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被疑ひぎしゃ

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

被疑ひぎしゃ(ひぎしゃ)とは、捜査そうさ機関きかん犯罪はんざい嫌疑けんぎをかけられており、かつ公訴こうそ提起ていきされていないもの容疑ようぎしゃ(ようぎしゃ)とほぼおな意味いみだが、被疑ひぎしゃ日本にっぽんほううえ法令ほうれい用語ようごとして、容疑ようぎしゃ犯罪はんざい報道ほうどう小説しょうせつふくめた一般いっぱんてき用語ようごとして使用しようされることがおおい。また、これら被疑ひぎしゃ /容疑ようぎしゃのうち、逮捕たいほされたものたいする報道ほうどうじょう呼称こしょうとして氏名しめいのち容疑ようぎしゃける用法ようほうもある。

法令ほうれい用語ようごとしての被疑ひぎしゃ概念がいねんじょう区別くべつをする必要ひつようのある場合ばあいにも、法令ほうれいにおいて「被疑ひぎしゃ」ではなく「容疑ようぎしゃ」というかたりもちいられることがある[ちゅう 1]

定義ていぎ

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捜査そうさ機関きかんによってある犯罪はんざいおかしたとうたがわれ捜査そうさ対象たいしょうとなったが、起訴きそされていないもの被疑ひぎしゃという。起訴きそされたのちは、当該とうがい事件じけんとの関係かんけいにおいては被告人ひこくにんばれる。

被疑ひぎしゃ大日本帝国だいにっぽんていこく憲法けんぽうしたでの法令ほうれい用語ようごとして使つかわれている一方いっぽう容疑ようぎしゃどう時期じきから推理すいり小説しょうせつなどで使つかわれてきた。広辞苑こうじえんでは以下いかのように説明せつめいされている。

被疑ひぎしゃ 犯罪はんざい嫌疑けんぎけたものでまだ起訴きそされないもの
容疑ようぎしゃ 犯罪はんざい嫌疑けんぎによって検事けんじまたは司法しほう警察けいさつから取調とりしらべけ、まだ公訴こうそ提起ていきされないもの。
広辞苑こうじえんだい1はん(1955ねん
被疑ひぎしゃ 犯罪はんざい嫌疑けんぎけたものでまだ起訴きそされないもの容疑ようぎしゃ
容疑ようぎしゃ 犯罪はんざい容疑ようぎたれているひと被疑ひぎしゃ
広辞苑こうじえんだい7はん(2018ねん

とく容疑ようぎしゃは「逮捕たいほされたもの」とみられがちだが、法令ほうれい用語ようごとしての被疑ひぎしゃは、逮捕たいほ勾留こうりゅうによる身体しんたいてき拘束こうそくけているかかをわない。犯罪はんざい嫌疑けんぎけて捜査そうさ対象たいしょうとなっているのであれば、逮捕たいほされるまえもの逮捕たいほされなかったもの[ちゅう 2]被疑ひぎしゃである。報道ほうどうにおける容疑ようぎしゃはほとんどの場合ばあい逮捕たいほされたもの報道ほうどうする場合ばあい使つかわれるが、被疑ひぎしゃ死亡しぼう被疑ひぎしゃ病気びょうきなどを理由りゆう逮捕たいほできなかったときにも「○○容疑ようぎしゃ」と表記ひょうきする場合ばあいもある。

被疑ひぎしゃ義務ぎむ

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逮捕たいほ勾留こうりゅうけている場合ばあい取調とりしらべ受忍じゅにん義務ぎむ実務じつむうえではあるとされている。

被疑ひぎしゃ権利けんり

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被疑ひぎしゃ被疑ひぎしゃ特有とくゆう権利けんりゆうする。当然とうぜんながら基本きほんてき人権じんけんゆうするが、刑事けいじ訴訟そしょうほうもとづいて一定いってい制限せいげんける。

弁護人べんごにん選任せんにんけん
弁護人べんごにん選任せんにんする権利けんりである。私選しせん弁護人べんごにん原則げんそくであるが、今後こんご国選こくせん弁護人べんごにん選任せんにんすることをもとめることができるようになる。
国選こくせん弁護人べんごにん選任せんにん請求せいきゅうけん
国選こくせん弁護べんご制度せいど参照さんしょう
接見せっけん交通こうつうけん
接見せっけん交通こうつうけん参照さんしょう
その権利けんり
被疑ひぎしゃ基本きほんてき人権じんけんゆうし、その人権じんけん合理ごうりてき理由りゆうなくさまたげられてはならない。もっとも、被疑ひぎしゃであるために一般いっぱん国民こくみんよりもひろい、合理ごうりてき制限せいげん強制きょうせい捜査そうさ逮捕たいほ勾留こうりゅうなど)がせられうる。

