出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

(あざな、拼音: )とは、中国ちゅうごくなどひがしアジア漢字かんじけん諸国しょこく使つかわれる人名じんめいいち要素ようそである。むかし中国ちゅうごく成人せいじん男子だんし女子じょし実名じつめい以外いがいにつけた日本にっぽんでも学者がくしゃ文人ぶんじんがこれをもちいた。

概要がいよう[編集へんしゅう]

歴史れきしてきに、中国人ちゅうごくじん個人こじん特有とくゆうとしてせい)といみな)とみっつの要素ようそった。『れいきょくれいへんに「男子だんし二十歳はたちかんむりった」「女子じょしじゅうさいかんざしった」とあり[1]成人せいじんした人間にんげんとしては原則げんそくとしてもちいられた。日本にっぽんでは大抵たいてい中国人ちゅうごくじんは「せい-いみな」のわせでられる。ただし例外れいがいてきに「せい-」の呼称こしょう通用つうようしている人物じんぶつもいる。閔子騫いみなそん)、いみないん)、項羽こうういみなせき)、しょかずら孔明こうめいいみなあきら)、司馬しばなかたちいみなは懿)、袁彦どういみなふけ)、白楽はくらくたかしいみなきょえき)、蔣介せきいみな中正ちゅうせい)など。

たとえば「しょかずら-あきら」は「しょかずら」がせい、「あきら」がいみなであり、を「孔明こうめい」という。いみな軽々かるがるしくもちいられることは忌避きひされ(そのため日本にっぽんはいって「めい」とくんじられた)、どう時代じだいじんたいしては[ちゅう 1]おや主君しゅくんなどの特定とくてい目上めうえ人物じんぶつだけがいみな使用しようし、それ以外いがい人間にんげんいみなびかけることはきわめて無礼ぶれいなこととされていた。ぎゃくに、そういったいみなびかけることができる立場たちばにあるものがわざわざびかけることは、立場たちばとはべつ一定いってい以上いじょう敬意けいいしめすことになる。しょかずらあきられいれば、三国志さんごくし演義えんぎ訳本やくほんにおいて、りゅうから「孔明こうめい」とばせているものは一定いってい以上いじょう見受みうけられるが、せきはねちょうをそれぞれくもちょうつばさとくえきとく)とばせているものはまずない。謙虚けんきょ態度たいどとして、とにかく本人ほんにん自分じぶんいみな自称じしょうし、自称じしょうしない。

もっぱらのみでばれ、いみなはほとんどられていないものを以字ぎょう(「以字ぎょう於世」のりゃく)という。たとえば、明代あきよ廷臣ていしん楊士の「」はで、いみなは「ぐう」であるが、「楊寓」とばれることはほとんどない。

なお、その人物じんぶつ官職かんしょくいた場合ばあい官職かんしょくめいぶことが優先ゆうせんされた(しょかずらあきらなら「しょかずら丞相じょうしょう」。丞相じょうしょう官職かんしょくめいである)。その非常ひじょうおおいケースとして、任地にんちぶこともあった(やなぎはじめもとなら「やなぎやなぎしゅう」。かれ役職やくしょくやなぎしゅう刺史しし)。この場合ばあい尊敬そんけいかたせい+おおやけちょうあきらなら「ちょうこう」)である。この場合ばあいしたしい間柄あいだがら以外いがいは、ぶことは、いみなほどではないにしても少々しょうしょう無礼ぶれいなこととされていた。

前述ぜんじゅつのとおり、いみなばないために使つかうものであるので、相手あいてたいして「りゅう-備-げんとく」のようにせいいみな連結れんけつしてぶことはない。しかし、一方いっぽう文書ぶんしょちゅうにおいて人物じんぶつ情報じょうほう表示ひょうじする場合ばあいに「せきぬきせいいみな」を並列へいれつする慣例かんれいがあった。たとえば『漢書かんしょまき72では「琅邪にまた逡王おもえり、ひとしにはのりち薛方ようふとしばらにはのりち郇越しんなか……」の記述きじゅつがあり、ちゅうで「其人の本土ほんどおよせい並列へいれつするものなり。」と、これがさだまった記述きじゅつほうであることを説明せつめいしている。ほかにも曹丕てんろん論文ろんぶん」の「いま文人ぶんじん、魯国あなとおるぶんきょ広陵こうりょうちんあなあきら山陽さんようおうつばらなかせん……」や『三国志さんごくし』「しょかずらあきらでん」の「はくりょうちぇしゅうたいら、潁川じょもとじき」などがあげられる。

類例るいれい[編集へんしゅう]

明確めいかく法則ほうそくはなく、おおくの場合ばあいであるが、ちんまさるわたる)、かおかい)などいちれいじょうおそうすきょ)などさんれいもある。

いち敬称けいしょうである「」の、あるいはやからぎょう、あるいははいぎょうあらわす。はいぎょうれいとして、はく長男ちょうなんまたは長女ちょうじょなか次男じなんまたは次女じじょ以下いかのようなパターンがある。

