいじ、その相当そうとう処分しょぶんをすることができる(17じょう3こう)。裁判所さいばんしょは、とく必要ひつようがないとみとめる場合ばあいのぞき、これらの裁判さいばんをするまえ鑑定かんてい委員いいんかい意見いけんかなければならない(17じょう6こう)。

借家しゃくや契約けいやく[編集へんしゅう]

借家しゃくや契約けいやく存続そんぞく期間きかんは、当事とうじしゃ合意ごういによってさだまる。民法みんぽうだい604じょう賃貸借ちんたいしゃく契約けいやく期間きかんを20ねん以下いか規定きていしている)の適用てきよう排除はいじょされているため、期間きかん上限じょうげんはない(29じょう2こう)。1ねん未満みまん契約けいやく期間きかん約定やくじょうした場合ばあい期間きかんさだめがない建物たてもの賃貸借ちんたいしゃくとみなされる(29じょう1こう)。

法定ほうてい更新こうしん解約かいやく制限せいげん[編集へんしゅう]

民法みんぽうにおける原則げんそくでは、契約けいやく期間きかんさだめられている場合ばあいならば、その期間きかんぎれば契約けいやく終了しゅうりょうし、さらに契約けいやく更新こうしんするかどうかは当事とうじしゃ次第しだいである。また、契約けいやく期間きかんさだめられていない賃貸借ちんたいしゃく契約けいやく借主かりぬし貸主かしぬしどちらからでも解約かいやくもうれることができ、その申入もうしいれから所定しょてい期間きかんぎると契約けいやく終了しゅうりょうする(民法みんぽうだい617じょう1こう)。しかしこれでは賃借ちんしゃくじん突然とつぜんいえ土地とちされて生活せいかつ拠点きょてんうしなうおそれがあるため、借地しゃくち借家しゃくやほうには更新こうしん容易よういにし、解約かいやく制限せいげんする制度せいど整備せいびされている。

すなわち、借地しゃくち借家しゃくやほうは、期間きかんさだめのある借地しゃくち借家しゃくや契約けいやくについては、直接的ちょくせつてきまたは間接かんせつてき契約けいやく更新こうしん強制きょうせいしている。

このように、当事とうじしゃとく賃貸ちんたいじん)の意思いしかかわらず法律ほうりつ規定きていによって契約けいやく更新こうしんされることを法定ほうてい更新こうしんという。また、期間きかんさだめのない借家しゃくや契約けいやくについても、賃貸ちんたいじんからの解約かいやく申入もうしいれに正当せいとう事由じゆう要求ようきゅうするなどして一方いっぽうてき契約けいやく終了しゅうりょうさせないようにしている。

この「正当せいとう事由じゆう制度せいど」・「法定ほうてい更新こうしん制度せいど」は、にちちゅう戦争せんそうなかの1941ねん3がつ10日とおか借家しゃくやほう改正かいせい法律ほうりつ56ごう)に由来ゆらいする。この改正かいせい目的もくてきは、出征しゅっせいちゅう借地しゃくち契約けいやく借家しゃくや契約けいやく終了しゅうりょうして兵士へいし戦地せんちからもどったときにいえがなくなることで混乱こんらんしょうじることを回避かいひすることにあったが、都市としへの人口じんこう流入りゅうにゅうによる住宅じゅうたく事情じじょう逼迫ひっぱく背景はいけいに、りょう制度せいど戦後せんご存続そんぞくしている[1][2]

借地しゃくち契約けいやく[編集へんしゅう]

借地しゃくちけん存続そんぞく期間きかん満了まんりょうする場合ばあいに、建物たてもの存在そんざいするときは、借地しゃくちじんは、契約けいやく更新こうしん貸主かしぬし請求せいきゅうすることができる。これにたいし、地主じぬし賃貸ちんたいじん)が遅滞ちたいなく異議いぎべなければ、契約けいやく従前じゅうぜん契約けいやく同一どういつ条件じょうけん更新こうしんされる(法定ほうてい更新こうしん5じょう1こう)。貸主かしぬしがこの異議いぎべるには、正当せいとう事由じゆう必要ひつようである(6じょう[注釈ちゅうしゃく 1]

また、借地しゃくちけん存続そんぞく期間きかん満了まんりょうしたのち借地しゃくちじん(または転借てんしゃくじん)が土地とち使用しよう継続けいぞくしている場合ばあいも、建物たてもの存在そんざいするときは、地主じぬし遅滞ちたいなく異議いぎべなければ、契約けいやく法定ほうてい更新こうしんされる(5じょう2こう、3こう)。この異議いぎにも正当せいとう事由じゆう必要ひつようである(6じょう)。

正当せいとう事由じゆう判断はんだんは、借地しゃくちじん貸主かしぬし双方そうほうがその土地とち使用しよう必要ひつようとする事情じじょうのほか、立退たちのけりょう支払しはらい考慮こうりょすることができる(6じょう)。合意ごういにより借地しゃくち契約けいやく更新こうしん期間きかんさだめる場合ばあい、その更新こうしん期間きかんは、最初さいしょ更新こうしんでは20ねん以上いじょう、2度目どめ以降いこう更新こうしんでは10ねん以上いじょうでなければならない。

更新こうしん期間きかんについてさだめなかった場合ばあいは、自動的じどうてき最初さいしょ更新こうしんでは20ねん、2度目どめ以降いこう更新こうしんでは10ねんになる(4じょう)。

当初とうしょ借地しゃくちけん存続そんぞく期間きかんちゅう建物たてもの滅失めっしつした場合ばあいで、当初とうしょ残存ざんそん期間きかんえて存続そんぞくする建物たてもの再築さいちくした場合ばあい再築さいちくさいして貸主かしぬし承諾しょうだくあたえた場合ばあいは、借地しゃくちけん再築さいちくまたは承諾しょうだくのいずれかはやから20年間ねんかん存続そんぞくする(7じょう)。借地しゃくちじん承諾しょうだくもとめたのに貸主かしぬしが2かげつ以内いない異議いぎべなかった場合ばあいは、貸主かしぬしの「承諾しょうだくがあったもの」とみなされる。

