森下もりした雨村うそん

森下もりした 雨村うそん（もりした うそん、1890年ねん2月がつ23日にち - 1965年ねん5月16日にち）は、日本にっぽんの編集へんしゅう者しゃ、翻訳ほんやく家か、小説しょうせつ家か。本名ほんみょう・岩太郎いわたろう。別名べつめい・佐川さがわ春風はるか。 高知こうち県けん佐川さがわ町まち出身しゅっしん。早稲田大学わせだだいがく英文えいぶん科か卒そつ、博文ひろぶみ館かんに勤つとめ、1920年ねんに探偵たんてい小説しょうせつ雑誌ざっし『新しん青年せいねん』編集へんしゅう長ちょうとなり、内外ないがいの探偵たんてい小説しょうせつの紹介しょうかいに努つとめ、自みずからも創作そうさくをおこなった。

人物じんぶつ

土佐とさの生うまれで、酒豪しゅごうだった。横溝よこみぞ正史せいしによると、「親分おやぶん肌はだで、常つねに周囲しゅういに若わかいものを集あつめ、ちっくと一いち杯はいと人ひとに奨すすめ、相手あいてを盛もりつぶしては悦えつに入いっていた」という。横溝よこみぞも「たびたび森下もりしたに盛もりつぶされているうちに、おいおい上達じょうたつして、ついに出藍しゅつらんの誉ほまれを高たかくしたものである」と語かたっている。

『新しん青年せいねん』編集へんしゅう長ちょうとして江戸川えどがわ乱歩らんぽを世よに送おくり、多おおくのすぐれた探偵たんてい作家さっかを誕生たんじょうさせた雨村うそんを、横溝よこみぞは「森下もりしたこそ日本にっぽんの探偵たんてい小説しょうせつの生うみの親おやといっても過言かごんではないだろう」と評ひょうし、「義理ぎりがたい乱歩らんぽは終生しゅうせい雨あめ村むらに恩誼おんぎを感かんじていたようである」、「松本まつもと清張せいちょうは雨あめ村むらを、推理すいり小説しょうせつ界かいにおける大正たいしょう期きの中央公論ちゅうおうこうろんの滝田たきた樗陰ちょいんであると言いっている」と述のべている。クロフツの『樽たる』を最初さいしょに日本にっぽんで紹介しょうかいしたのも雨あめ村むらである。

晩年ばんねんの雨あめ村むらは故郷こきょうの土佐とさ・佐川さがわ町まちに隠棲いんせいし、悠々ゆうゆうとして晴はれ釣ひとし雨う読の境地きょうちを楽たのしんでいた。1965年ねん（昭和しょうわ40年ねん）5月がつに不帰ふきの客きゃくとなったが、横溝よこみぞによると「ちっくと一杯いっぱいやりすぎたのが原因げんいんである」とのことである。遺著いちょに『猿猴えんこう 川かわに死しす』があるが、序文じょぶんを松本まつもと清張せいちょう、井伏いぶせ鱒二ますじ、横溝よこみぞ正史せいしが書かいている。

『新しん青年せいねん』編集へんしゅう長ちょう時代じだいの森下もりした邸ていの別室べっしつには、甲賀こうが三郎さぶろう・松野まつの一夫かずお・延原えんばら謙けん・田中たなか早苗さなえ・平林ひらばやし初之輔はつのすけら『新しん青年せいねん』の常連じょうれん寄稿きこう者しゃたちが集あつまり、「シャグラン（なやまし）・ブリッジ」なる独自どくじルールのトランプ遊あそびにいそしんでいた。

遠縁とおえんにSF作家さっか・評論ひょうろん家かの森下もりした一仁かずひと、ピアニストの森下もりした唯ゆいの親子おやこがいる。

著書ちょしょ

• 『冒険ぼうけん小説しょうせつ 宝島たからじま探険たんけん』（母子草ははこぐさ名義めいぎ、大学だいがく館かん） 1909年ねん3月がつ
• 『少年しょうねん団だんと青年せいねん団だん』（森下もりした岩太郎いわたろう名義めいぎ、文ぶん会堂かいどう書店しょてん） 1916年ねん
• 『怪盗かいとう追撃ついげき 富士夫ふじお少年しょうねん探偵たんてい物語ものがたり』（佐川さがわ春風はるか名義めいぎ、講談社こうだんしゃ） 1926年ねん
• 『森下もりした雨村うそん集しゅう』（改造かいぞう社しゃ、日本にっぽん探偵たんてい小説しょうせつ全集ぜんしゅう 第だい2篇へん） 1930年ねん
• 『白骨はっこつの処女しょじょ』（新潮社しんちょうしゃ、新作しんさく探偵たんてい小説しょうせつ全集ぜんしゅう8） 1932年ねん

