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有限ゆうげん差分さぶん

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

数学すうがくにおける有限ゆうげん差分さぶん(ゆうげんさぶん、えい: finite difference)はf(x + b) − f(x + a) なるかたちしき総称そうしょうして[よう出典しゅってん]有限ゆうげん差分さぶんb − aわれれば、差分さぶんしょうられる。微分びぶん有限ゆうげん差分さぶん近似きんじすることは、微分びぶん方程式ほうていしきとく境界きょうかい問題もんだい)の数値すうちてき解法かいほうである有限ゆうげん差分さぶんほうにおいて中心ちゅうしんてき役割やくわりたす。

あるしゅややしき多項たこうあいだ関係かんけいしき有限ゆうげん差分さぶんえて差分さぶん方程式ほうていしきにすることができる。

今日きょうでは「有限ゆうげん差分さぶん」のかたりは、とく数値すうち解法かいほう文脈ぶんみゃくにおいて、微分びぶん有限ゆうげん差分さぶん近似きんじ同義語どうぎごとしてもよくもちいられる[1][2][3]有限ゆうげん差分さぶん近似きんじ冒頭ぼうとう用語ようごほうのっとれば有限ゆうげん差分さぶんしょうのことである。

有限ゆうげん差分さぶんそれ自体じたいも、抽象ちゅうしょうてき数学すうがくてき対象たいしょうとして研究けんきゅう主題しゅだいとなりるものである。たとえばジョージ・ブール (1860), ルイ・メイヴィル・ミルン゠トムソン英語えいごばん (1933), カロリー・ヨルダンドイツばん (1939) らの業績ぎょうせきがあり、それはアイザック・ニュートンにまでさかのぼれる。そのような観点かんてんえば、有限ゆうげん差分さぶんかんする形式けいしきてき計算けいさん無限むげんしょうかんする計算けいさん代替だいたいとなるものである[4]

前進ぜんしん後退こうたい中心ちゅうしん差分さぶん

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おも前進ぜんしん後退こうたい中心ちゅうしん差分さぶんさん種類しゅるいひろもちいられる[1][2][3]

前進ぜんしん差分さぶん
後退こうたい差分さぶん
中心ちゅうしん差分さぶん

応用おうよう場面ばめんおうじて、あゆh変数へんすうることも定数ていすうることもある。添字そえじh省略しょうりゃくしたときは、h = 1意味いみΔでるた[f](x) = Δでるた1[f](x)など)である。

微分びぶん離散りさんとしての差分さぶん

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函数かんすう fてん x における微分びぶん函数かんすう極限きょくげん

定義ていぎされる。ここで hれいちかづけるわりに非負ひふ固定こていすれば、右辺うへん

けるから、これは hちいさいとき、あゆh前進ぜんしん差分さぶん微分びぶん近似きんじするものであることを意味いみする。この近似きんじ誤差ごさテイラーの定理ていりから評価ひょうかすることができる。実際じっさいf微分びぶん可能かのうであると仮定かていすれば

であり、前進ぜんしん差分さぶんかんしてもおなしき

満足まんぞくされる。中心ちゅうしん差分さぶんもちいればより精密せいみつ近似きんじ可能かのうで、fかい微分びぶん可能かのうならば

つ。しかし中心ちゅうしん差分さぶんほうおも問題もんだいは、振動しんどうする函数かんすう微分びぶんれいということになってしまう場合ばあいがあることである。たとえば、奇数きすうnたいして f(nh) = 1 かつ偶数ぐうすうnたいして f(nh) = 2 とすれば、中心ちゅうしん差分さぶんほう計算けいさんすると f'(nh) = 0 となる。これは f定義ていぎいき離散りさん場合ばあいとく問題もんだいになる。

有限ゆうげん差分さぶん」を有限ゆうげん差分さぶん近似きんじ意味いみもちいる文献ぶんけんでは、「前進ぜんしん後退こうたい中心ちゅうしん差分さぶん」は(前節ぜんせつ意味いみではなく)本節ほんぶししょうとして定義ていぎされる[1][2][3]

高階たかしな差分さぶん

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微分びぶん有限ゆうげん差分さぶん近似きんじ対応たいおうして、高階たかしな微分びぶん有限ゆうげん差分さぶん近似きんじられる。たとえば、中心ちゅうしん差分さぶんしきf'(x+h/2)f'(xh/2)たいしてかんがえ、f'微分びぶん中心ちゅうしん差分さぶん近似きんじ適用てきようすれば、fかい微分びぶん近似きんじしきとして

