座主ざす

座主ざす（ざす）

1. 仏教ぶっきょう用語ようご - 住職じゅうしょく最さい上位じょういの別称べっしょう。一般いっぱんには天台宗てんだいしゅうを代表だいひょうする僧侶そうりょへの敬称けいしょう。
2. 法制ほうせい史し用語ようご - 中国ちゅうごくの科挙かきょにおける試験しけん官職かんしょく

座主ざす (仏教ぶっきょう用語ようご)

仏教ぶっきょう用語ようごにおける座主ざすとは、一般いっぱんに日本にっぽんの天台宗てんだいしゅうのトップ、天台座主てんだいざしゅ（法主ほっしゅ）の事ことを指さす。

本来ほんらいは仏教ぶっきょう寺院じいんにおいて衆しゅう僧そうを束たばねられる程ほどの力量りきりょうを持もった僧そうや住持じゅうじの事ことを指さすが、後のちに延暦寺えんりゃくじにおいてトップの僧そうを座主ざすと呼よぶようになり、天台宗てんだいしゅう全体ぜんたいを統括とうかつするため、朝廷ちょうていの承認しょうにんが必要ひつようとなった。平安へいあん時代じだいには天台座主てんだいざしゅの地位ちいを巡めぐって延暦寺えんりゃくじと園城寺おんじょうじの間あいだで激はげしい抗こう争そうが繰くり広ひろげられた。鎌倉かまくら時代ときよ以降いこうは主しゅとして皇族こうぞくが就任しゅうにんしているようである。明治めいじの廃仏毀釈はいぶつきしゃく以降いこうは朝廷ちょうていの承認しょうにんがなくなり、天台宗てんだいしゅう管長かんちょうの敬称けいしょうとして使用しようされるようになった。

また、延暦寺えんりゃくじ以外いがいに金剛峯寺こんごうぶじ・醍醐寺だいごじ・法性寺ほっしょうじ・元もと慶寺けいじ・彦山ひこさん霊仙寺りょうせんじなどの寺院じいんでも使用しようされている。

座主ざす (法制ほうせい史し用語ようご)

座主ざすは、中国ちゅうごくの科挙かきょにおける試験しけん官かんを指さす言葉ことばである。科挙かきょ受験じゅけん後ご、合格ごうかく者しゃは選抜せんばつしてくれたことへの感謝かんしゃの意いを込こめて担当たんとう試験しけん官かんを訪問ほうもんし、そこで師弟していの契ちぎりを結むすぶ。その時とき、試験しけん官かんをその場ばの主おもと言いう意味いみで「座主ざす」と呼よんだ。

科挙かきょ及第きゅうだい者しゃと担当たんとう試験しけん官かんとの間あいだの私的してきな関係かんけいという面めんでは、問題もんだいのないものと見みえるが、これが機縁きえんとなって、科挙かきょ官僚かんりょう中ちゅうに党派とうはが生うまれ、それが党争とうそうに発展はってんする温床おんしょうとなった。そのため北きた宋そう代だいにその弊害へいがいを除去じょきょすることを目的もくてきとして、殿しんがり試ためしの制度せいどが生うまれた。つまり、最終さいしゅう的てきな試験しけん官かんが皇帝こうていということになれば、座主ざすは皇帝こうていであるから、官僚かんりょう中ちゅうの派閥はばつとは無関係むかんけいに、皇帝こうていと個々ここの科挙かきょ官僚かんりょうとの間あいだに師弟していの関係かんけいができるという論理ろんりである。

参考さんこう文献ぶんけん

• 宮崎みやざき市し定じょう　『科挙かきょ』　中公新書ちゅうこうしんしょ、新版しんぱん：中公ちゅうこう文庫ぶんこ。