海うみ霧きり

海うみ霧きり（うみぎり^[1]、かいむ^[2]、英語えいご: sea fog^[3]^[4]）は、海うみで発生はっせいする霧きりのことである。

発生はっせい方法ほうほうは、暖あたたかく湿しめった空気くうきが、冷つめたい海面かいめんに接せっすることで生しょうじる移流いりゅう霧きり（英語えいご版ばん）^[5]・蒸気じょうき霧きりという広義こうぎの移流いりゅう霧きりによって発生はっせいしやすい^[6]。

概説がいせつ[編集へんしゅう]

北半球きたはんきゅうにおいて、中ちゅう緯度いど高だか圧あつ帯たいから吹ふき出だす温暖おんだん・湿潤しつじゅんな南みなみ～南東なんとう風ふう（季節風きせつふう）が、大陸たいりく東岸とうがん北部ほくぶを南西なんせい方向ほうこうへ流ながれる寒流かんりゅうによって冷ひやされることで生成せいせいされる。日本にっぽん列島れっとう北東ほくとう部ぶ（北きた太平洋たいへいよう高気圧こうきあつからの温暖おんだん湿潤しつじゅんな季節風きせつふうが千島ちしま海流かいりゅうに冷ひやされて生成せいせい）や、北米ほくべい大陸たいりく西部せいぶ（ニューファンドランド島とう等ひとし）（北大西洋きたたいせいよう高気圧こうきあつからの温暖おんだん湿潤しつじゅんな季節風きせつふうがラブラドル海流かいりゅうに冷ひやされて生成せいせい）で見みられる。なお、南半球みなみはんきゅうでは大陸たいりく東側ひがしがわを流ながれる寒流かんりゅうがないため、このような事例じれいはない。

偏西風へんせいふうや亜熱帯あねったい高気圧こうきあつから吹ふき出だした風ふうが、大陸たいりく西海岸にしかいがん沿岸えんがんの寒流かんりゅう上うえを通過つうかする際さいに冷却れいきゃくされ生成せいせいされる。寒流かんりゅう・ベンゲラ海流かいりゅうによるナミブ砂漠さばくの海うみ霧きりが典型てんけい的てきで、上昇じょうしょう気流きりゅうが形成けいせいされず陸上りくじょうは砂漠さばくとなる。サンフランシスコでは、夏季かきに北きた太平洋たいへいよう高気圧こうきあつからの北西ほくせい風ふうが沿岸えんがんの寒流かんりゅうカリフォルニア海流かいりゅう上うえを通過つうかし、海うみ霧きりが発生はっせいする。

その他た：北海ほっかいに面めんしたイギリスでは、ハール（英語えいご版ばん）（英えい: haar）と呼よばれる海うみ霧きりがしばしば発生はっせいする^[4]。

日本にっぽんの北海道ほっかいどうや、千島ちしま列島れっとうを含ふくむ北部ほくぶ北きた太平洋たいへいようでは、夏なつになると海うみ霧きりが発生はっせいしやすくなる^[7]^[8]。これは北きた太平洋たいへいよう高気圧こうきあつから吹ふき出だす比較的ひかくてき温暖おんだん湿潤しつじゅんな空気くうきが、寒冷かんれいな親潮おやしおの影響えいきょうを受うけて海うみ霧きりを生しょうじさせるものである^[7]。また、人為じんい的てき物質ぶっしつを含ふくめた陸りく由来ゆらいの空中くうちゅうの微粒子びりゅうしの存在そんざいも、霧きりを発生はっせいさせやすくする要因よういんのひとつである^[7]。内陸ないりく部ぶの背後はいごに山地さんちがある関係かんけいで、釧根くしね地方ちほうでは流ながれ込こんだ海うみ霧きりが滞留たいりゅうしやすく、日照ひでり期間きかんが少すくない冷涼れいりょうな気候きこうになっている^[8]。北海道ほっかいどう沿岸えんがん、特とくに釧路くしろなどでは、こうした海うみ霧きりを「じり」と称しょうし^[9]、しばしば「霧きりと霧雨きりさめの中なか間あいだ」などとも表現ひょうげんされる。

釧路くしろ市し(1981 - 2010)の気候きこう
月つき	1月がつ	2月がつ	3月がつ	4月がつ	5月	6月がつ	7月がつ	8月がつ	9月	10月	11月	12月	年とし
平均へいきん最高さいこう気温きおん °C （°F）	−0.6 (30.9)	−0.4 (31.3)	2.7 (36.9)	7.7 (45.9)	12.0 (53.6)	15.2 (59.4)	18.6 (65.5)	21.2 (70.2)	19.7 (67.5)	14.8 (58.6)	8.7 (47.7)	2.5 (36.5)	10.17 (50.33)
平均へいきん最低さいてい気温きおん °C （°F）	−10.4 (13.3)	−9.9 (14.2)	−4.9 (23.2)	0.3 (32.5)	5.0 (41)	9.0 (48.2)	12.8 (55)	15.5 (59.9)	12.3 (54.1)	5.5 (41.9)	−0.8 (30.6)	−7.1 (19.2)	2.28 (36.09)
平均へいきん月間げっかん日照ひでり時間じかん	182.0	181.9	200.6	181.9	188.3	129.3	107.4	127.1	149.7	180.9	166.6	173.6	1,969.5
出典しゅってん：気象庁きしょうちょう^[10]

