剰余じょうよ金きん

会社かいしゃ法ほう・会計かいけい上うえにおける剰余じょうよ金きん（じょうよきん）は、純資産じゅんしさんから、資本しほん金きん、資本しほん準備じゅんび金きんを控除こうじょした金額きんがくである。剰余じょうよ金きんは分配ぶんぱい可能かのう額がく算定さんていの基礎きそとなる。以下いか、会社かいしゃ法ほうは条じょう数すうのみ記載きさいする。

また財政ざいせい法ほう上うえの剰余じょうよ金きんも存在そんざいする。

概要がいよう[編集へんしゅう]

株主かぶぬしは基本きほん的てきな権利けんりとして剰余じょうよ金きんの配当はいとうを受うける権利けんりを有ゆうする（第だい105条じょう1項こう1号ごう）。すなわち会社かいしゃ法ほう上じょうにおける剰余じょうよ金きんは株主かぶぬしへ分配ぶんぱい可能かのうな資金しきんである。その額がくは純資産じゅんしさんから資本しほん金きん・準備じゅんび金きん等とうを控除こうじょした額がくと定義ていぎされる（第だい446条じょう）。

株主かぶぬし資本しほんは払込はらいこみ資本しほんと留保りゅうほ利益りえきに分類ぶんるいされ、さらに払込はらいこみ資本しほんは資本しほん金きんとその他たに分類ぶんるいされる。ゆえに会計かいけい上じょうにおいて資本しほん剰余じょうよ金きんと利益りえき余剰よじょう金きんが定義ていぎされる。資本しほん剰余じょうよ金きんは資本しほん準備じゅんび金きんを含ふくんでおり、これは会社かいしゃ法ほう上じょうにおける余剰よじょう金きんに含ふくまれていないのに注意ちゅういが必要ひつようである^[1]。

会社かいしゃ法ほう[編集へんしゅう]

2006年ねん（平成へいせい18年ねん）5月がつ1日にち施行しこうの会社かいしゃ法ほうで定さだめられた剰余じょうよ金きんの取扱とりあつかいについて、箇条書かじょうがきにて記しるす。詳くわしくは条文じょうぶんを直接ちょくせつ参照さんしょうのこと。

株式会社かぶしきがいしゃは、剰余じょうよ金きんの配当はいとうについて異ことなる定さだめをした種類しゅるい株式かぶしきを発行はっこうすることができる（第だい108条じょう）。
公開こうかい会社かいしゃでない株式会社かぶしきがいしゃは、剰余じょうよ金きんの配当はいとうを受うける権利けんりについて、株主かぶぬしごとに異ことなる取扱とりあつかいを行おこなう旨むねを定款ていかんで定さだめることができる（第だい109条じょう）。
資本しほん金きんの額がく及および準備じゅんび金きんの額がく(第だい445条じょう)。
剰余じょうよ金きんの算出さんしゅつ方法ほうほう（第だい446条じょう）。
資本しほん剰余じょうよ金きんの額がくを減少げんしょうして、資本しほん金きんの額がくを増加ぞうかすることができる（第だい450条じょう、会社かいしゃ計算けいさん規則きそく第だい48条じょう）。
剰余じょうよ金きんの額がくを減少げんしょうして、準備じゅんび金きんの額がくを増加ぞうかすることができる（第だい451条じょう）。
その他たの処分しょぶん（剰余じょうよ金きんの処分しょぶん）につき、第だい452条じょう。
剰余じょうよ金きんの配当はいとう（従来じゅうらいの利益りえき配当はいとう）に関かんする手続てつづきにつき、第だい453条じょうから第だい465条じょう。
株式会社かぶしきがいしゃは、剰余じょうよ金きんの配当はいとうをしようとするときは、その都度つど、株主かぶぬし総会そうかい決議けつぎによって、配当はいとう財産ざいさんの種類しゅるい及および帳簿ちょうぼ価額かがくの総額そうがく等とうを定さだめなければならず、当該とうがい株式会社かぶしきがいしゃの株式かぶしき、社債しゃさい、新株しんかぶ予約よやく権けんは配当はいとう財産ざいさんとすることが出来できない(第だい454条じょう)。
配当はいとう等とうの制限せいげん(第だい461条じょう)。

