中央ちゅうおう分離ぶんり帯たい

中央ちゅうおう分離ぶんり帯たい（ちゅうおうぶんりたい）とは、「車道しゃどうを往復おうふくの方向ほうこう別べつに分離ぶんりするため、その中央ちゅうおう部ぶに設もうけられる地帯ちたい」のことである（一般自動車道構造設備規則第一条第六号）。車両しゃりょうの正面しょうめん衝突しょうとつ防止ぼうしのため設もうけられる。

日本にっぽん[編集へんしゅう]

中央ちゅうおう分離ぶんり帯たいは道路どうろ構造こうぞう令れいにおける中央ちゅうおう帯たい（ちゅうおうたい）または分離ぶんり帯たい（ぶんりたい）と実質じっしつ的てきにほぼ同おなじである。

中央ちゅうおう帯たいは、道路どうろ構造こうぞう令れい第だい二に条じょう十じゅう項こうに定さだめる「車線しゃせんを往復おうふくの方向ほうこう別べつに分離ぶんりし、及および側がわ方かた余裕よゆうを確保かくほするために設もうけられる帯状おびじょうの道路どうろの部分ぶぶんをいう。」のことであり、道路どうろ規格きかくに応おうじて幅員ふくいんが決きまっている。中央ちゅうおう分離ぶんり帯たいは原則げんそくとして幅員ふくいん1メートル以上いじょうでなければならない（一般自動車道構造設備規則第九条本文）。

分離ぶんり帯たいは、道路どうろ構造こうぞう令れい第だい六ろく条じょう第だい七なな項こうに定さだめる「中央ちゅうおう帯たいのうち側帯そくたい以外いがいの部分ぶぶん」であり、「さくその他たこれに類るいする工作こうさく物ぶつを設もうけ、又または側帯そくたいに接続せつぞくして縁石えんせき線せんを設もうけるもの」となっている。この分離ぶんり帯たいに設もうけた工作こうさく物ぶつまたは側帯そくたいに接続せつぞくした縁石えんせき線せんをメディア等ひとしでは中央ちゅうおう分離ぶんり帯たいと呼よぶことがあるが、厳密げんみつには、中央ちゅうおう分離ぶんり帯たいはあくまでも「地帯ちたい」という道路どうろ上じょうの一定いっていの場所ばしょのことであって柵しがらみ等ひとしの工作こうさく物ぶつまたは縁石えんせきは、中央ちゅうおう分離ぶんり帯たいそのものではなく、中央ちゅうおう分離ぶんり帯たいに設もうけた工作こうさく物ぶつまたは縁石えんせきである。

効果こうか[編集へんしゅう]

中央ちゅうおう分離ぶんり帯たいは、対向たいこうする車両しゃりょう同士どうしの正面しょうめん衝突しょうとつを防止ぼうしするために設置せっちされる。また、樹木じゅもくなどが植うえてあれば、夜間やかん走行そうこう時じにヘッドライトの光線こうせんを遮断しゃだんする効果こうかもあるため、交通こうつう安全あんぜん上じょうの大おおきな役割やくわりを果はたしている^[1]。ただし、中央ちゅうおう分離ぶんり帯たいを設置せっちするためには、道路どうろ幅はばに車道しゃどう幅はば以上いじょうの道路どうろ幅員ふくいんがないと設置せっちすることは困難こんなんである^[1]。交通こうつう事故じこ抑止よくしに必要ひつような設備せつびであるが、十分じゅうぶんな広ひろさを持もたない道路どうろに中央ちゅうおう分離ぶんり帯たいを設もうけると安全あんぜん確保かくほ以上いじょうにデメリットのほうが大おおきくなる恐おそれがある^[2]。中央ちゅうおう分離ぶんり帯たいが設置せっちされていることによるデメリットは、救急きゅうきゅう車しゃや消防車しょうぼうしゃなどの緊急きんきゅう自動車じどうしゃが、交通こうつう渋滞じゅうたい中ちゅうの道路どうろで一般いっぱん車しゃを追おい越こす場合ばあいに、狭せまい道路どうろでは追おい越こしやUターンが出来できなくなる場面ばめんも考かんがえられるため、緊急きんきゅう自動車じどうしゃの現場げんば到着とうちゃく時間じかんが遅おくれてしまう恐おそれがあることが指摘してきされている^[2]。

高速こうそく道路どうろの分離ぶんり帯たい[編集へんしゅう]

