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海流かいりゅう

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寒流かんりゅうから転送てんそう
世界せかいおも海流かいりゅう暖流だんりゅうあか寒流かんりゅうあお
世界せかい海流かいりゅう暖流だんりゅうあか寒流かんりゅうみどり)、1943ねんアメリカ陸軍りくぐんによる
世界せかい海流かいりゅう暖流だんりゅうあか寒流かんりゅうくろ)、2004ねん

海流かいりゅう(かいりゅう、えい: ocean currents)は、地球ちきゅう規模きぼでおきる海水かいすい水平すいへい方向ほうこうなが総称そうしょう現象げんしょう潮汐ちょうせきによる潮汐ちょうせきりゅう潮流ちょうりゅうとも)があるが、潮汐ちょうせきりゅう時間じかん経過けいかともなってながれが変化へんかし、みじか周期しゅうきせいつ。海流かいりゅうはほぼ一定いってい方向ほうこう長時間ちょうじかんながれる。またうみなか鉛直えんちょく方向ほうこうにも恒常こうじょうてきながれが存在そんざいする海域かいいきもあるが、その流速りゅうそく非常ひじょうおそいので、通常つうじょう海流かいりゅうとはばない。海流かいりゅうはその性質せいしつにより、暖流だんりゅう寒流かんりゅうの2種類しゅるい大別たいべつされる。

海流かいりゅう発生はっせいする原因げんいん諸説しょせつあるが、おおきくけて表層ひょうそう循環じゅんかん深層しんそう循環じゅんかんがある。表層ひょうそう循環じゅんかん深層しんそう循環じゅんかん意味いみは、メカニズムてきろんじるか現象げんしょうてきろんじるかでちがってくる。メカニズムてきえば、海面かいめんでのふう卓越たくえつふう)によってこされる摩擦まさつ運動うんどうがもとになってできる「風成かざなし循環じゅんかん」が表層ひょうそう循環じゅんかん温度おんどあるいは塩分えんぶん均一きんいつによる密度みつど均一きんいつこる「熱塩あつしお循環じゅんかん」が深層しんそう循環じゅんかんである。このふたつを総称そうしょうして、海洋かいよう循環じゅんかんぶ。「海流かいりゅう」が海水かいすいながれを重視じゅうししたかたであるのにたいして、「海洋かいよう循環じゅんかん」はとく地球ちきゅう規模きぼでの海水かいすいめぐり、循環じゅんかん重視じゅうししたかたであり、これらを使つかけることがおおい。

なお日本語にほんごでは、潮流ちょうりゅうった場合ばあいはふつう潮汐ちょうせきりゅうのことだが、黒潮くろしお親潮おやしお潮境しおざかいなどのように「しお」を潮汐ちょうせき意味いみでなく海流かいりゅう意味いみ使つかうこともおおく、また、海水浴かいすいよくじょうにおける遊泳ゆうえいじょう注意ちゅういなど、潮汐ちょうせきりゅうのことをして「海流かいりゅう」と場合ばあいもあり、まれにぎゃくもあるので注意ちゅうい

黒潮くろしおメキシコ湾流わんりゅう大海たいかいりゅうといい、これらは流量りゅうりょうおおく、流速りゅうそくはやい。

海流かいりゅうはやさの単位たんいノット[1][2]体積たいせき流量りゅうりょうあらわ場合ばあいスベルドラップ記号きごうはSv)という単位たんい使つかわれる。「1 sv」は「1びょうあたり1,000,000 立方りっぽうメートル体積たいせき流量りゅうりょう」。

海流かいりゅう種類しゅるい

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暖流だんりゅう寒流かんりゅう

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海水かいすい熱容量ねつようりょう大気たいきのそれにくら非常ひじょうおおきいため、暖流だんりゅう寒流かんりゅう沿岸えんがん気候きこう水産すいさん資源しげんあたえる影響えいきょうおおきい。なおこの定義ていぎはよく使つかわれるが科学かがくてき厳密げんみつさを分類ぶんるいほうであり、水温すいおんなん以上いじょう暖流だんりゅうというような定義ていぎ存在そんざいしない。周辺しゅうへん海域かいいき水温すいおんとの比較ひかくによるものである。

