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棘 とげ 鰭 ひれ 上目 うわめ
分類 ぶんるい
下位 かい 分類 ぶんるい
本文 ほんぶん 参照 さんしょう
棘 とげ 鰭 ひれ 上目 うわめ (きょくきじょうもく、Acanthopterygii )は、硬骨魚 こうこつぎょ 類 るい (条 じょう 鰭 ひれ 綱 つな )の下位 かい 分類 ぶんるい 群 ぐん の一 ひと つ。スズキ目 め やカサゴ目 め など13目 もく 267科 か 2,422属 ぞく が所属 しょぞく し、魚類 ぎょるい 全体 ぜんたい の約 やく 半数 はんすう にあたる14,797種 しゅ が含 ふく まれる[1] 。鰭 ひれ に棘 とげ 条 じょう (きょくじょう)と呼 よ ばれる、硬 かた い棘 とげ 状 じょう の支持 しじ 構造 こうぞう をもつことが特徴 とくちょう となっている。
真 ま 骨 ほね 類 るい の中 なか で最 もっと も進化 しんか が進 すす んだ高位 こうい 群 ぐん として位置付 いちづ けられ、およそ1万 まん 4,800種 しゅ (うち4分 ぶん の1は淡水魚 たんすいぎょ )が所属 しょぞく する大 おお きなグループである。より系統 けいとう の古 ふる い真 ま 骨 ほね 類 るい (アカマンボウ目 め を除 のぞ く)と比較 ひかく すると、棘 とげ 鰭 ひれ 上目 うわめ の仲間 なかま では前 ぜん 上顎 じょうがく 骨 こつ の突起 とっき が発達 はったつ し、上顎 じょうがく の可動 かどう 性 せい がより高 たか くなっている[1] 。その一方 いっぽう で、いくつかの系統 けいとう では顎 あご を前方 ぜんぽう に突 つ き出 だ す能力 のうりょく が二 に 次 じ 的 てき に退化 たいか している場合 ばあい もある。
形態 けいたい 学 がく 的 てき な特徴 とくちょう として、前述 ぜんじゅつ の上顎 じょうがく の機能 きのう とともに、鰭 ひれ (特 とく に背鰭 せびれ ・腹 はら 鰭 ひれ ・臀 しり 鰭 ひれ )に棘 とげ 条 じょう をもつこと、浮 う き袋 ぶくろ に気道 きどう をもたないことなどが挙 あ げられる。また、ほとんどの種類 しゅるい では上 うえ 擬 なずらえ 鎖骨 さこつ を経由 けいゆ して胸 むね 鰭 ひれ の骨格 こっかく を支 ささ える靱帯 じんたい (Baudelot's ligament)が基 もと 後 ご 頭骨 とうこつ から起 おこり 始 はじめ する。ただし、クジラウオ目 め など一部 いちぶ のグループでは、この靱帯 じんたい は第 だい 一 いち 脊椎 せきつい と連続 れんぞく している。
1966年 ねん 、Greenwoodらは魚類 ぎょるい の分類 ぶんるい 体系 たいけい の全面 ぜんめん 的 てき な見直 みなお しを行 おこな い、その中 なか でトウゴロウイワシ目 め ・ダツ目 め などを含 ふく むトウゴロウイワシ系 けい (Atherinomorpha)と、当時 とうじ の「棘 とげ 鰭 ひれ 類 るい 」(現在 げんざい のスズキ系 けい Percomorpha)を並置 へいち した[2] 。1969-73年 ねん にかけて、Rosenが両 りょう グループを統合 とうごう し、棘 とげ 鰭 ひれ 上目 うわめ としての定義 ていぎ を与 あた えた[1] 。
棘 とげ 鰭 ひれ 上目 うわめ が設置 せっち されてから現在 げんざい に至 いた るまで、その分類 ぶんるい 体系 たいけい にはさまざまな改変 かいへん が提唱 ていしょう されている。1993年 ねん 、JohnsonとPattersonはクジラウオ目 め を最 もっと も原始 げんし 的 てき な棘 とげ 鰭 ひれ 類 るい とみなし、マトウダイ目 め ・キンメダイ目 め を続 つづ く位置 いち に置 お く見解 けんかい を示 しめ した[3] 。さらに彼 かれ らは、ボラ系 けい (Mugilomorpha)・トウゴロウイワシ系 けい 、トゲウオ目 め ・タウナギ目 め およびエラッソマ科 か (スズキ目 め )を一 ひと つのグループとしてまとめ、各 かく 群 ぐん のアルファベット 表記 ひょうき の頭文字 かしらもじ をとって「Smegmamorpha 」と名付 なづ けた。Smegmamorpha はセミホウボウ目 め (カサゴ目 め から分離 ぶんり )・カサゴ目 め ・スズキ目 め ・カレイ目 め ・フグ目 め と併 あわ せ新 あら たな「スズキ系 けい 」を構成 こうせい する。彼 かれ らは Smegmamorpha を脊椎 せきつい の構造 こうぞう に共通 きょうつう の特徴 とくちょう をもつ単 たん 系統 けいとう 群 ぐん とみなしたが、以降 いこう のゲノム 情報 じょうほう に基 もと づく分子生物学 ぶんしせいぶつがく 的 てき 解析 かいせき の多 おお くは、本 ほん 群 ぐん の単 たん 系統 けいとう 性 せい を否定 ひてい している[1] 。
ボラ科 か の1種 しゅ Liza aurata (ボラ目 め )。位置付 いちづ けに異論 いろん の多 おお いグループであるが、Nelson(2006)の体系 たいけい では最 もっと も原始 げんし 的 てき な棘 とげ 鰭 ひれ 類 るい とみなされている
トウゴロウイワシ科 か の1種 しゅ Atherina hepsetus (トウゴロウイワシ目 め )。本目 ほんめ の魚類 ぎょるい のほとんどは淡水 たんすい 域 いき や外洋 がいよう の表層 ひょうそう で生活 せいかつ する
