加藤かとう明あきら英えい

凡例はんれい 加藤かとう明あきら英えい
時代じだい	江戸えど時代じだい前期ぜんき - 中期ちゅうき
生誕せいたん	承うけたまわ応おう元年がんねん7月がつ29日にち（1652年ねん9月1日にち）
死没しぼつ	正徳まさのり2年ねん1月がつ2日にち（1712年ねん2月がつ8日にち）
改名かいめい	孫太郎まごたろう（幼名ようみょう）→明あきら英えい
別名べつめい	明朝みょうちょう
戒名かいみょう	硯すずり光こう院いん殿どの釋しゃく宗はじめ珪
墓所はかしょ	京都きょうと府ふ京都きょうと市し東山ひがしやま区く五条ごじょう坂ざかの大谷おおや墓地ぼち
官位かんい	従したがえ五ご位い下した、佐渡さわたり守もり、越中えっちゅう守もり
幕府ばくふ	江戸えど幕府ばくふ奏者そうしゃ番ばん、寺社じしゃ奉行ぶぎょう、若年寄わかどしより
主君しゅくん	徳川とくがわ綱吉つなよし→家宣いえのぶ
藩はん	近江おうみ水口みずぐち藩はん主おも→下野げや壬生みぶ藩はん主あるじ
氏族しぞく	加藤かとう氏し
父母ちちはは	父ちち：加藤かとう明あきら友とも
兄弟きょうだい	明あきら英えい、溝口みぞぐち政まさし親おや、明治めいじ
妻つま	正室せいしつ：本多ほんだ康長やすながの娘むすめ
子こ	長女ちょうじょ（木下きのした俊しゅん量りょう正室せいしつ）、次女じじょ（三宅みやけ康徳やすのり正室せいしつ）、三さん女じょ（本多ほんだ忠ただし統みつる婚約こんやく者しゃ）、四よん女じょ 養子ようし：明治めいじ、嘉よしみ矩のり

加藤かとう 明あきら英えい（かとう あきひで）は、近江おうみ水口みずぐち藩はんの第だい2代だい藩主はんしゅ、下野げや壬生みぶ藩はんの初代しょだい藩主はんしゅ。水口みずぐち藩はん加藤かとう家か4代だい。

生涯しょうがい

水口みずぐち時代ときよ

承うけたまわ応おう元年がんねん（1652年ねん）7月がつ29日にち、水口みずぐち藩はんの初代しょだい藩主はんしゅ加藤かとう明あきら友ともの長男ちょうなんとして生うまれる。寛文ひろふみ5年ねん（1665年ねん）11月7日にち、第だい4代だい将軍しょうぐん徳川とくがわ家綱いえつなに拝謁はいえつする。貞享ていきょう元年がんねん（1684年ねん）、家督かとくを継つぎ、翌年よくねん12月がつ28日にちに叙任じょにんされる。水口みずぐち藩はんでは善政ぜんせいを敷しいていたと言いわれている。元禄げんろく2年ねん（1689年ねん）8月がつに奏者そうしゃ番ばんと寺社じしゃ奉行ぶぎょうを兼任けんにんという形かたちで任にんじられ、5000石せきを加増かぞうされて2万まん5000石せきの大名だいみょうとなる。元禄げんろく3年ねん（1690年ねん）10月がつ21日にちには若年寄わかどしよりとなり、元禄げんろく8年ねん（1695年ねん）には下野げや壬生かせいに移うつり封ふうされた。

壬生みぶ時代ときよ

水口みずぐち藩はん時代じだいは文武両道ぶんぶりょうどうの名君めいくんと呼よばれていた明あきら英えいは、壬生みぶに移うつり封ふう以降いこう、年貢ねんぐ増徴ぞうちょうを特とくに厳きびしくするなど、緊縮きんしゅくした藩政はんせいを敷しいた。このため「七なな色しょくの掛物かけもの」と称しょうされた百姓ひゃくしょう一揆いっきが発生はっせいした。正徳しょうとく元年がんねん（1711年ねん）12月12日にち、若年寄わかどしよりを辞任じにんし、翌年よくねん1月がつ2日にちに死去しきょした。享年きょうねん61。最初さいしょに後継こうけいとしていた、弟おとうとで養子ようしの明治めいじは兄あにより先さきに死しんでいたため、甥おいにあたる明治めいじの長男ちょうなんの嘉よしみ矩のりが跡あとを継ついだ。

