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航海こうかいじゅつ

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航海こうかいじゅつ(こうかいじゅつ)とは、船舶せんぱく位置いちおよび方角ほうがく算出さんしゅつあるいは推定すいていし、目的もくてき到達とうたつするためのもっと合理ごうりてき進行しんこう方向ほうこう速度そくど決定けっていするため技術ぎじゅつ総称そうしょうである。

方位ほうい磁針じしん六分儀ろくぶんぎクロノメーター海図かいずなどをもちいる方法ほうほう(天測てんそく航法こうほう)、陸地りくち特徴とくちょうてき地形ちけい目印めじるしにする(地文ちぶん航法こうほうやまアテ)方法ほうほう天体てんたい位置いちうごき、風向ふうこう海流かいりゅう波浪はろう生物せいぶつしょうなどから総合そうごうてき判断はんだんする方法ほうほうスター・ナヴィゲーション)などがある。

近年きんねんではGPS(グローバル・ポジショニング・システム)や衛星えいせい通信つうしん利用りようする電波でんぱ航法こうほう主流しゅりゅうである。かつては漁場ぎょじょうのピンポイントにふねをつけるには、民生みんせいようのGPSでは精度せいど不足ふそくしていたため、やまアテを併用へいようする漁師りょうしおおい。また、ポリネシアやミクロネシアでは、民族みんぞくのアイデンティティのよりどころのひとつとして、伝統でんとうてき推測すいそく航法こうほうじゅつさい評価ひょうかする気運きうんたかまっている。

ふね測定そくてい[編集へんしゅう]

ふねふね把握はあくしていることは近代きんだい航海こうかいじゅつ基本きほんのひとつである。

交差こうさ方位ほういほう[編集へんしゅう]

海図かいずじょう確認かくにんできる複数ふくすう目標もくひょうぶつれい灯台とうだい)を同時どうじ視認しにんできる場合ばあいに、肉眼にくがん方位ほうい磁針じしん(コンパス)・海図かいずもちいてふねもとめる方法ほうほう。「方位ほういせん」や「重視じゅうしせん」をもちいる。

方位ほういせん」とは肉眼にくがんとコンパスをもちい、以下いか手順てじゅんによって海図かいずじょうせん。 1.まわりの景色けしきなか確認かくにんでき、かつ海図かいずじょうでも確認かくにんできる目標もくひょうぶつえらぶ。 2.目標もくひょうぶつ方位ほういをコンパスで測定そくていする。 3.海図かいずじょう目標もくひょうぶつから測定そくていした方位ほういせんく。ふねはこの線上せんじょうのどこかにいる、ということがわかる。

重視じゅうしせん」は「トランシット」ともばれ、コンパスしでも海図かいずじょうけるせん。まわりの風景ふうけいなかふたつの目標もくひょうぶつどう一線いっせんじょうに(一直線いっちょくせんに)えているときに、海図かいずじょうでそれらを特定とくていし、ふたつをむすせんく。ふねはこのせん延長えんちょうじょうのどこかにいる、ということがわかる。

以上いじょうの「方位ほういせん」や「重視じゅうしせん」などのせんを2ほん以上いじょう海図かいずじょうくと、せん交点こうてんができる。その交点こうてんふねである。

航海こうかい計器けいき[編集へんしゅう]

航海こうかい使用しようする測定そくてい計器けいきるい航法こうほう装置そうち航海こうかい計器けいきばれる。

船舶せんぱくようレーダーとう[編集へんしゅう]

船舶せんぱくそなえる航海こうかいようレーダーには、Sバンド(3GHz/波長はちょう10cm)とXバンド(9GHz/波長はちょう3cm)の2種類しゅるいのパルス・レーダーがある。

Sバンドは比較的ひかくてき探知たんち距離きょりながいが分解能ぶんかいのうひくい。このため大型おおがたせんでは分解能ぶんかいのうたかいが雨天うてん減衰げんすい海面かいめんによる乱反射らんはんしゃによる影響えいきょうけやすいXバンド・レーダーを併用へいようすることで弱点じゃくてんおぎな使つかかたしている場合ばあいおおい。