  • 暖流だんりゅう(だんりゅう、warm current)とは、てい緯度いどから高緯度こういどけてながれる海流かいりゅうのことをいう。海流かいりゅう図上ずじょうでは通常つうじょう赤色あかいろせんあらわされる。おおくの場合ばあい周囲しゅうい大気たいきあたためて自身じしんやされる海流かいりゅうである。暖流だんりゅう沿岸えんがんでは温暖おんだん湿潤しつじゅん気候きこうたもたれる。これは、暖流だんりゅう大気たいきあたためて水蒸気すいじょうき供給きょうきゅうするとともに、上昇じょうしょう気流きりゅう発生はっせいしてあめりやすくなるためである。西にしヨーロッパ北大西洋きたたいせいよう海流かいりゅう影響えいきょうけており、どう緯度いどひがしヨーロッパよりも温暖おんだん気候きこうである。ただし、論文ろんぶん根拠こんきょとした議論ぎろんによれば、「ヨーロッパが温暖おんだん理由りゆう湾流わんりゅう影響えいきょうだ」という説明せつめい不十分ふじゅうぶんである。きたアメリカ東岸とうがんくらべてヨーロッパが温暖おんだんである原因げんいん海流かいりゅうによるねつ輸送ゆそうだけでなく大気たいきがわ要因よういんも(うみ風下かざしもであることおよび気圧きあつたにとの位置いち関係かんけい)ある、という意味いみで“不十分ふじゅうぶん”である。日本にっぽん周辺しゅうへんには黒潮くろしお日本にっぽん海流かいりゅう)と対馬つしま海流かいりゅうがある。
  • 寒流かんりゅう(かんりゅう、cold current)は、高緯度こういどからてい緯度いどけてながれる海流かいりゅうのことをいう。海流かいりゅう図上ずじょうでは通常つうじょう青色あおいろせんあらわされる。周囲しゅうい大気たいきやして自身じしんあたためられる海流かいりゅうである。水蒸気すいじょうき発生はっせいさせにくい寒流かんりゅう沿岸えんがん冷涼れいりょう乾燥かんそうした気候きこうにする傾向けいこうがある。寒流かんりゅう影響えいきょう熱帯ねったい地域ちいき形成けいせいされる砂漠さばく海岸かいがん砂漠さばくである。ペルー海流かいりゅうにより形成けいせいされたチリアタカマ砂漠さばくはその代表だいひょうれいである。日本にっぽん周辺しゅうへんにはリマン海流かいりゅう親潮おやしお千島ちしま海流かいりゅう)がある。海水かいすいにごっていて、緑色みどりいろびている。漁業ぎょぎょうへの影響えいきょうおおきい。寒流かんりゅう比較的ひかくてき水温すいおんひくいため栄養えいようんでおりプランクトン豊富ほうふである。ここに、魚類ぎょるい多数たすう生息せいそくする暖流だんりゅうなが海域かいいきこう漁場ぎょじょうとなる。(れい:ノルウェーうみみなみアフリカ共和きょうわこくおき日本海にほんかい三陸さんりくおきタスマンうみアルゼンチン東方とうほうおきなど)

成因せいいんによる分類ぶんるい

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暖流だんりゅう寒流かんりゅう以外いがいにも、その海流かいりゅう成因せいいんによる分類ぶんるいがある。しかし、実際じっさい海流かいりゅうはただひとつの成因せいいんによるものではないので注意ちゅういしたい。以下いかおも分類ぶんるいげる。

