旧きゅう和わ中ちゅう散ち本舗ほんぽ

旧きゅう和わ中ちゅう散ち本舗ほんぽの図ず（東海道とうかいどう名所めいしょ図会ずえ）

旧きゅう和わ中ちゅう
散ち本舗ほんぽ

位置いち

旧きゅう和わ中ちゅう散ち本舗ほんぽ（きゅうわちゅうさんほんぽ）は、滋賀しが県けん栗東りっとう市し六地蔵ろくじぞうにある、江戸えど時代じだい以来いらい、胃薬いぐすり「和わ中ちゅう散ち」を製造せいぞう販売はんばいしていた旧家きゅうかである。「旧きゅう和わ中ちゅう散ち本舗ほんぽ」として国くにの史跡しせきに指定していされている（1949年ねん7月がつ13日にち指定してい）。また、主おも屋や、正門せいもん、隠居いんきょ所しょの建造けんぞう物ぶつ3棟むねが「大角おおすみ家か（おおすみけ）住宅じゅうたく」として国くにの重要じゅうよう文化財ぶんかざいに（1954年ねん3月がつ20日はつか指定してい）、庭園ていえんが「大角おおすみ氏し庭園ていえん」として国くにの名勝めいしょうに（2001年ねん1月がつ29日にち指定してい）、それぞれ指定していされている。

概要がいよう

旧きゅう和わ中ちゅう散ち本舗ほんぽが所在しょざいする六地蔵ろくじぞうは、東海道とうかいどうの草津くさつ宿やどと石部いしべ宿やどの中間ちゅうかんに位置いちする間あいだの宿やど（あいのしゅく）であった。当地とうちには「和わ中ちゅう散ち」という胃薬いぐすりを販売はんばいする店舗てんぽが5軒けん存在そんざいしたが、なかでも大角おおすみ家かは「和わ中ちゅう散ち本舗ほんぽ」を名乗なのり、本陣ほんじんを兼かね、『東海道とうかいどう名所めいしょ図会ずえ』にも描えがかれた著名ちょめいな店みせであった。大角おおずみ家かは系図けいずによれば、慶長けいちょう元年がんねん（1596年ねん）、300メートルほど東北とうほくの旧きゅう地ちから現在地げんざいちに移うつってきたもので、屋号やごうを「是ぜ斎とき屋や」（ぜさいや）と称しょうし、当主とうしゅは代々だいだい弥わたる右みぎ衛門えもんを名乗なのった。慶長けいちょう16年ねん（1611年ねん）、当地とうちを訪おとずれた徳川とくがわ家康いえやすが腹痛はらいたを訴うったえたところ、典てん医いが「和わ中ちゅう散ち」を勧すすめ、たちどころに快復かいふくしたとの伝つたえがある。

建築けんちく

大角おおすみ家かの屋敷やしき地ちは、旧きゅう東海道とうかいどうを挟はさんで南北なんぼくに分わかれている。南側みなみがわの敷地しきちには街道かいどうに面めんして切妻きりづま造づくりの主おも屋や、その左ひだりに表門おもてもんが建たち、北側きたがわの敷地しきちには隠居いんきょ所しょ、馬うま繋つなぎ、薬師堂やくしどうが建たつ。

主おも屋やは「店舗てんぽ、製薬せいやく所しょ、台所だいどころ、居間いま」部ぶと、その左手ひだりて奥おく（東ひがし）にある「玄関げんかん、座敷ざしき」部ぶからなる。「店舗てんぽ、製薬せいやく所しょ、台所だいどころ、居間いま」部ぶは、桁行けたゆき十じゅう間あいだ（19.4メートル）、梁間はりま九きゅう間あいだ（19.1メートル）、切妻きりづま造づくり、本瓦ほんかわら、桟瓦及および銅板どうばん葺ふき。「玄関げんかん、座敷ざしき」部ぶは桁行けたゆき8.8メートル、梁間はりま8.5メートル、切妻きりづま造づくり、銅どう板葺いたぶきで、南面なんめんに突出とっしゅつ部ぶがあり、桁行けたゆき5.1メートル、梁間はりま7.0メートル、入母屋いりもや造づくり、桟瓦葺かわらぶきとする。当家とうけの系図けいずによると、延のべ宝たから4年ねん（1676年ねん）に家督かとくを継ついだ3代目だいめの当主とうしゅのときに建たて替かえを行おこなっているところから、「店舗てんぽ、製薬せいやく所しょ、台所だいどころ、居間いま」部ぶは17世紀せいき末すえ、「玄関げんかん、座敷ざしき」部ぶはやや遅おくれて18世紀せいき前半ぜんはんの建立こんりゅうと推定すいていされる。

「店舗てんぽ、製薬せいやく所しょ、台所だいどころ、居間いま」部ぶは街道かいどうに面めんし、細ほそい通とおりにわ（土間どま）を挟はさんで、左ひだりに畳たたみ敷じきの「東ひがしみせ」、右みぎに板敷いたじきの「西にしみせ」がある。「西にしみせ」には木製もくせいの動輪どうりん、歯車はぐるま、石臼いしうすからなる製薬せいやく機きが残のこる。動輪どうりんは直径ちょっけい3.6メートルあり、この中なかに人間にんげんが入はいって回転かいてんさせると、その動力どうりょくが石臼いしうすに伝つたわる仕組しくみになっている。これは実演じつえん販売はんばいのはしりとも言いわれている。「東ひがしみせ」の正面しょうめんは摺すり揚戸あげど（すりあげど）、「西にしみせ」の前まえは板戸いたど引ひき込こみで、全面ぜんめん開放かいほうできるようになっている。なお、当初とうしょは「東ひがしみせ」部分ぶぶんも板戸いたど引びき込こみであった。屋根やねは上うえ半はんが本瓦ほんかわら、下した半はんが桟瓦で葺ふかれ、庇ひさしは銅どう板葺いたぶきとなっている。庇ひさしは出だしが1.6メートルあり、腕木うできと持もち送おくりで支ささえられている。「西にしみせ」の奥おくは土間どまになり、「東ひがしみせ」の奥おくは3列れつに部屋へやを設もうけ、台所だいどころなど10室しつがある。