  • レーダー・アンテナはアンテナ・マストなどのふねたか位置いちけられている。
  • 大型おおがたせん船首せんしゅのシアー(船首せんしゅ波除なみよ形状けいじょう)がたかかったり、LNGせんやコンテナせん積荷つみにたかまれて、前方ぜんぽう手前てまえがレーダー・アンテナから死角しかくになる場合ばあいには、船体せんたい中央ちゅうおうのアンテナ・マストとはべつ船首せんしゅにレーダー・アンテナをそなえるふねもある。
  • ほぼ同様どうよう理由りゆう後部こうぶべつのレーダー・アンテナをそなえるふねもある。
ARPA
通常つうじょうは、探知たんち情報じょうほうをレーダー・スクリーンにそのまま表示ひょうじするだけだが、ARPA(Automatic Radar Plotting Aids)とばれる装置そうちによって探知たんち対象たいしょう記憶きおくすることで運動うんどう方向ほうこう航跡こうせき表示ひょうじする機能きのう提供ていきょうされるようになっている。
AIS
ARPAに装置そうちにAIS(Automatic Identification System、自動じどう船舶せんぱく識別しきべつ装置そうち)があり、半径はんけい15-42nm程度ていど距離きょりで、ふねめいおおきさ、位置いち針路しんろふねそくとう情報じょうほうらせあう。2002ねんからは大型おおがたがいこうせんでのAISのけが義務付ぎむづけられた。

GPS装置そうち[編集へんしゅう]

2008ねん現在げんざいでは、おそらくほぼすべての船舶せんぱくGPS装置そうちそなえるようになっている。 GPS衛星えいせい利用りよう世界せかいてき一般いっぱんした21世紀せいき初頭しょとう現在げんざいでは、これまで航海こうかい使用しようされてきたデッカは2001ねん4がつ1にちロランCは2015ねん2がつ1にち、に日本にっぽんでの運用うんよう停止ていしした。磁気じきコンパスは、緊急きんきゅう六分儀ろくぶんぎによる航海こうかい技術ぎじゅつ同様どうよういまでも使用しようされている。GPSの位置いち情報じょうほうはDGPSによってさらにこう精度せいどになっている。

GPS装置そうちによるふね位置いち情報じょうほうはECDISとばれる航法こうほう装置そうちによって、さらに有効ゆうこう利用りようできるようになっている。

ECDIS
ECDIS(Electric chart display and information system、電子でんし海図かいず情報じょうほう表示ひょうじ装置そうち)はCD-ROM記録きろくされたENC(Electric navigational chart、航海こうかいよう電子でんし海図かいず)のデータとGPSによるふね位置いち情報じょうほうふねレーダー情報じょうほうもとづいて、周辺しゅうへん海図かいずふね位置いち自動じどう航路こうろ保持ほじ監視かんし航跡こうせき記録きろく自動じどうせんそく制御せいぎょ航路こうろ逸脱いつだつ警報けいほう変針へんしんてん接近せっきん警報けいほう、避険せん接近せっきん侵入しんにゅう警報けいほう安全あんぜん等深線とうしんせん接近せっきん侵入しんにゅう警報けいほう気象きしょう情報じょうほう提供ていきょう海象せいうち情報じょうほう提供ていきょう航行こうこう警報けいほう情報じょうほう提供ていきょう、などの高度こうど航行こうこう支援しえん機能きのうそなえている。危険きけん水域すいいき警報けいほう機能きのうとともに海図かいずしつへの出入でいりに時間じかんくことなく前方ぜんぽう警戒けいかい集中しゅうちゅうできることで航海こうかい安全あんぜんせいたかめられる。従来じゅうらい手間てまのかかった海図かいず修正しゅうせい修正しゅうせいデータCD-ROMをセットするだけでむようになった。CD-ROMとはべつにICメモリカードおさめたERC(Electric reference chart、電子でんし参考さんこう)も発行はっこうされるようになった[1]
国際こくさい水路すいろ機関きかん(IHO)でENCじょうでの表記ひょうきほう統一とういつされている。1995ねんから日本にっぽん海上保安庁かいじょうほあんちょう世界せかい先駆さきがけてENCでの海図かいず情報じょうほう提供ていきょう開始かいしし、先進せんしんこくもこれにつづいて提供ていきょうはじめているが、後進こうしんこくではデータ整備せいびすすまないため、世界せかいうみをECDISだけでカバーするにはいたっていない。ひがしアジアでは日本にっぽん水路すいろ情報じょうほう整備せいび主導しゅどうしている。
CD-ROMに記録きろくされたENCは、国際こくさいてきには英国えいこくノルウェー有償ゆうしょう提供ていきょうされており、暗号あんごうされた1まいのCD-ROMに圧縮あっしゅく暗号あんごうされおさめられたかく海域かいいきごとのデータは、1年間ねんかん使用しよう権利けんり解読かいどくキーの購入こうにゅうによってECDISじょう解読かいどく使用しよう可能かのうとなり、最新さいしん更新こうしんデータはインターネット経由けいゆ入手にゅうしゅできる[2]