  • 吹送りゅう(すいそうりゅう)はふう海面かいめんおよぼすおうりょくによってしょうずる海流かいりゅうふう応力おうりょくによって海面かいめん運動うんどうこり、うず粘性ねんせいのためにその運動うんどう次第しだい下層かそうおよび、風向ふうこうがかなりながあいだ一定いっていであれば定常ていじょう状態じょうたいたっする。だい規模きぼ場合ばあい風成かざなし海流かいりゅう(ふうせいかいりゅう)とばれることもある。ごく海水かいすい表面ひょうめんにしか海流かいりゅうながれない場合ばあいかわりゅう(ひりゅう、Skin current)とばれる。またかわみずなどが外洋がいよう流出りゅうしゅつする場合ばあい、このみず外洋がいようみずうえ非常ひじょううすそうをなしてひろがることがあり、このようなながれもかわりゅうとよばれる。(風成かざなし循環じゅんかん参照さんしょう)。
  • 傾斜けいしゃりゅう(けいしゃりゅう)とはなんらかの原因げんいんによって海面かいめん傾斜けいしゃができると、そのためにしょうじた海流かいりゅう圧力あつりょく分布ぶんぷ平衡へいこうたもつためにながれがしょうずる海流かいりゅうのことである。
  • 密度みつどりゅう(みつどりゅう)とは海水かいすい密度みつど分布ぶんぷ、すなわち水温すいおん塩分えんぶん分布ぶんぷによってしょうずる海流かいりゅうのこと。これはヴィルヘルム・ビヤークネスらが提唱ていしょうした力学りきがくてき海流かいりゅう推算すいさんほうによって海水かいすい密度みつど分布ぶんぷから算出さんしゅつした海流かいりゅう実際じっさいとよく一致いっちしたために、海流かいりゅう成員せいいん海水かいすい密度みつど分布ぶんぷであるかのようにかんがえられたのである。しかしこれは流体りゅうたい運動うんどう方程式ほうていしきなお海流かいりゅう密度みつど分布ぶんぷとの関係かんけいみちびいたものであって、密度みつど分布ぶんぷ海流かいりゅう成因せいいんなのか、海流かいりゅう成因せいいんはほかにもあって密度みつど海流かいりゅう対応たいおうするように分布ぶんぷしたものであるかどうかはからない。最近さいきんでは厳密げんみつ密度みつどりゅうかんがえられる海流かいりゅうは、深層しんそう以外いがいには存在そんざいしないものとかんがえられている。(熱塩あつしお循環じゅんかん参照さんしょう)。
  • りゅう(ほりゅう)は海水かいすい移動いどうともなって、海水かいすいがそれをおぎなうようにながれることによってしょうじる海流かいりゅう。よって吹送りゅうなどと比較ひかくするとてきなものである。りゅう性質せいしつつものとしてはきた赤道せきどう海流かいりゅうみなみ赤道せきどう海流かいりゅうあいだにある赤道あかみちはんりゅうなどがげられる。また、りゅう一種いっしゅとしてゆうのぼりりゅう沈降ちんこうりゅうのような鉛直えんちょく方向ほうこうながれもかんがえられる。

期間きかんによる分類ぶんるい

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海流かいりゅうおな場所ばしょでも時間じかんとともに変化へんかする。これは海流かいりゅう原因げんいん場所ばしょによってことなり、さらにそれらが時間じかんともなって変化へんかすることを反映はんえいしている。なお以下いか説明せつめいで、ながれのきがわらないといっても、永久えいきゅうりゅうぶしりゅうにも一時いちじりゅうかさなり、そのながれをみだすので、これは75パーセント程度ていど頻度ひんどである[3]

  • 永久えいきゅうりゅう(えいきゅうりゅう、permanent current)は年中ねんじゅうながれのき・はやさがわらない海流かいりゅう。ほぼ一定いってい方向ほうこうおなつよさでふういている場合ばあいこのようなながれがしょうじる。たとえば貿易ぼうえきふう赤道せきどう海流かいりゅう
  • ぶしりゅう(きせつりゅう、seasonal cuurent)はぶしによってながれる方向ほうこう反対はんたいであり、流速りゅうそくもいくらかことなるが、どうぶしないではそれらがほぼ一定いっていである海流かいりゅう季節風きせつふう卓越たくえつする海域かいいきでよくこる。
  • 一時いちじりゅう(いちじりゅう、temporary current)は移動いどうせい高低こうてい気圧きあつ頻繁ひんぱん通過つうかするなどして風向ふうこう風速ふうそく変化へんかし、そのことによってながれが一時いちじてき変化へんかする海流かいりゅうときにはぎゃく方向ほうこうながれることもある。

海流かいりゅう性質せいしつ

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表層ひょうそうながれる海流かいりゅう流速りゅうそく海流かいりゅうによって様々さまざまであるが、世界せかい海流かいりゅう分布ぶんぷかかげられている海流かいりゅう一昼夜いっちゅうやかずうみさとからすうじゅう海里かいりくらいのはやさでながれている。海流かいりゅうのうちでもとく流速りゅうそくはやいものは黒潮くろしおメキシコ湾流わんりゅうモザンビーク海流かいりゅうであって、これらではいちにちに100海里かいり以上いじょうながれるところがある。いちにちに100海里かいりながれる場合ばあい平均へいきんはやさは、時速じそくやく7.7kmになる。海流かいりゅうはばはたいていの場合ばあい非常ひじょうひろく、200km以上いじょうあるのはめずらしくない。ひとつの海流かいりゅうけいでははばひろいところでは流速りゅうそくおそく、はばせまいところでははやくなる。また通常つうじょう海流かいりゅう両側りょうがわでは流速りゅうそくおそく、中央ちゅうおうでははやい。海流かいりゅうあつさは場所ばしょによって非常ひじょうことなっているが、外洋がいようでは海底かいていふかさにくらべるとかなりあさく、おおくはふか場合ばあいでも表面ひょうめんから1000mほどで、あさければすう100m程度ていどである。もっとも南極なんきょくたまきりゅうのようにあつさが3000m以上いじょう海流かいりゅうもある。

