建たて康やすし実録じつろく

『建たて康やすし実録じつろく』（けんこうじつろく）は、中国ちゅうごく魏ぎ晋すすむ南北なんぼく朝あさ時代じだいに建たて康やすしに都とした6つの王朝おうちょう（いわゆる「六朝りくちょう」）の歴史れきしについて記述きじゅつした地方ちほう志こころざし。書名しょめいは六朝りくちょうの都との名前なまえが建たて康やすしであったことによる。作者さくしゃは唐とう代だい（『四庫全書総目提要』によれば粛宗時期じき）の許もと嵩かさ。許もと嵩かさについては伝つてが残のこっていないため、詳くわしい事績じせきや本書ほんしょの成立せいりつの経緯けいいは不明ふめいである。

概略がいりゃく

『旧きゅう唐とう書しょ』「経籍けいせき志こころざし」に「許もと嵩かさ建たて康やすし実録じつろく二に十じゅう巻かん」との記載きさいがある。現在げんざいでは紹興しょうこう18年ねん（1148年ねん）の完本かんぽんが残のこっている。

黄き武たけし元年がんねん（222年ねん）から至徳しとく元もと載の（756年ねん）までの約やく535年間ねんかんをおおむね年代ねんだい順じゅんに記述きじゅつしているが、体からだ例れいは紀伝きでん体たいとも編年体へんねんたいともいえない不ふ統一とういつなものである。事績じせきは基本きほん的てきには各かく時代じだいの正史せいしの記述きじゅつに拠よっているが、序文じょぶんに「正伝せいでんを質しつ（ただ）し、旁つくり（ひろ）く遺文いぶんを採とる」と自みずから語かたっている通とおり、正史せいしに記載きさいのない異聞いぶんや異説いせつを積極せっきょく的てきに取とり入いれている。しかし、情報じょうほう源げんが示しめされていない記述きじゅつも多おおく、必かならずしも額面がくめんどおりに信しんずることはできない。