契約けいやく更新こうしんに「建物たてもの滅失めっしつ」があった場合ばあいは、借地しゃくちけんしゃ借地しゃくち契約けいやく解約かいやく申入もうしいれまたは地上ちじょうけん放棄ほうきをすることができる(8じょう)。建物たてもの滅失めっしつ借地しゃくちけんしゃ貸主かしぬし承諾しょうだくないで残存ざんそん期間きかんえて存続そんぞくする建物たてものさい建築けんちくした場合ばあいは、貸主かしぬし借地しゃくち契約けいやく解約かいやく申入もうしいれまたは地上ちじょうけん消滅しょうめつ請求せいきゅうをすることができる。

この場合ばあいにおいて、さい建築けんちくにやむをえない事情じじょうがあるにもかかわらず貸主かしぬし承諾しょうだくしない場合ばあいは、借地しゃくち事件じけんとして借地しゃくちけんしゃ原則げんそくとして裁判所さいばんしょたい承諾しょうだくわる許可きょかもとめる申立もうしたてをすることができる。この申立もうしたてをけた裁判所さいばんしょは、とく必要ひつようがないとみとめる場合ばあいのぞき、裁判さいばんをするまえ鑑定かんてい委員いいんかい意見いけんかなければならない(18じょう)。

期間きかんさだめのある借家しゃくや契約けいやく[編集へんしゅう]

期間きかんさだめのある借家しゃくや契約けいやくについては、なにもしなければ自動的じどうてき契約けいやく更新こうしんされるという制度せいどられている。すなわち、当事とうじしゃ契約けいやく期間きかん満了まんりょう契約けいやく終了しゅうりょうさせようとする場合ばあいは、契約けいやく期間きかん満了まんりょうする1ねんまえから6かげつまえまでに、相手方あいてがたたいして契約けいやく更新こうしんしないこと(更新こうしん拒絶きょぜつ)を通知つうちしなければならず、この通知つうちがない場合ばあいには、これまでと同様どうよう条件じょうけん(ただし、あらたな借家しゃくや契約けいやく期間きかんさだめのないものとされる)で契約けいやく法定ほうてい更新こうしんされる(26じょう1こう)。賃貸ちんたいじんがこの更新こうしん拒絶きょぜつ通知つうちおこなうためには、正当せいとう事由じゆう必要ひつようとなる(28じょう)。

また、正当せいとう事由じゆうがある更新こうしん拒絶きょぜつ通知つうちおこなった場合ばあいであっても、借家しゃくやじん(または転借てんしゃくじん)が期間きかん満了まんりょうもその建物たてものつづけているときは、賃貸ちんたいじん遅滞ちたいなく異議いぎべなければ、契約けいやく法定ほうてい更新こうしんされる(26じょう2こう、3こう)。この異議いぎには、正当せいとう事由じゆう要求ようきゅうされていない。

正当せいとう事由じゆう判断はんだんは、「建物たてもの賃貸ちんたいじんおよ賃借ちんしゃくじん転借てんしゃくじんふくむ。)が建物たてもの使用しよう必要ひつようとする事情じじょう」が中心ちゅうしんてき考慮こうりょ要素ようそであり、付随ふずいてきに、「建物たてもの賃貸借ちんたいしゃくかんする従前じゅうぜん経過けいか」、「建物たてもの利用りようじょうきょうおよび建物たてもの現況げんきょう」および「建物たてもの賃貸ちんたいじん建物たてもの明渡あけわたしの条件じょうけんとしてまた建物たてもの明渡あけわたしと引換ひきかえに建物たてもの賃借ちんしゃくじんたいして財産ざいさんじょう給付きゅうふをするむねさるをした場合ばあいにおけるその申出もうしで」(いわゆる立退たちのけりょう)が考慮こうりょ要素ようそとしてげられているが、これらの考慮こうりょ要素ようそ総合そうごうてき判断はんだんされる。

期間きかんさだめのない借家しゃくや契約けいやく[編集へんしゅう]

期間きかんさだめのない借家しゃくや契約けいやく場合ばあいには、民法みんぽう原則げんそくにより、いつでもどちらからでも解約かいやくもうれることができる(民法みんぽう617じょう1こう)。また、期間きかんさだめがあっても、契約けいやく期間きかんが1ねん未満みまんである場合ばあいには期間きかんさだめがない建物たてもの賃貸借ちんたいしゃくとみなされる結果けっか29じょう1こう)、同様どうよう解約かいやくもうれることができる。

ただし、建物たてもの賃貸ちんたいじんからの解約かいやく申入もうしいれについては、だい1に、解約かいやく申入もうしいれから契約けいやく終了しゅうりょうまでの猶予ゆうよ期間きかん解約かいやく申入もうしい期間きかん)が、民法みんぽう617じょう1こう2ごう所定しょていの3かげつから、2ばい6かげつ延長えんちょうされている。だい2に、正当せいとう事由じゆう必要ひつようとされる。さらに、借家しゃくやじんが6かげつたっても退かなかった場合ばあい賃貸ちんたいじん遅滞ちたいなく異議いぎべないと、6かげつまえった解約かいやく申入もうしいれは効力こうりょくうしなう(27じょう)。

なお、借家しゃくやじんからの解約かいやく申入もうしいれについては民法みんぽう617じょうにより、正当せいとう事由じゆう必要ひつようとせずにいつでも解約かいやく申入もうしいれをすることができ、解約かいやく効果こうか申入もうしいれから3かげつ経過けいかしたときにしょうじる。したがって、申入もうしいただちに退いたとしても3かげつぶん賃料ちんりょう支払しはら義務ぎむのこる。かり民法みんぽう617じょう任意にんい規定きていかいすると、特約とくやく借家しゃくやじんからの解約かいやく申入もうしい期間きかんを4かげつとう延長えんちょうすることが可能かのうになる。もっとも、かり任意にんい規定きていだとしても、消費しょうひしゃ契約けいやくほうにより、3かげつよりもなが解約かいやく申入もうしい期間きかん無効むこうとなる可能かのうせいがある。