種類しゅるい[編集へんしゅう]

資本しほん剰余じょうよ金きん: 新株しんかぶ発行はっこう、資本しほんの修正しゅうせい等とうの資本しほん取引とりひきから生しょうじた剰余じょうよ金きん。

資本しほん準備じゅんび金きん
その他た資本しほん剰余じょうよ金きん
- 資本しほん金きん及および資本しほん準備じゅんび金きん減少げんしょう差益さえき
- 自己じこ株式かぶしき処分しょぶん差益さえき　など

利益りえき剰余じょうよ金きん: 損益そんえき取引とりひきから生しょうじた剰余じょうよ金きんで利益りえきの留保りゅうほ額がく。

利益りえき準備じゅんび金きん
その他た利益りえき剰余じょうよ金きん
- 任意にんい積立つみたて金きん（別途べっと積立つみたて金きん、配当はいとう平均へいきん積立つみたて金きん、設備せつび拡張かくちょう積立つみたて金きんなど）
- 繰越くりこし利益りえき剰余じょうよ金きん^[2]

歴史れきし[編集へんしゅう]

2005年ねん (平成へいせい17年ねん) 改正かいせい前まえの商法しょうほうにおいて、剰余じょうよ金きんとは、株式会社かぶしきがいしゃで、貸借たいしゃく対照たいしょう表ひょう貸方かしかた「資本しほんの部ぶ」を構成こうせいする区分くぶんの一ひとつであり、資本しほんの部ぶは資本しほん金きん、資本しほん剰余じょうよ金きん、利益りえき剰余じょうよ金きんに区分くぶんされていた (商法しょうほう施行しこう規則きそく旧きゅう第だい88条じょう)。会社かいしゃ法ほうにおいては、改正かいせい前ぜん商法しょうほうの配当はいとう可能かのう利益りえき、利益りえき配当はいとうに代かわる概念がいねんとして分配ぶんぱい可能かのう額がく、剰余じょうよ金きんの配当はいとうという用語ようごが採用さいようされたため、剰余じょうよ金きんという用語ようごが会社かいしゃの財務ざいむ政策せいさくを論ろんじる上うえで一層いっそう重要じゅうような概念がいねんとなった。

財政ざいせい法ほう[編集へんしゅう]

財政ざいせい上じょう、一いち会計かいけい年度ねんどにおける収納しゅうのう済ずみ歳入さいにゅう額がくから支出ししゅつ済ずみ歳出さいしゅつ額がくを差さし引ひいた残額ざんがくで（歳計さいけい剰余じょうよ金きん）、翌よく年度ねんどの歳入さいにゅうに繰入くりいれとなる（財政ざいせい法ほう第だい41条じょう、地方ちほう自治じち法ほう第だい233条じょうの2）。但ただし、地方自治体ちほうじちたいの財政ざいせいにおいては、条例じょうれいや議会ぎかいの議決ぎけつにより、剰余じょうよ金きんの全部ぜんぶ又または一部いちぶを翌よく年度ねんどに繰くり越こさないで基金ききんに編入へんにゅうすることができる。

また、歳計さいけい剰余じょうよ金きんから歳出さいしゅつ繰越くりこし財源ざいげん所要しょよう額がくと税ぜいの増収ぞうしゅうによる地方ちほう交付こうふ税ぜい総額そうがくの増加ぞうか額がくを差さし引ひいたもので（純じゅん剰余じょうよ金きん）、その半分はんぶん以上いじょうを翌翌よくよく年度ねんどまでに、国くにの財政ざいせいにおいては公債こうさい・借入金かりいれきんの償却しょうきゃくの財源ざいげんに、地方自治体ちほうじちたいの財政ざいせいにおいては、積つみ立たて、又または償還しょうかん期限きげんを繰くり上あげて行おこなう地方ちほう債さいの償還しょうかんの財源ざいげんに充あてなければならない（財政ざいせい法ほう第だい6条じょう、地方ちほう財政ざいせい法ほう第だい7条じょう）。