海底かいてい地形ちけい海流かいりゅう

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沿岸えんがん水深すいしんあさいと海流かいりゅう海底かいていまでとどくことになり、このようなところでは海流かいりゅう海底かいてい影響えいきょうける。北半球きたはんきゅうでは海流かいりゅう傾斜けいしゃくだるときはひだり旋し、のぼるときはみぎ旋する。また海流かいりゅう水平すいへい方向ほうこうだけでなく鉛直えんちょく方向ほうこうりゅうむこうにも影響えいきょうあたえる。とく海峡かいきょうでは水温すいおんおどそうがあって上下じょうげながれむかいぎゃくになっているところの影響えいきょう顕著けんちょあらわれる。

海流かいりゅう観測かんそく方法ほうほう

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RCM-9(Recording Current Meter)。水深すいしん2000mまで潜行せんこう可能かのうで、年間ねんかん活動かつどう可能かのう速度そくど方向ほうこう深度しんど温度おんどなどの海流かいりゅう情報じょうほう記録きろくする。

海流かいりゅう観測かんそく方法ほうほうおおきく直接ちょくせつはかりゅう直接ちょくせつほう)と間接かんせつはかりゅう間接かんせつほう)のふたつに分類ぶんるいされる。

直接ちょくせつはかりゅう

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エクマン流速りゅうそくけい

直接ちょくせつはかりゅうとは特殊とくしゅ装置そうち器具きぐ実際じっさい海洋かいよう固定こていさせて、あるいは浮遊ふゆうさせて流速りゅうそくはか方法ほうほうである。直接ちょくせつほうにはオイラーほうラグランジュほうとも観測かんそく方法ほうほう考案こうあんした学者がくしゃめい)がある。

オイラーほう

オイラーほう流速りゅうそくけいをある場所ばしょ固定こていしてながれをはかるもので、ながれのつよさはプロペラ回転かいてんすうトルクいたまくにかかる水圧すいあつワイヤーったとき抵抗ていこうによるかたむき、ドップラー効果こうかによる音速おんそく変化へんかなどを利用りようしてはかる。

ラグランジュほう

ラグランジュほう物体ぶったいかべて海水かいすい移動いどう追跡ついせきする方法ほうほうで、ふね自体じたいながされかたから流速りゅうそくりゅうむこうったり、海流かいりゅうびんなが方法ほうほうなか手紙てがみれ、そのびんひろげたひと日時にちじ位置いちいておくってもらうよう依頼いらいする。日本にっぽんでのもっとだい規模きぼなものは和田わだ雄治ゆうじ1913ねんから1917ねんの13357ほん和田わだ雄治ゆうじ参照さんしょう。)などはむかしからおこなわれてきた。現在げんざいでは漂流ひょうりゅうブイ発信はっしん装置そうちけ、電気でんき信号しんごう追跡ついせきする手法しゅほうおおられる(ARGO計画けいかく参照さんしょう)。ブイの密度みつど調整ちょうせいすればうみ表層ひょうそうだけでなくある程度ていどふかさのながれのようすも追跡ついせきすることができる。

海流かいりゅうけい

船舶せんぱく搭載とうさいされるものとしては、電磁でんじ海流かいりゅうけい (GEK、geomagnetic electro-kinetograph) とばれる地磁気ちじき電磁でんじ誘導ゆうどう法則ほうそく利用りようした海流かいりゅうけいがある。1950ねんにアメリカで開発かいはつされた。現在げんざい海洋かいよう観測かんそくではちょう音波おんぱしき多層たそう流速りゅうそくけい(ADCP)などにより現場げんば簡単かんたん観測かんそくされている。

間接かんせつはかりゅう

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間接かんせつほうとは、計算けいさんなどによって間接かんせつてき流速りゅうそくもとめる方法ほうほうである。古典こてんてきなものとして、航行こうこうする船舶せんぱくで、航行こうこうさいへんから海流かいりゅうはかることがある。ある地点ちてんから一定いってい時間じかん航行こうこうし、計算けいさんじょう現在地げんざいち天測てんそく航法こうほう電波でんぱ航法こうほうによってもとめられた実際じっさい現在地げんざいちとのから海流かいりゅう影響えいきょうもとめるのである。そのほかにも水温すいおん塩分えんぶん測定そくてい密度みつど分布ぶんぷもとめて上述じょうじゅつ衡流の関係かんけいから流速りゅうそく推算すいさんする方法ほうほうがある。これを力学りきがく計算けいさんといい、便利べんりなので多用たようされるが、衡流の釣合つりあいが成立せいりつしていないとおもわれるあさうみ赤道せきどう直下ちょっかでは使つかえない。

