三木みき松平まつへい家か

三木みき松平まつへい家か
丸まるに蔦つた
本姓ほんせい	称しょう・清和せいわ源はじめ氏し
家いえ祖そ	松平まつだいら信孝のぶたか
種別しゅべつ	武家ぶけ
出身しゅっしん地ち	三河みかわ国こく碧海あおみ郡ぐん三木みき
凡例はんれい / Category:日本にっぽんの氏族しぞく

三木みき松平まつへい家か（みつぎまつだいらけ）は、三河みかわ国こく碧海あおみ郡ぐん三木みき郷きょう（現在げんざいの愛知あいち県けん岡崎おかざき市し上三ツ木かみみつぎ町まち）発祥はっしょうの松平まつだいら氏しの庶流。徳川とくがわ家康いえやすの大叔父おおおじにあたる松平まつだいら信孝のぶたかが始祖しそとされ、十じゅう八はち松平まつだいらの一ひとつとされる。嫡流ちゃくりゅうは江戸えど幕府ばくふの開府かいふ以前いぜんに断絶だんぜつし、『寛政かんせい重じゅう修おさむ諸家しょか譜ふ』（以下いか『寛政かんせい譜ふ』）編纂へんさん時点じてんでは庶家2家いえが旗本はたもととして存続そんぞくしている。

家康いえやすから見みて最もっとも新あたらしく松平まつだいら宗家そうけから分わかれた家いえであり、『寛政かんせい譜ふ』では最初さいしょに家いえ譜ふが掲かかげられている。

沿革えんかく

立だて家かから「絶家ぜっけ」まで

徳川とくがわ家康いえやすの曾祖父そうそふにあたる松平まつだいら信忠のぶただは、家督かとくを清康きよやすに譲ゆずる際さい、二男じなんの信孝のぶたか（蔵人くろうど）に械木（ねむのき）（合歓木ごうかんぼく、現在げんざいの岡崎おかざき市し合歓木ねむのき町まち）を、三男さんなんの康孝やすたかに三木みきの地ちを分与ぶんよした。天文てんもん4年ねん（1535年ねん）、松平まつだいら信しん定じょう（桜井さくらい松平まつへい家か。信孝のぶたかの叔父おじにあたる）が松平まつだいら広ひろ忠ただし（信孝のぶたかの甥おいにあたる）を岡崎おかざきから逐おったが、信孝のぶたかは大久保おおくぼ忠俊ただとしらとともに広こう忠ちゅうの帰還きかんを謀はかり、天文てんもん6年ねん（1537年ねん）5月がつ1日にちに広こう忠ちゅうは岡崎おかざきへの帰き城じょうに成功せいこうした。信孝のぶたかは広こう忠ちゅうに重おもく用もちいられたが、やがて増長ぞうちょうし、松平まつだいら親ちかし長ちょう（岩津いわつ松平まつへい家か）や、弟おとうとの康孝やすたかの遺のこ領りょうを押領し、三木みきに拠点きょてんを移うつした。「三木みき松平まつへい」という家名かめいは信孝のぶたかが三木みきに住じゅうしたことによるとされるが、この土地とちは弟おとうとから押領した土地とちということになる。

天文てんもん16年ねん（1547年ねん）正月しょうがつ、信孝のぶたかが今川いまがわ家かに年始ねんしの使者ししゃとして派遣はけんされている留守るす中ちゅうに、妻子さいしや家臣かしんが岡崎おかざきから追放ついほうされた。『寛政かんせい譜ふ』は「岡崎おかざきの老臣ろうしん等とう」が信孝のぶたかの増長ぞうちょうを警戒けいかいし、第だい二にの信しん定じょうとなる危惧きぐを広こう忠ちゅうに告つげたという事情じじょうを載のせる。信孝のぶたかは今川いまがわ義元よしもとに調停ちょうていを要請ようせいしたが、広こう忠ちゅうや「岡崎おかざきの老臣ろうしん等とう」との関係かんけい修復しゅうふくは実現じつげんせず、上和田かみわだ城主じょうしゅ松平まつだいら忠ただし倫りんに与くみして織田おだ信秀のぶひでに通つうじ、広こう忠ちゅうから離反りはんした。なお、この事件じけんを広こう忠ちゅうの後見人こうけんにんである信孝のぶたかと老臣ろうしん等とう（阿部あべ大蔵たいぞうほか）との権力けんりょく争あらそいの結果けっかとする見解けんかいや、盟友めいゆう水野みずの信しん元もとと連携れんけいした上うえでの離反りはんとする（広こう忠ちゅうと於大おだいの方ほうの離縁りえんの実際じっさいの原因げんいんとする）見解けんかいもある。信孝のぶたかは三木みき城しろおよび岡おか城じょうを拠点きょてんとして岡崎おかざきの広こう忠ちゅうと戦たたかい、天文てんもん17年ねん（1548年ねん）4月がつに菅生すごう河原かわらで戦死せんしした。