かい中心ちゅうしん差分さぶん

られる。同様どうようにほかの差分さぶん公式こうしきかえ適用てきようすれば

かい前進ぜんしん差分さぶん

などもられる。より一般いっぱんn-かい前進ぜんしん後退こうたい中心ちゅうしん差分さぶんはそれぞれ

n-かい前進ぜんしん差分さぶん
n-かい後退こうたい差分さぶん
n-かい中心ちゅうしん差分さぶん

あたえられる。上記じょうきにおいて、(n
i
)
こう係数けいすうである(かく iたいする係数けいすうパスカルの三角形さんかっけい各行かくこうあたえられる)。

中心ちゅうしん差分さぶんにおいては n奇数きすうのとき h整数せいすうばいされることに留意りゅういすべきである。これは離散りさんはばえることになるため、しばしば問題もんだいになる。この問題もんだいδでるたn[f](xh/2)δでるたn[f](x + h/2) との平均へいきんをとることでのぞくことができる。

数列すうれつ前進ぜんしん差分さぶんほどこすことを、その数列すうれつこう変換へんかん英語えいごばんぶことがあり、組合くみあわろんてき興味深きょうみぶか様々さまざま性質せいしつがある。前進ぜんしん差分さぶんネールント–ライス積分せきぶんもちいて評価ひょうかすることができる。このような種類しゅるい級数きゅうすうたいする積分せきぶん表現ひょうげんは、積分せきぶん漸近ぜんきん展開てんかい鞍点あんてんほう評価ひょうかされることがしばしばあり、重要じゅうようである(対照たいしょうてき前進ぜんしん差分さぶん級数きゅうすうは、おおきな nたいしてはこう係数けいすう急速きゅうそく増大ぞうだいするため、数値すうちてき評価ひょうかすることがきわめてむずかしい)。

これらだかかい差分さぶん微分びぶんとの関係かんけいはそれぞれ直接的ちょくせつてき

となる。高階たかしな微分びぶんはより近似きんじ構成こうせいするためにも利用りようできる。うえべたように、いちかい差分さぶん近似きんじhオーダーこうのぞいていちかい微分びぶん近似きんじするものであるが、高階たかしな微分びぶんわせた

f'(x)h2 のオーダーのこうしかちがわない。これをしめすには、先述せんじゅつのようにテイラー級数きゅうすう展開てんかいしてもよいし、後述こうじゅつのように有限ゆうげん差分さぶんひろし函数かんすう計算けいさんもちいてもよい。

必要ひつようならば、前進ぜんしん後退こうたい中心ちゅうしん差分さぶん混合こんごうして任意にんいてん有限ゆうげん差分さぶん中心ちゅうしんにすることができる。

性質せいしつ

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  • 任意にんいせい整数せいすう k, nたいして
  • ライプニッツそく:

有限ゆうげん差分さぶんほう

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有限ゆうげん差分さぶん重要じゅうよう応用おうようとして、数値すうち解析かいせきとく数値すうち微分びぶん方程式ほうていしきろんにおいて、常微分じょうびぶんおよびへん微分びぶん方程式ほうていしき数値すうちかい目的もくてきでの利用りようげられる。これは、微分びぶん方程式ほうていしきあらわれる微分びぶんを、それを近似きんじする有限ゆうげん差分さぶんえるというかんがかたである。これを有限ゆうげん差分さぶんほうぶ。

有限ゆうげん差分さぶんほうは、計算けいさん科学かがく工学こうがくねつ工学こうがく流体りゅうたい力学りきがくなどといった分野ぶんやにおいてよく応用おうようされる。

ニュートン級数きゅうすう

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ニュートン級数きゅうすうニュートン前進ぜんしん差分さぶん方程式ほうていしきこうからなる。これは本質ほんしつてきニュートン補間ほかん公式こうしきであり、1687ねん著書ちょしょプリンキピア・マスマティカ』において最初さいしょ公表こうひょうされた[5]具体ぐたいてきには、連続れんぞくてきなテイラー展開てんかい離散りさんばん