借地しゃくちけん目的もくてきである土地とちうえ建物たてものについて賃貸借ちんたいしゃくがされている場合ばあい借地しゃくちけん存続そんぞく期間きかん満了まんりょうによって建物たてもの賃借ちんしゃくじん土地とちわたすべきときは、建物たてもの賃借ちんしゃくじん借地しゃくちけん存続そんぞく期間きかん満了まんりょうすることを、その1ねんまえらなかった場合ばあいかぎり、裁判所さいばんしょは、建物たてもの賃借ちんしゃくじん請求せいきゅうにより、建物たてもの賃借ちんしゃくじんがこれをったから1ねんえない範囲はんいないにおいて、土地とち明渡あけわたしについて相当そうとう期限きげん付与ふよすることができる。この場合ばあい建物たてもの賃貸借ちんたいしゃくは、その期限きげん到来とうらいすることによって終了しゅうりょうする(35じょう)。

転貸借てんたいしゃく[編集へんしゅう]

賃借ちんしゃくじん借地しゃくち借家しゃくや目的もくてきぶつ第三者だいさんしゃす(転貸てんたいする)場合ばあい賃貸ちんたいじん承諾しょうだく必要ひつようである。また、借地しゃくちけん借家しゃくやけん自体じたい第三者だいさんしゃ譲渡じょうとする場合ばあいも、賃貸ちんたいじん承諾しょうだく必要ひつようである(民法みんぽうだい612じょう1こう)。

転貸てんたいがなされると、賃貸ちんたいじんは、賃借ちんしゃくじんたいして請求せいきゅうすることができる範囲はんいないで、転借てんしゃくじんたいして転借てんしゃくりょう直接ちょくせつ賃貸ちんたいじん支払しはらうよう請求せいきゅうできる。転借てんしゃくじんは、転借てんしゃくりょう賃借ちんしゃくじんにすでに支払しはらっていることを主張しゅちょうして賃貸ちんたいじんからの請求せいきゅうこばむことはできない(民法みんぽうだい613じょう)。

転貸てんたいがされている場合ばあいにおいて、建物たてもの賃貸借ちんたいしゃく契約けいやく

  • 期間きかん満了まんりょうまたは解約かいやく申入もうしいれによって終了しゅうりょうするときは、賃貸ちんたいじん転借てんしゃくじんたいしそのことを通知つうちしないと契約けいやく終了しゅうりょう転借てんしゃくじん対抗たいこうできない。賃貸ちんたいじん終了しゅうりょう通知つうちをしたときは、転貸借てんたいしゃくはその通知つうち6かげつ経過けいかすると終了しゅうりょうする(34じょう)。
  • 合意ごうい解除かいじょによって終了しゅうりょうしたときは、特段とくだん事情じじょうがないかぎ賃貸ちんたいじん転借てんしゃくじんたいしてこの合意ごうい解除かいじょ効果こうか対抗たいこうできない(大判おおばんあきら9.3.7)。
  • 賃借ちんしゃくじん債務さいむ不履行ふりこう理由りゆう解除かいじょされたときは、転貸借てんたいしゃく同時どうじ終了しゅうりょうする。転借てんしゃくじんへの催告さいこく不要ふようである(さいはんあきら37.3.29)。

賃借ちんしゃくじん賃貸ちんたいじん無断むだん転貸借てんたいしゃく借地しゃくちけん借家しゃくやけん譲渡じょうとをして第三者だいさんしゃ使用しよう収益しゅうえきをしたときは、賃貸ちんたいじん契約けいやく解除かいじょすることができる(民法みんぽうだい612じょう2こう)。そのさい催告さいこく正当せいとう事由じゆう不要ふようである。ただし、その使用しよう収益しゅうえきさせる行為こうい賃貸ちんたいじんたいする背信はいしんてき行為こういみとめられないときは、契約けいやく解除かいじょはできない(さいはんあきら28.9.25)。

土地とち賃借ちんしゃくじん借地しゃくちじょう自己じこ所有しょゆう建物たてもの譲渡じょうとする場合ばあいも、土地とち賃貸ちんたいじん承諾しょうだく必要ひつようである。

建物たてもの土地とち付着ふちゃくしているものなので、借地しゃくちじょう建物たてもの譲渡じょうとする以上いじょう借地しゃくちけん譲渡じょうとしなければならなくなるからである。承諾しょうだくがなされないときや承諾しょうだくないまま譲渡じょうとされた場合ばあい建物たてもの譲受人ゆずりうけにん賃貸ちんたいじんたいして建物たてもの時価じかるよう請求せいきゅうすることができる(14じょう)。

また、借地しゃくちけんしゃわることでとく借地しゃくちけん設定せっていしゃ不利ふりになるおそれがないにもかかわらず承諾しょうだくしないときは、借地しゃくちけんしゃ承諾しょうだくわる裁判所さいばんしょ許可きょか申立もうしたてることができる(19じょう)。この場合ばあい承諾しょうだくないで譲渡ゆずりわたされた場合ばあい申立もうしたててできないが、競売きょうばい取得しゅとくした場合ばあいには競落きょうらくしゃによる申立もうしたてがみとめられる(20じょう)。この申立もうしたてをけた裁判所さいばんしょは、とく必要ひつようがないとみとめる場合ばあいのぞき、裁判さいばんをするまえ鑑定かんてい委員いいんかい意見いけんかなければならない。

いっぽう、借地しゃくちじょう建物たてもの賃貸ちんたいする場合ばあい土地とち賃貸ちんたいじん承諾しょうだく不要ふようである。

賃料ちんりょうがく改定かいていとくそく[編集へんしゅう]

賃料ちんりょうがく改定かいていさいしては賃貸ちんたいじん賃借ちんしゃくじん地位ちいちがいとそれによる交渉こうしょうりょくおおきくあらわれる局面きょくめんである。よって借地しゃくち借家しゃくやほう地代じだい家賃やちん経済けいざい事情じじょう変化へんかによって現状げんじょう見合みあわないがくとなった場合ばあいたかすぎるという場合ばあいひくすぎるという場合ばあいもある)には、当事とうじしゃ双方そうほうちんぞう減額げんがく請求せいきゅうけん取得しゅとくする(借地しゃくち11じょう借家しゃくや32じょう)。これを行使こうしすると、その意思いし表示ひょうじ相手方あいてがた到達とうたつしたから変更へんこうがく効果こうかしょうじる(さいはんあきら45.6.4)。つまりちんぞう減額げんがく請求せいきゅうけん形成けいせいけんである。もちろん具体ぐたいてきがく裁判さいばんなどによって決定けっていされることになるが、請求せいきゅうけん行使こうしした時点じてんから賃料ちんりょう変更へんこうされたものとしてあつかわれる。こうすることで紛争ふんそう解決かいけつばし、ばしている期間きかん賃料ちんりょう現状げんじょうがくこうとする戦術せんじゅつ無意味むいみする。

