出典 しゅってん : フリー百科 ひゃっか 事典 じてん 『ウィキペディア(Wikipedia)』
物理 ぶつり 学 がく における波数 はすう ベクトル とは、波動 はどう を記述 きじゅつ するのに用 もち いられるベクトル である。
全 すべ てのベクトルのように大 おお きさと方向 ほうこう を持 も ち、これら両方 りょうほう が重要 じゅうよう である。
その大 おお きさは波 なみ の波数 はすう または角 すみ 波数 はすう であり、波長 はちょう に反比例 はんぴれい する。
その方向 ほうこう は通常 つうじょう 、波動 はどう の伝播 でんぱ (英語 えいご 版 ばん ) の方向 ほうこう であるが、いつもそうとは限 かぎ らない(以下 いか を参照 さんしょう )。
特殊 とくしゅ 相対 そうたい 論 ろん の文脈 ぶんみゃく では、波数 はすう ベクトルは4元 げん ベクトル としても定義 ていぎ できる。
サイン波 は の波長 はちょう λ らむだ は図 ず に示 しめ されるように、隣 とな り合 あ った頂点 ちょうてん または谷 たに または隣 とな り合 あ ったゼロ交差 こうさ のような同 おな じ位相 いそう をもつ2つの点 てん の間 あいだ で測 はか ることができる。
波数 はすう ベクトルには2つの一般 いっぱん 的 てき な定義 ていぎ があり、大 おお きさが因子 いんし 2πだけ異 こと なる。
1つ目 め の定義 ていぎ は物理 ぶつり 学 がく などで用 もち いられ、もう一 ひと つの定義 ていぎ は結晶 けっしょう 学 がく などで用 もち いられる。
[ 1]
この記事 きじ ではそれらを「物理 ぶつり 学 がく の定義 ていぎ 」と「結晶 けっしょう 学 がく の定義 ていぎ 」とそれぞれ呼 よ ぶ。
理想 りそう 的 てき な1次元 じげん の進行 しんこう 波 は は次 つぎ の方程式 ほうていしき に従 したが う。
ψ ぷさい
(
x
,
t
)
=
A
cos
(
k
x
−
ω おめが
t
+
φ ふぁい
)
{\displaystyle \psi (x,t)=A\cos(kx-\omega t+\varphi )}
ここで、
x は位置 いち 。
t は時間 じかん 。
ψ ぷさい
{\displaystyle \psi }
(x とt の関数 かんすう )は波 なみ を記述 きじゅつ する攪乱 かくらん (たとえば海洋 かいよう 波 は における
ψ ぷさい
{\displaystyle \psi }
は水 みず の高 たか さであり、音波 おんぱ における
ψ ぷさい
{\displaystyle \psi }
は空気圧 くうきあつ である)。
A は波 なみ の振幅 しんぷく 。
φ ふぁい
{\displaystyle \varphi }
は「位相 いそう 角 かく 」で、2つの波 なみ がお互 たが いにどれだけ同期 どうき していないかを記述 きじゅつ する。
ω おめが
{\displaystyle \omega }
は波 なみ の時間 じかん 的 てき な角 すみ 周波数 しゅうはすう で、単位 たんい 時間 じかん あたりどれだけ沢山 たくさん の振動 しんどう が完了 かんりょう するかを記述 きじゅつ する。周期 しゅうき
T
{\displaystyle T}
と方程式 ほうていしき
ω おめが
=
2
π ぱい
/
T
{\displaystyle \omega =2\pi /T}
によって関連 かんれん している。
k
{\displaystyle k}
は波 なみ の空間 くうかん 的 てき な角 かく 周波数 しゅうはすう (波数 はすう )であり、単位 たんい 空間 くうかん あたりどれだけ沢山 たくさん の振動 しんどう が完了 かんりょう するかを記述 きじゅつ する。波長 はちょう と式 しき
k
=
2
π ぱい
/
λ らむだ
{\displaystyle k=2\pi /\lambda }
によって関連 かんれん している。
この波動 はどう は+xの方向 ほうこう に速度 そくど (より正確 せいかく には位相 いそう 速度 そくど )
ω おめが
/
k
{\displaystyle \omega /k}
で進行 しんこう する。
結晶 けっしょう 学 がく において、同 おな じ波動 はどう はわずかに異 こと なる方程式 ほうていしき を用 もち いて記述 きじゅつ される。
[ 2]
1次元 じげん と3次元 じげん ではそれぞれ、
ψ ぷさい
(
x
,
t
)
=
A
cos
(
2
π ぱい
(
k
x
−
ν にゅー
t
)
+
φ ふぁい
)
{\displaystyle \psi (x,t)=A\cos(2\pi (kx-\nu t)+\varphi )}
ψ ぷさい
(
r
,
t
)
=
A
cos
(
2
π ぱい
(
k
⋅
r
−
ν にゅー
t
)
+
φ ふぁい
)
{\displaystyle \psi \left({\mathbf {r} },t\right)=A\cos \left(2\pi ({\mathbf {k} }\cdot {\mathbf {r} }-\nu t)+\varphi \right)}
違 ちが いは、
角 すみ 周波数 しゅうはすう
ω おめが
{\displaystyle \omega }
の代 か わりに周波数 しゅうはすう
ν にゅー
{\displaystyle \nu }
が用 もち いられる。これらは
2
π ぱい
ν にゅー
=
ω おめが
{\displaystyle 2\pi \nu =\omega }
の関係 かんけい にある。この記事 きじ においてこの置 お き換 か えは重要 じゅうよう ではないが、結晶 けっしょう 学 がく の一般 いっぱん 的 てき 慣習 かんしゅう を反映 はんえい している。
波数 はすう k と波数 はすう ベクトルk は異 こと なる方法 ほうほう で定義 ていぎ される。上述 じょうじゅつ の物理 ぶつり 学 がく の定義 ていぎ では
k
=
|
k
|
=
2
π ぱい
/
λ らむだ
{\displaystyle k=|{\mathbf {k} }|=2\pi /\lambda }
であるが、一方 いっぽう ここでは
k
=
|
k
|
=
1
/
λ らむだ
