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免疫めんえき染色せんしょく

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

免疫めんえき染色せんしょく(Immunostaining)とは抗体こうたいもちいて、組織そしき標本ひょうほんちゅう抗原こうげん検出けんしゅつする組織そしきがく組織そしき化学かがくてき手法しゅほうのこと。正確せいかくには免疫めんえき組織そしき化学かがく(Immunohistochemistry; IHC)とい、「染色せんしょく」とはことなるが、本来ほんらい不可視ふかしである抗原こうげん抗体こうたい反応はんのう免疫めんえき反応はんのう)を可視かしするために発色はっしょく操作そうさおこなうことから、ぞくに「免疫めんえき染色せんしょく」とか「抗体こうたい染色せんしょく」とばれることもおおく、医療いりょう従事じゅうじしゃ医学いがく研究けんきゅうしゃ生命せいめい科学かがく研究けんきゅうしゃの「業界ぎょうかい用語ようごてきかたでは、しばしばめんしみりゃくされる。なお、保険ほけん診療しんりょうもちいる場合ばあい診療しんりょう報酬ほうしゅうじょうは「免疫めんえき抗体こうたいほう」とされている。

抗体こうたい特異とくいせい利用りようして組織そしきを“め”わけ、抗原こうげん存在そんざいおよび局在きょくざい顕微鏡けんびきょうした観察かんさつできるので、特定とくてい遺伝子いでんし発現はつげん確認かくにんや、各種かくしゅのいわゆる「マーカータンパク質たんぱくしつ」をもちいることで病理びょうり組織そしき診断しんだんにもよく使つかわれている。また電気でんきおよげどうしたタンパク質たんぱくしつ分子ぶんし特殊とくしゅまく転移てんいさせ、そのまく特定とくていタンパク質たんぱくしつたいする抗体こうたい免疫めんえき染色せんしょくする方法ほうほうウェスタンブロッティングである。"染色せんしょく"には抗体こうたい色素しきそ蛍光けいこう色素しきそ結合けつごうさせる方法ほうほうほかきむコロイドもちいたり、酵素こうそ抗体こうたいほうもちいたりする。直接ちょくせつほう間接かんせつほうがあり間接かんせつほうほう一般いっぱん検出けんしゅつ感度かんどたかい。

この方法ほうほう基本きほんてきには抗原こうげん抗体こうたい反応はんのう免疫めんえき反応はんのう)と可視かしの2つのプロセスよりなっている。具体ぐたいてきには、組織そしき標本ひょうほんちゅう抗原こうげん(または抗体こうたい)にたいして抗体こうたい(または抗原こうげん)をふくえき一定いってい時間じかん反応はんのうさせることによって抗原こうげん抗体こうたい結合けつごうさせて免疫めんえきふく合体がったい形成けいせいさせる。そのさい反応はんのうさせる抗体こうたいなどにまえもって可視かしできるように細工ざいくをしておく必要ひつようがある。

方法ほうほう種別しゅべつ

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抗原こうげん抗体こうたい反応はんのう可視かしする方法ほうほうとしては以下いかのような方法ほうほうがある。

  1. オートラジオグラフィーえいen:autoradiography抗体こうたい放射ほうしゃせい同位どうい元素げんそ結合けつごう(「標識ひょうしき」という)しておき、あと印画いんが感光かんこうさせる。
  2. きむコロイドほう (えい colloidal gold technique) きむ粒子りゅうしなど可視かし物質ぶっしつ抗体こうたい結合けつごうさせておき、電子でんし顕微鏡けんびきょうなどで観察かんさつする。きむコロイドぎんぞうかんほうというより感度かんどたか方法ほうほうがある。これはきむ粒子りゅうし金属きんぞくぎん付着ふちゃくさせていくものである。
  3. 蛍光けいこう抗体こうたいほうえい immunofluorescence, IF; fluorescence antibody technique)抗体こうたい蛍光けいこう色素しきそ標識ひょうしきしておき、抗原こうげん抗体こうたい反応はんのうのち励起れいき波長はちょうてて蛍光けいこう発色はっしょくさせ蛍光けいこう顕微鏡けんびきょう観察かんさつする。
  4. 酵素こうそ抗体こうたいほうえい enzyme antibody technique)抗体こうたい特定とくてい酵素こうそ標識ひょうしきしておき、あと基質きしつ反応はんのうさせて形成けいせいされた色素しきそ生成せいせいぶつていしょく光学こうがく顕微鏡けんびきょう観察かんさつする。免疫めんえきペルオキシダーゼほう(immunoperoxidase method)など。