  • 兄弟きょうだい姉妹しまい)の場合ばあい - 「はくはじめもとちょう)」「なか
  • さん兄弟きょうだい姉妹しまい)の場合ばあい - 「はくはじめもとちょう)」「なか」「やや)」
  • よん兄弟きょうだい姉妹しまい)の場合ばあい - 「はくはじめもとちょう)」「なか」「叔」「やや)」
  • 兄弟きょうだい姉妹しまい)の場合ばあい - 「はくはじめもとちょう)」「なか」「叔」「」「ようやや)」
    • うまりょうつね)、馬謖ばしょくようつね) - 「うま五常ごじょう
    • ちょうてるなかただし叔婉、嬪、ややひめ - きたたかしけんむすめ
  • はち兄弟きょうだい姉妹しまい)の場合ばあい - 「はくはじめもとちょう)」「なか」「叔」「」「あらわ」「めぐみ」「みやび」「ようやや)」
    • 司馬しばあきらはくたち)、司馬しばなかたち)、司馬しばまこと(叔達)、司馬しば馗(たち)、司馬しばまことあらわたち)、司馬しばすすむめぐみたち)、司馬しばとおるまさいたる)、司馬しばさとしようたち

またはぜん文字もじいみな関連かんれんしたもちいることもおおく、以下いかのようなパターンがある。

  • いみな同義どうぎもちいたれい
    • はんかたはじめけん) - かたけん同義どうぎしょかずらあきら孔明こうめい) - あきらあきら同義どうぎぶんてんさちそうみずほ) - さちみず同義どうぎ
  • いみなたいもちいたれい
  • 経書けいしょ典拠てんきょもとめたれい
    • しょうかくれよしさん) - 『史記しき』のはくえびす・叔斉しょう末期まっき隠者いんじゃもっやまこもった
    • 曹操そうそうはじめとく) - 『荀子』の「おっといい徳操とくそう」の取材しゅざい
    • しろきょえき楽天らくてん) - 『れい』の「君子くんしきょえき以俟」「不能ふのう安土あづち不能ふのう楽天らくてん」の取材しゅざい
  • 古人こじんにちなんだれい
  • その関連かんれんせいがあるれい
    • ちょうくもりゅう) - りゅうくもぶ、かくはくずみ) - 淮水、すみすいかわめいたけおおとりきょ) - おおとりのぼれば

また、もりまき牧之ぼくし)、えびすてきてき)などいみなどうもちいることもあり、なかには司馬しばいさおぶんとくぶん)、かく)、司馬しば道子みちこ道子みちこ)、はじめ浩然こうぜん浩然こうぜん)のようにいみなまったおなじというれいもある。そのわった命名めいめいほうとしては、おうつめ)のいみなをつなげると維摩つめ(ヴィマラキールティ)という仏教ぶっきょう経典きょうてんうえ人名じんめいになる。

女子じょしは、時代じだいによって苗字みょうじ順番じゅんばん変化へんかした。

  • さきしん時代じだいでは、女性じょせいさきに、苗字みょうじのち風習ふうしゅうがあった。名字みょうじ順序じゅんじょは「せい」となる
    • はくひめひめせいはくひめ長女ちょうじょ意味いみ)、叔姜(きょうせい、叔はきょうさんじょ意味いみ
    • 妲己おのれせい、妲は
  • はた以降いこう名字みょうじ順序じゅんじょは「姓氏せいしめい)」。しかし、女子じょし一般いっぱんには関係かんけいない
    • りょ雉(娥姁)、はんあきらめぐみはん)、まご魯班(だいとら

中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこくでは、公用こうよう廃止はいししている。

ほう[編集へんしゅう]

禅僧ぜんそうは、出家しゅっけのち法名ほうみょうほか僧侶そうりょである「ほう」をつことがあった(ただし「法号ほうごう」としょうされることもおおく、ごう区別くべつ明確めいかくでない)。この場合ばあいほう法名ほうみょうじゅんつらねるという独特どくとく表記ひょうきもちいられた。たとえば臨済げんは「よしげん」が法名ほうみょうで「臨済」がほうである。この風習ふうしゅう日本にっぽんにもつたわり、そうじゅんのようにほうの「一休いっきゅう」のほうがよくられているそうもいる。

一方いっぽう日本にっぽんにおいて住職じゅうしょくにある僧侶そうりょは、寺号じごう院号いんごう苗字みょうじとすることが一般いっぱんてきであったため、苗字みょうじによる呼称こしょうほうによる呼称こしょうは、禅宗ぜんしゅうそうかんするかぎ並存へいそんすることとなった。たとえば「崇伝すうでん」という禅僧ぜんそうは、ほうもちいて「以心崇伝すうでん」とばれうるし、院号いんごうもちいて「金地院こんちいん崇伝すうでん」ともばれうる。

また、出家しゅっけしても俗世ぞくせ地位ちいとどまっている人物じんぶつは、俗人ぞくじんおなじく苗字みょうじもちい、のみ法名ほうみょうもちいることがあったため、同様どうよう苗字みょうじほう呼称こしょう並存へいそんすることになった。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

注釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

  1. ^ 後世こうせい人間にんげん歴史れきしじょう人物じんぶつとして言及げんきゅうする場合ばあいには基本きほんてきいみなもちいる。ただしこの場合ばあいでも、おくりなもちいて敬意けいいあらわすこともある(しょかずらあきらおくりなもちいて「しょかずらたけこう」とんだり、しろきょえきもちいて「白楽はくらくたかし」とんだりする場合ばあいなど)。また皇帝こうていになった人物じんぶつ通常つうじょう諡号しごうびょうごうばれる。

出典しゅってん[編集へんしゅう]

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]