{\displaystyle k=|{\mathbf {k} }|=1/\lambda }
である。
k の方向 ほうこう は以下 いか で議論 ぎろん する。
波数 はすう ベクトルが指 さ す方向 ほうこう は「波動 はどう の伝播 でんぱ の方向 ほうこう 」とは区別 くべつ しなければならない。
「波動 はどう の伝播 でんぱ の方向 ほうこう 」は波動 はどう のエネルギー流 なが れの方向 ほうこう であり、小 ちい さな波 なみ 束 たば が動 うご く方向 ほうこう 、つまり群 ぐん 速度 そくど の方向 ほうこう である。
光波 こうは では、これはポインティングベクトル の方向 ほうこう でもある。
一方 いっぽう で波数 はすう ベクトルは位相 いそう 速度 そくど の方向 ほうこう を指 さ す。
い換 いか えれば波数 はすう ベクトルは、定位 ていい 相 しょう の面 めん (波面 はめん とも呼 よ ばれる)の法線 ほうせん 方向 ほうこう を指 さ す。
無 む 損失 そんしつ 等 ひとし 方 かた 性 せい 媒質 ばいしつ (空気 くうき や全 すべ ての気体 きたい 、ガラス のようないくつかの固体 こたい など)において、波数 はすう ベクトルの方向 ほうこう は波動 はどう の伝播 でんぱ の方向 ほうこう と全 まった く同 おな じである。
媒質 ばいしつ の損失 そんしつ が大 おお きい場合 ばあい 、一般 いっぱん 的 てき に波数 はすう ベクトルは波動 はどう の伝播 でんぱ の方向 ほうこう 以外 いがい の方向 ほうこう を指 さ す。
波数 はすう ベクトルが波動 はどう が伝播 でんぱ する方向 ほうこう と同 おな じである条件 じょうけん は、波動 はどう が均一 きんいつ であることであり、媒質 ばいしつ の損失 そんしつ が大 おお きいときは必 かなら ずしもそうとは限 かぎ らない。
均一 きんいつ な波動 はどう において定位 ていい 相 しょう の面 めん は、一定 いってい 振幅 しんぷく の面 めん でもある。
不 ふ 均一 きんいつ な波動 はどう では、これら2つの種類 しゅるい の面 めん は方向 ほうこう が異 こと なる。
波数 はすう ベクトルは常 つね に一定 いってい 位相 いそう の面 めん と垂直 すいちょく である。
例 たと えば、非対称 ひたいしょう 結晶 けっしょう 中 ちゅう の光波 こうは や堆積岩 たいせきがん 中 なか の音波 おんぱ のように、波動 はどう が異 あや 方 かた 性 せい 媒質 ばいしつ 中 なか を進行 しんこう するとき、波数 はすう ベクトルは波動 はどう 伝播 でんぱ の方向 ほうこう を必 かなら ずしも指 さ すわけではない。
[ 3]
[ 4]
固体 こたい 物理 ぶつり 学 がく において、結晶 けっしょう 中 なか の電子 でんし や正 せい 孔 あな の「波数 はすう ベクトル」(k-ベクトルとも呼 よ ばれる)は、その量子力学 りょうしりきがく 的 てき な波動 はどう 関数 かんすう の波数 はすう ベクトルである。
それらの電子 でんし 波 は は、通常 つうじょう のサイン波 は ではなく、サイン波 は である一種 いっしゅ の「包絡 ほうらく 関数 かんすう (英語 えいご 版 ばん ) 」を持 も ち、波数 はすう ベクトルは通常 つうじょう 「物理 ぶつり 学 がく の定義 ていぎ 」を用 もち いてその包絡 ほうらく 波 は を用 もち いて定義 ていぎ される。
詳細 しょうさい はブロッホ波 は を参照 さんしょう 。
[ 5]
^ Physics definition example:Harris, Benenson, Stocker (2002). Handbook of Physics . p. 288. ISBN 978-0-387-95269-7 . https://books.google.com/books?id=c60mCxGRMR8C&pg=PA288 .Crystallography definition example: Va?nshte?n (1994). Modern Crystallography . p. 259. ISBN 978-3-540-56558-1 . https://books.google.com/books?id=xjIGV_hPiysC&pg=PA259
^ Va?nshte?n, Boris Konstantinovich (1994). Modern Crystallography . p. 259. ISBN 978-3-540-56558-1 . https://books.google.com/books?id=xjIGV_hPiysC&pg=PA259
^ Fowles, Grant (1968). Introduction to modern optics . Holt, Rinehart, and Winston. p. 177
^ "This effect has been explained by Musgrave (1959) who has shown that the energy of an elastic wave in an anisotropic medium will not, in general, travel along the same path as the normal to the plane wavefront...", Sound waves in solids by Pollard, 1977. link
^ Donald H. Menzel (1960). “§10.5 Bloch waves” . Fundamental Formulas of Physics, Volume 2 (Reprint of Prentice-Hall 1955 2nd ed.). Courier-Dover. p. 624. ISBN 0486605965 . https://books.google.com/books?id=-miofZvrH2sC&pg=PA624
Brau, Charles A. (2004). Modern Problems in Classical Electrodynamics . Oxford University Press. ISBN 0-19-514665-4