たとえば20まんえん家賃やちん諸般しょはん事情じじょう考慮こうりょした場合ばあい異常いじょう高値たかねであったとする。そこで借家しゃくやじんが1がつに「賃料ちんりょうを10まんえんにせよ」という内容ないようちんぞう減額げんがく請求せいきゅうけん行使こうしした。家主やぬしはそのがくについて難色なんしょくしめしたため裁判さいばんとなり、結果けっか7がつに「賃料ちんりょうを15まんえんとする」という決定けっていたとする。すると賃料ちんりょうは1がつ時点じてんから15まんえんであったとしてあつかわれ、賃借ちんしゃくじんは1がつ以降いこう賃料ちんりょうを15まんえん支払しはらうことになる(7がつから賃料ちんりょうが15まんえんになるわけではない)。

具体ぐたいてきには、「土地とち建物たてものたいする租税そぜいその負担ふたん増減ぞうげん」または「土地とち建物たてもの価格かかく上昇じょうしょう低下ていかその経済けいざい事情じじょう動向どうこう」または「近隣きんりん同種どうしゅ借地しゃくち借家しゃくやちん比較ひかく」によりそれらちん相当そうとうとなった場合ばあい、かつ当事とうじしゃあいだ一定いってい間借まがりちんを「増額ぞうがくしない」むね特約とくやくがない場合ばあい減額げんがくしない」むね特約とくやく借主かりぬし不利ふりであるため無効むこうである)に、当事とうじしゃちん増減ぞうげんがく請求せいきゅうができる。

  • 増額ぞうがく請求せいきゅう場合ばあい賃貸ちんたいじんから賃借ちんしゃくじんたいする請求せいきゅう)、請求せいきゅうけた賃借ちんしゃくじん裁判さいばん確定かくていまでのあいだ自己じこ相当そうとうみとめるがく従来じゅうらいちんよりたかがくでなければならない)を支払しはらえば債務さいむ不履行ふりこうにならない。裁判さいばん確定かくていしたがくが、自己じこ相当そうとうみとめたがくよりたかかった場合ばあい賃借ちんしゃくじん不足ふそくぶん支払しはらい期限きげん後年こうねんいちわり利息りそくとともに賃貸ちんたいじん支払しはらわなければならない。
  • 減額げんがく請求せいきゅう場合ばあい賃借ちんしゃくじんから賃貸ちんたいじんたいする請求せいきゅう)、請求せいきゅうけた賃貸ちんたいじん裁判さいばん確定かくていまでのあいだ自己じこ相当そうとうみとめるがく従来じゅうらいちんよりひくがくでなければならない)を請求せいきゅうすることができる。裁判さいばん確定かくていしたがくが、自己じこ相当そうとうみとめるがくよりひくかった場合ばあい賃貸ちんたいじんちょう過分かぶん受領じゅりょう後年こうねんいちわり利息りそくとともに賃借ちんしゃくじん支払しはらわなければならない。
  • 地代じだい自動じどう改定かいてい特約とくやくがある場合ばあいでも、その改定かいてい基準きじゅんさだめるにあたって基礎きそとなっていた事情じじょううしなわれることにより、どう特約とくやくによって地代じだいとうがくさだめることが不相応ふそうおうなものとなった場合ばあいには、増減ぞうげんがく請求せいきゅうけん行使こうし特約とくやくによってさまたげられるものではない(さいはんひらめ15.6.12)。

なおこうした賃料ちんりょうがく決定けっていめぐうったえを提起ていきする場合ばあいには、 あらかじめ調停ちょうてい申立もうしたてなければならない(調停ちょうていまえおけ主義しゅぎ民事みんじ調停ちょうていほう24じょうの2、24じょうの3)。

建物たてもの買取かいとり請求せいきゅうけん[編集へんしゅう]

借地しゃくち契約けいやく終了しゅうりょうした場合ばあい借地しゃくち契約けいやくであれば借地しゃくちじょう借地しゃくちじんてた建物たてもの残存ざんそんする場合ばあいがある。この場合ばあい賃借ちんしゃくじんがその建物たてもの賃貸ちんたいじんるよう請求せいきゅうできるのが建物たてもの買取かいとり請求せいきゅうけんである(13じょう)。建物たてもの再築さいちく建物たてものであってもよい。

建物たてもの買取かいとり請求せいきゅうけん形成けいせいけんである。つまり、これを行使こうしすれば賃貸ちんたいじん意思いしかかわらず建物たてもの売買ばいばい契約けいやく成立せいりつしてしまう。この規定きてい趣旨しゅし借地しゃくちじん投下とうかした資本しほんについて回収かいしゅうする機会きかいあたえ、建物たてものこわすことによる国民こくみん経済けいざいてき損失そんしつ防止ぼうしし、請求せいきゅうけん行使こうしされれば買取かいとり当然とうぜんみとめることで契約けいやく更新こうしん間接かんせつてき強制きょうせいすることにあると説明せつめいされる。しかしこの制度せいど現代げんだい社会しゃかい実状じつじょう適合てきごうしないという批判ひはんもある。

つまり、借地しゃくちじん保護ほご契約けいやく存続そんぞくによってはかるべきであって買取かいとりによる資本しほん投下とうかまで保護ほごする必要ひつようはないとか、戦後せんご復興ふっこうげた日本にっぽんにおいて建物たてものこわしを規制きせいするほどの住宅じゅうたくなん存在そんざいしないとか、建物たてものそれ自体じたい価格かかくやすいため契約けいやく更新こうしん強制きょうせいする効果こうかがないという指摘してきである。

