信頼しんらい領域りょういき

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数理すうり最適さいてきにおいて、信頼しんらい領域りょういき(しんらいりょういき、えい: trust region)は、目的もくてき関数かんすう近似きんじするモデル関数かんすうおおくの場合ばあい関数かんすう)が有効ゆうこうとみなされる領域りょういきをいう。目的もくてき関数かんすうのモデル関数かんすうによる近似きんじ信頼しんらい領域りょういきない十分じゅうぶんであるならば、信頼しんらい領域りょういき拡大かくだいして反復はんぷく継続けいぞくし、ぎゃく近似きんじ不十分ふじゅうぶん場合ばあい信頼しんらい領域りょういき縮小しゅくしょうして続行ぞっこうする。

近似きんじ十分じゅうぶんがどうかは、モデル関数かんすうから期待きたいされる改善かいぜんと、目的もくてき関数かんすう観測かんそくされた実際じっさい改善かいぜんとのにより評価ひょうかされる。この単純たんじゅんにしきい比較ひかくした結果けっかもとづ信頼しんらい領域りょういき拡大かくだい縮小しゅくしょうする。モデル関数かんすうは、妥当だとう近似きんじあたえる領域りょういきないでのみ「信頼しんらい」される。

信頼しんらい領域りょういきほうは、ある意味いみ直線ちょくせん探索たんさくほう双対そうついす。信頼しんらい領域りょういきほうではまずステップサイズ(信頼しんらい領域りょういきのサイズ)を選択せんたくし、つぎにステップ方向ほうこう選択せんたくするが、直線ちょくせん探索たんさくほうではまずステップ方向ほうこう選択せんたくし、つぎにステップサイズを選択せんたくする。

信頼しんらい領域りょういきほう背後はいごにあるかんがかたには、おおくの名前なまえがある。信頼しんらい領域りょういきという用語ようご使用しようされたのは、Sorensen 1982最初さいしょとされる。人気にんきのある教科書きょうかしょFletcher 1980では、これらのアルゴリズムを制限せいげんステップほうrestricted-step methods)とんでいる。さらに、この方法ほうほうかんする初期しょき基礎きそ研究けんきゅうGoldfeld, Quandt & Trotter 1966では山登やまのぼほうquadratic hill-climbing)とばれている。

れい[編集へんしゅう]

レーベンバーグ・マルカートほうは、目的もくてき関数かんすう曲面きょくめん反復はんぷくてき近似きんじし、線形せんけいソルバーにより推定すいてい更新こうしんする。初期しょき推定すいてい最適さいてきから乖離かいりしている場合ばあい、これだけではうまく収束しゅうそくしない可能かのうせいがあるため、本法ほんぽうではわりにかくステップを制限せいげんし、「ぎ」ないようにする。具体ぐたいてきには、 についてわりに、く。 ここでAおなたいかくをもつたいかく行列ぎょうれつλらむだ信頼しんらい領域りょういきのサイズを制御せいぎょするパラメータである。幾何きか学的がくてきには、上記じょうき変更へんこう中心ちゅうしんとするものめん加算かさんしたことに相当そうとうし、このためステップサイズがちいさくおさえられる。

推定すいてい発散はっさんふせぎ、かつ迅速じんそくかい収束しゅうそくさせるためには、いかに信頼しんらい領域りょういきのサイズ(λらむだ)を変更へんこうするかが重要じゅうようである。しん減少げんしょう所与しょよとしてつぎのように評価ひょうかされる。

このと、減衰げんすい近似きんじされた目的もくてき関数かんすうから予測よそくされる目的もくてき関数かんすう減少げんしょうとを比較ひかく具体ぐたいてきには両者りょうしゃおうじて信頼しんらい領域りょういきのサイズを調整ちょうせいする。一般いっぱんてきに、よりも若干じゃっかんちいさいと期待きたいされ、このは0.25から0.5のあいだをとることが期待きたいされる。比率ひりつが 0.5 をえる場合ばあいは、減衰げんすいしすぎとかんがえ、信頼しんらい領域りょういき拡大かくだいλらむだ減少げんしょう)させ反復はんぷくおこなう。比率ひりつが 0.25 よりちいさい場合ばあいは、しん関数かんすう近似きんじ関数かんすうから「おおきく」はなれているため、信頼しんらい領域りょういき縮小しゅくしょうλらむだ増加ぞうか) させ反復はんぷくおこなう。

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  • Sorensen, D. C. (1982). “Newton's Method with a Model Trust Region Modification”. SIAM J. Numer. Anal. 19 (2): 409–426. doi:10.1137/0719026. https://digital.library.unt.edu/ark:/67531/metadc283479/. 
  • Fletcher, Roger (1987) [1980]. “Restricted Step Methods”. Practical Methods of Optimization (Second ed.). Wiley. ISBN 0-471-91547-5 
  • Goldfeld, Stephen M.; Quandt, Richard E.; Trotter, Hale F. (1966). “Maximization by Quadratic Hill-Climbing”. Econometrica 34 (3): 541–551. doi:10.2307/1909768. JSTOR 1909768. 
  • Dennis, J. E., Jr.; Schnabel, Robert B. (1983). “Globally Convergent Modifications of Newton's Method”. Numerical Methods for Unconstrained Optimization and Nonlinear Equations. Englewood Cliffs: Prentice-Hall. pp. 111–154. ISBN 0-13-627216-9 
  • Andrew R. Conn, Nicholas I. M. Gould, Philippe L. Toint "Trust-Region Methods (MPS-SIAM Series on Optimization)".
  • Byrd, R. H, R. B. Schnabel, and G. A. Schultz. "A trust region algorithm for nonlinearly constrained optimization", SIAM J. Numer. Anal., 24 (1987), pp. 1152–1170.
  • Yuan, Y. "A review of trust region algorithms for optimization" in ICIAM 99: Proceedings of the Fourth International Congress on Industrial & Applied Mathematics, Edinburgh, 2000 Oxford University Press, USA.
  • Yuan, Y. "Recent Advances in Trust Region Algorithms", Math. Program., 2015

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]