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水中 すいちゅう 文化 ぶんか 遺産 いさん 保護 ほご 条約 じょうやく (すいちゅうぶんかいさんほごじょうやく、英語 えいご :Convention on the Protection of the Underwater Cultural Heritage)は、2001年 ねん 11月の国際 こくさい 連合 れんごう 教育 きょういく 科学 かがく 文化 ぶんか 機関 きかん (ユネスコ)総会 そうかい で採択 さいたく された、沈没 ちんぼつ 船 せん や海底 かいてい 遺跡 いせき などの水中 すいちゅう 文化 ぶんか 遺産 いさん の保護 ほご を目的 もくてき とした国際 こくさい 条約 じょうやく である。正式 せいしき 名称 めいしょう は、水中 すいちゅう 文化 ぶんか 遺産 いさん の保護 ほご に関 かん する条約 じょうやく 。批准 ひじゅん 国 くに がその発効 はっこう に必要 ひつよう な20か国 こく に達 たっ したため、2009年 ねん 1月 がつ に発効 はっこう した。
1943年 ねん にスクーバダイビング の技術 ぎじゅつ が発明 はつめい されて以降 いこう 、水中 すいちゅう 考古学 こうこがく の本格 ほんかく 的 てき な開始 かいし と同時 どうじ に、トレジャーハンター の活動 かつどう が世界 せかい 大 だい で活発 かっぱつ となった。トレジャーハンター は、学術 がくじゅつ 的 てき な海洋 かいよう 考古学 こうこがく 調査 ちょうさ や研究 けんきゅう を実施 じっし することなしに、経済 けいざい 的 てき に価値 かち がある水中 すいちゅう 文化 ぶんか 遺産 いさん 、とりわけ沈没 ちんぼつ 船 せん からの積載 せきさい 物 ぶつ 、だけを無秩序 むちつじょ に引 ひ き揚 あ げ、それらを商業 しょうぎょう 目的 もくてき で売却 ばいきゃく した。20世紀 せいき も後半 こうはん になると、高度 こうど な水中 すいちゅう 探査 たんさ 技術 ぎじゅつ の発達 はったつ とともに、トレジャーハンター の活動 かつどう もより大 だい 規模 きぼ かつ組織 そしき 的 てき となり、オークションなどを悪用 あくよう した水中 すいちゅう 文化 ぶんか 遺産 いさん の売買 ばいばい などが国際 こくさい 的 てき な非難 ひなん を浴 あ びるようになっていった。しかし、こうしたトレジャーハンター の活動 かつどう を規制 きせい する国際 こくさい 条約 じょうやく は存在 そんざい していなかった[1] 。
1982年 ねん に国連 こくれん 海洋 かいよう 法 ほう 条約 じょうやく が採択 さいたく 、同 どう 国際 こくさい 条約 じょうやく は1994年 ねん に発効 はっこう した。同 どう 条約 じょうやく は、水中 すいちゅう 文化 ぶんか 遺産 いさん に関連 かんれん して、その第 だい 149条 じょう :考古学 こうこがく 上 じょう の物 もの 及 およ び歴史 れきし 的 てき な物 もの で「深海 しんかい 底 そこ において発見 はっけん された考古学 こうこがく 上 じょう の又 また は歴史 れきし 的 てき な特質 とくしつ を有 ゆう するすべての物 もの については、当該 とうがい 物 ぶつ の原産地 げんさんち である国 くに 、文化 ぶんか 上 じょう の起源 きげん を有 ゆう する国 くに 又 また は歴史 れきし 上 じょう 及 およ び考古学 こうこがく 上 じょう の起源 きげん を有 ゆう する国 くに の優先 ゆうせん 的 てき な権利 けんり に特別 とくべつ の考慮 こうりょ を払 はら い、人類 