徳川とくがわ女おんな刑罰けいばつ史し

徳川とくがわ女おんな刑罰けいばつ史し
The Joy of Torture
監督かんとく	石井いしい輝男てるお
脚本きゃくほん	荒井あらい美よし三雄みつお 石井いしい輝男てるお
出演しゅつえん者しゃ	吉田よしだ輝雄てるお 渡辺わたなべ文雄ふみお 中村なかむら錦司きんじ 橘たちばなますみ 上田うえだ吉二郎きちじろう 芦屋あしや雁之助がんのすけ 沢さわたまき 小池こいけ朝雄あさお 由利ゆり徹とおる
音楽おんがく	八木やぎ正ただし生せい
撮影さつえい	わし尾び元也もとなり
編集へんしゅう	神田かんだ忠男ただお
製作せいさく会社かいしゃ	東映とうえい京都きょうと
配給はいきゅう	東映とうえい
公開こうかい	1968年ねん9月がつ28日にち
上映じょうえい時間じかん	96分ふん
製作せいさく国こく	日本にっぽん
言語げんご	日本語にほんご
配給はいきゅう収入しゅうにゅう	1億おく5983万まん円えん

『徳川とくがわ女おんな刑罰けいばつ史し』（とくがわおんなけいばつし）は、1968年ねん公開こうかいの日本にっぽん映画えいが。吉田よしだ輝雄てるお主演しゅえん、石井いしい輝男てるお監督かんとく。東映とうえい京都きょうと撮影さつえい所しょ製作せいさく、東映とうえい配給はいきゅう。併映へいえいは同年どうねん10月がつ1日にちより『不良ふりょう番長ばんちょう』（梅宮うめみや辰夫たつお主演しゅえん、野田のだ幸男ゆきお監督かんとく）。

概要がいよう

石井いしい輝男てるお監督かんとくによる『徳川とくがわ女系じょけい図ず』、『温泉おんせんあんま芸者げいしゃ』に次つぐ"異常いじょう性愛せいあい路線ろせん"第だい3作さく。『徳川とくがわ女系じょけい図ず』は大だいヒットしたが岡田おかだ茂しげるプロデューサー（のち、同社どうしゃ社長しゃちょう）から「おとなしい」と言いわれ岡田おかだから「押おせ押おせ」の指令しれいが出でて『徳川とくがわ女系じょけい図ず』よりエログロ度どを増ましたのが本ほん作さくとなる。東ひがしの団だん鬼おに六ろく、西にしの辻村つじむら隆たかしといわれたSM界さかいの巨匠きょしょうを緊縛きんばく指導しどうに招まねき地獄じごく絵図えずそのままに、サディズムの極限きょくげんを追求ついきゅうして徳川とくがわ女おんな刑罰けいばつ十じゅう四よん種しゅを表現ひょうげん、その見世物みせもの性せいたるや今いまどきのSMビデオにも劣おとらないと評ひょうされる。石井いしい自身じしんもこうした猟奇りょうき的てきな趣味しゅみを持もっていたことを当時とうじの『キネマ旬報きねまじゅんぽう』で話はなしている。『徳川とくがわ女系じょけい図ず』で助監督じょかんとくだった荒井あらい美よし三雄みつおが石井いしいと共同きょうどうで脚本きゃくほんを担当たんとう。またチーフ助監督じょかんとくだった牧口まきぐち雄二ゆうじは、石井いしいに反撥はんぱつしていたといわれるが、今日きょうでは石井いしいの後継こうけい者しゃと評ひょうされる。

あらすじ

人間にんげん的てきな与力よりき・吉岡よしおか頼よりゆき母ははとサディスティックな与力よりき・南原なんばら一之かずゆき進しんを中心ちゅうしんに徳川とくがわ時代ときよの想像そうぞうを絶ぜっする苛酷かこくな刑罰けいばつを再現さいげんした全ぜん三さん話わからなるオムニバス映画えいが。

スタッフ

• 監督かんとく：石井いしい輝男てるお
• 企画きかく：岡田おかだ茂しげる・天尾てんのお完かん次じ
• 脚本きゃくほん：荒井あらい美よし三雄みつお・石井いしい輝男てるお
• 撮影さつえい：吉田よしだ貞次ていじ
• 美術びじゅつ：鈴木すずき孝俊たかとし
• 編集へんしゅう：神田かんだ忠男ただお
• 音楽おんがく：八木やぎ正ただし生せい
• 助監督じょかんとく：牧口まきぐち雄二ゆうじ・荒井あらい美よし三雄みつお