海流かいりゅう影響えいきょう

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気候きこうへの影響えいきょう

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海流かいりゅう、とくにおおきな暖流だんりゅう海上かいじょう気候きこう影響えいきょうおよぼし、したがって陸上りくじょう動植物どうしょくぶつ生活せいかつにもおおきな影響えいきょうおよぼす。もともと、海水かいすい空気くうきくらべて比熱ひねつよんばいちかくあるので、水温すいおん変化へんか気温きおん変化へんかさせやすい。たとえばきた西にしヨーロッパのふゆ気温きおん世界せかいおな緯度いど平均へいきん気温きおんよりもたかくなっているが、その一因いちいんとして北大西洋きたたいせいよう海流かいりゅう存在そんざいがよくられている。

日本にっぽん

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日本にっぽん南岸なんがんなつ非常ひじょう湿度しつどたかくなるが、これは南東なんとうからかぜが、あたたかい黒潮くろしおうえ通過つうかしてくるときに、水蒸気すいじょうき大量たいりょうむことが原因げんいんである。一方いっぽうふゆ季節風きせつふう北西ほくせいふうくので、黒潮くろしお暖気のんきによりそれほど気温きおんがるわけではないが、山脈さんみゃくにより雪雲ゆきぐも遮断しゃだんするため、関東かんとう以西いせい太平洋たいへいようがわ地域ちいきでは晴天せいてんおお比較的ひかくてき温暖おんだん地域ちいきおおい。他方たほう日本海にほんかいには黒潮くろしお分流ぶんりゅうである暖流だんりゅう対馬つしま海流かいりゅうながんでいるが、大陸たいりくから寒気さむけがこの暖流だんりゅううえわたるときにくも形成けいせいされ、冬季とうき豪雪ごうせつ年間ねんかんつうじての気温きおん低下ていか日照ひでり時間じかん減少げんしょうられる(日本海にほんかいがわ気候きこう)。また北海道ほっかいどう東北とうほく地方ちほう太平洋たいへいようがわでは、なつ寒流かんりゅうである親潮おやしおうえわたってくるやませ影響えいきょうで、冷害れいがい発生はっせいすることがある。

漁業ぎょぎょうへの影響えいきょう

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回遊かいゆうぎょ海流かいりゅうとともにおよいでくるので、三陸さんりくおきのように黒潮くろしお親潮おやしおせっするところは南方なんぽうけい北方ほっぽうけい両方りょうほうさかなれ、きわめてよい漁場ぎょじょうとなっている。このように世界せかいおも漁場ぎょじょうはたいてい暖流だんりゅう寒流かんりゅう潮境しおざかいや、沿岸えんがんすい外洋がいようすいのさかいを中心ちゅうしん発達はったつしている。またプランクトン海流かいりゅうによって種類しゅるいことなるばかりでなく、そのりょういちじるしくことなっている。プランクトンは海流かいりゅうによってされるので、海流かいりゅう魚類ぎょるい分布ぶんぷ移動いどうなどにもおおきな関係かんけいつ。また、世界せかいてき大漁たいりょうじょうである南米なんべいペルーおきでは、エルニーニョのときはその海域かいいき漁獲ぎょかくりょうおおきくることがわかっている。

航行こうこうへの影響えいきょう

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ながれがはや海流かいりゅうは、船舶せんぱく航行こうこうにも影響えいきょうする。むかし帆船はんせん時代じだいには海流かいりゅうたいする知識ちしきふう利用りようほうとともに、航海こうかいじゅつ重要じゅうよう部分ぶぶんめていたが、現在げんざいのように機械きかいりょく利用りようする高速こうそくせん時代じだいになっても、海流かいりゅう利用りようするとしないとでは経済けいざいてき効果こうかおおきな差異さいてくる。現在げんざいでも、たとえば東京とうきょう沖縄おきなわあいだ客船きゃくせん東京とうきょうから黒潮くろしおながれにさからってき、ながれにってかえってくるので、20ノットがでるふねでもきとかえりでは数時間すうじかんることがある。

