株式かぶしき交換こうかん

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株式かぶしき交換こうかん(かぶしきこうかん、英語えいご: stock swap)とは、2つの既存きそん会社かいしゃいち完全かんぜん親子おやこ会社かいしゃ関係かんけいにする組織そしき再編さいへんかか手続てつづき米国べいこくほうははほうとするほう制度せいどである[1]

概説がいせつ[編集へんしゅう]

株式かぶしき交換こうかんでは、親会社おやがいしゃ子会社こがいしゃとなるべき2つの会社かいしゃが、子会社こがいしゃとなる会社かいしゃ株主かぶぬしたいし、その保有ほゆうする子会社こがいしゃ株式かぶしき親会社おやがいしゃ株式かぶしきとう一定いってい割合わりあい交換こうかんすることを提案ていあんする。

これにより、親会社おやがいしゃ子会社こがいしゃぜん株式かぶしき取得しゅとくし、子会社こがいしゃとなるべき会社かいしゃ完全かんぜん子会社こがいしゃできる。一方いっぽう子会社こがいしゃ株主かぶぬしは、現有げんゆうする子会社こがいしゃ株式かぶしきえて、親会社おやがいしゃ株式かぶしきとう取得しゅとくする。

この株式かぶしき交換こうかんは、子会社こがいしゃ親会社おやがいしゃ両者りょうしゃ株主かぶぬしが2/3の議決ぎけつをもって承認しょうにんすることで発効はっこうする。

交換こうかん対価たいかとなるものは、親会社おやがいしゃ株式かぶしきかぎらず、有価ゆうかであればりる。具体ぐたいてきには親会社おやがいしゃ既存きそん株式かぶしきのほか、新規しんき発行はっこうされる親会社おやがいしゃ株式かぶしき社債しゃさい新株しんかぶ発行はっこうけん現金げんきん親会社おやがいしゃのさらに親会社おやがいしゃとなる会社かいしゃ株式かぶしきなど、いかなるものもゆるされる。

株式かぶしき移転いてんとは以下いかてんことなる。

  • 株式かぶしき移転いてんでは親会社おやがいしゃ新設しんせつする。株式かぶしき交換こうかんでは親会社おやがいしゃ既存きそん会社かいしゃである。
  • 株式かぶしき交換こうかん企業きぎょう買収ばいしゅうのためにも使つかえるが、株式かぶしき移転いてんでは不可能ふかのう
  • 株式かぶしき交換こうかんでは親会社おやがいしゃ合同ごうどう会社かいしゃでもよい。
  • 効力こうりょくはっするのは、株式かぶしき移転いてんでは新設しんせつ親会社おやがいしゃ設立せつりつ登記とうき株式かぶしき交換こうかんでは株式かぶしき交換こうかん契約けいやくさだめた株式かぶしき交換こうかん
  • 共同きょうどう株式かぶしき移転いてんはあるが株式かぶしき交換こうかん類似るいじのものはない。
  • 株式かぶしき移転いてんでは略式りゃくしき手続てつづき簡易かんい手続てつづき存在そんざいしない(新設しんせつ合併がっぺい同様どうよう)。

この手法しゅほう使つかおも目的もくてきとして、「会社かいしゃ持株もちかぶ会社かいしゃ」「企業きぎょう買収ばいしゅう」のふたつがあげられる。

米国べいこくにおける株式かぶしき交換こうかん[編集へんしゅう]

株式かぶしき交換こうかん制度せいど米国べいこくほうははほうとするほう制度せいどであり、1975ねんアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくバージニアしゅう一般いっぱん会社かいしゃほうはじめて導入どうにゅうした[1]

1976ねんには連邦れんぽうほうである模範もはん事業じぎょう会社かいしゃほうがバージニアしゅう導入どうにゅうされた株式かぶしき交換こうかん制度せいどとほぼおな制度せいど採用さいようしたことでおおくのしゅう会社かいしゃほう普及ふきゅうした[1]

これにより簡易かんい迅速じんそく企業きぎょう再編さいへんおこなえるようになり、容易ようい完全かんぜん親子おやこ会社かいしゃ関係かんけい形成けいせいできるようになった。

ただし、デラウェアしゅうなど一部いちぶしゅうでは株式かぶしき交換こうかん制度せいど採用さいようされていない[1]

日本にっぽんにおける株式かぶしき交換こうかん[編集へんしゅう]

日本にっぽんにおいては1999ねん平成へいせい11ねん)の商法しょうほう改正かいせいにより導入どうにゅうされた(きゅう商法しょうほう352じょう〜363じょう)。2005ねん平成へいせい17ねん)に成立せいりつ公布こうふされた会社かいしゃほうにおいてもがれている。

日本にっぽん会社かいしゃほうでは株式会社かぶしきがいしゃがその発行済はっこうずみ株式かぶしき全部ぜんぶ株式会社かぶしきがいしゃまたは合同ごうどう会社かいしゃ取得しゅとくさせることと定義ていぎされる(会社かいしゃほう2じょう31ごう)。株式かぶしき交換こうかん完全かんぜんおや株式会社かぶしきがいしゃは、効力こうりょく発生はっせいに、株式かぶしき交換こうかん完全かんぜん子会社こがいしゃ発行済はっこうずみ株式かぶしき全部ぜんぶ取得しゅとくする(会社かいしゃほう769じょう)。結果けっかとして、その株式会社かぶしきがいしゃ株式会社かぶしきがいしゃまたは合同ごうどう会社かいしゃ完全かんぜん子会社こがいしゃ(100%子会社こがいしゃ)となる。