  のち河出かわで文庫ぶんこ 2016年ねん）

• 『少年しょうねん探偵たんてい 謎なぞの暗號あんごう』（大だい日本にっぽん雄辯ゆうべん會かい講談社こうだんしゃ） 1934年ねん3月がつ

  のち少年しょうねん倶楽部くらぶ文庫ぶんこ 1975年ねん

• 『三さん十じゅう九きゅう号ごう室しつの女おんな』（朝日新聞社あさひしんぶんしゃ、週刊しゅうかん朝日あさひ文庫ぶんこ） 1935年ねん
• 『丹那にな殺人さつじん事件じけん』（柳香りゅうこう書院しょいん） 1935年ねん
• 『カスパー・ハウゼル 泰西たいせい天てん一いち坊ぼう伝つて 』（河出かわで書房しょぼう、記録きろく文学ぶんがく叢書そうしょ9） 1937年ねん
• 『佐川さがわ春風はるか集しゅう 森下もりした雨村うそん集しゅう』（三さん一いち書房しょぼう、少年しょうねん小説しょうせつ大系たいけい7） 1986年ねん6月がつ
• 『青あお斑猫はんみょう』（春陽しゅんよう堂どう書店しょてん、春陽しゅんよう文庫ぶんこ） 1995年ねん1月がつ
• 『猿猴えんこう 川かわに死しす』（岳たけ洋よう社しゃ） 1996年ねん11月

  のち『猿猴えんこう 川かわに死しす 現代げんだいによみがえった幻まぼろしの釣つりエッセイ』小学館しょうがくかん文庫ぶんこ 2005年ねん

  のち『つり随筆ずいひつ 猿猴えんこう 川かわに死しす』平凡社へいぼんしゃライブラリー） 2005年ねん

• 『釣つりは天国てんごく』（小学館しょうがくかん、小学館しょうがくかん文庫ぶんこ） 2005年ねん6月がつ
• 『森下もりした雨村うそん探偵たんてい小説しょうせつ選せん』（論ろん創そう社しゃ、論ろん創そうミステリ叢書そうしょ） 2008年ねん2月がつ

翻訳ほんやく

• 『警察けいさつと犯罪はんざいの秘密ひみつ』（アーサー・グリフィス、森下もりした岩太郎いわたろう名義めいぎ、日本にっぽん評論ひょうろん社しゃ） 1920年ねん
• 『探偵たんてい名めい玉だま集しゅう 怪奇かいき探偵たんてい 欧米おうべい名めい作家さっか』（博文ひろぶみ館かん、探偵たんてい傑作けっさく叢書そうしょ） 1927年ねん
• 『ダイヤモンド / カートライト事件じけん 』（フレツチヤー、改造かいぞう社しゃ、世界せかい大衆たいしゅう文学ぶんがく全集ぜんしゅう8） 1928年ねん
• 『コリンズ集しゅう』（コリンズ、博文ひろぶみ館かん、世界せかい探偵たんてい小説しょうせつ全集ぜんしゅう）、1929年ねん
• 『ライチエスタ事件じけん / 大だい破滅はめつ』（フレツチヤア / ウエルシーニン、春陽しゅんよう堂どう、探偵たんてい小説しょうせつ全集ぜんしゅう）、1930年ねん
• 『甲虫かぶとむし殺人さつじん事件じけん』（S・S・ヴァン・ダイン、山村やまむら不二ふじ共とも訳やく、新潮社しんちょうしゃ） 1931年ねん
• 『白魔はくま』（スカアレツト他た、春秋しゅんじゅう社しゃ） 1935年ねん
• 『樽たる』（クロフツ、柳香りゅうこう書院しょいん） 1935年ねん
• 『呪のろいの宝石ほうせき』（ウイルキ・コリンス、博文ひろぶみ館かん、名作めいさく探偵たんてい） 1939年ねん
• 『謎なぞの函はこ』（フレッチヤー、博文ひろぶみ館かん、名作めいさく探偵たんてい） 1939年ねん
• 『日東にっとうのプリンス』（オップンハイム、博文ひろぶみ館かん、名作めいさく探偵たんてい） 1939年ねん
• 『月つき長石ちょうせき』（W・W・コリンズ、雄鶏社おんどりしゃ、おんどり・みすてりい） 1950年ねん
• 『プレード街がいの殺人さつじん』（J・ロード、雄鶏社おんどりしゃ、おんどり・みすてりい） 1951年ねん
• 『100%アリバイ』（C・ブツシュ、日本にっぽん出版しゅっぱん協同きょうどう、異色いしょく探偵たんてい小説しょうせつ選集せんしゅう） 1954年ねん

参考さんこう文献ぶんけん

• 『探偵たんてい小説しょうせつの父ちち 森下もりした雨村うそん』（森下もりした時男ときお、文ぶん源げん庫こ） 2007年ねん11月

関連かんれん項目こうもく

• 日本にっぽんの小説しょうせつ家か一覧いちらん
• 推理すいり作家さっか一覧いちらん

外部がいぶリンク

• 森下もりした 雨村うそん：作家さっか別べつ作品さくひんリスト - 青空あおぞら文庫ぶんこ
• 森下もりした雨村うそん（もりしたうそん） - 高知こうち県立けんりつ文学ぶんがく館かん
• 早稲田わせだと文学ぶんがく（森下もりした雨村うそん） - ウェイバックマシン（2009年ねん2月がつ1日にちアーカイブ分ぶん）