おも海流かいりゅう

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名称めいしょう 流域りゅういき 暖流だんりゅう寒流かんりゅう
黒潮くろしお日本にっぽん海流かいりゅう 北西ほくせい太平洋たいへいよう日本にっぽん南岸なんがん 暖流だんりゅう
対馬つしま海流かいりゅう 北西ほくせい太平洋たいへいよう東シナ海ひがししなかいから日本海にほんかい南部なんぶ
きた太平洋たいへいよう海流かいりゅう きた太平洋たいへいよう日本にっぽん東岸とうがんからミッドウェみっどうぇ諸島しょとう近海きんかい
きた赤道せきどう海流かいりゅう太平洋たいへいよう きた太平洋たいへいよう、メキシコ西岸せいがんからフィリピン東岸とうがん
きた赤道せきどう海流かいりゅう大西洋たいせいよう 北大西洋きたたいせいよう、ベルデみさき諸島しょとう近海きんかいからしょうアンティル諸島しょとう近海きんかい
きた赤道せきどうはんりゅう 北西ほくせい太平洋たいへいよう日本にっぽん南岸なんがんからフィリピンおき
赤道あかみちはんりゅう太平洋たいへいよう 太平洋たいへいよう赤道せきどういき
赤道あかみちはんりゅうインド洋いんどよう インド洋いんどよう赤道せきどういき、タンザニア東方とうほうおきからインドネシア西岸せいがん
みなみ赤道せきどう海流かいりゅう太平洋たいへいよう 太平洋たいへいよう赤道せきどういき
みなみ赤道せきどう海流かいりゅう大西洋たいせいよう 大西洋たいせいよう赤道せきどういき、ブラジルおき
みなみ赤道せきどうはんりゅう 南西なんせい太平洋たいへいよう、パプアニューギニア・ソロモン諸島しょとう東方とうほうおき
アラスカ海流かいりゅう きた太平洋たいへいよう、アラスカ南岸なんがん
ひがしオーストラリア海流かいりゅう 南西なんせい太平洋たいへいよう、オーストラリア東岸とうがんからニュージーランド
モンスーン海流かいりゅう季節風きせつふう海流かいりゅう インド洋いんどよう赤道せきどういき、インド近海きんかい
モザンビーク海流かいりゅう みなみインド洋いんどよう、モザンビーク東岸とうがん
アガラス海流かいりゅう みなみインド洋いんどようみなみアフリカ東岸とうがん
メキシコ湾流わんりゅう 北大西洋きたたいせいよう、メキシコわんからアメリカ東岸とうがん
北大西洋きたたいせいよう海流かいりゅう 北大西洋きたたいせいよう、アメリカ東方とうほうおきからヨーロッパ西岸せいがん
ギニア海流かいりゅう(ギニア湾流わんりゅう 大西洋たいせいよう赤道せきどういき、ギニア湾岸わんがん
ギアナ海流かいりゅう 大西洋たいせいよう赤道せきどういき南米なんべい大陸たいりく北岸ほくがん
親潮おやしお千島ちしま海流かいりゅう きた太平洋たいへいよう、カムチャツカ半島はんとう沿岸えんがんから日本にっぽん東岸とうがん 寒流かんりゅう
アリューシャン海流かいりゅう きた太平洋たいへいよう、アリューシャン列島れっとう近海きんかい
リマン海流かいりゅう 北西ほくせい太平洋たいへいよう、オホーツクかい西部せいぶから日本海にほんかい北部ほくぶ
ペルー海流かいりゅう(フンボルト海流かいりゅう 南東なんとう太平洋たいへいよう、ペルーおき
南極なんきょくたまきりゅう 南極なんきょくかい全域ぜんいき
カナリア海流かいりゅう 北大西洋きたたいせいよう、スペイン西方せいほうおきからカナリア諸島かなりあしょとう近海きんかい
ラブラドル海流かいりゅう 北大西洋きたたいせいよう、ラブラドル半島はんとう東岸とうがん
ひがしグリーンランド海流かいりゅう 北大西洋きたたいせいよう、グリーンランド東岸とうがん
西にしグリーンランド海流かいりゅう 北大西洋きたたいせいよう、グリーンランド西岸せいがん
西にしオーストラリア海流かいりゅう みなみインド洋いんどよう、オーストラリア西岸せいがん
ベンゲラ海流かいりゅう みなみ大西洋たいせいようみなみアフリカ西岸せいがんからギニアわん
カリフォルニア海流かいりゅう 北東ほくとう太平洋たいへいよう、カナダ西洋せいようおきからカリフォルニアおき

