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殺人事件被害者遺族の会(さつじんじけんひがいしゃいぞくのかい)は、殺人事件の発生から一定の期間が過ぎると容疑者が判明しても起訴することができなくなる公訴時効制度の撤廃・停止を求めて2009年2月28日に結成された団体。未解決殺人事件の遺族が中心であるが、既に公訴時効が成立した事件の遺族も参加を表明し、発足時は16事件の遺族20人が会員となった[2][3]。
通称「宙の会」(そらのかい)[2]。「宙」の持つ「無限の時間」という意味から命名された[1][4]。
目的と活動[編集]
殺人罪などにおける公訴時効制度の存続理由の一つとされていた「時の経過とともに遺族の被害感情は薄れる」という考え方を否定し、公訴時効の停止・廃止を国や世論に訴えていくことを第一の目的として2009年2月28日に結成。また、飛躍的に進歩したDNA鑑定技術により「時の経過とともに証拠物が散逸する」という考え方にも疑問を呈し、アメリカの性犯罪などに適用されているジョン・ドウ起訴のように、犯人を特定可能なDNA型が残っている未解決事件の公訴時効は停止するなど、捜査技術の進歩を踏まえた公訴時効制度の見直しも国に働きかけていくとしていた[2]。
結成から1年が経過した2010年4月27日、法定上限が死刑に当たる罪の公訴時効廃止などを盛り込んだ改正刑事訴訟法が成立・即日施行され、当団体の第一の目的は達成された(「公訴時効#改正刑事訴訟法施行までの経緯」も参照)。
今後は民事法の賠償制度確立に向けての活動などを行うとしている。その他、事件によって人命が奪われている現状について、遺族の実情や生命の尊厳などあらゆる観点から世の中に訴える啓発活動なども実施している[1]。
会員遺族の主な事件[編集]
ここでは2010年4月27日の改正刑事訴訟法施行以前の公訴時効を記す。時効欄の網掛けがピンク色の事件は施行時点で公訴時効が成立、または起訴が行われた事件である。なお、現在は同法改正によって以下の事件(殺人罪等の死刑に相当する凶悪事件)においても、日本国内で発生した改正時点で公訴時効が成立していない事件に限り、公訴時効は廃止されている。
注:※の事件は2018年1月時点で当団体の公式サイト内「事件の詳細」に記載なし
- リンゼイ・アン・ホーカー殺害事件の遺族であるビル・ホーカーが「宙の会」を訪問した際に夫人は「娘の事件のような殺人に、英国では時効はない。容疑者が将来、時効で自由になるのは許されない」と意見を寄せた[7]。
- ^ 現住建造物等放火罪は「人を死亡させた罪」にはあたらず、2010年に行われた時効撤廃・延長の対象にはなっていないため、本件が、現住建造物等放火罪のみが問われる事件とするならば2016年に公訴時効が成立したことになるが、殺人事件としては時効が撤廃されている。