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弱毒じゃくどくせいインフルエンザワクチン

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弱毒じゃくどくせいインフルエンザワクチン
フルミストを投与とうよするナース
ワクチン概要がいよう
病気びょうき インフルエンザ
種別しゅべつ 弱毒じゃくどくワクチン
臨床りんしょうデータ
販売はんばいめい FluMist, Fluenz[1]
胎児たいじ危険きけん分類ぶんるい
  • C
法的ほうてき規制きせい
投与とうよ経路けいろ 鼻腔びこうない
識別しきべつ
CAS番号ばんごう
 ×
ATCコード J07BB03 (WHO)
ChemSpider none ×
KEGG D12874
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弱毒じゃくどくせいインフルエンザワクチン(Live attenuated influenza vaccine, LAIV)とは鼻腔びこうない噴射ふんしゃするかたち接種せっしゅする弱毒じゃくどくウイルスかたちる、インフルエンザワクチンである。商品しょうひんめいフルミスト (FluMist)、フルエンズ(Fluenz)。

弱毒じゃくどくしたインフルエンザウイルスを直接ちょくせつ鼻腔びこうない噴霧ふんむすることで、インフルエンザ疑似ぎじ感染かんせん状態じょうたいをつくり免疫めんえき誘導ゆうどうする。また低温ていおん馴化じゅんか後述こうじゅつ)されており低温ていおんでなければ効果こうかてき増殖ぞうしょくできないため、鼻腔びこうない増殖ぞうしょく手間取てまどっているあいだ免疫めんえきされる。

米国べいこく予防よぼう接種せっしゅ諮問しもん委員いいんかい(ACIP)は、2016-2017ねん、2017-2018ねんのシーズンに無効むこうであるため、はなスプレーワクチンを使用しようしないよう勧告かんこくしたが、2018-2019ねんから使用しよう中止ちゅうし推奨すいしょうとした。しかし有効ゆうこうせいについてのデータはない[2]

効能こうのう[編集へんしゅう]

通常つうじょうインフルエンザウイルスは鼻腔びこうから侵入しんにゅうするので、その場所ばしょ直接ちょくせつ免疫めんえきをつける。鼻腔びこうないにおいて分泌ぶんぴつがたIgAを誘導ゆうどうすることで、インフルエンザウイルスの侵入しんにゅうそのものを阻害そがいできる。さらに全身ぜんしん粘膜ねんまく分泌ぶんぴつがたIgA抗体こうたい誘導ゆうどうし、防御ぼうぎょする[3]また、自然しぜん感染かんせんちかいため、CD8陽性ようせいT細胞さいぼう誘導ゆうどう[4]することにより、ウイルスかぶちがっていても、重症じゅうしょうふせ可能かのうせいがある。

特徴とくちょう[編集へんしゅう]

FluMist Quadrivalentのインフルエンザかぶは、

  1. 低温ていおん馴化じゅんか (CA: cold-adapted)
    摂氏せっし25効率こうりつてき複製ふくせいするウイルスかぶである(この温度おんどでは、野生やせいかぶウイルスの複製ふくせい制限せいげんされる)。
  2. 温度おんど感受性かんじゅせい (TS: temperature-sensitive)
    おおくの野生やせいかぶウイルスが効率こうりつてき複製ふくせいできる温度おんど(Bがたウイルスにおいては、摂氏せっし37、Aがたウイルスにおいては、39)ではこのウイルスの複製ふくせい制限せいげんける。
  3. 弱体じゃくたい (ATT: attenuated)
    ヒト-インフルエンザ感染かんせんモデルであるフェレットにおいて、古典こてんてきインフルエンザさま症状しょうじょう発症はっしょうさせない。

という処理しょりがなされている。

このウイルスかぶ臨床りんしょう試験しけんにおいて、ウイルスが先祖せんぞがえりして病原びょうげんせい回復かいふくすることかった。

低温ていおん馴化じゅんか[編集へんしゅう]

弱体じゃくたいウイルスを選別せんべつ培養ばいようする過程かてい徐々じょじょ温度おんど低下ていかさせ、摂氏せっし25効率こうりつてき増殖ぞうしょく出来できかぶ選別せんべつする。通常つうじょう低温ていおん馴化じゅんかする過程かていで、病原びょうげんせいはさらに低下ていかする。