キャスト

• 吉岡よしおか頼よりゆき母はは、新しん三さん：吉田よしだ輝雄てるお
• 南原なんばら一之かずゆき進すすむ：渡辺わたなべ文雄ふみお
• 山野やまの淡路あわじ守まもる：中村なかむら錦司きんじ
• みつ：橘たちばなますみ
• 権けん造づくり：沢さわ彰あきら謙けん
• 巳之助みのすけ：上田うえだ吉二郎きちじろう
• 番長ばんちょうの先生せんせい：芦屋あしや雁之助がんのすけ
• 勘かん太ふとし蓑みの：蓑みの和田わだ良太りょうた
• 新しん三さんの仲間なかま：毛利もうり清二せいじ
• 玲れい宝たから：賀川かがわ雪絵ゆきえ
• 妙みょう心しん：尾花おばなミキ
• 燐りん徳とく：白石しらいし奈緒美なおみ
• 彰あきら尊みこと：岡島おかじま艶子つやこ
• 行くだり恵めぐみ：小島こじま恵子けいこ
• 尊みこと栄さかえ：英えい美枝みえ
• 周智しゅうち：牧まき淳子じゅんこ
• 月つき照あきら：美よし松まつ艶子つやこ
• 善ぜん福ぶく：並木なみき玲子れいこ
• 春海しゅんかい：林はやし真一郎しんいちろう
• 花はな三さん：笠りゅうれい子こ
• 君きみ蝶ちょう：沢さわたまき
• 彫ほ丁ひのと：小池こいけ朝雄あさお
• 三助さんすけ：由利ゆり徹とおる
• 料亭りょうていおかみ：南風みなみかぜ夕子ゆうこ
• 女囚じょしゅう人じん甲かぶと：三さん乃瀬愛あい
• 外国がいこく人じん囚人しゅうじん：ハニー・レーヌ

バッシング

本ほん作さくが公開こうかいされた1968年ねんは東映とうえいの任侠にんきょう映画えいがが最盛さいせい期きを迎むかえた年としでもあり、ピンク映画えいがの女優じょゆうが全裸ぜんらで東映とうえい京都きょうと撮影さつえい所しょ（以下いか、京きょう撮つまみ）を走はしり回まわって恐慌きょうこうをきたし、若山わかやま富三郎とみさぶろうや鶴田つるた浩二こうじら、任侠にんきょう映画えいがの看板かんばんスターが強つよく反撥はんぱつした。日活にっかつロマンポルノもまだの時代じだい、前まえ貼はりはまだ常識じょうしきではなく、前まえ貼ばりを貼はらされるスタッフたちは憤慨ふんがいし撮影さつえい所しょ内部ないぶでは「あんなん、もう映画えいがとちゃう。見世物みせもの通とおり越こしたグロじゃ!」と反撥はんぱつの声こえが上あがった。映画えいがジャーナリズムからも徹底的てっていてきに叩たたかれ、朝日新聞あさひしんぶんがこれに呼応こおうしてバッシング運動うんどうを展開てんかいした。映画えいが評論ひょうろん家かの佐藤さとう忠男ただおは本ほん作さくを「日本にっぽん映画えいがの最低さいてい線せんへの警告けいこく」と題だいして「エロ・グロと人格じんかく的てき侮辱ぶじょくのイメージを羅列られつしていける神経しんけいにほとんど嘔吐おうと感かんが込こみ上あげる」「ピンク映画えいが専せん門もんのプロダクションが作つくる映画えいがでもここまで愚劣ぐれつでない」などと酷評こくひょうした。京きょう撮つまみは石井いしい排斥はいせき運動うんどうを起おこし『徳川とくがわいれずみ師し 責ぜめ地獄じごく』撮影さつえい中ちゅうの1969年ねん4月がつ14日にちには、京きょう撮つまみの組合くみあい掲示板けいじばんに「撮影さつえい所しょを冒涜ぼうとくした」と助監督じょかんとく一同いちどうが声明せいめい文ぶんを貼はり出だす事態じたいとなって、マスコミからのバッシングに遭あい大おおきな論争ろんそうを巻まき起おこした。石井いしい輝男てるおは当時とうじのインタビューで「テーマのない映画えいががあってもいい」、「ことしは岡田おかだ氏しと一緒いっしょに性愛せいあい路線ろせんに活路かつろがあるのではないかという考かんがえでやっている」、「もともと私わたしの発案はつあんではありません」「文句もんくがあるなら企画きかくを立たてた会社かいしゃに言いってくれ」などと会社かいしゃに責任せきにん転嫁てんかしたため、岡田おかだ茂しげるプロデューサーが、『キネマ旬報きねまじゅんぽう』で2度どインタビューに応おうえ「体制たいせい打破だはということだ。昔むかし、存在そんざいしたようなファンは、今いまはテレビにかじりついている。だから、昔むかしのファンに受うけたような旧きゅう体制たいせいの映画えいがを作つくっていたのでは、現代げんだいの映画えいが観客かんきゃくをつなぎ止とめることはでけんわ」などと一蹴いっしゅうした。また石井いしいの異常いじょう性愛せいあい路線ろせんで助監督じょかんとくをやっていた荒井あらい美よし三雄みつおを『温泉おんせんポン引女中ちゅう』で監督かんとくに昇格しょうかくさせると助監督じょかんとくらの足並あしなみが揃そろわず、騒動そうどうは沈静ちんせい化かしている。その急先鋒きゅうせんぽうだった関本せきもと郁夫いくおは岡田おかだ茂しげるに見出みいだされ、石井いしい輝男てるおが東映とうえいポルノから撤退てったいした後のち、東映とうえいポルノの主力しゅりょく監督かんとくとなっている。