ジャイロスコープおよびジャイロコンパス[編集へんしゅう]

一度いちど設定せっていした方位ほうい保持ほじつづけて針路しんろ決定けってい利用りようする装置そうちであるジャイロスコープと、地球ちきゅう自転じてんジャイロ効果こうか作用さようにより方位ほうい自己じこ修正しゅうせいするジャイロコンパスがある。

物理ぶつりてきなコマの回転かいてん利用りようするジャイロコンパスから、精度せいどたかくコンパクトなレーザーリングがたやレーザーミラーがたジャイロスコープへとかわってている。しかし、ジャイロスコープには方位ほうい自己じこ修正しゅうせいする能力のうりょくがなく、また、いずれも停電ていでん使用しようできなくなるため、磁気じきコンパスとの併用へいよう規則きそくによってさだめられている。機能きのうじょう自動じどう操舵そうだ装置そうちとのつながりがふかいので、自動じどう操舵そうだ装置そうちふくまれているものもおおい。

ジャイロスコープのみで方位ほういしめ場合ばあい、いくら精度せいどたかくても、時間じかんとも誤差ごさ蓄積ちくせきしてくるため、時々ときどき修正しゅうせい必要ひつようになる。

ながれあつしきログ・電磁でんじしきログ[編集へんしゅう]

ともにみずたいする速度そくどはか装置そうちである。りゅうあつしきログはピトーかんによるあつりょくによって、電磁でんじしきログではみず電磁でんじ誘導ゆうどうによって速度そくどはかる。GPSの利用りようすすんだ21世紀せいき初頭しょとう現在げんざいでは、大型おおがたせん中心ちゅうしん海流かいりゅう影響えいきょう測定そくてい誤差ごさおおきなこれらの測定そくていわって、GPS装置そうちえがみずからの航跡こうせきもとづいた速度そくど利用りようおおくなっている。

ドップラーソナー[編集へんしゅう]

航海こうかい計器けいきとしてのドップラーソナーは、船底ふなそこから前後ぜんごけて発射はっしゃした水中すいちゅうちょう音波おんぱ反射はんしゃ測定そくてい周波数しゅうはすうのずれから、水底みなそこまでがちかければ対地たいち速度そくどを、とおければたいみず速度そくどはか装置そうちである。がわかた発射はっしゃ測定そくていすればみなとでの岸壁がんぺきまでの距離きょりはかれる。

音響おんきょう測定そくてい[編集へんしゅう]

航海こうかい計器けいきとしての音響おんきょう測定そくていは、船底ふなそこからしたけて発射はっしゃした水中すいちゅうちょう音波おんぱ反射はんしゃ測定そくていし、船底ふなそこから水底みなそこ海底かいていなど)までの距離きょりはかるものである。

自動じどう操舵そうだ装置そうち[編集へんしゅう]

自動じどう操舵そうだ装置そうちオートパイロット)はジャイロコンパスや航法こうほう支援しえん装置そうちからの情報じょうほうによって設定せっていした方位ほういから針路しんろがずれると、自動的じどうてきかじ操作そうさすることで針路しんろ保持ほじする。ふう潮流ちょうりゅうによってよこながされるズレには対応たいおうできず、船舶せんぱくとの回避かいひ運動うんどうおこなえないので、人間にんげんつね船橋ふなばし(ブリッジ)から見張みはり(Look out)をして適切てきせつ操船そうせんする必要ひつようがある[3]

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ 仲之なかのその郁夫いくおちょうみのパイロット物語ものがたり成山なりやまどう書店しょてん 2002ねん1がつ28にち初版しょはん発行はっこう ISBN 4-425-94651-0
  2. ^ 満田みつたゆたかちょうみのなんでもしょう事典じてん講談社こうだんしゃブルーバックス 2008ねん3がつ20日はつかだい1はん発行はっこう ISBN 9784062575935
  3. ^ 拓海たくみ広志ひろしちょふね海運かいうんのはなし」 成山なりやまどう書店しょてん 平成へいせい19ねん11月8にち改訂かいてい増補ぞうほばん発行はっこう ISBN 978-4-425-911226