征伐せいばつ

征伐せいばつ（せいばつ、conquest または subjugation）とは、反乱はんらんを起おこした勢力せいりょくを鎮圧ちんあつしたり、反はん社会しゃかい的てきな犯罪はんざい集団しゅうだん・賊ぞくなどを、武力ぶりょくで処罰しょばつ（懲罰ちょうばつ）したりすることをいう。

実際じっさいにはプロパガンダ（政治せいじ宣伝せんでん）として、公権力こうけんりょくを背景はいけいとし、政治せいじ的てきに敵対てきたいする勢力せいりょくに対たいして武力ぶりょく行使こうし（攻撃こうげき・侵攻しんこう・侵略しんりゃく）をしかけるときに使つかわれることが多おおい。対象たいしょうは敵国てきこくや異い民族みんぞくの場合ばあいもある。「征服せいふく」に比くらべて「政敵せいてき・及および政府せいふの敵てきを懲こらしめる」という意味合いみあいが強つよい。

「征討せいとう」（せいとう）・「討伐とうばつ」（とうばつ）も征伐せいばつとほぼ同義語どうぎごであり、罪つみある者ものや手向てむかう者ものを攻せめ討うつ意味いみで使つかわれ、歴史れきし用語ようごとしては上位じょうい者しゃ・正当せいとうな国家こっか権力けんりょくが反逆はんぎゃくした下位かい者しゃ・罪人ざいにんを攻せめ討うつという意味いみで使つかわれる。反対はんたい語ご的てきに使用しようされる用語ようごに「反乱はんらん」（はんらん）があり、政府せいふ周辺しゅうへんや政権せいけんをめぐる軍事ぐんじ反乱はんらんなどに使つかわれる。

「征伐せいばつ」・「征討せいとう」・「討伐とうばつ」と呼よばれている事件じけんの一部いちぶに対たいしては、差別さべつ用語ようごと見みなす立場たちばをとる識者しきしゃもいる。それに対たいし、当時とうじの意識いしきは、そのような後世こうせいにおける政策せいさく的てき意識いしきとは相違そういがあるので、歴史れきし学がく上じょうの見地けんちとは峻別しゅんべつされるべきという批判ひはんがある 。最近さいきんは使用しよう例れいが減へり、征伐せいばつに代かえて「平定へいてい」（へいてい）を用もちいる用語ようご例れいが増ふえている。

また、東洋とうようにおいては征伐せいばつには道徳どうとく的てき意味いみが込こめられており、伝統でんとう的てきに反乱はんらんを起おこした諸侯しょこうを天子てんしが討うち平たいらげることとされる。

日本にっぽん

上泉かみいずみ信綱のぶつな伝でんの『訓くん閲集』（大江おおえ家か兵法ひょうほう書しょを戦国せんごく風ふうに改あらためた兵書へいしょ）巻まき6「士し鑑かん・軍役ぐんえき」内ないの「陣じん言げん」の説明せつめいでは、院宣いんぜんを受うけた征せい夷えびす将軍しょうぐんの出陣しゅつじんを「征伐せいばつ」といい、鎮守ちんじゅ将軍しょうぐんの出陣しゅつじんは「進発しんぱつ（しんぱつ）」といい、将軍しょうぐんが自みずからの出陣しゅつじんを「発向はっこう」といい、同位どういの人ひとの退治たいじを「追討ついとう」と分類ぶんるいする（諸侯しょこうの出陣しゅつじんは「出馬しゅつば」という、とも記しるす）。

いずれも反乱はんらん者しゃが指定していされ、降参こうさんするまで追おい詰つめ攻撃こうげきする命令めいれいが下くだされた。追つい捕とを除のぞき、最後さいごまで降参こうさんしない場合ばあいには討うち取とる命令めいれいが下くだされた。

「征伐せいばつ」「征討せいとう」の例れい

（別称べっしょうがある場合ばあいは、矢印やじるしの右側みぎがわに示しめす）

• 3世紀せいき：三さん韓かん征伐せいばつ
• 古代こだい～14世紀せいき：蝦夷えぞ征伐せいばつ → 蝦夷えぞ征討せいとう。代々だいだいの朝廷ちょうていが征伐せいばつをしている。
• 奥州おうしゅう征伐せいばつ →
  • 1189年ねん：奥州おうしゅう合戦かっせん（鎌倉かまくら幕府ばくふが奥州おうしゅう藤原ふじわら氏しを征服せいふく）
  • 1590年ねん：奥州おうしゅう仕置しおき（豊臣とよとみ秀吉ひでよしにより小田原おだわら征伐せいばつ後ごに行おこなわれた）
• 東夷あずまえびす征伐せいばつ →
  • 古代こだいにおけるヤマトタケルや坂上田村麻呂さかのうえのたむらまろの東征とうせい。
  • 1333年ねん：鎌倉かまくら幕府ばくふ倒幕とうばく（当時とうじは「鎌倉かまくら幕府ばくふ」という言葉ことばがなかった）
• 関東かんとう征伐せいばつ →