高速こうそく自動車じどうしゃ道路どうろや自動車じどうしゃ専用せんよう道路どうろは、一般いっぱん的てきに中央ちゅうおう分離ぶんり帯たいで上下じょうげ線せんが区切くぎられた車線しゃせんで構成こうせいされるが、2015年ねん現在げんざい、交通こうつう量りょうが少すくないなどの理由りゆうから約やく2,400 kmの区間くかんで分離ぶんり帯たいを設もうけず、片側かたがわ1車線しゃせんずつの2車線しゃせんで使用しようされている。こうした区間くかんは事故じこが発生はっせいした場合ばあいに大だい事故じことなる傾向けいこうがあり^[3]、古ふるくから問題もんだい視しされてきた。1976年ねんに中央ちゅうおう自動車じどうしゃ道どう（大月おおつきインターチェンジ-河口湖かわぐちこインターチェンジ間あいだ）の暫定ざんてい2車線しゃせん道路どうろで立たて続つづけに死亡しぼう事故じこが発生はっせいした際さいには、新聞しんぶんの見出みだしで「欠陥けっかん道路どうろ」と批判ひはんされている^[4]。このため簡易かんい的てきに車線しゃせんを区切くぎる樹脂じゅし製せいポールや縁石えんせきブロック、さらに2010年代ねんだいにはワイヤロープを使用しようした分離ぶんり施設しせつの設置せっちが進すすめられている^[5]。

特殊とくしゅな事例じれい[編集へんしゅう]

中央ちゅうおう分離ぶんり帯たいが非常ひじょうに幅広はばひろく取とられているケースがある。その多おおくは次つぎの3通とおりに大別たいべつされる。

公園こうえんや歩行ほこう者しゃ専用せんよう道路どうろ等ひとしの歩行ほこう者しゃ空間くうかんとして使用しようされている場合ばあい。
高こう規格きかく道路どうろ等ひとしの本線ほんせん建設けんせつ予定よてい地ちとして確保かくほされている場合ばあい。
防火ぼうか帯たいとして最初さいしょから幅はばの広ひろい道路どうろが計画けいかくされ、結果けっかとして中央ちゅうおう分離ぶんり帯たいも幅広はばひろく作つくられる場合ばあい。なお、これによって上記じょうきの歩行ほこう者しゃ空間くうかんとなる場合ばあいもある。

歩行ほこう者しゃ空間くうかん[編集へんしゅう]

愛知あいち県けん名古屋なごや市し - 久屋ひさや大通だいつう公園こうえん
- 久屋ひさや大通だいつうにある公園こうえん。
神奈川かながわ県けん鎌倉かまくら市し - 若宮わかみや大路おおじ
- 鶴岡つるおか八幡宮はちまんぐうの参道さんどうとして使つかわれる事ことから、道路どうろの中央ちゅうおうが段だん葛かずらとして一段いちだん高たかくなっている。そのため車両しゃりょうの進入しんにゅうはできない。

宮城みやぎ県けん仙台せんだい市し - 定てい禅ぜん寺てら通どおり
- 中央ちゅうおう分離ぶんり帯たい(定てい禅ぜん寺てら通どおり緑地りょくち)が遊歩道ゆうほどうとなっている。

高こう規格きかく道路どうろ建設けんせつ予定よてい地ち[編集へんしゅう]

高こう規格きかく道路どうろを建設けんせつする計画けいかくで、側がわ道部みちぶ（一般いっぱん道路どうろ）のみ一旦いったん先さきに開通かいつうしたものの、本線ほんせん事業じぎょう化かの目処めどは立たたない場合ばあい、側がわ道どうの上下じょうげ線せんの間あいだに本線ほんせん建設けんせつ予定よてい地ちが幅員ふくいん数すう十じゅうメートルの巨大きょだいな中央ちゅうおう分離ぶんり帯たい状態じょうたいとなって、数すうキロ-数すう十じゅうキロに渡わたり、長年ながねんの間あいだ取とり残のこされてしまうケースがある（なお、高こう規格きかく道路どうろと側がわ道どうを建設けんせつする都市とし計画けいかくになっているが、本線ほんせん建設けんせつ予定よていの目処めどが立たたないことが予あらかじめわかっている場合ばあい、経費けいひ・期間きかんの短縮たんしゅくを図はかるため、事業じぎょう化か・土地とち買収ばいしゅう面積めんせきを縮小しゅくしょうし、本線ほんせん予定よてい箇所かしょに一般いっぱん道路どうろを暫定ざんてい的てきに通とおしたり、側がわ道どうの片側かたがわ部分ぶぶんのみを使用しようした対面たいめん通行つうこうで建設けんせつされ、中央ちゅうおう分離ぶんり帯たい状態じょうたいにはならない場合ばあいもある）。