任意にんい多項式たこうしき函数かんすう fたいして成立せいりつする。これはさらにおおくの(すべてではない)解析かいせき函数かんすうでも成立せいりつする。ここで

こう係数けいすうであり、

下降かこうかいじょう下方かほうかいじょう)である(そらせき (x)01 とする)。これは後述こうじゅつする一般いっぱんにおいて、x変化へんかあゆみ (step) が h = 1 であると仮定かていした特別とくべつ場合ばあいである。

この結果けっかテイラーの定理ていりとの形式けいしきてき対応たいおう注意ちゅういせよ。歴史れきしてきには、これとファンデルモンド恒等こうとうしき英語えいごばん

こう定理ていり対応たいおうする)は、かげ計算けいさん体系たいけいいた観察かんさつふくまれる。

  • p-すすむ解析かいせきがくにおいて、マーラーの定理ていりf多項式たこうしき函数かんすうであるという仮定かていたん連続れんぞくであるという仮定かていゆるめることができることをべる。
  • カールソンの定理ていり英語えいごばんはニュートン級数きゅうすうが(存在そんざいすれば)一意いちいであるための必要ひつようじゅうふん条件じょうけんあたえる。しかし一般いっぱんにはニュートン級数きゅうすう存在そんざい保証ほしょうされない。
  • ニュートン級数きゅうすう、スターリング補間ほかん多項式たこうしき、セルバーグ多項式たこうしきは、一般いっぱん差分さぶん多項式たこうしき特別とくべつ場合ばあいである。これらはすべ適当てきとうにスケールされた前進ぜんしん差分さぶん言葉ことば定義ていぎされる。
  • In a compressed and slightly more general form and equidistant nodes the formula reads

有限ゆうげん差分さぶんかんする演算えんざんほう

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前進ぜんしん差分さぶんを、函数かんすう fΔでるたh[f]うつ差分さぶん作用素さようそかんがえることができる[6][7]。この作用素さようそは、あゆhシフト作用素さようそ Thもちいて

というくことができる。ここに、Th[f ](x) = f(x+h) および I恒等こうとう作用素さようそである。

高階たかしな有限ゆうげん差分さぶん再帰さいきてき ΔでるたhnΔでるたh (Δでるたhn−1) と定義ていぎすることができるが、これと同値どうちべつ定義ていぎとして Δでるたhn = [ThI]n とすることもできる。

差分さぶん作用素さようそ Δでるたh線型せんけい作用素さようそであり、うえべた特別とくべつなライプニッツそく Δでるたh(f(x)g(x)) = (Δでるたhf(x)) g(x+h) + f(x) (Δでるたhg(x))満足まんぞくする。後退こうたいおよび中心ちゅうしん差分さぶんかんしても同様どうようのことが成立せいりつする。

hかんするテイラー級数きゅうすう形式けいしきてき適用てきようすることで、等式とうしき

られる。ここで D函数かんすう f をそのしるべ函数かんすう f'うつ連続れんぞくてき微分びぶん作用素さようそである。十分じゅうぶんちいさな hたいして、この展開てんかい両辺りょうへん解析かいせき函数かんすう作用さようするとき有効ゆうこうである。したがって Th = ehD であり、ぎゃくべき指数しすうかんしていて

られる。このしき両辺りょうへん多項式たこうしき作用さようしておな結果けっかあたえるという意味いみにおいてただしい。

解析かいせき函数かんすう作用さようする場合ばあいでも、右辺うへん級数きゅうすう収束しゅうそく保証ほしょうされず、漸近ぜんきん級数きゅうすうとなりる。しかし、微分びぶんたいするより精密せいみつ近似きんじることには利用りようできる。たとえば、たとえばこの級数きゅうすう最初さいしょこうだけをせば、#高階たかしな差分さぶんふし最後さいごべた f'(x)かい近似きんじみちびかれる。

後退こうたいおよび中心ちゅうしん差分さぶんたいする同様どうよう公式こうしき

となる。

有限ゆうげん差分さぶん作用素さようそ計算けいさん法則ほうそく

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微分びぶん法則ほうそく英語えいごばん対応たいおうして、

  • 定数ていすうりつ: c定数ていすうならば つ。
  • 線型せんけいせい: 定数ていすう a, bたいして つ。

このふたつの法則ほうそく差分さぶん作用素さようそでもつ。

  • せき差分さぶん:
  • しょう差分さぶん:
    あるいは
  • ぶん:


See Refs [8][9][10][11]