古代こだいのヤマトタケルの東征とうせい、鎌倉かまくら時代ときよ後期こうきから南北なんぼく朝あさにおける後醍醐天皇ごだいごてんのうによる号令ごうれい。室町むろまち時代ときよの将軍しょうぐん足利あしかが義教よしのりと鎌倉かまくら公方くぼう足利あしかが持氏もちうじの対立たいりつからの永えい享とおるの乱らん。1560年ねん-1569年ねんの小田原おだわら城じょうの戦たたかいを端緒たんしょとする上杉うえすぎ謙信けんしんの関東かんとう平定へいていを目的もくてきとした遠征えんせい群ぐん。豊臣とよとみ秀吉ひでよしによる小田原おだわら征伐せいばつ（小田原おだわら合戦かっせん）。逸話いつわとして江戸えど時代じだいの萩はぎ藩はん毛もう利家としいえの新年しんねん儀礼ぎれいの挨拶あいさつ。

• 1577年ねん：紀州きしゅう征伐せいばつ → 紀州きしゅう攻ぜめ、信長のぶながの紀州きしゅう征伐せいばつと秀吉ひでよしの紀州きしゅう征伐せいばつがある。
• 1582年ねん：甲州こうしゅう征伐せいばつ → 武田たけだ征伐せいばつ。武田たけだ攻ぜめ。
• 1585年ねん：四国しこく征伐せいばつ → 四国しこく攻ぜめ。四国しこくの役やく。
• 1585年ねん：越中えっちゅう征伐せいばつ → 富山とやまの役やく。佐々ささ成しげる政せい征伐せいばつ。北国きたぐに御ご動座どうざ。
• 1585年ねん：上田うえだ征伐せいばつ → 上田うえだ合戦かっせん。真田さなだ征伐せいばつ。上田うえだ城じょうの戦たたかい。上田うえだ城じょう攻おさむ防戦ぼうせん。第だい一いち次じと第だい二に次じ（1600年ねん）がある。
• 1587年ねん：九州きゅうしゅう征伐せいばつ → 島津しまつ征伐せいばつ。九州きゅうしゅうの役やく、九州きゅうしゅう攻ぜめ。九州きゅうしゅう平定へいてい。
• 1590年ねん：小田原おだわら征伐せいばつ → 北条ほうじょう征伐せいばつ。小田原おだわら合戦かっせん。小田原おだわら攻ぜめ。小田原おだわらの役やく。関東かんとう平定へいてい。関東かんとう征伐せいばつ。
• 1591-98年ねん：朝鮮ちょうせん征伐せいばつ → 文禄・慶長ぶんろくけいちょうの役えき。朝鮮ちょうせん出兵しゅっぺい。秀吉ひでよしの朝鮮ちょうせん侵略しんりゃく。
• 1600年ねん：会津あいづ征伐せいばつ → 上杉うえすぎ征伐せいばつ。会津あいづ攻ぜめ。
• 1609年ねん：琉球りゅうきゅう征伐せいばつ → 薩摩さつまの琉球りゅうきゅう侵攻しんこう。琉球りゅうきゅうの役やく。征せい縄なわの役やく。
• 1864年ねん：長州ちょうしゅう征伐せいばつ（長州ちょうしゅう征討せいとう） → 長州ちょうしゅう戦争せんそう。幕まく長ちょう戦争せんそう。征せい長ちょうの役やく。長州ちょうしゅうの役やく。

追つい捕と・追討ついとうの例れい

• 平忠常たいらのただつねの乱らんに際さいし、朝廷ちょうていは平直方たいらのなおかたらを追つい捕と使つかいに任にんじた。
• 平将門たいらのまさかどの乱らんに際さいし、藤原ふじわら忠文ただふみを征せい東大とうだい将軍しょうぐんに任にんじた。また平将門たいらのまさかどの追討ついとうを誰だれにも許ゆるし褒美ほうびを与あたえる布告ふこくを行おこなった。
• 治ち承うけたまわ・寿ことぶき永ひさしの乱らんに際さいし、安田やすだ義よし定じょうを追討ついとう使しに任にんじた（1183年ねん）。

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