さい集合しゅうごう[編集へんしゅう]

これらのウイルスは、マスターウイルス(MDV)と野生やせいかぶウイルスを低温ていおん状況じょうきょうひとつの細胞さいぼう同時どうじ感染かんせんさせることによって、各々おのおの特徴とくちょう融合ゆうごうさせるさい集合しゅうごうという手法しゅほう作成さくせいされている。特定とくてい病原びょうげんたい感染かんせんたまご(SPF)に、さい集合しゅうごうたいかぶ接種せっしゅし、認可にんかウイルス複製ふくせい目的もくてき培養ばいようする。

Aがたインフルエンザには、Arbor/6/60-H2N2[5]が、Bがたインフルエンザには、Arbor/1/66[6]というタイプのMDVが使用しようされている。

低温ていおん馴化じゅんか温度おんど感受性かんじゅせい、および弱体じゃくたい表現ひょうげんがたもとである6つの内部ないぶ遺伝子いでんし断片だんぺんは、MDVに由来ゆらいする。また、2つの表面ひょうめんとうタンパク質たんぱくしつ赤血球せっけっきゅう凝集ぎょうしゅうもと(HA)およびノイラミニダーゼ(NA)をコードする2つの遺伝子いでんし断片だんぺんは、野生やせいがたのインフルエンザウイルスに由来ゆらいする。 したがって、FluMist Quadrivalentにふくまれる4つのウイルスは、MDVの複製ふくせい特性とくせいおよび表現ひょうげんがた特性とくせい維持いじしつつ、2013-2014ねん流行りゅうこうした野生やせいかぶウイルスのHAおよびNAを表現ひょうげんしている。

TSおよびATTの表現ひょうげんがたについては、

  1. AがたのMDVは、3つのことなる内部ないぶ遺伝子いでんし断片だんぺんちゅうすくなくとも5つの遺伝いでん部位ぶいが、
  2. BがたのMDVは、2つのことなる内部ないぶ遺伝子いでんし断片だんぺんちゅうすくなくとも3つの遺伝いでん部位ぶいが、

特性とくせい関連かんれんしている。

そして両者りょうしゃにおいて、3つの遺伝子いでんし断片だんぺんちゅうの5つの部位ぶいがCA特性とくせい寄与きよしている。

かつワクチンとのちが[編集へんしゅう]

  • 局所きょくしょ免疫めんえきIgA誘導ゆうどうにより、発症はっしょう予防よぼう効果こうかたかい。
  • 細胞さいぼうせい免疫めんえき誘導ゆうどうすることにより、ウイルスかぶちがっていても、発症はっしょう軽症けいしょうさせる作用さようがある(交叉こうさ防御ぼうぎょ効果こうか)。
  • Aがたインフルエンザにたいする、5さい未満みまんにおける発症はっしょう予防よぼう効果こうかかぶ一致いっちで89.2%, かぶ不一致ふいっちで79.2%[7]驚異きょういてきである。(6かげつ〜7さいでは発症はっしょう予防よぼう効果こうかは83%[8]。)
  • ただし、かぶ一致いっちしていた場合ばあいでは、成人せいじんにおいては、通常つうじょうかつワクチンのほう予防よぼう効果こうかたかく、かぶ不一致ふいっち場合ばあいはフルミストのほう有効ゆうこうおもわれる。CDCは、6かげつ〜18さいまでの小児しょうににおいて、フルミストを推奨すいしょうしている[9]
  • 接種せっしゅ可能かのう年齢ねんれいは2さい〜49さいまで。
  • なまワクチンであるため、理論りろんじょう、インフルエンザさま症状しょうじょうねつせきなど)を発症はっしょうする可能かのうせいはある(この場合ばあいこうインフルエンザやく服用ふくようすれば、すみやかに治癒ちゆする)。ただし、接種せっしゅ適応てきおうない健常けんじょうじんで、接種せっしゅしたためにインフルエンザを発症はっしょうした報告ほうこくは1れいもない。また、同居どうきょする接種せっしゅ健常けんじょうじん老人ろうじんにん新生児しんせいじ含)にインフルエンザを発症はっしょうさせた報告ほうこくも1れいもない。
  • CD4がった免疫めんえき不全ふぜんものに、けいはなせいワクチンの接種せっしゅ禁忌きんきである。

