北洋ほくよう材ざい

北洋ほくよう材ざい（ほくようざい）とは、ロシアのシベリア地方ちほうで産出さんしゅつされ輸出ゆしゅつされる木材もくざいのこと。2000年代ねんだいからは経済けいざい発展はってんがめざましい中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこくへの輸出ゆしゅつが急増きゅうぞう。材ざい価かが上昇じょうしょうする傾向けいこうにある。長ながらく日本にっぽんの木材もくざい需要じゅようを支ささえてきた存在そんざいだが、2010年ねん以降いこうは日本にっぽんへの輸出ゆしゅつは激減げきげんしている。

概要がいよう

語源ごげんは、日本にっぽんにおいて南洋なんよう材ざいと対比たいひする意味いみで用もちいられたことから。アカマツ、カラマツ、エゾマツなどの針葉樹しんようじゅからなる。30cm程度ていどの小径しょうけい木きが主体しゅたいで、日本にっぽんでは製材せいざいや合板ごうはん、製紙せいしの原材料げんざいりょうに用もちいられる。

日本にっぽんへの輸入ゆにゅう

1920年代ねんだいからソビエト連邦れんぽう産さん木材もくざいの日本にっぽんへの輸入ゆにゅうが始はじまった。 1927年ねん（昭和しょうわ2年ねん）には、日本にっぽんの林業りんぎょうシンジケートがウラジオストク管区かんく内ないで110万まんヘクタールの森林しんりん利権りけんを獲得かくとくしている。その後ご、第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん時ときに輸出ゆしゅつが中断ちゅうだん。1954年ねん（昭和しょうわ29年ねん）に輸入ゆにゅうが再開さいかいし現在げんざいに至いたる。

北洋ほくよう材ざいの取引とりひき量りょうや価格かかくは、日本にっぽんとソビエト連邦れんぽうの経済けいざい状況じょうきょうや思惑おもわくにより左右さゆうされた。1970年代ねんだいの日本にっぽんの住宅じゅうたくブームで北洋ほくよう材ざいの取扱とりあつかい量りょうが26万まん立方りっぽうメートルと順調じゅんちょうに拡大かくだいする中なか、1973年ねん（昭和しょうわ48年ねん）末まつにソビエト連邦れんぽう側がわは日本にっぽんに余力よりょくがあるものと見込みこんで輸出ゆしゅつ価格かかくを引ひき上あげた。しかしその直後ちょくごに、オイルショックなどの影響えいきょうにより日本にっぽん国内こくないの木材もくざい価格かかくが暴落ぼうらく。1974年ねん（昭和しょうわ49年ねん）には日本にっぽん国内こくないに木材もくざいがだぶついたため、日本にっぽんの商社しょうしゃは北洋ほくよう材ざいの引びき取とりを拒否きょひ。一方いっぽうで木材もくざいの伐採ばっさい現場げんばでは、流通りゅうつうの停滞ていたいにお構かまいなく経済けいざい計画けいかく通どおりの量りょうの木材もくざいが生産せいさんされたため、ナホトカ港こうなどの木材もくざいバースには大量たいりょうの木材もくざいが積つみ上あげられた。また、当時とうじの貿易ぼうえきはバーター取引とりひきであったため、ソビエト連邦れんぽう側がわも予定よていしていた物資ぶっしが手てに入はいらないという事態じたいになった。また、1980年代ねんだいの日本にっぽんの木材もくざい需要じゅようが伸のびたバブル景気けいき時ときは、ソビエト連邦れんぽうの解体かいたい期きにあたり生産せいさんが低迷ていめいした。

1990年代ねんだい以降いこうは400万まんから600万まん立方りっぽうメートルという状況じょうきょう。2000年代ねんだいからは、丸太まるた状態じょうたいの輸出ゆしゅつから合板ごうはんなどへの加工かこう品ひんの輸出ゆしゅつも増加ぞうかしており、輸入ゆにゅう量りょうの10%程度ていどを占しめるようになってきた。ロシア政府せいふは木材もくざい加工かこう業ぎょうの振興しんこうを支援しえんしており、2007年ねんには6.5%であった丸太まるたの輸出ゆしゅつ関税かんぜいを20%へ、さらに2009年ねん1月がつまでには80%への引ひき上あげを発表はっぴょう（その後ご、2021年ねんに延長えんちょうされた）。丸太まるたの輸出ゆしゅつから付加ふか価値かちをつけた製品せいひんへの輸出ゆしゅつへ切きり替かえようとしている。