この場合ばあい、中央ちゅうおう分離ぶんり帯たいと化かした空間くうかんは、全面ぜんめん的てきに立入禁止たちいりきんしの空あき地ち状態じょうたいとなっていることがほとんどであるが、側がわ道部みちぶの混雑こんざつ・事故じこ回避かいひあるいは工事こうじ迂回うかいなどを目的もくてきとして一部いちぶまたは全すべてを暫定ざんてい的てきに活用かつようしているケースがある（参考さんこう：熊谷くまがいバイパス#本線ほんせん用地ようちを活用かつようした渋滞じゅうたい・安全あんぜん対策たいさく）。

主おもに以下いかの道路どうろが挙あげられる。中央ちゅうおう分離ぶんり帯たいとして残のこされている詳細しょうさいな事情じじょうや経緯けいいについては、各かく記事きじを参照さんしょう。

地域ちいき高だか規格きかく道路どうろ（国道こくどう2号ごう）倉敷くらしき福山ふくやま道路どうろ（一部いちぶ区間くかん）
- 当該とうがい区間くかんの側がわ道部みちぶは、笠岡かさおかバイパスとして開通かいつう。
地域ちいき高だか規格きかく道路どうろ（国道こくどう4号ごう）東ひがし埼玉さいたま道路どうろ
- 側がわ道部みちぶは、別名べつめいが付つけられずに東ひがし埼玉さいたま道路どうろ（の一般いっぱん部ぶ）のままで一部いちぶ区間くかんが開通かいつう。
地域ちいき高だか規格きかく道路どうろ（国道こくどう17号ごう）新大宮しんおおみや上尾あげお道路どうろ・熊谷くまがい渋川しぶかわ連絡れんらく道路どうろ（一部いちぶ区間くかん）
- 当該とうがい区間くかんの側がわ道部みちぶは、新大宮しんおおみやバイパス（一部いちぶ区間くかん）・上尾あげお道路どうろ（未み開通かいつう区間くかん有あり）・熊谷くまがいバイパス（一部いちぶ。本線ほんせん予定よてい地ちの一部いちぶに側がわ道どう供用きょうよう区間くかん有あり）・深谷ふかやバイパス（一部いちぶ区間くかん）として開通かいつう。
南多摩みなみたま尾根おね幹線かんせん
- 側がわ道部みちぶは、東京とうきょう都道とどう19号ごう町田まちだ調ちょう布線ふせん、18号ごう府中ふちゅう町田まちだ線せん、156号ごう町田まちだ日野ひの線せん、158号ごう小山おやま乞田こった線せん、503号ごう相模原さがみはら立川たつかわ線せんとして開通かいつう（未み開通かいつう区間くかんまたは暫定ざんてい2車線しゃせん対面たいめん通行つうこうで中央ちゅうおう分離ぶんり帯たい状態じょうたいではない区間くかんもあり）。
東京とうきょう湾岸わんがん道路どうろ（千葉ちば区間くかん）
- 当該とうがい道路どうろのうち、千葉ちば県けん木更津きさらづ市し-富津とみつ市し間あいだにおいて、一般いっぱん部ぶが国道こくどう16号ごう・千葉ちば県けん道どう90号ごう木更津きさらづ富津とみつ線せんとして開通かいつうし、中央ちゅうおうが中央ちゅうおう分離ぶんり帯たいと化かしている。

また、以下いかのケースは各地かくちで見みられる。

本線ほんせん自体じたいは開通かいつうしているものの暫定ざんてい2車線しゃせん運用うんようなどで完成かんせい化か用地ようちは同様どうようになっている
立体りったい交差こうさ予定よていであるが立体りったい化かが先送さきおくりされている交差点こうさてん（短距離たんきょり）
部分ぶぶん開通かいつうした道路どうろにおける開通かいつう済ずみ区間くかんの終点しゅうてんランプ部ぶ（短距離たんきょり）

防火ぼうか帯たい[編集へんしゅう]

北海道ほっかいどう札幌さっぽろ市し - 大通だいつう公園こうえん
- 道路どうろの上下じょうげ線せん間あいだの中央ちゅうおうに広ひろがる公園こうえん。元もとは防火ぼうか帯たいとして作つくられた。現在げんざいは歩行ほこう者しゃ空間くうかんとしての役割やくわりが大おおきく、市民しみんの憩いこいの場ばや観光かんこう名所めいしょとなっている他ほかに、イベント会場かいじょうとしても使つかわれている。

