名誉めいよ学位がくい

名誉めいよ学位がくい（めいよがくい、英えい：Honorary degree）とは、大学だいがく等ひとし、学術がくじゅつ機関きかんから特定とくていの分野ぶんやで功績こうせきを挙あげた個人こじんに対たいして、その功績こうせきを称となえ贈呈ぞうていされる称号しょうごう。学術がくじゅつ称号しょうごうのうち学術がくじゅつ能力のうりょくの証明しょうめいではなく社会しゃかい的てき功績こうせきに対たいする顕彰けんしょうを目的もくてきとした名誉めいよ学術がくじゅつ称号しょうごうの一種いっしゅである。学位がくい名称めいしょうに名誉めいよを冠かんしたもので、名誉めいよ博士はかせが代表だいひょう的てきであるが、名誉めいよ修士しゅうし、名誉めいよ学士がくしなど学位がくい制度せいどに準じゅんじた称号しょうごうが設定せっていされている大学だいがくもある。他方たほうで、名誉めいよ教授きょうじゅは学校がっこう教育きょういく法ほう109条じょうに規定きていされている称号しょうごうであり、名誉めいよ学位がくいとはその点てんで異ことなる。

名誉めいよ学位がくいと捏造ねつぞう称号しょうごうの問題もんだい

学位がくいは大学だいがくの教員きょういんないし一定いっていの社会しゃかい的てき地位ちいにつく上うえでの条件じょうけんとなる場合ばあいもあり、その表記ひょうき方法ほうほうは厳格げんかくであり、学位がくいの詐称さしょうは学歴がくれき詐称さしょう即すなわち刑法けいほう246条じょう1項こう、2項こうの詐欺さぎ罪ざいに及および軽犯罪法けいはんざいほう第だい1条じょう第だい15号ごうの官かん公職こうしょく、位階いかい勲等くんとう、学位がくいその他た法令ほうれいにより定さだめられた称号しょうごうの詐称さしょうに該当がいとうし罰則ばっそくの対象たいしょうとなる。学位がくいは法的ほうてきに保障ほしょうされた権威けんいある称号しょうごうであるものの、その授受じゅじゅは国家こっかなど公的こうてきな機関きかんを離はなれ、大学だいがくの裁量さいりょうで行おこなわれる。詐称さしょうも発生はっせいしやすいので、自みずからの履歴りれきにおいて学位がくいの取得しゅとくを申告しんこくする場合ばあい、学位がくい名称めいしょう、専攻せんこう分野ぶんや、授与じゅよ機関きかん名めい、学位がくい番号ばんごうを表記ひょうきすることが求もとめられる。

大学だいがくの規定きていにより定さだめられた名誉めいよ学位がくいは、被ひ授与じゅよ者しゃの功績こうせきを称たたえるべく、その規定きていに基もとづく功績こうせき調査ちょうさと認定にんてい審議しんぎを経へて授与じゅよされる。日本人にっぽんじんが国外こくがい大学だいがくから授与じゅよされる場合ばあいもあれば、国内こくない大学だいがくが外国がいこく人じんへ授与じゅよする場合ばあいもある。法ほうに準じゅんじて授与じゅよ規定きていを大学だいがく毎ごとに定さだめることを求もとめた名誉めいよ学位がくい制度せいどを備そなえた国くにもある。学術がくじゅつ的てきな意味いみでの学位がくい制度せいどそれ自体じたいも各国かっこく国内こくない法ほうによるもので、学術がくじゅつ的てきな意味いみでの学位がくいの場合ばあいでさえ、国際こくさい基準きじゅんがあるわけではない。その意味いみで、名誉めいよ学位がくいに法的ほうてきな根拠こんきょがないという解説かいせつは一般いっぱん性せいを欠かく。誰だれに名誉めいよ学位がくいを授与じゅよするかは、授与じゅよ機関きかんの評価ひょうかにも結むすび付つくものだけにその審査しんさは慎重しんちょうである。特とくに学術がくじゅつ上じょうの博士はかせ学位がくいを授与じゅよする学位がくい授与じゅよ機関きかんの場合ばあい、名誉めいよ学位がくいの被ひ授与じゅよ者しゃの推薦すいせんは、しばしば学術がくじゅつ上じょうの顕著けんちょな業績ぎょうせきに基もとづく功績こうせきを前提ぜんていになしえるものである。そのような機関きかんの場合ばあい、名誉めいよ学位がくいの授与じゅよ数すうは極きわめて限定げんていされており、その授与じゅよ数すうそれ自体じたいもまた、スクリーニングの厳きびしさを反映はんえいしたものである。名誉めいよ学位がくいの授与じゅよに際さいして認みとめられた功績こうせきが学術がくじゅつ上じょうの業績ぎょうせきに基もとづくと言いえるか否ひかは、個別こべつケースにおいてはじめて検討けんとうしえる。