※このうち、(1)(2)については常識じょうしきてき意味いみでの「いろ」はないので「免疫めんえき染色せんしょく」とはばれない。また(1)〜(3)については可視かし操作そうさそのものに有機ゆうき化学かがく反応はんのうもちいていないので「化学かがく」とぶには違和感いわかんがある。「免疫めんえき組織そしき化学かがく」という名称めいしょうひろ使つかわれしたのはおよそ20ねんまえに(4)の酵素こうそ抗体こうたいほう考案こうあんされてからである。もともと有機ゆうき化学かがく反応はんのうもちいて組織そしき標本ひょうほんちゅう酵素こうそ検出けんしゅつする方法ほうほうとして「組織そしき化学かがく histochemistry」という名称めいしょう使用しようされていたこともあって、それに「免疫めんえき」をわせたわけである。したがって、「免疫めんえき組織そしき化学かがく」とは狭義きょうぎには「酵素こうそ抗体こうたいほう」をすものと理解りかいすべきであろう。

抗原こうげん抗体こうたい反応はんのう種別しゅべつ

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抗原こうげん抗体こうたい反応はんのうかんしてもおおきくけて以下いかの2種類しゅるい方法ほうほうがある。

  1. 直接ちょくせつほう 抗原こうげん直接ちょくせつ反応はんのうする抗体こうたいいち抗体こうたい)を標識ひょうしきし、抗原こうげん抗体こうたい反応はんのうを1しかおこなわない
  2. 間接かんせつほう 標識ひょうしきしていないいち抗体こうたいもちいて1度目どめ抗原こうげん抗体こうたい反応はんのうおこない、いち抗体こうたい自体じたい抗原こうげんとするべつ抗体こうたい抗体こうたい)を標識ひょうしきして、さらに反応はんのうさせて2かい以上いじょうおおくは2かい抗原こうげん抗体こうたい反応はんのうおこな

検出けんしゅつ目的もくてきである抗原こうげん直接ちょくせつ反応はんのうする抗体こうたい標識ひょうしきして可視かしする場合ばあい直接ちょくせつほう、それ以外いがい抗体こうたいなどに標識ひょうしきして可視かし(つまり間接かんせつてき可視かし)する場合ばあい間接かんせつほうとなる。抗体こうたい免疫めんえきグロブリンという蛋白たんぱくであり、それ自体じたい抗原こうげんとなりるので、理屈りくつじょう間接かんせつほうでは抗原こうげん抗体こうたい反応はんのうを3でも4でも反復はんぷくすることができる。一般いっぱん反応はんのう反復はんぷくするほど増幅ぞうふくされるので検出けんしゅつ感度かんどたかめることができるが、同時どうじ特異とくいせい低下ていかする。

酵素こうそ抗体こうたいほう間接かんせつほう)の種別しゅべつ

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そのに、酵素こうそ抗体こうたいほうでの間接かんせつほうのバリエーションともうべきものとして以下いか方法ほうほうがあり、とく一般いっぱん病院びょういん病理びょうり検査けんさしつレベルでは(2)が現在げんざいでは主流しゅりゅうとなっている。