有効ゆうこうせい勧告かんこく[編集へんしゅう]

米国べいこく予防よぼう接種せっしゅ諮問しもん委員いいんかい(ACIP)は、2016-2017ねん[10]、2017-2018ねんのインフルエンザシーズンに、これらはなスプレーのワクチンを使用しようしないよう推奨すいしょうしていたが、2018-2019ねんでは、ききめのなさそうだったH1N1が変更へんこうされたため使用しよう中止ちゅうし推奨すいしょうりやめた。しかし2シーズンのあいだ市場いちば出回でまわっていなかったため、有効ゆうこうせいかんするデータは存在そんざいしない[2]

禁忌きんき[編集へんしゅう]

  • 5さい未満みまん喘息ぜんそくのある場合ばあい
  • 成人せいじんで1ねん以内いない喘鳴ぜんめいみとめた場合ばあい
  • 妊娠にんしんちゅう授乳じゅにゅうちゅう問題もんだいなし)
  • こころ疾患しっかんはい疾患しっかん喘息ぜんそくかん疾患しっかん糖尿とうにょうびょう貧血ひんけつ神経しんけいけい疾患しっかん免疫めんえき不全ふぜんなどの慢性まんせい疾患しっかん場合ばあい
  • 造血ぞうけつみき細胞さいぼう移植いしょくなど、重度じゅうど免疫めんえき不全ふぜんほう接触せっしょくする場合ばあい
  • 小児しょうに思春期ししゅんき長期ちょうきアスピリン内服ないふくちゅう場合ばあい
  • 重度じゅうど卵白らんぱくアレルギー
  • インフルエンザワクチン接種せっしゅギラン・バレー症候群しょうこうぐんになった場合ばあい原則げんそく

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ Fluenz: EPAR - Summary for the public
  2. ^ a b ACIP: LAIV OK to Use During 2018-19 Flu Season”. ACIP (2018ねん2がつ26にち). 2018ねん4がつ10日とおか閲覧えつらん
  3. ^ けいはな粘膜ねんまく投与とうよがたインフルエンザワクチンの開発かいはつ 国立こくりつ感染かんせんしょう研究所けんきゅうじょ感染かんせん病理びょうり 長谷川はせがわ秀樹ひでき平成へいせい20ねん9がつ18にち (PDF)
  4. ^ “Annual vaccination against influenza virus hampers development of virus-specific CD8⁺ T cell immunity in children”. J. Virol. 85 (22): 11995–2000. (2011). doi:10.1128/JVI.05213-11. PMC 3209321. PMID 21880755. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3209321/. 
  5. ^ “The cold adapted and temperature sensitive influenza A/Ann Arbor/6/60 virus, the master donor virus for live attenuated influenza vaccines, has multiple defects in replication at the restrictive temperature”. Virology 380 (2): 304–11. (2008). doi:10.1016/j.virol.2008.07.027. PMID 18768193. 
  6. ^ “Multiple gene segments control the temperature sensitivity and attenuation phenotypes of ca B/Ann Arbor/1/66”. J. Virol. 79 (17): 11014–21. (2005). doi:10.1128/JVI.79.17.11014-11021.2005. PMC 1193632. PMID 16103152. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1193632/. 
  7. ^ HIGHLIGHTS OF PRESCRIBING INFORMATION.(FluMistの簡易かんいばん添付てんぷ文書ぶんしょまたは医薬品いやくひん情報じょうほう相当そうとうするもの) (PDF)
  8. ^ Strict meta-analysis raises questions about flu vaccine efficacy. - CIDRAP(The Center for Infectious Disease Research and Policy), University of Minnesota. (Oct 25, 2011)
  9. ^ U.S. panel recommends all kids get the flu shot. - CTV.ca(May 18, 2012)
  10. ^ ACIP votes down use of LAIV for 2016-2017 flu season”. CDC (2016ねん6がつ26にち). 2018ねん4がつ10日とおか閲覧えつらん

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]