じんるい 全体 ぜんたい の利益 りえき のために保存 ほぞん し又 また は用 もち いる」と定 さだ め、第 だい 303条 じょう :海洋 かいよう において発見 はっけん された考古学 こうこがく 上 じょう の物 もの 及 およ び歴史 れきし 的 てき な物 もの の第 だい 1項 こう で「いずれの国 くに も、海洋 かいよう において発見 はっけん された考古学 こうこがく 上 じょう の又 また は歴史 れきし 的 てき な特質 とくしつ を有 ゆう する物 もの を保護 ほご する義務 ぎむ を有 ゆう し、このために協力 きょうりょく する」と定 さだ めている[2] 。しかし、その内容 ないよう が不十分 ふじゅうぶん であったために、トレジャーハンター の活動 かつどう は継続 けいぞく した。
これに対応 たいおう するために、2001年 ねん 11月2日 にち の第 だい 31回 かい 国際 こくさい 連合 れんごう 教育 きょういく 科学 かがく 文化 ぶんか 機関 きかん 総会 そうかい で水中 すいちゅう 文化 ぶんか 遺産 いさん 保護 ほご 条約 じょうやく が採択 さいたく された[3] 。2008年 ねん 10月 がつ に批准 ひじゅん 国 くに がその発効 はっこう に必要 ひつよう な20か国 こく に達 たっ したため、2009年 ねん 1月 がつ 2日 にち に同 どう 条約 じょうやく は発効 はっこう した。2023年 ねん の段階 だんかい で、世界 せかい の約 やく 76か国 こく が同 どう 条約 じょうやく の批准 ひじゅん の手続 てつづ きを終了 しゅうりょう している。イタリア、スペイン、ポルトガル、エジプト、メキシコ、キューバ、ミクロネシア連邦 れんぽう などが批准 ひじゅん 国 こく である。一方 いっぽう 、国連 こくれん の常任 じょうにん 理事 りじ 国 こく では、フランスのみが批准 ひじゅん 国 こく であり、東 ひがし アジアと東南 とうなん アジアからは、カンボジアのみが同 どう 条約 じょうやく を批准 ひじゅん している。フランス以外 いがい の国連 こくれん の常任 じょうにん 理事 りじ 国 こく に加 くわ え、ドイツ、カナダ、オーストラリア、インド、日本 にっぽん などの主要 しゅよう 国 こく も未 み 批准 ひじゅん である。海洋 かいよう 資源 しげん 開発 かいはつ に関 かん して高 たか い技術 ぎじゅつ 力 りょく をもつ海洋 かいよう 利用 りよう 国 こく は、同 どう 条約 じょうやく が定 さだ める沿岸 えんがん 国 こく 管轄 かんかつ 権 けん の内容 ないよう を危惧 きぐ しており、とくに国家 こっか 管轄 かんかつ 権 けん 外 がい の海域 かいいき における生物 せいぶつ 多様 たよう 性 せい の保全 ほぜん に関 かん する問題 もんだい などをめぐる国際 こくさい ルールに対 たい して、同 どう 条約 じょうやく が一定 いってい の道標 どうひょう を示 しめ すのではないかという可能 かのう 性 せい を憂慮 ゆうりょ している。また、その原 げん 位置 いち 保存 ほぞん の原則 げんそく や、同 どう 条約 じょうやく が敢 あ えて触 ふ れることがなかった水中 すいちゅう 文化 ぶんか 遺産 いさん の所有 しょゆう 権 けん や政府 せいふ 船舶 せんぱく である沈没 ちんぼつ 船 せん の主権 しゅけん 免除 めんじょ に関連 かんれん する諸 しょ 問題 もんだい が、同 どう 条約 じょうやく の批准 ひじゅん に対 たい する大 おお きなハードルともなっている[4] 。