オホーツク海かい沿岸えんがんではオホーツク海かい高気圧こうきあつによって海うみ霧きりが生しょうじると考かんがえられているが、発生はっせいの詳くわしい仕組しくみは明あきらかになっていない^[11]。

文学ぶんがくにおける言及げんきゅう[編集へんしゅう]

俳句はいくでは「じり」と読よみ、夏なつの季語きごである^[12]。
釧路くしろ市し出身しゅっしんの作家さっかである原田はらだ康子やすこは、『海うみ霧きり』（うみぎり：2002年ねん）で第だい37回かい吉川よしかわ英治えいじ文学ぶんがく賞しょうを受賞じゅしょうした^[13]^[14]^{[注ちゅう 1]}。
窪田くぼた精きよしは、北海道ほっかいどうの開拓かいたく民みんの生活せいかつを描えがいた『海うみ霧きりのある原野げんや』（1978年ねん）で第だい10回かい多喜二たきじ・百合子ゆりこ賞しょうを受賞じゅしょうした^[15]。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

注釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

^ このほか、加賀かが乙彦おとひこ、赤羽あかはね尭たかしに同名どうめいの別べつ作品さくひんがある。

出典しゅってん[編集へんしゅう]

^ 百科ひゃっか事典じてんマイペディア『海うみ霧きり』 - コトバンク
^ “学研がっけんキッズネットかいむ【海うみ霧きり】”. 学研がっけん教育きょういく出版しゅっぱん. 2012年ねん8月がつ30日にち閲覧えつらん。
^ sea fogの意味いみ - goo辞書じしょ英和えいわ和英かずひで（小学館しょうがくかんプログレッシブ英和えいわ中ちゅう辞典じてん）
^ ^a ^b 海うみ霧きりの英訳えいやく｜英えい辞じ郎ろう on the WEB：アルク
^ ブリタニカ国際こくさい大だい百科ひゃっか事典じてん小しょう項目こうもく事典じてん『移流いりゅう霧きり』 - コトバンク
^ 霧きりの理解りかいのために著ちょ：沢井さわい哲あきら滋しげるサイト：日本にっぽん気象きしょう学会がっかい
^ ^a ^b ^c 植松うえまつ光夫みつお「西部せいぶ北きた太平洋たいへいよう亜寒帯あかんたい海域かいいきにおける酸性さんせい海うみ霧きりの発生はっせい要因よういん」『低温ていおん科学かがく』第だい68号ごう、北海道大学ほっかいどうだいがく低温ていおん科学かがく研究所けんきゅうじょ、2010年ねん3月がつ3日にち、49-52頁ぺーじ。 NAID 40018948541
^ ^a ^b 佐々木ささき章あきら晴はれ「根ね釧地方ちほうの酪農らくのう開発かいはつが自然しぜん環境かんきょうに与あたえる影響えいきょう」『日本にっぽん草地くさじ学会がっかい誌し』第だい55巻かん第だい3号ごう、日本にっぽん草地くさじ学会がっかい、2009年ねん10月がつ15日にち、251-261頁ぺーじ。 NAID 110007482821
^ “Yahoo!辞書じしょじり1”. Yahoo! Japan. 2012年ねん8月がつ30日にち閲覧えつらん。
^ “平年へいねん値ち（年とし・月がつごとの値ね）”. 気象庁きしょうちょう. 2012年ねん1月がつ22日にち閲覧えつらん。
^ 岩本いわもと勉つとむ之の、立花たちばな義裕よしひろ「P114 オホーツク海かい高気圧こうきあつのラジオゾンデ観測かんそく : 海うみ霧きりと大気たいき海洋かいよう双方向そうほうこう作用さよう」『大会たいかい講演こうえん予よ講こう集しゅう』第だい94号ごう、社団しゃだん法人ほうじん日本にっぽん気象きしょう学会がっかい、2008年ねん10月がつ31日にち、361頁ぺーじ。 NAID 110007625838
^ 飯田いいだ龍太りゅうた、稲畑いなはた汀なぎさ子こ、金子かねこ兜太こうた、沢木さわき欣一きんいち（監修かんしゅう）『カラー版ばん新しん日本にっぽん大だい歳時記さいじき愛蔵あいぞう版ばん』講談社こうだんしゃ、2008年ねん、325-326頁ぺーじ。ISBN 978-4-06-128972-7。
^ “吉川よしかわ英治えいじ文学ぶんがく賞しょう（過去かこの受賞じゅしょう者しゃ一覧いちらん）”. 講談社こうだんしゃ. 2012年ねん8月がつ30日にち閲覧えつらん。
^ “釧路くしろゆかりの作家さっかたち原田はらだ康子やすこ”. 市立しりつ釧路くしろ図書館としょかん. 2012年ねん8月がつ30日にち閲覧えつらん。
^ “時代じだいを生いきる人間にんげんを……--受賞じゅしょう作さく「海うみ霧きりのある原野げんや」について聞きく窪田くぼた精きよし”. 国立こくりつ国会こっかい図書館としょかん. 2012年ねん8月がつ30日にち閲覧えつらん。