無罪むざい推定すいてい原則げんそく推定すいてい無罪むざい

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被疑ひぎしゃ捜査そうさ機関きかんから犯罪はんざいおかしたとの嫌疑けんぎけているものの、被疑ひぎしゃには法的ほうてきには無罪むざいであるという推定すいていはたらいている。これを無罪むざい推定すいてい原則げんそくもしくは推定すいてい無罪むざいという。しかし、現実げんじつ社会しゃかいにおいては、被疑ひぎしゃとされたもの有罪ゆうざいであるとのあやまった観念かんねんもとづく問題もんだい発生はっせいすることがある。有名ゆうめいれいでは、ロス疑惑ぎわく松本まつもとサリン事件じけんと、そののマスコミ報道ほうどうたいする民事みんじ訴訟そしょう裁判さいばんがある。

日本にっぽん報道ほうどうにおける「容疑ようぎしゃ」のかたりについて

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日本にっぽんマスメディアマスコミ)では一般いっぱんてきに、任意にんい捜査そうさ段階だんかいではなく逮捕たいほなどの強制きょうせい捜査そうさ段階だんかいいたったものについて、被疑ひぎしゃ容疑ようぎしゃ使用しようしている。明治めいじ初期しょき以来いらい被疑ひぎしゃ実名じつめいてであったが、1980年代ねんだいなかばからすえにかけて、被疑ひぎしゃ容疑ようぎしゃになった特定とくてい個人こじんたいして、その個人こじんめいのちに「容疑ようぎしゃ」という呼称こしょうける記述きじゅつひろまり、そのつづいている。この時期じき変革へんかくむかえた理由りゆうとしては下記かきげられる[よう出典しゅってん]

  • 被疑ひぎしゃ無罪むざい推定すいていされている立場たちばであり、基本きほんてき人権じんけん観点かんてんからては適正てきせいでないという意見いけんひろがったこと
  • 報道ほうどう訴訟そしょうがあったこと
  • 80年代ねんだい戦後せんご裁判さいばん冤罪えんざいにより死刑しけい判決はんけつけたひと再審さいしん相次あいついでみとめられたこと
  • 刑事けいじ裁判さいばんけるひとの「○○被告ひこく表記ひょうきがすでにひろがっており、逮捕たいほ段階だんかいでのてと矛盾むじゅんがあること

1984ねんにNHKが「○○容疑ようぎしゃ呼称こしょう開始かいし同年どうねん産経新聞さんけいしんぶんが「肩書かたが表記ひょうき」を採用さいようしたが、「○○会社かいしゃいん」などはまだしも「○○無職むしょく」などの表記ひょうき違和感いわかんがあったこともあってすたれた。その、1989ねん11月に毎日新聞まいにちしんぶんが「○○容疑ようぎしゃ表記ひょうきをルールしたのを一気いっきぜんマスコミにひろがった。被疑ひぎしゃ犯人はんにんふせぐための改革かいかくだったが、「○○容疑ようぎしゃとはうが、あたかも容疑ようぎしゃ真犯人しんはんにんであるかのように、大々的だいだいてき報道ほうどうする傾向けいこうがある」と、てのころとあまりわらない報道ほうどう姿勢しせいたいする批判ひはん存在そんざいする[1]

逮捕たいほされない場合ばあい、「容疑ようぎしゃ」という肩書かたがきをけないことが一般いっぱんてきであり、たとえば書類しょるい送検そうけんされた場合ばあい著名ちょめいじんであれば役職やくしょくなどの肩書かたがきでほうじられ、一般人いっぱんじんであれば氏名しめいほうじられないことがおおい。しかし、被疑ひぎしゃがわ事情じじょう逮捕たいほいたらなかった場合ばあいでも、被疑ひぎしゃ氏名しめい容疑ようぎしゃという肩書かたがきをつけて報道ほうどうすることがある。いちれいとして、第一生命だいいちせいめい多額たがく詐取さしゅ事件じけんでは、89さい女性じょせい営業えいぎょう職員しょくいん存命ぞんめい)が詐欺さぎ容疑ようぎ書類しょるい送検そうけんされたところ、読売新聞よみうりしんぶんは○○容疑ようぎしゃという肩書かたがきでほうじた(読売新聞よみうりしんぶん2021ねん5がつ20日はつか西部せいぶ朝刊ちょうかん30めん)。ほか、島根しまね女子大じょしだいせい死体したい遺棄いき事件じけんでは、被疑ひぎしゃ死亡しぼうしていたため逮捕たいほされていないが、朝日新聞あさひしんぶん朝日新聞あさひしんぶん2016ねん12月20にち夕刊ゆうかん11めん)、毎日新聞まいにちしんぶん毎日新聞まいにちしんぶん2016ねん12月20にち夕刊ゆうかん9めん)、読売新聞よみうりしんぶん読売新聞よみうりしんぶん2016ねん12月20にち夕刊ゆうかん13めん)、日本経済新聞にほんけいざいしんぶん日本経済新聞にほんけいざいしんぶん2016ねん12月20にち夕刊ゆうかん13めん)は、いずれも〇〇容疑ようぎしゃ報道ほうどうした。