名誉めいよ学位がくいの授与じゅよに際さいして認みとめられた功績こうせきは次つぎのように具体ぐたい的てきに確認かくにんすることができる。まず、通常つうじょう、授与じゅよ機関きかんがホームページや広報こうほう誌し・機関きかん誌し、報道ほうどう発表はっぴょう等ひとしを通つうじて授受じゅじゅ規定きてい及および授与じゅよ事実じじつを明あきらかにしている。そして、その内容ないようは後日ごじつでも授与じゅよ機関きかんの広報こうほう担当たんとう部署ぶしょを通つうじて照会しょうかいしえる。学術がくじゅつ的てきな学位がくいと社会しゃかい的てき功績こうせきとしての栄誉えいよとの相違そういを区別くべつする意味いみでも、名誉めいよ学位がくいであることの正確せいかくな表記ひょうきが求もとめられる。正確せいかくな表記ひょうきをする限かぎり、その功績こうせき、栄誉えいよは明瞭めいりょうである。

現実げんじつの社会しゃかいでは、学位がくいに類似るいじした称号しょうごうであっても名誉めいよ博士はかせなど学位がくい名称めいしょうに何なんらかの名称めいしょうを付記ふきする場合ばあい、学位がくいとは別べつの称号しょうごうとして認識にんしきされることから、学位がくいに因ちなんだ名称めいしょうを持もつ称号しょうごうが多おおく創つくられ授受じゅじゅされてきた。正規せいきの学位がくいを授与じゅよする大学だいがくなどでも学位がくいに名誉めいよと冠かんした名誉めいよ学位がくいを創設そうせつし、顕彰けんしょうを趣旨しゅしとした称号しょうごうとしてこれを定さだめおり、政府せいふや地方ちほう公共こうきょう団体だんたいまた大学だいがくが主催しゅさいするような市民しみんカレッジや民間みんかんの各種かくしゅ講座こうざにおいても講座こうざ修了しゅうりょうの記念きねんとして市民しみん学士がくしなどの称号しょうごうを授与じゅよする例れいは多おおい。こうした称号しょうごうも授与じゅよ機関きかん名めいと称号しょうごう名めいをともに名乗なのり、少すくなくとも学位がくいとは別個べっこの称号しょうごうであると理解りかいできる限かぎりは呼称こしょうすることに問題もんだいはない。要ようするに、学位がくいの詐称さしょうは正式せいしきな学位がくい名称めいしょうを名乗なのり学位がくいを取得しゅとくしたと錯覚さっかく、誤解ごかいさせることにより発生はっせいするものであり、僅わずかな差異さいであっても学位がくいと異ことなる称号しょうごうを名乗なのること自体じたい、罪つみにはならない。実際じっさいに詐称さしょうとなるか否ひかの基準きじゅんはきわめて緩ゆるやかなものといえる。

こうした緩ゆるやかな慣行かんこうの隙間すきまを縫ぬうように、学位がくい及および類似るいじした称号しょうごうを製造せいぞうし、かつそれを金品きんぴんと引ひき換かえに授受じゅじゅしたり斡旋あっせんする業者ぎょうしゃも存在そんざいする。そのため、名誉めいよ学位がくいに因ちなんだ紛争ふんそうは後ごをたたない。特とくに国外こくがいには、学位がくいを審査しんさ・授与じゅよするに足たらないディプロマミル・ディグリーミルという機関きかんが大学だいがくを称しょうして、形式けいしき的てきな審査しんさと料金りょうきんを支払しはらうことで、正式せいしきな博士はかせの学位がくいであるかのように学位がくいを授与じゅよする（学位がくい記きを交付こうふする）組織そしきも存在そんざいする。法的ほうてき規制きせいのない名誉めいよ学位がくいや或あるいは学位がくいに特許とっきょと付記ふきして学位がくいや名誉めいよ学位がくいとも異ことなる独どく自称じしょう号ごうを製造せいぞう販売はんばいする事業じぎょうも存在そんざいしている。こうした称号しょうごうを巡めぐる紛争ふんそうが時折ときおり、犯罪はんざいに抵触ていしょくする事態じたいも時折ときおり見みられるが、その場合ばあいに称号しょうごうの販売はんばいや購入こうにゅうした者ものがそれを称しょうすることが直接的ちょくせつてきな原因げんいんとなることは少すくなく、その他たの事由じゆうにより取とり締しまられることが多おおい。資格しかく商法しょうほう同様どうよう、爵位しゃくいや学位がくいその他た法令ほうれいにより国くにの定さだめる資格しかくや称号しょうごうを除のぞいて民間みんかんの称号しょうごうを取とり締しまる法律ほうりつがない故ゆえに発生はっせいし得える問題もんだいといえる。

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