  1. 標識ひょうしき酵素こうそとしてペルオキシダーゼ使用しようする場合ばあいに、ペルオキシダーゼ・こうペルオキシダーゼ抗体こうたい可溶性かようせい免疫めんえきふく合体がったいPeroxydase-anti-Peroxydase Complex(PAP)をもちいるPAPほう[1]は、抗原こうげん抗体こうたい反応はんのうのみをもちいてペルオキシダーゼを導入どうにゅうするものである。いち抗体こうたいと、こうペルオキシダーゼ抗体こうたいのホスト動物どうぶつしゅそろえておく。いち抗体こうたい反応はんのうさせ、それに結合けつごうする抗体こうたい反応はんのうさせたのちに、PAPを反応はんのうさせると、抗体こうたいのふたつの抗原こうげん結合けつごう部位ぶいのうちのいているほうが、PAPにふくまれるこうペルオキシダーゼ抗体こうたい結合けつごうする。
  2. 抗体こうたいビオチン(biotin)を結合けつごう(この場合ばあいは「標識ひょうしき」とはいわず「ビオチン」という)させておき、3かい反応はんのう抗原こうげん抗体こうたい反応はんのうではなくビオチンと特異とくいてき結合けつごうするアビジン(avidin)をもちいるLAB(Linked Avidin-Biotin)ほう、アビジン・ビオチンふく合体がったいAvidin-Biotin ComplexをもちいるABCほう[2]、アビジンよりも強固きょうこなビオチンへの結合けつごうしめストレプトアビジン(streptavidin)をもちいるLSAB(Linked Streptavidin-Biotin)ほうなどがある。また、さらにこう感度かんどかつ短時間たんじかん染色せんしょく可能かのうとする方法ほうほう一般いっぱんてきになってきている。これは、抗体こうたい酵素こうそをポリマーに結合けつごうさせたポリマー試薬しやく反応はんのうさせるため、内因ないいんせいのビオチンの影響えいきょうけにくく、2ステップで反応はんのう終了しゅうりょうするためである。そのに、TSAほう(tyramide signal amplification, あるいはCARDほう, catalyzed reporter deposition)というぞうかんほうわせて使用しようすることができる。

酵素こうそ抗体こうたいほうでの発色はっしょく方法ほうほうとしてはなに種類しゅるい選択肢せんたくしがあるが、もっと一般いっぱんてきなものは標識ひょうしき酵素こうそとしてペルオキシダーゼをもちいて、ジアミノベンジジン英語えいごばん反応はんのうさせるDABほう[3]ニッケルイオン存在そんざいでDABほうおこなうよりこう感度かんどニッケルDABほうなどである。標識ひょうしき酵素こうそとしてアルカリホスファターゼ使用しようする場合ばあいには、NBT/BCIP反応はんのうもっと一般いっぱんてきである。

腫瘍しゅよう病理びょうりがくてき手法しゅほう

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腫瘍しゅよう病理びょうり組織そしきがくてきおおきく上皮じょうひけいあいだけい分類ぶんるいされる。おおくはHE染色せんしょくでその分類ぶんるいをすることが可能かのうであるが、より正確せいかく診断しんだんおこな目的もくてき免疫めんえき染色せんしょくもちいられる場合ばあいがある。たいていの場合ばあい上皮じょうひけいマーカーとしてサイトケラチンあいだけいのマーカーとしてビメンチンもちいられる。

関連かんれん

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文献ぶんけん

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  1. ^ Sternberger LA, Hardy PH Jr, Cuculis JJ, Meyer HG. (1970). “The unlabeled antibody enzyme method of immunohistochemistry: preparation and properties of soluble antigen-antibody complex (horseradish peroxidase-antihorseradish peroxidase) and its use in identification of spirochetes”. J Histochem Cytochem 18 (5): 315-33. PMID 4192899. 
  2. ^ Hsu SM, Raine L, Fanger H (1981). “Use of avidin-biotin-peroxidase complex (ABC) in immunoperoxidase techniques: a comparison between ABC and unlabeled antibody (PAP) procedures”. J Histochem Cytochem 29 (4): 577-80. PMID 6166661. 
  3. ^ Graham RC Jr, Karnovsky MJ. (1966). “The early stages of absorption of injected horseradish peroxidase in the proximal tubules of mouse kidney: ultrastructural cytochemistry by a new technique”. J Histochem Cytochem 14 (4): 291-302. PMID 5962951. 

外部がいぶリンク

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