信孝のぶたかの子こ・松平まつだいら重忠しげただ（九郎くろう右みぎ衛門えもん）は家康いえやすに仕つかえて大だい番頭ばんがしらを務つとめ、慶長けいちょう5年ねん（1600年ねん）致仕ちし、慶長けいちょう6年ねん（1601年ねん）12月2日にちに死去しきょ。しかし、重忠しげただの跡あとを継ついだ子この忠清ただきよ（与十郎よじゅうろう）も同年どうねん12月がつ22日にちに死去しきょした。忠清ただきよには嗣子ししがなかったため、三木みき松平まつへいの本家ほんけは絶家ぜっけとされる。また信孝のぶたかの外孫そとまご榊原さかきばら正吉まさきちの娘むすめが庄内しょうない藩主はんしゅ酒井さかい家次いえつぐに嫁とついで血脈けちみゃくを伝つたえている。

松平まつだいら忠利ただとしとその子孫しそん

忠清ただきよの弟おとうと・松平まつだいら忠利ただとし（九郎くろう右みぎ衛門えもん）は、これより先さきに父ちちの知行ちぎょうから500石せきを分与ぶんよされて別家べっけしている。しかし慶長けいちょう14年ねん（1609年ねん）に伏見ふしみ城じょう番ばん中ちゅうの「落度おちど」を咎とがめられて改易かいえきされた（これは、上司じょうしにあたる大だい番頭ばんがしら水野みずの忠ただし胤たねの処分しょぶんと関連かんれんする。水野みずの忠ただし胤たねの項こうを参照さんしょう）。その後ご忠利ただとしは、大坂おおさかの陣じんに井伊いい直孝なおたかに属ぞくして参加さんかし、玉造たまつくり口こうで戦功せんこうを挙あげたという。寛永かんえい9年ねん（1632年ねん）7月がつ17日にち、さきに水野みずの忠ただし胤たね配下はいかで勘気かんきを蒙こうむった者ものたちが赦免しゃめんされ、忠利ただとしも幕府ばくふに召めし返かえされた。忠利ただとしは大番おおばんに復帰ふっきし、蔵米くらまい300俵ひょうを給きゅうされた。

忠利ただとしの子孫しそんは「与十郎よじゅうろう」「九郎くろう右みぎ衛門えもん」などを通称つうしょうとして受うけ継つぎ、おおむね大番おおばんに列れつした。忠利ただとしの子この重利しげとしは大番組おおばんぐみ頭あたまを務つとめて200俵ひょうを加増かぞうされ、重利しげとしの子こ・忠義ちゅうぎは下総しもうさ国内こくないで500石せきの知行取ちぎょうとりとなった。『寛政かんせい譜ふ』編纂へんさん時じの当主とうしゅは松平まつだいら忠ちゅう敷じき（ただのぶ）で、御ご小納戸こなんど・御ご小姓こしょうを務つとめ、寛政かんせい9年ねん（1797年ねん）に従したがえ五ご位い下か安房あわ守もりに叙じょせられている。

このほか、松平まつだいら忠義ただよしの弟おとうとの忠政ただまさ（弥わたる五ご左衛門さえもん、小しょう兵衛ひょうえ）が別家べっけを立たてている。この家いえは200俵ひょう取とりで歴代れきだいが大番おおばんに列れつしており、『寛政かんせい譜ふ』編纂へんさん時じの当主とうしゅは松平まつだいら忠ただし寿ことぶき（与市よいち郎ろう）。

家紋かもん

主おもな使用しよう紋もん

鬼おに蔦つた

沢瀉おもだか

『寛永かんえい諸家しょか系図けいず伝でん』では家紋かもんは「沢瀉おもだか」とされている。『寛政かんせい譜ふ』では、松平まつだいら忠ただし敷じき（九郎くろう右みぎ衛門えもん・安房あわ守もり）家かの家紋かもんを「丸まるに蔦つた」「鬼おに蔦つた」としている。松平まつだいら忠ただし寿ことぶき家かの家紋かもんは「丸まるに鬼おに蔦つた」「九曜くよう」「五ご三さん桐きり」とある。

備考びこう

• 『寛政かんせい重じゅう修おさむ諸家しょか譜ふ』には、松平まつだいら重忠しげただ（九郎くろう右みぎ衛門えもん）が徳川とくがわ家康いえやすの木像もくぞうを彫刻ちょうこくしたというエピソードが「家伝かでん」として載のる。重忠しげただは手製てせいの木像もくぞうを長ながらく屋敷やしきに安置あんちしていた。このことを聞きいた家康いえやすは、木像もくぞうを持参じさんさせてこれを見み、自分じぶんの死後しごにはこれを拝はいするように、と言いって重忠しげただに返かえした。この木像もくぞうは忠利ただとしの家いえに伝つたえられ、のちに忠利ただとしの家いえの菩提寺ぼだいじとなった目白めじろの養やしなえ国こく寺てらに奉納ほうのうされた。家康いえやす像ぞうは境内けいだいに別殿べつでんを設もうけて祀まつられ、養やしなえ国こく寺てらは「権現ごんげん様さまの寺てら」と呼よばれたという。

参考さんこう文献ぶんけん

• 『寛政かんせい重じゅう修おさむ諸家しょか譜ふ』巻まき第だい三さん
  • 『寛政かんせい重じゅう修おさむ諸家しょか譜ふ 第だい一いち輯』（国民こくみん図書としょ、1922年ねん）　国立こくりつ国会図書館こっかいとしょかんデジタルコレクション：https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1082717/18