アラビア語 ご 、中国 ちゅうごく 語 ご 、英語 えいご 、フランス語 ふらんすご 、ロシア語 ご およびスペイン語 ご を正文 せいぶん として作成 さくせい されている。35条 じょう と附属 ふぞく 書 しょ 36規則 きそく から構成 こうせい されている。
水中 すいちゅう 文化 ぶんか 遺産 いさん 保護 ほご 条約 じょうやく の第 だい 1条 じょう では、水中 すいちゅう 文化 ぶんか 遺産 いさん とは次 つぎ の通 とお り定義 ていぎ されている。水中 すいちゅう 文化 ぶんか 遺産 いさん とは、文化 ぶんか 的 てき 、歴史 れきし 的 てき 、または考古学 こうこがく 的 てき な性格 せいかく を有 ゆう する人類 じんるい の存在 そんざい のすべての痕跡 こんせき であり、その一部 いちぶ または全部 ぜんぶ が定期 ていき 的 てき あるいは恒常 こうじょう 的 てき に、少 すく なくとも100年間 ねんかん 水中 すいちゅう にあった次 つぎ の三 みっ つのものである。第 だい 一 いち は、遺跡 いせき 、構築 こうちく 物 ぶつ 、建造 けんぞう 物 ぶつ 、人工 じんこう 物 ぶつ および人間 にんげん の遺骸 いがい で、考古学 こうこがく 的 てき および自然 しぜん 的 てき な背景 はいけい を有 ゆう するもの、第 だい 二 に は、船舶 せんぱく 、航空機 こうくうき 、その他 た の乗物 のりもの もしくはその一部 いちぶ 、その貨物 かもつ あるいはその他 た の積載 せきさい 物 ぶつ で、考古学 こうこがく 的 てき および自然 しぜん 的 てき な背景 はいけい を有 ゆう するもの、第 だい 三 さん は、先史 せんし 学 がく 的 てき な性格 せいかく を有 ゆう するものである。
水中 すいちゅう 文化 ぶんか 遺産 いさん 保護 ほご 条約 じょうやく では、国連 こくれん 海洋 かいよう 法 ほう 条約 じょうやく が規定 きてい する海域 かいいき 区分 くぶん にしたがって、それぞれ、内水 うすい 、群島 ぐんとう 水域 すいいき 、領海 りょうかい 、接続 せつぞく 水域 すいいき 、大陸棚 たいりくだな 、排他 はいた 的 てき 経済 けいざい 水域 すいいき 、深海 ふかうみ 底 そこ にある水中 すいちゅう 文化 ぶんか 遺産 いさん の保護 ほご 措置 そち を定 さだ めている。その実効 じっこう のため、同 どう 条約 じょうやく の締約 ていやく 国 こく 間 あいだ での水中 すいちゅう 文化 ぶんか 遺産 いさん の調査 ちょうさ 、研究 けんきゅう 、保存 ほぞん 、公開 こうかい 、水中 すいちゅう 考古学 こうこがく 訓練 くんれん を含 ふく む教育 きょういく などの側面 そくめん での協力 きょうりょく や情報 じょうほう 共有 きょうゆう が謳 うた われている。一方 いっぽう 、水中 すいちゅう 文化 ぶんか 遺産 いさん を対象 たいしょう とする活動 かつどう は、適切 てきせつ な学術 がくじゅつ 的 てき 能力 のうりょく かつ資格 しかく を持 も った水中 すいちゅう を専門 せんもん とする考古学 こうこがく 者 もの の指揮 しき 、監督 かんとく 下 か によるものだけに限定 げんてい されるとして、違法 いほう な取引 とりひき の対象 たいしょう となった水中 すいちゅう 文化 ぶんか 遺産 いさん の押収 おうしゅう や処分 しょぶん にも言及 げんきゅう している。