おも海洋かいよう循環じゅんかん

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海洋かいよう循環じゅんかん

表層ひょうそう循環じゅんかん

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海洋かいよう表層ひょうそうでは、緯度いどごとにいくつかの海流かいりゅうのまとまり(たまきりゅう)がられる。北半球きたはんきゅうきょく付近ふきんなど、地形ちけい影響えいきょう地域ちいきによってはまとまりがられないところもあるほか、わんなどでは小規模しょうきぼ循環じゅんかんられる。基本きほんてきには、北半球きたはんきゅう亜熱帯あねったい循環じゅんかん南半球みなみはんきゅう熱帯ねったい循環じゅんかん南半球みなみはんきゅう寒帯かんたい循環じゅんかん時計とけいまわで、北半球きたはんきゅう亜寒帯あかんたい循環じゅんかん北半球きたはんきゅう熱帯ねったい循環じゅんかん南半球みなみはんきゅう亜熱帯あねったい循環じゅんかんはん時計とけいまわ循環じゅんかんする。これらのだい規模きぼ循環じゅんかん共通きょうつうられるのが、大陸たいりく西岸せいがん海域かいいきにおいて、てい緯度いどから高緯度こういどかうながれがせま地域ちいき集中しゅうちゅうして流量りゅうりょう速度そくどす「西岸せいがん強化きょうか」という現象げんしょうと、大陸たいりく東岸とうがん地域ちいき相対そうたいてきにゆっくりとしたながれとなる現象げんしょうである。

地域ちいき 名称めいしょう ぞくする海流かいりゅう
北半球きたはんきゅう 高緯度こういど 亜寒帯あかんたい循環じゅんかん 太平洋たいへいよう:アラスカ海流かいりゅうアリューシャン海流かいりゅう親潮おやしおきた太平洋たいへいよう海流かいりゅう
大西おおにしひろし:北大西洋きたたいせいよう海流かいりゅうひがしグリーンランド海流かいりゅうラブラドル海流かいりゅう
ていちゅう緯度いど 亜熱帯あねったい循環じゅんかん 太平洋たいへいよう:黒潮くろしおきた太平洋たいへいよう海流かいりゅうカリフォルニア海流かいりゅうきた赤道せきどう海流かいりゅう
大西おおにしひろし:アンティル海流かいりゅうメキシコ湾流わんりゅうカナリア海流かいりゅうきた赤道せきどう海流かいりゅう
赤道あかみち付近ふきん 熱帯ねったい循環じゅんかん 太平洋たいへいよう:きた赤道せきどう海流かいりゅう赤道あかみちはんりゅう
インド洋いんどよう:モンスーン海流かいりゅうソマリ海流かいりゅう赤道あかみちはんりゅう
南半球みなみはんきゅう 赤道あかみち付近ふきん 熱帯ねったい循環じゅんかん 太平洋たいへいよう:みなみ赤道せきどう海流かいりゅう赤道あかみちはんりゅう
インド洋いんどよう:みなみ赤道せきどう海流かいりゅう赤道あかみちはんりゅう
ていちゅう緯度いど 亜熱帯あねったい循環じゅんかん 太平洋たいへいよう:みなみ赤道せきどう海流かいりゅうひがしオーストラリア海流かいりゅう南極なんきょくたまきりゅうペルー海流かいりゅう
インド洋いんどよう:みなみ赤道せきどう海流かいりゅうモザンビーク海流かいりゅうアガラス海流かいりゅう南極なんきょくたまきりゅう西にしオーストラリア海流かいりゅう
大西おおにしひろし:みなみ赤道せきどう海流かいりゅうブラジル海流かいりゅうフォークランド海流かいりゅう南極なんきょくたまきりゅうベンゲラ海流かいりゅう
高緯度こういどごく付近ふきん 寒帯かんたい循環じゅんかん 南極なんきょくたまきりゅう西風せいふうかわりゅう