また、第三者だいさんしゃ建物たてもの買取かいとり請求せいきゅうけんというものもある(14じょう)。これは賃借ちんしゃくけん譲渡じょうと地主じぬし承認しょうにんしない場合ばあいに、その借地しゃくちじょう建物たてものなどを取得しゅとくして借地しゃくちけんゆずけようとするものはその地主じぬしたいして建物たてものとう買取かいとり請求せいきゅうできるというものである。借地しゃくちけん譲渡じょうと承認しょうにんしないあいだ賃貸ちんたいじん賃借ちんしゃくじんとのあいだ賃貸借ちんたいしゃく契約けいやく合意ごうい解除かいじょされても、特段とくだん事情じじょうがないかぎ建物たてもの買取かいとり請求せいきゅうけんうしなわない(さいはんあきら48.9.7)。

賃貸借ちんたいしゃく契約けいやく賃借ちんしゃくじん債務さいむ不履行ふりこうによって解除かいじょされた場合ばあいには、賃借ちんしゃくじん建物たてもの買取かいとり請求せいきゅうけん行使こうしできないとするのが判例はんれい立場たちばである(借地しゃくちけんしゃ請求せいきゅうけんにつきさいはんあきら35.2.9、第三者だいさんしゃ請求せいきゅうけんにつきさいはんあきら33.4.8)。ただし学説がくせつには異論いろんおおく、買取かいとりみとめるのが多数たすうせつである。建物たてもの買取かいとり請求せいきゅうけん行使こうしされた場合ばあい土地とちあかりわたり義務ぎむ代金だいきん支払しはらい義務ぎむ同時どうじ履行りこう関係かんけいつ(大判おおばんあきら9.6.15)。建物たてもの買取かいとり請求せいきゅうけんは、これを行使こうししうるときから10ねん消滅しょうめつ時効じこうにかかる(さいはんあきら42.7.20)。

造作ぞうさく買取かいとり請求せいきゅうけん[編集へんしゅう]

借家しゃくや契約けいやくにおいてもその契約けいやく終了しゅうりょう賃貸ちんたいじんたいして「造作ぞうさく(ぞうさく)」をれと請求せいきゅうできる。これを造作ぞうさく買取かいとり請求せいきゅうけんという(33じょう)。建物たてもの買取かいとり請求せいきゅうけん同様どうよう行使こうしされた途端とたん借家しゃくやじん賃貸ちんたいじんとのあいだ売買ばいばい契約けいやく成立せいりつするという形成けいせいけん一種いっしゅである。

買取かいとり対象たいしょうとなる「造作ぞうさく」とは、建物たてもの付加ふかされた物件ぶっけん賃借ちんしゃくじん所有しょゆうぞくし、かつ建物たてもの使用しよう客観きゃっかんてき便益べんえきあたえるものをいい、賃借ちんしゃくじんがその建物たてもの特殊とくしゅ目的もくてき使用しようするためにとく付加ふかした設備せつびふくまれない(さいはんあきら29.3.11)。条文じょうぶんじょう明示めいじされているたたみ建具たてぐ障子しょうじふすまなど仕切しきりとなるもの)のほか、ガス水道すいどうなどの設備せつび空調くうちょう設備せつび(エアコン、クーラー)などがげられる。この規定きてい借地しゃくち借家しゃくやほうにおいては強行きょうこう規定きていではなく任意にんい規定きていとなったため(37じょう参照さんしょう)、当事とうじしゃあいだ自由じゆう特約とくやくさだめることができる。

造作ぞうさくはずしが可能かのうであるから本来ほんらいならば契約けいやく終了しゅうりょう借家しゃくやじんおさむしなければならない。しかし社会しゃかい全体ぜんたい生活せいかつ水準すいじゅん向上こうじょうするにつれて空調くうちょう設備せつびすらもその借家しゃくや一部分いちぶぶんることもでき、必要ひつよう有益ゆうえき規定きてい民法みんぽうだい608じょうくわしくは賃貸借ちんたいしゃく項目こうもく参照さんしょう)にしたがって処理しょりすべきとのかんがえもある。

賃貸借ちんたいしゃく契約けいやく賃借ちんしゃくじん債務さいむ不履行ふりこうないし背信はいしん行為こういによって解除かいじょされた場合ばあいには、賃借ちんしゃくじん造作ぞうさく買取かいとり請求せいきゅうけん行使こうしできないとするのが判例はんれい立場たちばである(さいはんあきら31.4.6)。造作ぞうさく買取かいとり請求せいきゅうけん行使こうしされた場合ばあい建物たてものあかりわたり義務ぎむ代金だいきん支払しはらい義務ぎむ同時どうじ履行りこう関係かんけいたない建物たてものあかりわたりさき履行りこうさいはんあきら29.7.22)。

定期ていき借地しゃくちけん定期ていき借家しゃくや契約けいやく[編集へんしゅう]

定期ていき借地しゃくちけん[編集へんしゅう]

定期ていき借地しゃくちけんとは、契約けいやく期間きかん更新こうしんがない(法定ほうてい更新こうしんしょうじない借地しゃくちけんである。きゅう借地しゃくちほうにはこのような規定きていく、本法ほんぽう制定せいていあたらしく導入どうにゅうされたものである。これにより様々さまざま経済けいざいてき要請ようせいこたえることができる、柔軟じゅうなん借地しゃくち契約けいやく可能かのうとなった。

