とつ最適さいてき

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とつ最適さいてき(とつさいてきか)とは最適さいてき問題もんだい分野ぶんやのひとつで、とつ集合しゅうごううえとつ関数かんすう最小さいしょう問題もんだいである。 とつ最小さいしょう問題もんだい一般いっぱんてき最適さいてき問題もんだいよりも簡単かんたん最適さいてき可能かのうであり、局所きょくしょてき最小さいしょう大域たいいきてき最小さいしょう一致いっちする性質せいしつをもつ。

ベクトル空間くうかんうえじつ数値すうちとつ関数かんすう

とつ部分ぶぶん集合しゅうごううえ定義ていぎされる。

とつ最適さいてき問題もんだいとは最小さいしょうとなるうえてんつけることである。

すなわち

for all .

である。

とつ最適さいてき問題もんだい[編集へんしゅう]

うえつける最適さいてき問題もんだいである。

ここで実現じつげん可能かのう集合しゅうごうで、 目的もくてき関数かんすうである。 が閉凸集合しゅうごうで、 うえとつ関数かんすうであれば、これをとつ最適さいてき問題もんだいという。


以上いじょう数学すうがくてき一般いっぱんされた定義ていぎであるが、この問題もんだい実際じっさい提示ていじされる場面ばめんにおいて具体ぐたいてきかたち表現ひょうげんされることがおおい。よくあるれいとして、あたえられたとつ関数かんすうもちいて以下いかのように連立れんりつ不等式ふとうしきをみたす集合しゅうごうとして定義ていぎされる:

こういった事情じじょうまえて以下いかのような定義ていぎあたえられることもある:

ここで、関数かんすうとつである。

理論りろん[編集へんしゅう]

とつ最適さいてき問題もんだいにおいて以下いか命題めいだいしんである。

  • 極小きょくしょう存在そんざいすれば大域たいいきてき最小さいしょうである
  • すべての(大域たいいきてき最小さいしょう集合しゅうごうとつである
  • つよとつ関数かんすうであり関数かんすう最小さいしょうてば、一意いちいまる

ヒルベルト射影しゃえい理論りろん分離ぶんりちょう平面へいめん理論りろんFarkasの補題ほだいなどの関数かんすう解析かいせきヒルベルト空間くうかんうえの)とも関係かんけいしている。

標準ひょうじゅんがた[編集へんしゅう]

標準ひょうじゅんがたとつ最小さいしょう問題もんだいをよく使用しようされる直感ちょっかんてき形式けいしき表現ひょうげんする。

3つの部分ぶぶんつ。

  • とつ関数かんすう  かんして最小さいしょうされる。
  • 不等式ふとうしき制約せいやく 。ここで関数かんすうとつである。
  • 等式とうしき制約せいやく  関数かんすうアフィン変換へんかん、すなわち線形せんけい関数かんすう

実際じっさいには線形せんけい制約せいやくとアフィンな制約せいやくはよく使用しようされる。 これらの形式けいしきあらわせられる。 ここで、れつベクトル、実数じっすうである。

とつ最小さいしょう問題もんだい以下いかのようにあらわされる

等式とうしき制約せいやくは2つの 不等式ふとうしき制約せいやくもちいてえることができる。 そのため等式とうしき制約せいやく理論りろんてきには冗長じょうちょうであるが実際じっさいじょう利点りてんのため使用しようされる。 これらのことから、なぜ たんとつであるのではなくアフィンであるのかが容易ようい理解りかいできる。 とつとするととつであるが は凹となる。 そのためとつとなるための条件じょうけんがアフィンであることである。

れい[編集へんしゅう]

以下いかしめれいはすべてとつ最小さいしょう問題もんだいであるか、変数へんすう変換へんかんによりとつ最小さいしょう問題もんだいにできる問題もんだいである。

ラグランジュの未定みてい乗数じょうすうほう[編集へんしゅう]

標準ひょうじゅんがたあらわされたとつ最小さいしょう問題もんだいかんがえる。 コスト関数かんすう不等式ふとうしき制約せいやく とすると、定義ていぎいき

この問題もんだいたいするラグランジュ関数かんすう

L(x,λらむだ0,...,λらむだm) = λらむだ0f(x) + λらむだ1g1(x) + ... + λらむだmgm(x).

Xうえ関数かんすうf最小さいしょうするXうえてんxかんして じつ数値すうちのラグランジュ係数けいすうλらむだ0, ..., λらむだm存在そんざいし、 以下いかたす。

  1. Xうえのすべての変数へんすうかんしてxL(y, λらむだ0, λらむだ1, ..., λらむだm) を最小さいしょうする
  2. λらむだ0 ≥ 0, λらむだ1 ≥ 0, ..., λらむだm ≥ 0, すくなくともひとつは λらむだk>0,
  3. λらむだ1g1(x) = 0, ..., λらむだmgm(x) = 0 (相補そうほスラックせい).