逸話いつわ

5代だい将軍しょうぐん徳川とくがわ綱吉つなよしに実子じっしがなかったため、幕府ばくふは後継こうけい将軍しょうぐんについて長ながく議論ぎろんしてきた。宝永ほうえい元年がんねん（1704年ねん）12月5日にち、後継こうけいは綱吉つなよしの甥おいに当あたる甲府こうふ藩はん主しゅ徳川とくがわ綱つな豊ゆたか（後ごの家宣いえのぶ）に正式せいしき内定ないていした。その前日ぜんじつ4日にち、江戸城えどじょうより綱つな豊ゆたかの下したに「明日あした、登城とじょうすべし」との密ひそかな使者ししゃが遣つかわされた。内々うちうちに「明日あした、公式こうしき発表はっぴょうすることになった」という連絡れんらくである。つまりこの時点じてんでは、たとえ幕まく閣かくの多おおくの人間にんげんが関与かんよしていようが噂うわさしていようが、まだ公式こうしきになっていない幕府ばくふの機密きみつ事項じこう、という扱あつかいである。ところがその4日にちの夜よる、明あきら英えいから綱つな豊ゆたかの下したに、綱つな豊ゆたかが正式せいしきに後継こうけい者しゃとなれば住すまうことになる江戸城えどじょう西にしの丸まるの絵図えず面めんと大だい鯛たい2匹ひきとが、あくまで私的してきに送おくられてきた。

当時とうじの明あきら英えいは若年寄わかどしよりとして幕政ばくせいに参画さんかくし、綱吉つなよしの覚おぼえもめでたく、重要じゅうよう事項じこうを容易よういに知しり得える立場たちばにあった。もしかしたら決定けっていにすら何なんらかの関与かんよがあったかも知しれない。また、江戸城えどじょう西にしの丸まるの絵図えず面めんは、明日あした以降いこうにそこに住すまうことになるであろう綱つな豊ゆたか家中かちゅうへの心遣こころづかいであったかも知しれないし、「もう内々うちうちには決きまっているのだから、絵図えず面めんだけ送おくるのも…」というつもりの鯛たいであったかも知しれない。しかし綱つな豊ゆたかはこれを“次期じき将軍しょうぐんたる自分じぶんへのおもねり”、そのための贈賄ぞうわいと受うけ止とめた。また、気軽きがるに江戸城えどじょう内ないの図面ずめんを渡わたすのは重大じゅうだいな軍事ぐんじ機密きみつ漏洩ろうえいである。さらにいまだ公おおやけではない幕府ばくふの機密きみつ（将軍しょうぐん後継こうけい人事じんじ）を、たとえ私的してきな連絡れんらくや事務じむレベルの仕事しごとであるにしても、職務しょくむ上じょう知しりえたからといって使用しようして良よいものではない。

ともあれ、この一いち件けんにより家宣いえのぶは明あきら英えいを遠とおざけることとし、遠とおざけられた明あきら英えい自身じしんも、己おのれの軽率けいそつさを嘆なげいたと伝つたわっている。

以降いこう伝つたわるところでは、上記じょうきの事件じけんを理由りゆうに、自みずからの栄進えいしんに望のぞみがなくなった、と嘆なげくあまりに以降いこう政道せいどうを誤あやまるようになり、発狂はっきょうし死去しきょしたなどといわれている。実弟じっていの溝口みぞぐち政まさし親おやも暗愚あんぐで酒乱しゅらんなどとして改易かいえきされており、祖父そふ明成めいせいもまた暗愚あんぐや暴虐ぼうぎゃくという伝承でんしょうの残のこる人物じんぶつ、という家系かけいではある。

系譜けいふ

父母ちちはは

• 加藤かとう明あきら友とも（父ちち）

正室せいしつ

• 本多ほんだ康長やすながの娘むすめ

子女しじょ

• 木下きのした俊しゅん量りょう正室せいしつ（長女ちょうじょ）
• 三宅みやけ康徳やすのり正室せいしつ（次女じじょ）
• 本多ほんだ忠ただし統みつる婚約こんやく者しゃ（三さん女じょ）
• （四よん女じょ）

養子ようし

• 加藤かとう明治あきはる ー 実弟じってい
• 加藤かとう嘉よしみ矩のり ー 明治めいじの長男ちょうなん

先代せんだい 加藤かとう明あきら友とも

加藤かとう氏し歴代れきだい当主とうしゅ 1684年ねん - 1712年ねん

次代じだい 加藤かとう嘉よしみ矩のり