定期ていき借地しゃくちけんには3種類しゅるいある。

一般いっぱん定期ていき借地しゃくちけん22じょう
契約けいやく更新こうしん建物たてもの買取かいとり請求せいきゅうけんがない借地しゃくちけんである。
借地しゃくちけん存続そんぞく期間きかんは50ねん以上いじょうでなければならないが、存続そんぞく期間きかん終了しゅうりょうには借地しゃくち更地さらちもどして返還へんかんしなければならない。存続そんぞく期間きかん満了まんりょう更新こうしんもなくすみやかに土地とち返還へんかんされるため、比較的ひかくてき安価あんか借地しゃくちけん設定せっていできるのがメリットである。
この一般いっぱん定期ていき借地しゃくちけん契約けいやくは、書面しょめんしなければならない。
宅地たくち建物たてもの取引とりひき業者ぎょうしゃが22じょうによる宅地たくち賃貸借ちんたいしゃく媒介ばいかい代理だいりおこな場合ばあい、そのむね重要じゅうよう事項じこう説明せつめいとして宅地たくち建物たてもの取引とりひき説明せつめいさせなければならない(宅地たくち建物たてもの取引とりひき業法ぎょうほうだい35じょう宅地たくち建物たてもの取引とりひき業法ぎょうほう施行しこう規則きそくだい16じょうの4の3)。
事業じぎょうよう定期ていき借地しゃくちけんとう23じょう
もっぱ事業じぎょうようきょうする建物たてもの所有しょゆう目的もくてきとする借地しゃくちけんで、一般いっぱん定期ていき借地しゃくちけんくら存続そんぞく期間きかんみじか設定せっていできる。
借地しゃくちけん存続そんぞく期間きかんは10ねん以上いじょう50ねん未満みまんであることが必要ひつようである。
30ねん以上いじょう50ねん未満みまん存続そんぞく期間きかん場合ばあいは、9じょうおよ16じょう規定きていにかかわらず、契約けいやく更新こうしんおよび建物たてもの築造ちくぞうによる存続そんぞく期間きかん延長えんちょうがなく、ならびに13じょう規定きていによる買取かいとりの請求せいきゅうをしないこととするむねさだめることができるものとである(1こう)。
10ねん以上いじょう30ねん未満みまん場合ばあい3じょうから8じょう13じょうおよ18じょう規定きてい適用てきようされない(2こう)。つまり店舗てんぽ建設けんせつするといった目的もくてき限定げんていされるのであり、居住きょじゅう目的もくてき建物たてもの建設けんせつできない。
この事業じぎょうよう借地しゃくち契約けいやく公正こうせい証書しょうしょによってなされなければならない(23じょう3こう)。
なお、2007ねん12月31にちまでの借地しゃくちけん存続そんぞく期間きかんは10ねん以上いじょう20ねん以下いかであり、旧法きゅうほう適用てきようがある。50ねん以上いじょう存続そんぞく期間きかんのぞ場合ばあい一般いっぱん定期ていき借地しゃくちけん利用りようすることが可能かのうである。
建物たてもの譲渡じょうと特約とくやくづけ借地しゃくちけん24じょう
期間きかん満了まんりょうに、借地しゃくちじょうにある建物たてもの相当そうとう対価たいかでもって地主じぬし売却ばいきゃくするとの特約とくやくした借地しゃくちけんである。
存続そんぞく期間きかんは30ねん以上いじょうである。土地とち開発かいはつ業者ぎょうしゃ(ディベロッパー)などが土地とちり、そこにビルやマンションをてて賃料ちんりょう収入しゅうにゅうて、その地主じぬし売却ばいきゃくするという事業じぎょうもちいられる。

定期ていき借家しゃくや契約けいやく[編集へんしゅう]

定期ていき借家しゃくや契約けいやく」(定期ていき建物たてもの賃貸借ちんたいしゃく)について、あらたな規定きていもある(38じょう)。ここでは、存続そんぞく期間きかん(1ねん未満みまんでも20ねんえる契約けいやくでもよいが、期間きかんさだめないという方法ほうほうみとめられない)が終了しゅうりょうすればそこで賃借ちんしゃくけん完全かんぜん消滅しょうめつし、契約けいやく更新こうしんすることはできない。

この契約けいやく書面しょめんによっておこな必要ひつようがあり(38じょうは「公正こうせい証書しょうしょによるひとし」と規定きていしているが、かならずしも公正こうせい証書しょうしょであることを要求ようきゅうしたものではないとほぐされている)、そのさい貸主かしぬしは、「期間きかん満了まんりょう契約けいやく更新こうしんすることができない」ことを記載きさいした書面しょめんわたして説明せつめいしなければならない。

もし貸主かしぬし説明せつめいおこたった場合ばあいは、契約けいやく更新こうしんがないむねさだめは無効むこうとなる。特約とくやくによって造作ぞうさく買取かいとり請求せいきゅうけん付加ふか排除はいじょすることも可能かのうであるし、期間きかんちゅう賃料ちんりょう不相応ふそうおうになれば特約とくやくがないかぎ賃料ちんりょうぞう減額げんがく請求せいきゅうけん行使こうしすることもできる。

宅地たくち建物たてもの取引とりひき業者ぎょうしゃが38じょうによる建物たてもの賃貸借ちんたいしゃく媒介ばいかい代理だいりおこな場合ばあい、そのむね重要じゅうよう事項じこう説明せつめいとして宅地たくち建物たてもの取引とりひき説明せつめいさせなければならない(宅地たくち建物たてもの取引とりひき業法ぎょうほうだい35じょう宅地たくち建物たてもの取引とりひき業法ぎょうほう施行しこう規則きそくだい16じょうの4の3)。

存続そんぞく期間きかんが1ねん以上いじょうである定期ていき借家しゃくや契約けいやくにおいては、賃貸ちんたいじん期間きかん満了まんりょう1ねんまえから6かげつまえあいだ通知つうち期間きかん)に賃借ちんしゃくじんたいして賃貸借ちんたいしゃく終了しゅうりょうするむね通知つうちをしなければ、その終了しゅうりょう賃借ちんしゃくじん対抗たいこうできない。通知つうち期間きかん経過けいかしたのち終了しゅうりょうむね通知つうちをした場合ばあい、その通知つうちから6かげつあいだはその終了しゅうりょう賃借ちんしゃくじん対抗たいこうできない。

転勤てんきん療養りょうよう親族しんぞく介護かいごそのやむをえない事情じじょうにより、居住きょじゅうようきょうする建物たてもの賃貸借ちんたいしゃくゆか面積めんせき200平方へいほうメートル未満みまんかぎる)において建物たてもの賃借ちんしゃくじん建物たてもの自己じこ生活せいかつ本拠ほんきょとして使用しようすることが困難こんなんとなったときは、建物たてもの賃借ちんしゃくじんは、建物たてもの賃貸借ちんたいしゃく解約かいやく申入もうしいれをすることができる。この場合ばあいにおいては、建物たてもの賃貸借ちんたいしゃくは、解約かいやく申入もうしいれのから1かげつ経過けいかすることによって終了しゅうりょうする。