方法ほうほう[編集へんしゅう]

とつ最小さいしょう問題もんだい以下いか方法ほうほうもちいてくことが可能かのうである。

その手法しゅほう

れつ勾配こうばいほう簡単かんたん実装じっそうできおおくの適応てきおうれいがある。 双対そうついれつ勾配こうばいほうれつ勾配こうばいほう双対そうつい問題もんだい適応てきおうした方法ほうほうである。 ドリフトプラスペナルティーほう双対そうついれつ勾配こうばいほう類似るいじしているが、 しゅ変数へんすうかんして時間じかん平均へいきんをとっているてんことなる。

とつ最小さいしょうむずかしい場合ばあい: 自己じこ調和ちょうわ障壁しょうへき[編集へんしゅう]

とつ最適さいてき問題もんだいにクラスによっては更新こうしんほう効率こうりつわるいものがある。 それはクラスにはおおくの関数かんすうれつ勾配こうばい評価ひょうかしなければ 精確せいかく最小さいしょうられない問題もんだいふくんでいるからである。 この問題もんだいはArkadi Nemirovskiiによって議論ぎろんされている。

そのため実用じつようじょう効率こうりつもとめるには問題もんだいのクラスにさらに制約せいやくくわえる必要ひつようがある。 2つの障壁しょうへき関数かんすうほう方法ほうほうがある。 1つはNesterovとNemirovskiiによる自己じこ調和ちょうわ(self-concordant)障壁しょうへき関数かんすう、 もう1つはTerlakyらによる自己じこ正規せいき障壁しょうへき関数かんすうである。

じゅんとつ最小さいしょう[編集へんしゅう]

とつのレベル集合しゅうごうをもつ問題もんだい理論りろんじょう効率こうりつてき最小さいしょうできる。 Yuri Nesterovはじゅんとつ最小さいしょう問題もんだい効率こうりつてきけることを証明しょうめいした。 これの結果けっかはKiwielによって拡張かくちょうされた。

計算けいさん複雑ふくざつせい理論りろんなかでは、じゅん凸計画とつけいかく問題もんだい凸計画とつけいかく問題もんだい問題もんだい次元じげんたいして 多項式たこうしき時間じかんくことが可能かのうである。 Yuri Nesterovが最初さいしょじゅんとつ最小さいしょう問題もんだい効率こうりつてきくことが可能かのうであることをしめした。 しかし、この理論りろんてき効率こうりつてき方法ほうほう発散はっさんする数列すうれつをステップサイズにもちいていた。 これは古典こてんてきれつ勾配こうばいほう開発かいはつ使つかわれていた。 発散はっさん数列すうれつもちいる古典こてんてきれつ勾配こうばいほうは、れつ勾配こうばい射影しゃえいほう勾配こうばいバンドルほう平滑へいかつフィルタほうなど の現代げんだいてきとつ最小さいしょうほうよりかなりおそいことがられている。

とつちかいがとつ関数かんすう問題もんだい計算けいさん困難こんなんである。 Ivanovの結果けっかによれば関数かんすうなめらかさあってもたんみね関数かんすう最小さいしょうすることはむずかしい。

拡張かくちょう[編集へんしゅう]

せい無限むげんふくむようにとつ関数かんすう拡張かくちょうできる。たとえば、指標しひょう関数かんすうたす領域りょういきではをもち、そのせい無限むげんである。

とつ関数かんすう拡張かくちょうには擬似ぎじとつ関数かんすうじゅんとつ関数かんすうふくむ。 とつ解析かいせき更新こうしんほう部分ぶぶんてき拡張かくちょうとつ最小さいしょう問題もんだいたいする近似きんじ解法かいほうとして一般いっぱんされたとつせいなかかんがえられている。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  • Bertsekas, Dimitri (2003). Convex Analysis and Optimization. Athena Scientific 
  • Boyd, Stephen P.; Vandenberghe, Lieven (2004) (pdf). Convex Optimization. Cambridge University Press. ISBN 978-0-521-83378-3. http://www.stanford.edu/~boyd/cvxbook/bv_cvxbook.pdf 2011ねん10がつ15にち閲覧えつらん 
  • Borwein, Jonathan, and Lewis, Adrian. (2000). Convex Analysis and Nonlinear Optimization. Springer.
  • Hiriart-Urruty, Jean-Baptiste, and Lemaréchal, Claude. (2004). Fundamentals of Convex analysis. Berlin: Springer.
  • Hiriart-Urruty, Jean-Baptiste; Lemaréchal, Claude (1993). Convex analysis and minimization algorithms, Volume I: Fundamentals. Grundlehren der Mathematischen Wissenschaften [Fundamental Principles of Mathematical Sciences]. 305. Berlin: Springer-Verlag. pp. xviii+417. ISBN 3-540-56850-6 
  • Hiriart-Urruty, Jean-Baptiste; Lemaréchal, Claude (1993). Convex analysis and minimization algorithms, Volume II: Advanced theory and bundle methods. Grundlehren der Mathematischen Wissenschaften [Fundamental Principles of Mathematical Sciences]. 306. Berlin: Springer-Verlag. pp. xviii+346. ISBN 3-540-56852-2. MR1295240 
  • Kiwiel, Krzysztof C. (1985). Methods of Descent for Nondifferentiable Optimization. Lecture Notes in Mathematics. New York: Springer-Verlag. ISBN 978-3540156420 
  • Lemaréchal, Claude (2001). “Lagrangian relaxation”. In Michael Jünger and Denis Naddef. Computational combinatorial optimization: Papers from the Spring School held in Schloß Dagstuhl, May 15–19, 2000. Lecture Notes in Computer Science. 2241. Berlin: Springer-Verlag. pp. 112–156. doi:10.1007/3-540-45586-8_4. ISBN 3-540-42877-1. MR1900016 
  • Nesterov, Y. and Nemirovsky, A. (1994). Interior Point Polynomial Methods in Convex Programming. SIAM
  • Nesterov, Yurii. (2004). Introductory Lectures on Convex Optimization, Kluwer Academic Publishers
  • Rockafellar, R. T. (1970). Convex analysis. Princeton: Princeton University Press 
  • Ruszczyński, Andrzej (2006). Nonlinear Optimization. Princeton University Press 

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]