柳やなぎ隠かくれ

柳やなぎ 隠かくれ（りゅう いん、生なま没年ぼつねん不ふ詳しょう）は、中国ちゅうごく三さん国こく時代じだいの蜀しょく漢かんの武将ぶしょう。字じは休きゅう然しか。蜀しょく郡ぐん成なる都との人ひと。『華陽かよう国こく志こころざし』に事績じせきが記載きさいされている。

経歴けいれき

若わかいころから同どう郡ぐん出身しゅっしんの杜もり禎ただし・柳やなぎ伸しんとともに名なを知しられた。誠実せいじつ正直しょうじきな性格せいかくであり、正道せいどうに従したがうことを信条しんじょうとし、友人ゆうじんとの交際こうさいには常つねに手厚てあつさを心こころがけていた。

姜きょう維の北きた伐きに従軍じゅうぐんし、たびたび功績こうせきを立たて、その武勇ぶゆうと計略けいりゃくは三軍さんぐんの筆頭ひっとうであるとされた。牙きば門もん将はた、巴ともえ郡ぐん太守たいしゅ、騎き都と尉じょうを歴任れきにんした後のち、漢かん中ちゅう黄金おうごん囲かこえの督とくに昇進しょうしんした。（水みず経けい注ちゅうによると当時とうじの黄金おうごん囲かこえは南みなみに漢かん水すいが流ながれ、峻険しゅんけんな山やまに拠より、鉄てつ城じょうと相対あいたいし、山上さんじょうに一城かずき、山下やましたに一いち城しろがある。城しろはどちらも百ひゃく余人よにん程度ていどで守備しゅびする規模きぼだと記載きさい。）

炎ほのお興きょう元年がんねん（263年ねん）、魏たかしの鍾会・鄧艾が大軍たいぐんを率ひきいて蜀しょくに侵攻しんこうした。陽ひ安やす関せきの守将しゅしょう蔣舒が城しろを開ひらいて降伏ごうぶくするなど戦況せんきょうが悪化あっかする中なか、別働隊べつどうたいの劉りゅう欽が黄金おうごん囲かこえを攻撃こうげきした。柳やなぎ隠かくれは城しろを堅守けんしゅし、劉りゅう欽はこれを落おとすことができなかった。やがて魏ぎ軍ぐんは別べつの道みちから成都せいとを攻撃こうげきし、蜀しょく帝みかど劉りゅう禅ぜんが降伏ごうぶくしたため、ついに蜀しょく漢かんは滅亡めつぼうした。それでも柳やなぎ隠かくれは抵抗ていこうを続つづけ、劉りゅう禅ぜんの書簡しょかんを受うけ取とるまで城しろを守まもり抜ぬいた。司馬しば昭あきらはそれを聞きき、彼かれが義士ぎしであると讃たたえたという。

咸熙元年がんねん（264年ねん）、河東かとう郡ぐんに移住いじゅうし議ぎ郎ろうに就つき、翌年よくねん西河にしかわ太守たいしゅとなったが、泰やすし始はじめ4年ねん（268年ねん）に老齢ろうれいを理由りゆうに辞職じしょくして故郷こきょうへ帰かえり、その後ごは出仕しゅっしせずに家いえで死去しきょした。享年きょうねんは80歳さいであった。

長子ちょうしの柳やなぎ充たかしは連れん道どう令れいとなり、次子じしの柳やなぎ初はつは秀才しゅうさいに挙あげられた。