容疑ようぎしゃ」「被疑ひぎしゃ以外いがい報道ほうどうじょう呼称こしょう

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前記ぜんきの「名前なまえうしろに容疑ようぎしゃける呼称こしょう」については報道ほうどう機関きかんによってルールがあり、1つの記事きじなかで2かい以降いこう実名じつめい記載きさいする場合ばあいなどは「容疑ようぎしゃ」のかたりもちいず、「さん」「」などの敬称けいしょうや、職業しょくぎょうじょう肩書かたがきなどをけて報道ほうどうすることも可能かのうである[2][3]

役職やくしょくからんだ容疑ようぎ逮捕たいほされた場合ばあいでも肩書かたがきを使つかうことがおおい。2020ねん東京とうきょうオリンピック・パラリンピック贈収賄ぞうしゅうわい事件じけんでは、日本にっぽんオリンピック委員いいんかいもと理事りじやスポンサー企業きぎょうもと会長かいちょうらをすべて「○○容疑ようぎしゃ」と表記ひょうきしてしまうとかりにくくなるため、新聞しんぶんでは初出しょしゅつのみ容疑ようぎしゃとし2かいからはもと理事りじもと会長かいちょうなどの肩書かたがきにしたメディアがあった。会社かいしゃ社長しゃちょう役員やくいん公務員こうむいん警察官けいさつかん自治体じちたい職員しょくいんなど)などの被疑ひぎしゃ被告人ひこくにんかんして、最初さいしょに「会社かいしゃ社長しゃちょうの○○容疑ようぎしゃ」とび、そのは「役職やくしょく」をつけて報道ほうどうすることがしばしばみられる。

あるいは有名ゆうめい芸能人げいのうじん軽微けいび犯罪はんざい被疑ひぎしゃになったり、逮捕たいほいたっていない場合ばあいなどで、「〇〇メンバー」や「〇〇タレント」などの呼称こしょうもちいることがある[4]

なお、学校がっこう使つかわれる公民こうみん教科書きょうかしょでは、「~である人物じんぶつ容疑ようぎしゃ(または被疑ひぎしゃ)とぶ」などと、容疑ようぎしゃ文字もじ太字ふとじ被疑ひぎしゃ文字もじ細字さいじのカッコきになっている[よう出典しゅってん]

 歴史れきし 

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脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ たとえば、出入国しゅつにゅうこく管理かんりおよ難民なんみん認定にんていほうにおいては、入国にゅうこく警備けいびかんにおいてどうほう24じょう各号かくごういち該当がいとうすると思料しりょうする外国がいこくじんを「容疑ようぎしゃ」とぶ。また、犯罪はんざい捜査そうさ規範きはんおよ犯罪はんざい捜査そうさ共助きょうじょ規則きそくにおいては「容疑ようぎしゃおよ捜査そうさ資料しりょうその参考さんこう事項じこう」との表現ひょうげんもちいられている。また、収容しゅうようしゃ懲罰ちょうばつかんする訓令くんれい法務省ほうむしょう矯成くんだい3351ごう)では、反則はんそく行為こういをしたうたがいがある収容しゅうようしゃとう収容しゅうようしゃ刑事けいじ施設しせつ収容しゅうようされているもの)、ろう役場やくば留置とめおきしゃおよかん置場おきば留置りゅうちしゃをいう)を反則はんそく容疑ようぎしゃとしている。
  2. ^ 逮捕たいほ要件ようけんたさない場合ばあい逮捕たいほ要件ようけんたすが逮捕たいほをせず在宅ざいたく調しらべるとの判断はんだん捜査そうさ機関きかんがした場合ばあい

出典しゅってん

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  1. ^ 渡辺わたなべ洋三ようぞうほうとはなに新版しんぱん」62ページ
  2. ^ 記者きしゃハンドブック 新聞しんぶん用字ようじ用語ようごしゅう』(だい13はん共同通信社きょうどうつうしんしゃ、2016ねん、539-540ぺーじ 
  3. ^ 強制きょうせいわいせつ報道ほうどう山口やまぐち達也たつやメンバー」にネットでは「暗黙あんもくのルール」と指摘してき実際じっさいは… - 籏智広太ひろた瀬谷せたに健介けんすけBuzzFeed News、2018ねん4がつ25にち
  4. ^ 山口やまぐちメンバー」報道ほうどうからかえる、芸能人げいのうじん呼称こしょう歴史れきし 逮捕たいほ書類しょるい送検そうけん各社かくしゃ対応たいおうは?弁護士べんごしドットコム 2018ねん4がつ29にち

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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