また、法令ほうれい契約けいやくによって一定いってい期間きかん経過けいかしたのちこわされる予定よていとなっている建物たてもの賃貸ちんたいする場合ばあいにも、建物たてものこわしと同時どうじ賃貸借ちんたいしゃく契約けいやく終了しゅうりょうし、更新こうしんすることができないという契約けいやく形態けいたいをとることができる(39じょう)。この契約けいやくこわすべき事由じゆうしるした書面しょめんによってしなければならない。

問題もんだいてん
定期ていき借家しゃくや契約けいやくは、不動産ふどうさんとりわけショッピングセンター業界ぎょうかいつよ要望ようぼうにより[3]、2000ねんほう改正かいせいされてあらたにみとめられたものである。改正かいせいまえ海外かいがい出張しゅっちょう介護かいごのための一時いちじ不在ふざいなどの理由りゆうで、家主やぬし生活せいかつ本拠ほんきょとしてみずか使用しようするために、帰国きこくないし帰宅きたく簡単かんたんわたしてもらえるような契約けいやくみとめられていたが、これを「定期ていき借家しゃくや契約けいやく」に改正かいせいしたものである。
定期ていき借家しゃくやでない一般いっぱん借家しゃくやけん契約けいやくであれば、契約けいやく更新こうしん拒絶きょぜつ解約かいやく申入もうしいれにおいて正当せいとう事由じゆうがあることを要求ようきゅうされるが(だい28じょう)、定期ていき借家しゃくや契約けいやくではこれが不要ふようである。
定期ていき借家しゃくや契約けいやくは、書面しょめんによる説明せつめい契約けいやくという要式ようしきたしていればよく、明渡あけわたしの理由りゆう如何いかわずみとめられる。これによって家主やぬし次々つぎつぎあたらしい借家しゃくやじん賃貸ちんたいすることができるようになり、いま時点じてん相場そうば家賃やちん収入しゅうにゅうられるようになった。
従来じゅうらいからある一般いっぱん借家しゃくや契約けいやくでは、借主かりぬし保護ほごばかり強調きょうちょうされていた。たとえば、貸主かしぬし更新こうしんりょうったり家賃やちん値上ねあげしたりしても、なかなか相場そうばまでの収入しゅうにゅうることはむずかしかった。また一度いちど物件ぶっけん借主かりぬしすと、貸主かしぬし正当せいとう事由じゆう主張しゅちょうしても借主かりぬしがそれにしたがわず、なかなかかえしてもらえない(退いてもらえない)ケースがおおかった。その結果けっか物件ぶっけんのオーナー・貸主かしぬし物件ぶっけん賃貸ちんたい消極しょうきょくてきになり、日本にっぽん国内こくないでの優良ゆうりょう物件ぶっけん流通りゅうつう阻害そがいしているとかんがえられた。
このあらたな法律ほうりつ定期ていき借家しゃくや契約けいやく」の誕生たんじょうにより、日本にっぽん不動産ふどうさん賃貸ちんたい市場いちば活性かっせいされ、物件ぶっけんのオーナー・貸主かしぬしあらたな物件ぶっけん市場いちば供給きょうきゅうすることができると期待きたいされた。結果けっかとしては、国土こくど交通省こうつうしょうが2007ねん3がつった調査ちょうさによると民間みんかん借家しゃくや契約けいやくの5%がこの制度せいど利用りようしている[4]
借地しゃくち借家しゃくやじんなかには、経済けいざいてきよわ借家しゃくやじん保護ほごするための法律ほうりつであった借地しゃくち借家しゃくやほうなかに、わざわざ家賃やちん収入しゅうにゅう確保かくほという家主やぬし保護ほごするための異質いしつ制度せいどつくったもので、将来しょうらいおおきな問題もんだいのこしたとこのほう批判ひはんし、また期間きかんみじか定期ていき借家しゃくや貧困ひんこんビジネスとして利用りようされているとの主張しゅちょうもある[5]
旧法きゅうほう借家しゃくやじん義務ぎむ権利けんり逆説ぎゃくせつてきあきらかとなり、個別こべつ事情じじょうのぞけば旧法きゅうほう借家しゃくやじん権利けんり維持いじもしくはつよまっている。

先進せんしんこくとの比較ひかく過剰かじょう借主かりぬし保護ほごへの批判ひはん[編集へんしゅう]

借主かりぬし過剰かじょう保護ほごぎており、不動産ふどうさん賃貸借ちんたいしゃく契約けいやく借主かりぬし債務さいむ不履行ふりこうがあったとしても、貸主かしぬしがわから契約けいやく解除かいじょ残置ざんちぶつ撤去てっきょするのにハードルがたかぎとなっている。ひと一旦いったんしたら、「居住きょじゅうけん」が発生はっせいし、契約けいやく中身なかみかかわらず、半永久はんえいきゅうてきさなければならないという内容ないようになっている(後述こうじゅつのように借主かりぬし家賃やちん滞納たいのうに、貸主かしぬし任意にんい退去たいきょ拒否きょひ裁判さいばん勝利しょうりしたのちのみ追放ついほう可能かのう)[6][7]

日本にっぽん借主かりぬし過保護かほごなため、家賃やちん滞納たいのうが3ヵ月かげつ程度ていどになってはじめて「信頼しんらい関係かんけい喪失そうしつ」となり、わた請求せいきゅう(契約けいやく解除かいじょ通知つうち)ができる。そして貸主かしぬしがわ任意にんい退去たいきょ拒否きょひされた場合ばあいには、借主かりぬし今後こんごはらいことを法廷ほうてい証明しょうめいしないといけない。日本にっぽんでは貸主かしぬし家賃やちん滞納たいのうによるキャッシュフロー悪化あっかリスク、回収かいしゅうリスク、物件ぶっけん価値かち毀損きそんリスクがある。アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくでは家賃やちん滞納たいのういちヶ月かげつ退去たいきょ措置そちれるため、敷金しききん損失そんしつ補填ほてん出来できる。さらには、滞納たいのういちにちごとに賃料ちんりょうの5%程度ていど金額きんがく遅延ちえん損害そんがいきんとして上乗うわの請求せいきゅう可能かのうである。家賃やちん滞納たいのうしゃ追放ついほうには、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくならば最長さいちょうでもやく2〜3ヶ月かげつ問題もんだい解決かいけつ出来でき[8][9]