水中 すいちゅう 文化 ぶんか 遺産 いさん 保護 ほご 条約 じょうやく の二 に 大 だい 柱 はしら は、水中 すいちゅう 文化 ぶんか 遺産 いさん の商業 しょうぎょう 的 てき 利用 りよう の厳禁 げんきん と水中 すいちゅう 文化 ぶんか 遺産 いさん の原 げん 位置 いち 保存 ほぞん の原則 げんそく である。前者 ぜんしゃ は、同 どう 条約 じょうやく がそもそもトレジャー・ハンター への対応 たいおう として起草 きそう されてきたという経緯 けいい を物語 ものがた っている。後者 こうしゃ についていえば、すなわち、水中 すいちゅう 文化 ぶんか 遺産 いさん を渚 なぎさ から移動 いどう したり海底 かいてい から引 ひ き揚 あ げたりしてはならず、その現場 げんば において考古学 こうこがく 者 もの が保存 ほぞん された水中 すいちゅう 文化 ぶんか 遺産 いさん の研究 けんきゅう を実施 じっし していかなければならないというものである。しかしながら、盗掘 とうくつ や港湾 こうわん 工事 こうじ などによる破壊 はかい によって危険 きけん にさらされている場合 ばあい には、適切 てきせつ な保存 ほぞん 処理 しょり が行 おこな われるという前提 ぜんてい で、遺物 いぶつ の引 ひ き揚 あ げも例外 れいがい 的 てき に認 みと められている[5] 。
良 よ く誤解 ごかい されてはいるが、水中 すいちゅう 文化 ぶんか 遺産 いさん になるという意味 いみ は、国際 こくさい 連合 れんごう 教育 きょういく 科学 かがく 文化 ぶんか 機関 きかん の世界 せかい 遺産 いさん のように、当該 とうがい 水中 すいちゅう 文化 ぶんか 遺産 いさん の沿岸 えんがん 国 こく や起源 きげん 国 こく が国際 こくさい 連合 れんごう 教育 きょういく 科学 かがく 文化 ぶんか 機関 きかん に申請 しんせい を行 おこな ったり、国際 こくさい 連合 れんごう 教育 きょういく 科学 かがく 文化 ぶんか 機関 きかん が登録 とうろく をしたりするというような話 はなし ではない。100年 ねん を経過 けいか した時点 じてん で、自動的 じどうてき にすべて水中 すいちゅう 文化 ぶんか 遺産 いさん となる。1912年 ねん に沈没 ちんぼつ したタイタニック号 ごう は、2012年 ねん に自動的 じどうてき に水中 すいちゅう 文化 ぶんか 遺産 いさん となり、水中 すいちゅう 文化 ぶんか 遺産 いさん 保護 ほご 条約 じょうやく の規制 きせい 下 か に入 はい った。日 にち 露 ろ 戦争 せんそう 中 なか に沈没 ちんぼつ した艦船 かんせん はすでに、すべてが水中 すいちゅう 文化 ぶんか 遺産 いさん である一方 いっぽう 、第 だい 二 に 次 じ 世界 せかい 大戦 たいせん 中 ちゅう に沈没 ちんぼつ した艦船 かんせん や海 うみ 没 ぼつ 遺骨 いこつ はすべて、2045年 ねん 以降 いこう に水中 すいちゅう 文化 ぶんか 遺産 いさん となる。
^ 岩淵 いわぶち 聡 さとし 文 ぶん 2012『文化 ぶんか 遺産 いさん の眠 ねむ る海 うみ :水中 すいちゅう 考古学 こうこがく 入門 にゅうもん 』(京都 きょうと :化学 かがく 同人 どうじん )。
^ 国連 こくれん 海洋 かいよう 法 ほう 条約 じょうやく (全文 ぜんぶん ) - 国際 こくさい 連合 れんごう 。
^ 小山 こやま 佳枝 かえ 2004「水中 すいちゅう 文化 ぶんか 遺産 いさん の法的 ほうてき 保護 ほご 」『Ocean Newsletter』98号 ごう 。
^ 小山 こやま 佳枝 かえ 2013「水中 すいちゅう 文化 ぶんか 遺産 いさん 保護 ほご 条約 じょうやく が意味 いみ するもの」『Ocean Newsletter』301号 ごう 。
^ 水中 すいちゅう 文化 ぶんか 遺産 いさん 保護 ほご 条約 じょうやく (全文 ぜんぶん ) - 国際 こくさい 連合 れんごう 教育 きょういく 科学 かがく 文化 ぶんか 機関 きかん (ユネスコ)。