アカメ科 か の化石 かせき 種 たね Eolates gracilis (スズキ目 め )。本 ほん 種 しゅ はイタリア における始 はじめ 新 しん 世 よ の地層 ちそう から出土 しゅつど し、背鰭 せびれ ・臀 しり 鰭 ひれ の棘 とげ 条 じょう が明瞭 めいりょう に残 のこ されている
前述 ぜんじゅつ のように棘 とげ 鰭 ひれ 類 るい の分類 ぶんるい 体系 たいけい は揺 ゆ れているが、何 なん らかの見直 みなお しが必要 ひつよう であるという認識 にんしき は共有 きょうゆう されている。Nelson(2006)は概 おおむ ね従来 じゅうらい の体系 たいけい を維持 いじ しながらも、2000年代 ねんだい 以降 いこう 多数 たすう 報告 ほうこく されている分子生物学 ぶんしせいぶつがく 的 てき 解析 かいせき の結果 けっか を含 ふく めた、包括 ほうかつ 的 てき な再 さい 分類 ぶんるい の必要 ひつよう 性 せい を指摘 してき している[1] 。
棘 とげ 鰭 ひれ 上目 うわめ は大 おお きくボラ系 けい (Mugilomorpha)・トウゴロウイワシ系 けい (Atherinomorpha)・スズキ系 けい (Percomorpha)の3つのグループに分 わ けられ、総計 そうけい 13目 もく 267科 か 2,422属 ぞく 14,797種 しゅ を含 ふく む[1] 。詳細 しょうさい は各 かく 項目 こうもく を参照 さんしょう のこと。
ボラ系 けい Mugilomorpha
Nelson(2006)の分類 ぶんるい では最 もっと も原始 げんし 的 てき な棘 とげ 鰭 ひれ 類 るい として位置付 いちづ けられるグループで、ボラ目 め のみ1科 か 17属 ぞく 72種 しゅ が所属 しょぞく する[4] 。ボラ類 るい はスズキ目 め に含 ふく める見解 けんかい もあるが、本体 ほんたい 系 けい ではトウゴロウイワシ系 けい の姉妹 しまい 群 ぐん としてこの位置 いち に置 お かれている。
トウゴロウイワシ系 けい Atherinomorpha
1960年代 ねんだい に定義 ていぎ されたグループで、その強固 きょうこ な単 たん 系統 けいとう 性 せい は40年 ねん 以上 いじょう にわたり研究 けんきゅう 者 しゃ の支持 しじ を得 え てきた[5] 。ほとんどは表層 ひょうそう で生活 せいかつ する魚類 ぎょるい で、淡水 たんすい ・汽水域 すいいき で暮 く らす仲間 なかま が75%を占 し める。体内 たいない 受精 じゅせい ・単 たん 性 せい 生殖 せいしょく など繁殖 はんしょく 様式 ようしき が著 いちじる しく多様 たよう 性 せい に富 と むこと、卵 たまご や精巣 せいそう の形態 けいたい に多 おお くの特徴 とくちょう をもつ点 てん は、他 た の上位 じょうい グループにはみられない本 ほん 群 ぐん に独特 どくとく な形質 けいしつ とみなされている。3目 もく 21科 か 193属 ぞく 1,552種 しゅ で構成 こうせい され、共有 きょうゆう される主 おも な形質 けいしつ は以下 いか の通 とお り[5] 。口蓋 こうがい 骨 こつ と主上 しゅじょう 顎骨 がっこつ との間 あいだ の関節 かんせつ を欠 か き、眼窩 がんか 蝶 ちょう 形 がた 骨 こつ をもたない。鰓 えら 蓋 ぶた 骨 こつ ・前 ぜん 鰓 えら 蓋 ぶた 骨 こつ にはトゲがなく、下尾 しもお 骨 ほね は2-4枚 まい の板 いた 状 じょう (通常 つうじょう 2枚 まい )。浮 う き袋 ぶくろ は消化 しょうか 管 かん と連続 れんぞく しない。
スズキ系 けい Percomorpha
9目 もく 245科 か 2,212属 ぞく 13,173種 しゅ を含 ふく む大 おお きな一群 いちぐん 。肩 かた 帯 たい が烏口 からすぐち 骨 こつ または擬 なずらえ 鎖骨 さこつ と直接 ちょくせつ あるいは靱帯 じんたい を介 かい して連続 れんぞく するなどの共通 きょうつう する特徴 とくちょう をもつが、前述 ぜんじゅつ の通 とお り本 ほん グループの単 たん 系統 けいとう 性 せい には疑義 ぎぎ が呈 てい されている[6] 。
^ a b c d e f 『Fishes of the World 4th edition』 pp.260-262
^ Greenwood PH, Rosen DE Weitzman SH, Myers GS (1966). “Phyletic studies of teleostean fishes, with a provisional classification of living forms”. Bull Amer Mus Nat Hist 131 : 339-456.
^ Johnson GD, Patterson C (1993). “Percomorph phylogeny: a survey of acanthomorphs and a new proposal”. Bull Mar Sci 52 : 554-626.
^ 『Fishes of the World 4th edition』 pp.262-263
^ a b 『Fishes of the World 4th edition』 pp.263-266
^ 『Fishes of the World 4th edition』 pp.293-294