一方いっぽう、2000年代ねんだいに入はいると中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこくや大韓民国だいかんみんこくなど近隣きんりん諸国しょこくの木材もくざい需要じゅようが増加ぞうかしていたため、北洋ほくよう材ざいの価格かかくは上昇じょうしょう傾向けいこうにあった。2000年代ねんだい末すえにかけて輸出ゆしゅつ関税かんぜい措置そちの強化きょうかがとどめを刺さす形かたちで北洋ほくよう材ざいの日本にっぽんへの輸入ゆにゅう量りょうは激減げきげん。このため北洋ほくよう材ざいを多おおく取とり扱あつかってきた富山とやま県けんなどでは木材もくざい取扱とりあつかい業ぎょうの廃業はいぎょうや事業じぎょう変更へんこうを強しいられる業者ぎょうしゃが多おおく見みられた。

2019年ねん（令れい和わ元年がんねん）段階だんかいのロシア側がわの関税かんぜいは、北洋ほくようカラマツ、エゾマツ、トドマツの丸太まるたで40%。ただし製材せいざいやチップなど木材もくざい加工かこう品ひんを輸入ゆにゅうする大だい規模きぼ業者ぎょうしゃには比率ひりつに応おうじて6.5%の減免げんめん措置そちがある。2021年ねん（令れい和わ3年ねん）には予定よてい通どおり80%まで引ひき上あげられた。

2022年ねん（令れい和わ4年ねん）4月がつ12日にち、同年どうねん2月がつに発生はっせいしたロシアのウクライナ侵攻しんこうを受うけ、日本にっぽんはロシアからの木材もくざい（丸太まるた、製材せいざい、チップ、合板ごうはん）等とうの輸入ゆにゅうを経済けいざい産業さんぎょう大臣だいじんの承認しょうにん制せいとした。2023年ねん（令れい和わ5年ねん）、日本にっぽんの丸太まるた輸入ゆにゅう量りょうは1953年ねん以来いらい、70年ねんぶりのゼロとなった。

将来しょうらい性せい

長年ながねん、原生げんせい林りんの切きりやすい場所ばしょから切きり、植林しょくりんを行おこなわないという収奪しゅうだつ的てきな森林しんりん経営けいえいを繰くり返かえしてきたため、特とくに沿海州えんかいしゅう地方ちほうを中心ちゅうしんに森林しんりん資源しげんの減少げんしょうが著いちじるしい。現在げんざいでは、適地てきちを求もとめて内陸ないりく部ぶへ伐採ばっさい地ちが拡大かくだいしている状況じょうきょうにある。シベリア地方ちほうのタイガでは、森林しんりんの形成けいせいに非常ひじょうに長ながい時間じかんを要ようするため、将来しょうらい的てきには資源しげんの枯渇こかつが懸念けねんされ、伐採ばっさい規制きせいの強化きょうかが実施じっしされている（近年きんねんの北洋ほくよう材ざいの供給きょうきゅう減少げんしょうはこれが原因げんいん）。

伐採ばっさいの現場げんば

伐採ばっさいの現場げんばは、僻地へきちかつ酷寒こっかんの厳きびしい環境かんきょうにある。1967年ねん、旧きゅうソ連それんは数すう万まん人にん規模きぼの外国がいこく人じん労働ろうどう者しゃ（北朝鮮きたちょうせん労働ろうどう者しゃ）を受うけ入いれ、森林しんりん伐採ばっさいの一部いちぶに従事じゅうじさせ始はじめた。ソ連それん崩壊ほうかい後ごも外国がいこく人じん労働ろうどう者しゃの受うけ入いれは続つづいたが、2017年ねん、国連こくれん安全あんぜん保障ほしょう理事りじ会かいが北朝鮮きたちょうせんによる核かく実験じっけんとミサイル発射はっしゃ実験じっけんに対たいして制裁せいさい決議けつぎを可決かけつすると、ロシア当局とうきょくは全すべての北朝鮮きたちょうせん労働ろうどう者しゃを帰国きこくさせる方針ほうしんを打うち出だした。

関連かんれん項目こうもく

• アルカイム (木材もくざい販売はんばい業ぎょう)
• 沿海州えんかいしゅう
• ボストチヌイ港こう - 北洋ほくよう材ざいの積つみ出だし基地きちとして日にちソ共同きょうどうで開発かいはつした港みなと