一般いっぱん

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一般いっぱんされた有限ゆうげん差分さぶんμみゅー = (μみゅー0, …, μみゅーN)係数けいすうれつとして

定義ていぎされるのが普通ふつうである。さらに右辺うへん無限むげん級数きゅうすうえた一般いっぱんとして無限むげん差分さぶん (infinite difference) が定義ていぎされる。べつ一般いっぱんとしては、係数けいすう μみゅーkx依存いぞんすることをゆるして μみゅーk = μみゅーk(x) とすることで、おも有限ゆうげん差分さぶん (weighted finite difference) がかんがえられる。あるいはまた、あゆhx依存いぞんする (h = h(x)) とすることもかんがえられる。そのような一般いっぱん別種べっしゅ連続れんぞく英語えいごばん構成こうせいするのに有用ゆうようである。

  • 一般いっぱん有限ゆうげん差分さぶん全体ぜんたい多項式たこうしきたまき R[Th]ることができる。ここから差分さぶんたまきかんがえられる。
  • 差分さぶん作用素さようそはん順序じゅんじょ集合しゅうごううえメビウス反転はんてん作用素さようそ一般いっぱんされる。
  • たた表現ひょうげん: 接合せつごうたまき方法ほうほうろんつうじて差分さぶん作用素さようそやほかのメビウス反転はんてん作用素さようそメビウス函数かんすうばれるはん順序じゅんじょ集合しゅうごうじょう函数かんすう μみゅー とのたたとしてあらわされる。差分さぶん作用素さようそたいするメビウス函数かんすう μみゅー数列すうれつ (1, −1, 0, 0, 0, …) である。

変数へんすう有限ゆうげん差分さぶん

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変数へんすう場合ばあいにも有限ゆうげん差分さぶんかんがえることができる。それらは変数へんすうへん微分びぶん対応たいおうするものである。

中心ちゅうしん差分さぶんによるへん微分びぶん近似きんじをいくつかげれば

のようになる。

関連かんれん項目こうもく

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参考さんこう文献ぶんけん

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  1. ^ a b c Paul Wilmott; Sam Howison; Jeff Dewynne (1995). The Mathematics of Financial Derivatives: A Student Introduction. Cambridge University Press. p. 137. ISBN 978-0-521-49789-3 
  2. ^ a b c Peter Olver (2013). Introduction to Partial Differential Equations. Springer Science & Business Media. p. 182. ISBN 978-3-319-02099-0 
  3. ^ a b c M Hanif Chaudhry (2007). Open-Channel Flow. Springer. pp. 369. ISBN 978-0-387-68648-6 
  4. ^ Jordán, op. cit., p. 1 and Milne-Thomson, p. xxi. Milne-Thomson, Louis Melville (2000): The Calculus of Finite Differences (Chelsea Pub Co, 2000) ISBN 978-0821821077
  5. ^ Newton, Isaac, (1687). Principia, Book III, Lemma V, Case 1
  6. ^ Boole, George, (1872). A Treatise On The Calculus of Finite Differences, 2nd ed., Macmillan and Company. On line. Also, [Dover edition 1960]
  7. ^ Jordan, Charles, (1939/1965). "Calculus of Finite Differences", Chelsea Publishing. On-line: [1]
  8. ^ Levy, H.; Lessman, F. (1992). Finite Difference Equations. Dover. ISBN 0-486-67260-3 
  9. ^ Ames, W. F., (1977). Numerical Methods for Partial Differential Equations, Section 1.6. Academic Press, New York. ISBN 0-12-056760-1.
  10. ^ Hildebrand, F. B., (1968). Finite-Difference Equations and Simulations, Section 2.2, Prentice-Hall, Englewood Cliffs, New Jersey.
  11. ^ Flajolet, Philippe; Sedgewick, Robert (1995). “Mellin transforms and asymptotics: Finite differences and Rice's integrals”. Theoretical Computer Science 144 (1–2): 101–124. doi:10.1016/0304-3975(94)00281-M. http://www-rocq.inria.fr/algo/flajolet/Publications/mellin-rice.ps.gz [リンク].
  • Richardson, C. H. (1954): An Introduction to the Calculus of Finite Differences (Van Nostrand (1954) online copy[リンク]
  • Mickens, R. E. (1991): Difference Equations: Theory and Applications (Chapman and Hall/CRC) ISBN 978-0442001360

外部がいぶリンク

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