「東ひがしみせ」の向むかって左ひだり（東ひがし）には薬くすり医い門もん形式けいしきの正門せいもん（江戸えど時代じだい中期ちゅうき）が建たち、これを入はいると千鳥ちどり破風はふを構かまえた「玄関げんかん、座敷ざしき」部ぶがある。「玄関げんかん、座敷ざしき」部ぶは、「店舗てんぽ、製薬せいやく所しょ、台所だいどころ、居間いま」部ぶと接続せつぞくしているが、家族かぞくの居住きょじゅう用ようではなく、高貴こうきな来客らいきゃく用ようの空間くうかんである。式台しきだい玄関げんかんを入はいると「玄関げんかんの間あいだ」（10畳じょう）がある。玄関げんかん正面しょうめんの欄間らんまには鶴つる亀ひさしの浮彫うきぼり彫刻ちょうこくを嵌はめる。その奥おくは右みぎが8畳じょう、床ゆか（とこ）・棚たな付つきの「座敷ざしき」、左ひだりが6畳じょうの「次つぎの間ま」で、その奥おくが10畳じょう、床ゆか・棚たな・書院しょいん付つきの「上段じょうだんの間あいだ」である。「上段じょうだんの間あいだ」から見みえる、築山つきやまと池いけを備そなえた庭園ていえんは国くにの名勝めいしょうに指定していされている。明治天皇めいじてんのうは、明治めいじ元年がんねん（1868年ねん）、京きょうから江戸えどへ向むかった際さいと、明治めいじ3年ねん（1870年ねん）、孝明天皇こうめいてんのうの三さん回忌かいきのため東京とうきょうから京都きょうとへ向むかった際さいの2回かい、当とう住宅じゅうたくで休憩きゅうけいした。他ほかにも太田おおた蜀しょく山人さんじん、シーボルトらの著名ちょめい人じんが訪おとずれたことが知しられる。

隠居いんきょ所しょは桁行けたゆき12.9メートル、梁間はりま7.0メートル。南面なんめんに突出とっしゅつ部ぶがあり、桁行けたゆき5.9メートル、梁間はりま6.9メートル、いずれも入母屋いりもや造づくり、桟瓦葺かわらぶきとする。6畳じょう（床ゆか・書院しょいん付つき）、次つぎの間ま4畳じょう、奥おくの間あいだ、仏ふつ間あいだ、台所だいどころ、土間どまからなる。江戸えど中期ちゅうきの建築けんちくとみられる。

文化財ぶんかざい

国くにの史跡しせき

• 旧きゅう和わ中ちゅう散ち本舗ほんぽ（1949年ねん7月がつ13日にち指定してい）

国くにの名勝めいしょう

• 大角おおすみ氏し庭園ていえん（2001年ねん1月がつ29日にち指定してい）

重要じゅうよう文化財ぶんかざい

• 大角おおすみ家か住宅じゅうたく 3棟むね
  • 主おも屋や 附ふ 製薬せいやく機き一式いっしき
  • 正門せいもん 両りょう袖そで塀へい付属ふぞく
  • 隠居いんきょ屋や 附ふ 古いにしえ図ず1枚まい
  • 附ふ 古来こらい作事さくじ幷諸覚さとし帳ちょう1冊さつ

以上いじょう1954年ねん3月がつ20日はつか指定してい。ただし、附ふ（つけたり）指定していの「古いにしえ図ず」と「古来ふるく作事さくじ幷諸覚さとし帳ちょう」は1982年ねん2月がつ16日にち追加ついか指定してい。

※上記じょうきの指定してい名称めいしょう、指定してい年月日ねんがっぴは文化財ぶんかざい目録もくろく（滋賀しが県けんサイト）による。

交通こうつうアクセス

• JR草津線くさつせん手原てはら駅えき
  • くりちゃんバス葉山はやま循環じゅんかん線せんで8分ふん。「旧きゅう和わ中ちゅう散ち本舗ほんぽ」停留所ていりゅうじょ下車げしゃ。
    • （※バスは平日へいじつのみ運行うんこう）
  • 同どう駅えきより徒歩とほ25分ふん。

参考さんこう文献ぶんけん

• 高井たかい潔きよし『民家みんか 上じょう』淡あわ交社、2002年ねん。ISBN 4-473-01947-0。 
• 鈴木すずき嘉吉よしきち監修かんしゅう; 宮澤みやざわ智さとし士し執筆しっぴつ『日本にっぽんの民家みんか万有ばんゆうガイドシリーズ30』小学館しょうがくかん、1985年ねん。 

関連かんれん項目こうもく

• 天下茶屋てんがちゃや跡あと#是ぜ斎とき屋や跡あと

外部がいぶリンク

• 旧きゅう和わ中ちゅう散ち本舗ほんぽ - 滋賀しが県けん観光かんこう情報じょうほう
• 旧きゅう和わ中ちゅう散ち本舗ほんぽ - 栗東りっとう市し観光かんこう協会きょうかい