ぎゃく日本にっぽんでは現代げんだい過去かことはことなり、貸主かしぬし個人こじんよりも、よりおおきな組織そしきである不動産ふどうさん会社かいしゃ借主かりぬし貸主かしぬしであるケースがおおい。それなのに、現行げんこうほうでは不動産ふどうさん会社かいしゃのほうが弱者じゃくしゃなされ、保護ほごされている。不動産ふどうさん会社かいしゃによる家賃やちん保証ほしょう問題もんだい(サブリース問題もんだい)[10]は、借主かりぬし不動産ふどうさん会社かいしゃ)から家賃やちん減額げんがく契約けいやく解除かいじょとう正当せいとうされていることが原因げんいんにある[7]

滞納たいのう3ヶ月かげつ債務さいむ不履行ふりこうとされるが、以降いこう任意にんい退去たいきょ拒否きょひ滞納たいのうつづけられた場合ばあいには、貸主かしぬしはそのかし部屋へやから収入しゅうにゅう一切いっさいられない塩漬しおづうえに、1ねん程度ていど裁判さいばん期間きかんと1部屋へやたりすうひゃくまんえん以上いじょう費用ひよう弁護士べんごし費用ひようおよび執行しっこう費用ひよう原状げんじょう回復かいふく工事こうじ)がかかる。現行げんこうほう過剰かじょう借主かりぬし保護ほごなエピソードとして、2012ねん平成へいせい24ねん)9がつ7にち東京とうきょう地裁ちさい判決はんけつ事例じれいがあげられる。ある借主かりぬしはつ賃料ちんりょう時点じてん家賃やちん支払しはらい延滞えんたいしており、半年はんとしから不払ふばらいになったうえに、この期間きかん保証ほしょう会社かいしゃによる65かい電話でんわ連絡れんらく・7かい訪問ほうもん書面しょめん差入さしいれ)・2かい郵便ゆうびん催告さいこくすべ無視むししていたうえ、物件ぶっけんない大量たいりょうのゴミやむしいた冷蔵庫れいぞうこ放置ほうちペット禁止きんし契約けいやくにもかかわらずいぬ飼育しいくという数々かずかず賃貸借ちんたいしゃく契約けいやく違反いはん状況じょうきょうがあった。そのため、保証ほしょう会社かいしゃ緊急きんきゅう避難ひなんで、荷物にもつ撤去てっきょかぎ交換こうかんおこなったことにたいして、裁判所さいばんしょはこの借主かりぬしを「まれに悪質あくしつ賃借ちんしゃくじんであると非難ひなんされてもやむをない」とはみとめつつも、「保証ほしょう会社かいしゃによる違法いほう自力じりき救済きゅうさい不法ふほう行為こういたる」とし、家賃やちん滞納たいのう借主かりぬしによる損害そんがい賠償ばいしょう請求せいきゅうみとめた[6]。このように、高齢こうれいしゃてい所得しょとくしゃそうなど滞納たいのう死亡しぼう可能かのうせいたか人々ひとびとしたくなくなる法案ほうあんになっている。滞納たいのう対策たいさくに、日本にっぽん物件ぶっけんでは余程よほど不人気ふにんき物件ぶっけん以外いがいは、家賃やちん保証ほしょう会社かいしゃ利用りよう必須ひっす状態じょうたいになっている[6][7]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

注釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

  1. ^ 貸主かしぬし正当せいとう事由じゆう要求ようきゅうすることは、「公共こうきょう福祉ふくし観点かんてんから是認ぜにんされるものであるから、憲法けんぽう29じょう違反いはんしない」とされる(さいはんあきら37.6.6)。

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ 建設けんせつ産業さんぎょう不動産ふどうさんぎょう定期ていき借地しゃくちけん解説かいせつ”. www.mlit.go.jp. 国土こくど交通こうつうしょう. 2019ねん6がつ18にち閲覧えつらん
  2. ^ しゅうふじ利一としかず. “昭和しょうわ戦前せんぜん戦中せんちゅう不動産ふどうさん政策せいさく”. 不動産ふどうさん適正てきせい取引とりひき推進すいしん機構きこう. 2019ねん6がつ18にち閲覧えつらん
  3. ^ 1まんにんいかりのこえげた『ベルク』退騒動そうどうとは? 日刊にっかんサイゾー2008ねん11月20にち
  4. ^ 定期ていき借家しゃくや制度せいど実態じったい調査ちょうさ結果けっかについて国土こくど交通省こうつうしょう、2007ねん7がつ3にちづけ、2009ねん1がつ18にち閲覧えつらん
  5. ^ 定期ていき借家しゃくや制度せいど居住きょじゅう貧困ひんこん加速かそくさせている東京とうきょう多摩たま借地しゃくち借家しゃくやじん組合くみあい
  6. ^ a b c https://archive.md/GRHvH
  7. ^ a b c 借地しゃくち借家しゃくやほう」の功罪こうざい……いまだに入居にゅうきょしゃ保護ほごがまかりとお理由りゆう不動産ふどうさん投資とうしじゅく新聞しんぶんしゃ”. 不動産ふどうさん投資とうしじゅく新聞しんぶんしゃ. 2023ねん8がつ7にち閲覧えつらん
  8. ^ アメリカ不動産ふどうさんでの賃料ちんりょうトラブルを未然みぜんふせ方法ほうほう|【海外かいがい不動産ふどうさん投資とうし教科書きょうかしょ業界ぎょうかいトップレベルの情報じょうほうりょく!「ホントのトコロ」”. 海外かいがい不動産ふどうさん投資とうし教科書きょうかしょ業界ぎょうかいトップレベルの情報じょうほうりょく!「ホントのトコロ」 (2020ねん4がつ14にち). 2023ねん8がつ7にち閲覧えつらん
  9. ^ 権利けんり」を保護ほごするのは大家たいかか、それともこっか?”. 株式会社かぶしきがいしゃオープンハウス. 2023ねん8がつ7にち閲覧えつらん
  10. ^ サブリース契約けいやくかんするトラブルにご注意ちゅういください! | 消費しょうひしゃちょう”. www.caa.go.jp. 2023ねん8がつ7にち閲覧えつらん

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]