大通だいつう公園こうえん（北海道ほっかいどう札幌さっぽろ市し・2016年ねんにさっぽろテレビ塔てれびとうから撮影さつえい）

北海道ほっかいどう函館はこだて市し - 市内しない各所かくしょ
- 函館はこだて市しでは歴史れきし上じょう、函館はこだて大火たいか等ひとしの大だい規模きぼ火災かさいが多数たすう発生はっせいしたという歴史れきしから、防火ぼうか帯たいとして幅はばの広ひろい道路どうろが多数たすう設置せっちされ、必然ひつぜん的てきにグリーンベルトと呼よばれる広幅ひろはばの中央ちゅうおう分離ぶんり帯たいが同時どうじに設もうけられるケースが多おおく、一部いちぶは公園こうえん施設しせつ等とうの歩行ほこう者しゃ空間くうかんとして利用りようされる事こともある。一いち例れいとして函館はこだて市し松風まつかぜ町まちの広幅ひろはば中央ちゅうおう分離ぶんり帯たいがイベント時じの会場かいじょうや公園こうえん敷地しきちとして使つかわれる他ほかに、函館はこだて市し元町もとまち・青柳あおやぎ町まち・宝来たからぎ町まち・東川ひがしがわ町まちに在ざいする北海道ほっかいどう道どう675号ごう立待岬たちまちみさき函館はこだて停車場ていしゃじょう線せんの一部いちぶと市道しどう・通称つうしょう「高田屋たかだや通とおる」の中央ちゅうおう分離ぶんり帯たい上じょうに「高田屋たかだや嘉兵衛かへえ」の銅像どうぞうが設置せっちされるなどしている^[6]。

北海道ほっかいどう道どう675号ごう立待岬たちまちみさき函館はこだて停車場ていしゃじょう線せんの、市道しどう高田屋たかだや通つう側がわから見みた広幅ひろはばの中央ちゅうおう分離ぶんり帯たい（グリーンベルト）
北海道ほっかいどう道どう675号ごう立待岬たちまちみさき函館はこだて停車場ていしゃじょう線せん・中央ちゅうおう分離ぶんり帯たいに設置せっちの高田屋たかだや嘉兵衛かへえ像ぞう
イベント等とうにも使つかわれる広場ひろばとなっている広幅ひろはばの中央ちゅうおう分離ぶんり帯たい1（北海道ほっかいどう函館はこだて市し・市道しどう広小路ひろこうじ）
イベント等とうにも使つかわれる広場ひろばとなっている広幅ひろはばの中央ちゅうおう分離ぶんり帯たい2（北海道ほっかいどう函館はこだて市し・市道しどう広小路ひろこうじ）
公園こうえんとして活用かつようされている広幅ひろはばの中央ちゅうおう分離ぶんり帯たい（グリーンベルト、北海道ほっかいどう函館はこだて市し・市道しどう豊川とよかわ小路こうじ）

諸しょ外国がいこく[編集へんしゅう]

台湾たいわんや韓国かんこくなどの高速こうそく道路どうろには、戦時せんじの際さいに代替だいたい滑走かっそう路ろとして使用しようする為ために中央ちゅうおう分離ぶんり帯たいを設置せっちしていない箇所かしょが20箇所かしょ以上いじょうある。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

[脚注きゃくちゅうの使つかい方かた]

^ ^a ^b 浅井あさい建けん爾なんじ 2015, p. 42.
^ ^a ^b 浅井あさい建けん爾なんじ 2015, p. 43–44.
^ “中央ちゅうおう分離ぶんり帯たいがない高速こうそく道路どうろを走はしるときの注意ちゅうい点てん”. JAF (2016年ねん). 2021年ねん3月がつ1日にち閲覧えつらん。
^ 欠陥けっかん道路どうろ、事故じこ相次あいつぐ行楽こうらくの六ろく人にん死しぬ『朝日新聞あさひしんぶん』1976年ねん（昭和しょうわ51年ねん）9月がつ27日にち、13版はん、23面めん
^ “東北とうほく中央ちゅうおう自動車じどうしゃ道どうの中央ちゅうおう分離ぶんり帯たいを改良かいりょう！”. 山形やまがた河川かせん国道こくどう事務所じむしょ (2018年ねん). 2021年ねん3月がつ1日にち閲覧えつらん。
^ これは当該とうがい道路どうろの一部いちぶがかつて高田屋たかだや嘉兵衛かへえの屋敷やしき跡あとだった事ことに由来ゆらいする。

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

浅井あさい建けん爾なんじ『日本にっぽんの道路どうろがわかる辞典じてん』（初版しょはん）日本にっぽん実業じつぎょう出版しゅっぱん社しゃ、2015年ねん10月がつ10日とおか。ISBN 978-4-534-05318-3。