海流かいりゅう調査ちょうさ歴史れきし

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海中かいちゅう一定いっていながれがあるということはふるくからられていた。8 - 11世紀せいき活躍かつやくしたヴァイキングたちは優秀ゆうしゅう航海こうかいしゃであり当然とうぜん大西洋たいせいよう東部とうぶ海流かいりゅう利用りようしたとおもわれる。しかし大洋たいよう強大きょうだい海流かいりゅう見出みいだされたのは15世紀せいき以降いこう大洋たいよう航海こうかいさかんになってからのことであり、海流かいりゅうたいする知識ちしき航海こうかいじゅつ発達はったつ前後ぜんごして拡大かくだいされていく。1497ねんイタリア船長せんちょうジョン・カボットラブラドル途中とちゅうラブラドル海流かいりゅう発見はっけんした。また同年どうねんヴァスコ・ダ・ガマポルトガルからもちほうまわってモザンビーク海流かいりゅうさからって北上ほくじょう翌年よくねんアフリカ東岸とうがんザンベジ河口かこうから南西なんせい季節風きせつふう海流かいりゅうってインドのカリカット(コーリコード)に到着とうちゃくしたという記録きろくのこっている。コロンブス探検たんけん航海こうかい水先案内みずさきあんないじんアラミノス (Antonio de Alaminos) は1513ねんメキシコわんメキシコ湾流わんりゅう存在そんざいづき、この大海たいかいりゅうってヨーロッパへわた最適さいてき帆船はんせん航路こうろ発見はっけんした。1595ねんオランダじんヤン・ホイフェン・ヴァン・リンスホーテン (Jan Huyghen van Linschoten) は水路すいろ作成さくせいして大西洋たいせいようにおける海流かいりゅう詳説しょうせつしたが、これがその100ねんあま航海こうかいしゃにとっての指針ししんとなった。1678ねんやはりオランダのキルヒナー[よう曖昧あいまい回避かいひ]インド洋いんどよう海洋かいよう刊行かんこうしたが、そのなかには西向にしむきの赤道せきどう海流かいりゅうおよびアガラス海流かいりゅう明示めいじされている。1688ねんイギリス天文学てんもんがくしゃエドモンド・ハレーインド洋いんどよう季節風きせつふうとも変化へんかする表層ひょうそう海流かいりゅうしめした。またきた赤道せきどう海流かいりゅうみなみ赤道せきどう海流かいりゅうあいだ赤道あかみちはんりゅうながれていることもあきらかにした。しかし上記じょうきのようなヨーロッパじんによるだい航海こうかい時代じだい海洋かいよう探検たんけん目的もくてきは、あたらしい航路こうろ領土りょうど発見はっけんして貿易ぼうえきおよび植民しょくみんとおしての利益りえきることがおもであったため、海洋かいようたいする科学かがくてき調査ちょうさおこなわれたわけではなかった。海流かいりゅう科学かがくてき調査ちょうさ本格ほんかくてきおこなわれるようになったのは20世紀せいきはいってから、とくだい世界せかい大戦たいせんである。いまのところ世界中せかいじゅう海流かいりゅうなか湾流わんりゅう黒潮くろしおもっとくわしく研究けんきゅうされているとえるが、いまだ海流かいりゅう研究けんきゅうにおいて不明ふめいてんのこる。

日本にっぽん

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日本にっぽんにおいても、黒潮くろしお沖縄諸島おきなわしょとうから日本にっぽん南岸なんがんながれている事実じじつすで12世紀せいきにはられていたことは、平家ひらか物語ものがたりなか平康頼たいらのやすより卒塔婆そとうばなが記述きじゅつからもうかがえるが、きた太平洋たいへいよう全域ぜんいき海流かいりゅう全体ぜんたいについては知識ちしきとぼしかったとかんがえられる。とく寛永かんえい鎖国さこく以後いご外洋がいよう航海こうかい禁止きんしされたので外洋がいよう海流かいりゅうたいする知識ちしきはとだえてしまい、江戸えど時代じだい漂流ひょうりゅうせん海流かいりゅうさからって帰港きこうしようとこころ失敗しっぱいして全員ぜんいん餓死がししたとおもわれるれいがかなりあった。[4]開国かいこくから戦後せんご黒潮くろしお#歴史れきし参照さんしょう)。現在げんざいは、ソビエト連邦れんぽう崩壊ほうかいともなって、いままで政治せいじてき問題もんだい実態じったい調査ちょうさ困難こんなんであったひがし樺太からふと海流かいりゅうなどの調査ちょうさすすめられている。

出典しゅってん

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  1. ^ 毎年まいとしの)理科りか年表ねんぴょうの「海流かいりゅう」のふしで「単位たんい:ノット」と記載きさいされている。
  2. ^ かぞかた辞典じてん海流かいりゅう
  3. ^ のうさわ源右衛門げんえもんあたらしい海洋かいよう科学かがく成山なりやまどう書店しょてん、1999ねんISBN 4-425-53007-1 
  4. ^ 監修かんしゅうしゃかずいたる清夫すみお海洋かいよう辞典じてん東京とうきょうどう出版しゅっぱん、1960ねん 

関連かんれん項目こうもく

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海流かいりゅう調査ちょうさ
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外部がいぶリンク

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日本にっぽん

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