興行こうぎょう成績せいせき

本ほん作さくは、B級きゅうスターのみの出演しゅつえんにもかかわらず、1968年ねんの年間ねんかん配給はいきゅう収入しゅうにゅうベストテンにランクされ同おなじ東映とうえいで鶴田つるた浩二こうじや高倉たかくら健けん、藤ふじ純子じゅんこら出演しゅつえんの任侠にんきょう映画えいが『人生じんせい劇場げきじょう 飛車ひしゃ角かくと吉良きら常つね』（内田吐夢うちだとむ監督かんとく）を配はい収おさむで上回うわまわるコストパフォーマンスの高たかさだった。

逸話いつわ

• 第だい二に話わでは濃厚のうこうな尼あまレズシーンが登場とうじょうするが、拷問ごうもんを受うける役やくの尾花おばなミキが撮影さつえい前まえにマスコミの前まえで断髪だんぱつ式しきを行おこない実際じっさいに剃髪ていはつした。

参考さんこう文献ぶんけん

• 「対談たいだん：石井いしい輝男てるお×井沢いざわ淳あつし 性せいと残酷ざんこくのかなたに」『キネマ旬報きねまじゅんぽう』1969年ねん4月がつ下旬げじゅん号ごう。 
• 「〔トップに聞きく〕 岡田おかだ茂しげる常務じょうむ 東映とうえい映画えいがのエネルギーを語かたる」『キネマ旬報きねまじゅんぽう』1969年ねん6月がつ下旬げじゅん号ごう。 
• 関本せきもと郁夫いくお『映画えいが人じん烈れつ伝でん』青あお心しん社しゃ、1980年ねん。 
• 松島まつしま利行としゆき『風雲ふううん映画えいが城じょう』 下した、講談社こうだんしゃ、1992年ねん。ISBN 4-06-206226-7。 
• 石井いしい輝男てるお・福間ふくま健二けんじ『石井いしい輝男てるお映画えいが魂たましい』ワイズ出版しゅっぱん、1992年ねん。ISBN 4-948735-08-6。 
• 『ベスト・オブ・キネマ旬報きねまじゅんぽう 〈下した(1967―1993)〉』キネマ旬報きねまじゅんぽう、1994年ねん。ISBN 978-4873761015。 
• 沢辺さわべ有司ゆうじ『悪あく趣味しゅみ邦画ほうが劇場げきじょう〈映画えいが秘宝ひほう2〉』洋よう泉いずみ社しゃ、1995年ねん。ISBN 978-4896911701。 
• 杉作すぎさくJ太郎たろう・植うえ地ち毅あつし（編著へんちょ）『東映とうえいピンキー・バイオレンス浪漫ろうまんアルバム』徳間書店とくましょてん、1999年ねん。ISBN 4-19-861016-9。 
• 俊しゅん藤ふじ浩ひろし滋しげる・山根やまね貞男さだお『任侠にんきょう映画えいが伝でん』講談社こうだんしゃ、1999年ねん。ISBN 4-06-209594-7。 
• 「藤木ふじきTDCのヴィンテージ女優じょゆう秘ひ画帖がじょう」『映画えいが秘宝ひほう』、洋よう泉いずみ社しゃ、2006年ねん7月がつ。 
• 「東映とうえい不良ふりょう性せい感度かんど映画えいがの世界せかい」『映画えいが秘宝ひほう』、洋よう泉いずみ社しゃ、2011年ねん8月がつ。 
• 鈴木すずき義昭よしあき『昭和しょうわ桃色ももいろ映画えいが館かん まぼろしの女優じょゆう、伝説でんせつの性せい豪ごう、闇やみの中なかの活動かつどう屋やたち』社会しゃかい評論ひょうろん社しゃ、2011年ねん。ISBN 978-4-7845-0964-5。 
• 春日かすが太一たいち『仁義じんぎなき日本にっぽん沈没ちんぼつ 東宝とうほうVS.東映とうえいの戦後せんごサバイバル』新潮社しんちょうしゃ〈新潮しんちょう新書しんしょ〉、2012年ねん。ISBN 978-4-10-610459-6。 
• 『鮮烈せんれつ!アナーキー日本にっぽん映画えいが史し 1959-1979』洋よう泉いずみ社しゃ〈映画えいが秘宝ひほうEX〉、2012年ねん。ISBN 4-86248-918-4。 
• 二階堂にかいどう卓也たくや『ピンク映画えいが史し』彩いろどり流りゅう社しゃ、2014年ねん。ISBN 978-4779120299。 

外部がいぶリンク

• 徳川とくがわ女おんな刑罰けいばつ史し - 日本にっぽん映画えいがデータベース
• 徳川とくがわ女おんな刑罰けいばつ史し - allcinema
• 徳川とくがわ女おんな刑罰けいばつ史し - KINENOTE