手続てつづき[編集へんしゅう]

  • 株式かぶしき交換こうかん契約けいやく締結ていけつ
    • 株式かぶしき交換こうかん契約けいやく締結ていけつ会社かいしゃほう767じょう
      株式会社かぶしきがいしゃ発行済はっこうずみ株式かぶしき全部ぜんぶ取得しゅとくする会社かいしゃ株式会社かぶしきがいしゃまた合同ごうどう会社かいしゃかぎる。以下いかこのへんにおいて「株式かぶしき交換こうかん完全かんぜん親会社おやがいしゃ」という。)とのあいだで、株式かぶしき交換こうかん契約けいやく締結ていけつしなければならない。
    • 株式かぶしき交換こうかん契約けいやく会社かいしゃほう768じょう
  • 事前じぜん開示かいじ
    • 株式かぶしき交換こうかん契約けいやくかんする書面しょめんとうの備およ閲覧えつらんとう会社かいしゃほう782じょう
      株式かぶしき交換こうかん完全かんぜん子会社こがいしゃ株主かぶぬしおよ新株しんかぶ予約よやくけんものは、株式かぶしき交換こうかん完全かんぜん子会社こがいしゃたいして、その営業えいぎょう時間じかんないは、いつでも、株式かぶしき交換こうかん契約けいやく閲覧えつらん謄本とうほんまた抄本しょうほん交付こうふ請求せいきゅうをすることができる(どうじょう3こう)。
  • 株式かぶしき交換こうかん承認しょうにん
  • 債権さいけんしゃ保護ほご手続てつづき会社かいしゃほう789じょう
    • 会社かいしゃ債権さいけんしゃ異議いぎ手続てつづき必要ひつよう場合ばあいがある。
  • 事後じご開示かいじ
    • 株式かぶしき交換こうかんかんする書面しょめんとうの備およ閲覧えつらんとう会社かいしゃほう791じょう
    • 株式かぶしき交換こうかん契約けいやくかんする書面しょめんとうの備およ閲覧えつらんとう会社かいしゃほう794じょう
      株式かぶしき交換こうかん完全かんぜんおや株式会社かぶしきがいしゃ株主かぶぬしおよ債権さいけんしゃは、その営業えいぎょう時間じかんないは、いつでも、契約けいやく書面しょめん閲覧えつらんとう請求せいきゅうをすることができる。

対価たいか[編集へんしゅう]

完全かんぜん子会社こがいしゃとなる会社かいしゃ株主かぶぬしあたえられる対価たいかは、通常つうじょう親会社おやがいしゃ株式かぶしきであろうが、会社かいしゃほうでは対価たいか柔軟じゅうなんさだめた。すなわち、対価たいかとして、親会社おやがいしゃ証券しょうけん社債しゃさい新株しんかぶ予約よやくけん新株しんかぶ予約よやくけんづけ社債しゃさい)だけでなく、会社かいしゃ株式かぶしきとうでもい。

既存きそん株主かぶぬし構成こうせいえないために、または事前じぜん子会社こがいしゃかぶめられて突然とつぜん親会社おやがいしゃだい株主かぶぬしになるものあらわれる可能かのうせいなどを考慮こうりょしてか、最近さいきんでは金銭きんせん対価たいかとする株式かぶしき交換こうかん事例じれいえている。

会計かいけい[編集へんしゅう]

完全かんぜん親会社おやがいしゃのほうでのみ、仕訳しわけ必要ひつようとなる。借方かりかたは「子会社こがいしゃ株式かぶしき」、貸方かしかたは「資本しほんきん」と資本しほん準備じゅんびきんとその資本しほん剰余じょうよきんとなる。

借方かりかた子会社こがいしゃ株式かぶしき」の価額かがくについては、その株式かぶしき交換こうかん取得しゅとくとみなすか持分もちぶん結合けつごうとみなすかで相違そういがある。取得しゅとくとする場合ばあいパーチェスほう適用てきようされる。パーチェスほうでは借方かりかた子会社こがいしゃ株式かぶしき」の価額かがくは、子会社こがいしゃ株主かぶぬしはらった対価たいか総額そうがくとする。このとき、株式かぶしき対価たいかとしたときは、株式かぶしき時価じか評価ひょうかして算出さんしゅつする(=株式かぶしき時価じか単価たんか×交付こうふした株式かぶしきすう)。 子会社こがいしゃがわでの仕訳しわけはない。

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ a b c d 森本もりもとしげる へん会社かいしゃほうコンメンタール 17 組織そしき変更へんこう合併がっぺい会社かいしゃ分割ぶんかつ株式かぶしき交換こうかんとう(1)』商事しょうじ法務ほうむ、2010ねん、400ぺーじ

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]